illust:田中 健一
時は西暦2022年3月。
地球とパラミタ、二つの世界を巻き込んだ戦争の終結から8ヶ月が経ち、地球では平穏な日々が続いていました。
しかしその裏では、戦後地球にもたらされたサロゲート・エイコーンおよび機晶技術の覇権を巡り、熾烈な勢力争いが繰り広げられていたのです。
その中で急成長を遂げたのが、「パラミタ技術のビッグスリー」と称される3つの巨大資本、
アメリカに拠点を置く新興複合企業『フューチャー・エレクトロニクス(FE)』
同じく戦後に台頭したイギリスに本社を持つ『アスター・エアクラフト(AA)』
そしてイコンが公になる前から技術支援を行っていた日本最大のイコン関連企業グループ『SURUGA』
です。 パラミタの滅亡が囁かれニルヴァーナの探索が進む中、地球でも何かが動き出そうとしていました。
「月神のヒュムーン」では、イコン技術を巡る新感覚バトルを、ロボットミッションの形式お届します!
担当は、「聖戦のオラトリオ」シリーズでもお馴染の、識上 蒼マスターです。
プレイはこちらから↓
第1話 実戦訓練
第2話 襲来
第3話 未開の地へ
第4話 伝承の正体
第5話 教会と魔法使い
第6話 アトランティスの遺構
第7話 「真」兵器
第8話 妖精郷
第9話 最も古き地
第10話 妖精神
第11話 決戦
第12話 月神
蒼空のフロンティア史上初!
「月神のヒュムーン」は、毎週公開されるロボットミッションです。
更に!初回である4月13日(金)には、第1・第2話が同時公開されます!
その後は毎週1話ずつ公開され、全12話で完結する予定です。
日本、東京都内某所。
「これが、二ヶ月前に月面――リファニー・ウィンポリアが眠っていたとされる場所の近くで発見されたものです」
FEの社章を身に付けている男が、スクリーンに映し出された石版を始めた。
「わが社の技術部門が解析した結果、一万年以上前に作られたものだと判明しました。さらにこの文面を解読した結果、驚くべきことが記されていることも判ったのです」
石版に記された内容。
それは、遥か昔、地球人類が宇宙に進出したというものだった。
そして銀河の彼方へ旅立った人類は数千年の後に地球へと帰還した、と。
「……ですが、帰還した彼らが見たのは荒廃した世界の姿でした。しかし彼らは母星であるこの地球を見捨てず、再生に尽力しました」
「そして、その時の宇宙船は文明が再興するまで起動されぬよう、月に封印された。
……ということで、よろしいかしら?」
手元の『ツクヨミ計画』と題された資料に目を通しつつ、女性――SURUGAの若き社長、五艘桔梗(ごそうききょう)は口を開いた。
「つまり、こういうことですわね?日米両国政府の下、FEとSURUGAが共同でその宇宙船を起動する方法を解明する。なるほど、ウィルソン大統領の署名もありますわね」
「これは、ただの宇宙船ではありません。『パラミタ、ひいてはニルヴァーナに万が一のことがあった場合』の、地球の切り札となり得るものです」
FEイコン関連事業部門の総責任者であるヘンリー・ロスチャイルドが目を細めた。元はFEが吸収合併したヨーロッパの大企業の御曹司であるが、FEの会長にビジネスの素質を見出されて今の地位についた青年である。
同席している防衛大臣や国務長官を前にしても物怖じする様子はなく、説明を続けた。
「しかし、問題は『鍵』の所在です。石版には二種類あると書かれていました。片方は、アメリカが既に確保してますが、もう一方が厄介です」
石版に「ヒュムーン」と記された鍵は四つに分かれ、地球とパラミタに二つずつあるのだという。宇宙船には、二つの世界を繋ぐ力もあったらしい。
「いくらシャンバラが先進国の介入する地域であるとはいえ、大々的にこの存在を示すのは避けるべきでしょう。九校連の力は必要ですが、上手く働きかける必要があるでしょう」
「葦原明倫館を通してでは駄目なのかしら?校長は大統領の娘さんですわよね?」
「マホロバにも手を伸ばし、パラミタの色が強くなりつつあるあの学校では、厳しいものがあります」
「だから、地球・パラミタ双方に働きかけることが可能な天御柱学院――海京の力を借りようというわけですわね。主要取引先であるSURUGAを介して」
しかし桔梗には、地球とパラミタの緩衝材としての役割を担う天学にとって、これは地球に寄りすぎているように思えた。
(地球サイドでの活動が可能で、かつ学校勢力所属の下パラミタで行動可能な者……)
鍵の調査隊を結成するにあたっては、そういった立場の人物を代表にしておきたい。
ふと、桔梗は海京にいる娘から聞いた、天学の姉妹校から4月にやってくる留学生のことを思い出した。
「……ちょうど、適任者に思い至りましたわ。地球の今後がかかっているとなれば、教会にも拒む理由はないでしょう」
「助かります。では、シャンバラ政府との協議はこちらにお任せ下さい。ルシア・ミュー・アルテミスとリファニー・ウィンポリアを引き合いに出せば円滑に話は進むでしょう。
宜しく頼みますよ、国務長官殿」
こうして、「ツクヨミ計画」は本格的に始動したのだった。
4月:行政特区海京
「とうちゃーく!ほら、マルちゃん、早く早くー!」
「……元気(テンション高いね、お姉ちゃん)」
新年度の開始に合わせて、ドミニクとマルグリットのルルー姉妹と彼女達のパートナーは海京に到着した。
双子の姉妹に、双子の聖人として知られる英霊、コスマとダミアノ。非常に珍しい双子同士の契約者だ。
彼女たちこそ、イタリアの契約者養成学校『聖カテリーナアカデミー』からの留学生である。
「ドミニク・ルルーさんとマルグリット・ルルーさんですね。お待ちしておりました」
「お出迎えご苦労!……って、アンタたち誰?」
SURUGAの社員と日本政府の外交官を称する男が、「遥か昔に地球人が遺した遺産」の調査隊結成と、彼女達がその代表になった旨を伝えた。
「というわけで、『天御柱学院の生徒として』地球・パラミタにおける調査の協力者を募って欲しいのです。アカデミーの精鋭『聖歌隊』のメンバーであるあなた達には造作もないことでしょう」
「断(お断りし――)」
「よっしゃ、このドミニクさんに任せなさいっ!」
「!(ちょっと、お姉ちゃん!)」
「助かります。なお、アカデミーのシスター・エルザ様からは『何事も経験よ、経験。社会勉強ってことで嫌だと言ってもやらせちゃって』と言伝を頂いております」
初めから彼女達に拒否権などなかった。
「マルちゃん、転校生は最初のインパクトが重要だよ。そこで多くの人を惹きつけて、友達になる。そんで、協力してもらうんだよ」
「……逆(……順番逆じゃない?というか私達は転校生じゃなくて留学生なんだけど)」
「細かいことは気にしない!気合いと根性があれば、どうとでもなる!
何事も初めが肝心、だよ!」
「……(……もう、何を突っ込めばいいのか分からない)」
元気よく天御柱学院に向かって駆け出していくドミニクと、呆れ顔でその背中を眺めるマルグリット。
吹きつける春の風が、彼女達に新しい日々の始まりを告げているようだった――。
文:識上 蒼
●ドミニク・ルルー
聖カテリーナアカデミー在籍の十六歳の少女。
アカデミーのエリートイコン部隊『聖歌隊』の第五位であり、専用機【メタトロン】に搭乗する。
努力・気合い・根性を掲げる元気娘。近接格闘を得意とし、イコンにもそれを取り入れている。
双子の妹、マルグリットの乗る【サンダルフォン】と組んで行動することが多い。
現在は天御柱学院に留学中のため、天学系列の機体に乗っている。
illust:TOH.
●マルグリット・ルルー
聖カテリーナアカデミー在籍。ドミニクの双子の妹。
『聖歌隊』の第六位であり、専用機【サンダルフォン】に搭乗する。
姉と違い基本的には冷静で感情表現に乏しく、おとなしい。
自動照準を一切使わない、目視のみによる長距離射撃を得意とする。
現在は天御柱学院に留学中のため、天学系列の機体に乗っている。
illust:TOH.
●ヴィクター・ウェスト
俗に言うマッドサイエンティスト。
鏖殺寺院や十人評議会と深いつながりがあり、発掘されたシュバルツ・フリーゲの復元と、それを元に簡易量産型であるシュメッターリンクを開発した人物。
後継機であるシュバルツ・フリーゲⅡとシュメッターリンクⅡ、およびモスキートも彼の設計である。
専門は生物学と遺伝子工学だが、かつてロボット工学を学んでいた時期があった。現在は消息不明であり、国際指名手配中。
illust:TOH.
●ヘンリー・ロスチャイルド
欧州の名家出身である、フューチャー・エレクトロニクスイコン関連事業部門の若き統轄。
表向きは人当たりのいい好青年だが、かなりの切れ者であり、イコン関連事業部門の成長は彼なくしてはあり得なかったとさえ言われている。
パラミタを必要以上に恐れる地球諸国に嫌気が差しており、地球人だけでパラミタ・ニルヴァーナに対抗する手段を探していた。しかし、彼の真の目的は……。
illust:TOH.
※登場キャラクターは、今後も随時紹介していきます。
●イザナギ
第二世代イコン「ジェファルコン」の自衛隊仕様機。
従来使用されていた「ヤマトタケル(イーグリット)」の後継機でもある。
ドミニクはヒュムーン調査において、自衛隊から特別貸与を受けたこの機体を使用している。
illust:岩間芯
●イザナミ
第二世代イコン「ブルースロート」の自衛隊仕様機。
自衛隊のイコンは基本的に赤と白のカラーリングが施されている。
マルグリットはヒュムーン調査において、自衛隊から特別貸与を受けたこの機体を使用している。
illust:岩間芯
●モスキート
ヴィクター・ウェストが、以前製造した『マリーエンケーファー』のデータを元に改良、作成したとされる強力な大型機。
名前の通り、触手状の砲塔を直接相手の動力炉に繋げ、エネルギーを吸い取ることが可能。
また、それ自体から砲撃を行うことも出来る。
illust:Ninjinkirai!?
※登場イコンは、今後も随時紹介していきます。
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
ヒュムーン調査隊最初の目的地は沖縄だった。
現地入り後、調査の前に実戦訓練が行われることになる。
この訓練をクリアしなければ、ヒュムーン調査隊として正式に調査に加わることはできない!
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
訓練は無事に終わり、いよいよ調査が開始される。
しかし、そこに突如未確認機が飛来する。
それは、鏖殺寺院のイコン、シュメッターリンクの新型機だった!
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
沖縄でシュメッターリンクⅡを撃退しヒュムーンを発見した調査隊は、
次なるヒュムーンを求めてシボラを訪れていた。
しかし、シボラの原住民は彼らのことをよく思っていないようで……
※写真はイメージです。
アクリトの説得によって、原住民からシボラへの滞在を認められた調査隊。
だが、気を抜く暇はなかった。
調査隊の行く手に、またもや未確認機が現れたのだ。
まるで、ヒュムーンのありかに見当がついているかのように……
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
シボラで敵機を退けた調査隊は、原住民から古く伝わる伝承を教えてもらう。
その中にはヒュムーンが隠されていた。
次に目指すは『アトランティスの遺構』。
舞台を地球に移し、今度は教会と魔法使いの思惑が交錯する!
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
アトランティスの遺構へと足を踏み入れた調査隊は、
その最深部でヒュムーンを見つけることに成功した。
しかし、喜びも束の間、シュメッター・リンクⅡを率いた黒いイコンが調査隊に接近する。
それは、シュバルツ・フリーゲ によく似た機体だった。
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
シュバルツ・フリーゲⅡをも倒した調査隊を待ちうけていたのは、
陣形を整えて攻めてくるシュメッターリンクⅡとシュバルツ・フリーゲⅡだった。
調査隊もコンビネーションを組んで、これに応戦する!
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
敵を退けた調査隊に接触してきた、科学者『ヴィクター・ウェスト』らしき人物。
調査隊は彼の投入した異形の大型機『モスキート』を激戦の末撃破する。
そして、見つけたヒュムーンを解読した結果、驚くべき事実が明らかになった。
探していた遺産は一万年以上前の宇宙船だったのだ!!
最後のヒュムーンを求め、調査隊はティル・ナ・ノーグの地を訪れる!
※写真はイメージです。
行く手を阻む(自称)エリュシオンの龍騎士を強行突破し、
ティル・ナ・ノーグのハイ・ブラゼル地方へやってきた調査隊。
彼らを出迎えたのは、“あの人物”だった。
その人物によれば、『妖精神』なる存在ならば調査隊の力になってくれるかもしれないとのこと。
“妖精神”に会うべく、 『最も古き地』を目指さんとする調査隊だが――
※写真はイメージです。
ドロシー・リデルから『星の船』のおとぎ話を聞いた調査隊は、
それを伝えたとされる“妖精神”に会うべく『最も古き地』へと向かっていた。
しかし、調査隊と同じくヒュムーンを追い求める敵もまた、
ティル・ナ・ノーグへとやって来ていた。
※写真はイメージです。
敵を退け、『最も古き地』へとたどり着いた調査隊。
そこで“妖精神”から語られた宇宙船『ツクヨミ』の真実は、驚くべきものだった。
最後のヒュムーンを託された調査隊は、月へと向かう!
※写真はイメージです。実際にはドロシーの画像ではなく、設定されたPCの画像が表示されます。
ついにその本性を現したヘンリー・ロスチャイルド。
その手から『ツクヨミ』を取り戻すべく、今最後の戦いが月で繰り広げられる!
パラミタの、そして地球の運命は!?
結末はその目で見届けろ!