スレッド 「十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序」 への投稿
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:37:44 ≫
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(注)この作品はプライベート・リアクションであり、実際の人名、地名、その他一切 関係ありません。
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:35:42 ≫
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男の剣が振り下ろされる瞬間、甲高い音が剣を弾いた。
男に体当たりせんばかりに突入したローザの剣が間に合ったのだ。
見ると、ヴァンガード隊の本隊が陣形を取りつつ接近している。
「なる程、お前が足止めをしている隙に数を尽くして一網打尽という手か。ならば 今回だけはお前の勝ちという事にしてやる。次は無いぞ」
そう言うと男は自分の飛空艇に飛び乗った。
「近い内に、その飛空艇を貰い受ける。それまではお前に預けておくぞ」
どれだけ上から目線だよ。そう思ったが、ある意味それは事実だ。
俺とあの男との差は開きすぎているからだ。
今の俺では歯が立たない、それは事実だ。
その日から小型飛空艇の操縦を意識するようになっていた。
自分の手足のように自由自在に操れる程の腕になって、いつかはヴァンガード隊の 本隊に選ばれるようになりたい。
その時こそ、あの空賊達に引導を渡す時だ。
今思えば『飛空艇同好会』は、この時に誕生したのかも知れない……
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:33:34 ≫
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足元にあった、飛空艇のエンジンを切るスイッチを操作した。
そして飛空艇から飛び降りる。
男は知らなかったのだ。この俺が「新春★バンジー」の称号を持っている事に……
飛空艇は、きっちり十メートル落下した直後に自動でエンジンを再始動させる。
浮遊感の中で衝撃を感じた次の瞬間、俺はバンジーロープで飛空艇に戻っていた。
「悪いな」「いや、構わんよ」
後ろから声が掛かり、焦って振り向くと男の剣が光っていた。
男が乗っていた飛空艇が俺の回りを周回している。
「そういう事だ。何も墜落に対処しているのは、お前だけではあるまい」
男が、これみよがしに腕輪を見せる。それで飛空艇を自動操縦にして飛び乗れた訳だ。くそっ。
「今度は動くなよ。それにしてもお前、面白いな」
まだ余裕なんだな。俺なんか眼中に無いって訳だ。
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:30:29 ≫
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繰り返すが、俺の機銃は後ろ向きで射撃するので、バイクでウィリーをするように極限まで後方に傾けないと下方に射撃出来ない。
それはつまり、前方の大部分が死角になるという事だった。
情けない話、俺はその時、攻撃に熱中するあまり敵の飛空艇の存在を忘れていた。
衝撃を感じて我に返った時には手遅れだった。
すぐ目の前にいる敵の攻撃をかわせたのは偶然としか言いようがない。
「ほう、今のをかわすか」
セイバーと思わしき男が、そこにいた。
何の躊躇も無く、俺の飛空艇に飛び乗る。
「二人乗ってもビクともせんか。大した足場だな。あの距離から当てる訳だ」
おどけたように下の帆船を覗き込む男。
「腕に覚えあり、という訳か。だが、オレから見ればまだまだだな」
男の剣が俺に迫る。
「この飛空艇は、ありがたく頂く。じゃあな」
ニヤリと笑う男の表情が落下する。
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:28:11 ≫
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俺はその時、帆船の上空にいた。
俺が乗る飛空艇の影が帆船に掛かった瞬間、その場で停止する。
今度は俺が機銃掃射する番だった。
帆船に影が乗る事は、帆船と太陽との間にいる事を意味する。
相手からは太陽に重なる俺は眩しくて凝視出来ない筈だ。
太陽を背にした戦法は古今東西、枚挙に暇がない程だ。月並みと言われようが、これが俺の戦法だった。
帆船から断続的に機銃掃射されるが、それはお世辞にも正確とは言い難い代物で、俺は勝ちを意識した。
俺の小型飛空艇は、助手席を取り外してそこに機銃を固定する銃座を設置したタイプだ。
後ろ向きで射撃するので操縦しながらの射撃は出来ないが、銃座が中心に来ている分、重心が安定しているから、地上と変わらず安定した射撃が出来る。
もちろんスキルも普通に使えるから、待ち伏せには重宝している。
今回は、下の帆船に対して掃射しているので、どうしても後ろのめりになってしまう。
ヘリコプターが地上の敵に機銃掃射を加える場面をイメージすると分かるだろうか。
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:25:35 ≫
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遊撃隊になって一週間後、タシガン空峡に出没した空賊の討伐依頼が舞い込んだ。
神出鬼没の空賊を罠に掛けるべく、定期便に追従する。
その際、何台かの護衛がエンジントラブルで離脱し、残ったのは一輝達遊撃隊という寸法だ。
数台の頼りない護衛を伴い、定期便がタシガン空峡の半ばに差し掛かった時、奴等が現れた。
雲海から浮かび上がる帆船。定期便は機関銃の射線に阻まれ、不意に停止する。
次第に距離が縮まる二隻の飛空艇に割って入る護衛の飛空艇、そこに新手の飛空艇が乱入した。
さらに帆船からの機銃掃射で味方の飛空艇は撤退を余儀なくされた。
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天城 一輝
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Re:十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:22:50 ≫
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俺は小型飛空艇に近づいた。整備師が会釈をしつつ道を開ける。
設置されたエンジンの調子も上々だった。
本来なら飛空艇に内蔵された機晶石だけで充分に運用が可能の筈だが、「半永久的に使える」という、 五千年前の謳い文句にどれ程の信憑性があるだろう?
事実、発掘飛空艇の墜落事故は十中八九、バッテリー切れなのだ(当時アーティフィサーは存在せず、 機晶石に放電や充電させるスキル「機晶技術」は未確認だった)
結果、機晶石を予備として新しいエンジンを装備するドンガメとして完成するという本末転倒ぶり だった。
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天城 一輝
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十冊目の航空日誌(エア・ジャーナル)……序 ≪ 2012年05月22日 15:18:30 ≫
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格納庫の一角から蒼空学園を一望する。
クィーン・ヴァンガードに入隊してから半月、何とか任務に付いて行けるまでにはなった。
だが、諸先輩達と比べる程は活躍出来なかった。
だから俺は、ヴァンガード隊の遊撃隊隊員になる事にした。
真っ先に現場に急行し、本隊が来るまでの間に現場の状況把握、事件を収拾するまでの時間稼ぎ、 それが遊撃隊の任務だった。
ここは蒼空学園から離れた施設で、俺の小型飛空艇もここに駐艇している。
突貫工事とは言え、コンクリートの床に鉄筋剥き出しの支柱は軍事基地然としており、鏖殺寺院の 襲撃を想定している事が窺えた。
学園からは少し離れているが、ヴァンガード隊用に直通の路線が引かれた所からも、クィーン・ ヴァンガードに対する期待の込め方がひしひしと感じられる。
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