なし

「ヒグザ様、最低限の攻撃は成功しました。転送術者も一緒です。ただ本部強襲予定分のキメラがまだ到着していないようです」
　空飛ぶ箒で北に向かって飛びながら、クリス・シフェウナは携帯電話で報告をします。
「ヴァイシャリーの北西で検問に引っかかったそうだ。本部襲撃は無理だが、その後の船は突破できるはずだ。北の塔の位置に向わせる。お前は予定通りキメラを束ねて待て」
「畏まりました。ヒグザ様はあとどれくらいでこちらに到着されますか？」
　通話の相手、ヒグザ・コルスディは飛行系のキメラを率いて、空からヴァイシャリーに向っているのです。
「あと１時間ほどで到着予定だ。数は１０。解けたと思われる中央に下りる。威嚇攻撃をしながら、ジュリオ復活と宣戦布告を見届けた後、俺はこちらに戻りそっちに向う」
「わかりました。お待ちしております」
　ヒグザはテレポートの使い手です。
　カルロの封印が解けたことで、中央――離宮の時計塔へ飛ぶことが出来るようになりました。
　彼は時計塔の上にキメラを連れてテレポートするつもりのようです。
　また、離宮で長き眠りについていたジュリオは、既に彼らの手に落ちているようですが……これらのことは、百合園側はまだ誰も知りません。

　離宮の本陣に留まっている者達が、ソフィア・フリークスの姿が見られないことに気付いていき、口伝えで伝わっていってしまいます。
　総指揮を務めている神楽崎　優子（かぐらざき・ゆうこ）はこの状況を……帰る手段さえもないかもしれないと、皆に説明をすべきかどうか考え込みます。
「地上も異変に気付いているだろうし、テレポートの手配くらいはしてくれているとは思うんだが……」
　その間、持ちこたえなければなりません。
　そうしている間にも、指示を求める声が通信機から届いてきます。
「使用人居住区方面は耐えられそうにないのなら、東側に引きつけ、東の塔まで下がり食い止めろ。百合園生で足手まといになりそうな者がいるのなら、別邸まで下がらせてくれ」
　優子は眉間に皺を寄せながら、指示を出していきます。
　報告を受けている限りでは、全軍で使用人居住区の対処に当たれば、対処できないことはないと思われます。
　攻勢に出る者が少ない場合は、本陣に留まっているメンバー達の突撃もやむをえないと思われます。

　ラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）は、公にはされていませんが桜井　静香（さくらい・しずか）が攫われてしまったことから、外出が出来なくなっています。
　医療態勢が整えられた部屋で、電話を使った相談や指示を中心に行っています。
　百合園女学院からの報告を受けたラズィーヤは眉を寄せてしばらく考えた後、自分の側にいたため、クリスの攻撃の被害に遭わなかったエミール・キャステン（えみーる・きゃすてん）と春夏秋冬　真菜華（ひととせ・まなか）達に状況を伝えていきます。
「離宮問題用に待機させている軍人およそ５００名を、離宮が浮上すると思われる範囲外へ配置できるよう準備を進めていますわ。別の指示を与えることは浮上時の対応を遅らせることになりますが、キメラ討伐を優先しなければならないかもしれません。現場の状況を確認し、本部の方で決定を下してください」
　悲恋のカルロの感知によると、組織の研究所であるジィグラ研究所にはキメラと思われる無数の強い生命力がひしめいていたといいます。白百合団員達が必死に対処に当たっていますが、ヴァイシャリーが目当てならばその多くはこちらに向ってきてしまうでしょう。
　嘆きのファビオに関しては、本人の居場所は掴めていませんが、大まかな封印の場所が判明しており、そちらは白百合団の団長達が動いています。
「転送術者に関しては、内密にことを進め、既にこの家にいらしていただいています。ただ、テレポートには莫大なコストがかかります。多くの命を助けても、その後にそれの何倍もの民を餓死させるようなことがあってはなりません。無駄のないようなご指示をお願いしますわ……」
　なるべく転送する場所に近い場所から送った方がコストを抑えられ、より多くの物資や人員を送ることが出来るでしょう。
　ソフィアは非常に優れた転送術者ですが、離宮に送った全員をこちらに転送できるほどのエネルギー源を持って行ってはいません。離宮にそういったものが無い限り、ソフィアが望んでも皆を地上に転送させることは無理なはずです。
「行った事があり、場所を知っている方――マリザ・システルース（まりざ・しすてるーす）さんに同行をお願いし、マリザさんのイメージを頼りに、契約者を連れて術者も一緒にテレポートすることになります。離宮の状況が判りませんので、最悪また術者を失うことになります……そうなった場合、地上の封印は全部解いて、離宮の方々の健闘を祈りながら避難と軍の配備を進めることになりますわ」
　少し心配気な顔でラズィーヤは言いました。
「ただ、離宮との通信が回復した際には、大体の位置をイメージし、何度か物資の転送を試していただくことも可能です。無事離宮に到着するようでしたら、術者は地上に留まったまま、人員のテレポートを行えるでしょう」
　多少早口になりながら、ラズィーヤは続けます。
「女王器の扱いに、女王の血を引くものが必要と思われるという件については……十二星華であるアレナさんに離宮に向っていただくつもりでしたが、ご無理な可能性が出てきました。その際には、わたくしの実弟に向わせますので、護衛をよろしくお願いいたしますわ。まだ子供ですので……どうか、面倒を見てあげてください」
　ヴァイシャリー家の大人達はラズィーヤを含め、世界情勢への対応や、離宮問題の対処にとても忙しくしており、失うわけにもいきません。もう余力はどこにもありません。
　もちろん、弟――レイル・ヴァイシャリーを犠牲にしてもいいというのではなく、動けるのが彼だけだということなのです。
「ヴァイシャリーに向っているキメラにつきましては、湖、河原での迎撃は勿論必要ですが、狙いがヴァイシャリーだけではなく、離宮に向わせようとしている可能性もありますわ。その場合、転送可能箇所近くから術者が転送すると思われます。難しいとは思いますが至急街で協力を呼びかけ、その地点でもできれば契約者を配備して警備及び迎撃いただければと思います。西と南の塔、それからカルロさんの封印はご本人から時計塔の上部と聞いています。その他の場所の封印が解かれる可能性もあります」
　南の塔は百合園校庭と辺り、西の塔は住宅街の外れあたりです。時計塔の場所は運河の上辺りと思われます。
「被害に遭われていないミサカ・ウェインレイド（みさか・うぇいんれいど）さん達に、電話でも伝えておきますが、真菜華さんも本部に向って手伝いながらこれらのことを本部の方々に伝え、担当を決めてもらって対処に当たって貰ってください。意見が分かれるようでしたら、深くは考えずより迅速に行動に移せる案を優先してください。エミールさんはわたくしのサポートに残っていただいても構いませんし、対処に動いていただいても構いません」
　さきほどからずっと、ラズィーヤの携帯電話が鳴っています。
　ラズィーヤのサポートも１人はいた方が良いかもしれません。

こちらのシナリオは、百合園女学院のキャンペーンシナリオですが、優先学園はありません（男性も会議や作戦にご参加いただけます）。
今回からのご参加も大歓迎です。
建国の絆最終回と同時期のお話となりますが、どちらが前なのかはアクション投稿時は気にしないでいただければと思います。

シナリオが追加募集になった際には、受身（街を歩いていたら事件に巻き込まれたなど）アクション目的での申し込みも歓迎いたします。
どのような状況に巻き込まれるのかはこちらの判断で決めさせていただきます。

尚、百合園女学院キャンペーン『嘆きの邂逅』は２分割となっており、先に公開された闇組織編５回にご参加された方は、この離宮編５回にはご参加いただけません。間違えて申し込んでしまった方は申し訳ありませんが、アクション不採用とさせていただきます。

かなり厳しい状況にあります。前回までのリアクション、マスターコメントをよくご確認の上、どうかどうか力をお貸し下さい！
ラスト２回、皆様のエンジンもかかった頃かと思います。積極的なアクションを楽しみにお待ちしています！

○現在地と状況

・離宮南塔本陣（状況：普通）
　各拠点まで数分から数十分の距離があります。各場所に増援を送ったため、手薄になっています。本陣を別邸に移すことも検討中です。

・離宮作業小屋（状況：普通）
　御堂晴海が捕らえられています。小屋の前で待機していた数名の白百合団員と前回捕縛に動いた方のみ、彼女の離反を知っています。
　尋問等も可能ですが、戦闘方面の人手が足りてませんので見張りに１、２人残し残りの者は別方面に動くようにと指揮官から指示が出ています（全員別方面に動き、見張りは白百合団員に任せても構いません）。

・離宮西塔（状況：普通）
　倉庫としている場所があります。現在はさほど貴重な物は入っていません。軍人数名で警備をしています。集団で攻められた場合ひとたまりも無いため、ここの拠点は捨てることも検討されています。
　別邸、厩舎からわりと近いです。

・離宮東塔（状況：危機迫りつつ）
　大きめの救護所があります。重体者も続々と運び込まれています。敵人造人間達が近づいており、戦場になりそうです。
　本陣、宮殿、使用人居住区、いずれからも少し距離があります。

・離宮別邸（状況：普通）
　一番設備が整った救護所があります。東の塔から患者が運ばれてくるようになりました。隠しておくことは出来なそうです。
　宮殿、西塔からわりと近いです。

・離宮地下道（状況：緊迫）
　都市の地下通路のような地下道です。分かれ道など結構ありますが、迷路になってはいません。
　光条兵器使いが溢れています。

・離宮宮殿、宮殿前（交戦中、優勢）
　時計塔の制圧が終了してます。何人かが地下に足を踏み入れたようです。地下の調査が開始されるものと思われます。

・宮殿宝物庫（状況：普通）
　女王器らしきものを見つけました。補佐班が光条兵器使いの気を引いていることもあり、十分突破が可能な状態です。
　更に奥の部屋があるようです。指揮官からは、数名宝を持って何れかの拠点に戻り、残りの者は奥に進んでみるようにと指示が出ています。

・離宮使用人居住区前（状況：厳しい）
　敵と激戦中です。かなり押されており、東塔に近づいています。

・離宮北塔（状況：？）
　敵が命令を待っているかのように、周囲にずらりと並んでいます。地下の音が止まりました。
　早期に小型飛空艇などで迎えに来てもらえば避難可能です。

・離宮対策本部（状況：火災）
　消火活動中です。データはほぼ焼失しています。復旧作業を行う場合１回かかります（行う場合１ＭＣで十分です）。
　転送用に集めてあった物資はある程度無事です。
　会議に参加しており、重傷状態の方は消火、回復作業後（最低２時間後）に行動スタートとなります。ダブルアクションとカウントいたしませんが、怪我をしていない方より行動のスタートが遅れます。
　転送実験用に用意していた隣室が活動部屋になります。

・ミクル
　ヴァイシャリー家で保護されています。
　信頼できる私兵が警備を担当しているため、現時点ではここに留まっていれば、ミクルの身の安全は保証されています。
　ただ、ファビオの封印が解かれた後、用済みとしてファビオが殺害されるなどということになった際には、ミクルにも影響が出ると思われます。

・離宮の位置が描かれたヴァイシャリーの地図
　受信機で調査を行っていた方は最新版を持っています。
　ヴァイシャリー家の８割と百合園女学院敷地の７割、貴族の邸宅数十件、一般の建物数十件くらいが範囲と思われます。
　避難についての説明が行われており、避難命令の放送もすぐにかけられるようになっています。

〇本部で決定しなければならないこと
・離宮対策用の軍人約５００名の配備
・街での協力要請の人員
・転送術者の護衛
・女王の血を受け継ぐ者の護衛
・転送術を行う場所（今回は最大でも人物を十数人送るので限界）
・どう転送術を行うか（術者に６騎士が同行して向うか、物資で試してみるかなど）
・その他諸々
※一般の百合園生の多くは周辺住民への説明に動いています。軍人、領主や契約者の多くは現在世界的なことに奔走中で余力はありません。
※本部の火災対応が終わった頃には離宮とのパートナー通話が出来るようになっていると思われます（NPCの連絡係は本部にいません）。
※本部での立案と決定を手段に書き「自分は立案した〜の対応に動きます」のように一文だけ自分の行動を入れてあった場合、ダブルアクションと判定いたしません。

〇このシナリオ内の人物、兵器の強さ（目安）
６騎士、神楽崎、超熟練契約者＞熟練契約者、アレナ（星剣封印時）、白百合団班長ＮＰＣ＞平均レベルの契約者＞経験の浅い契約者、無名白百合団員ＮＰＣ、キメラ＞機械系人造人間、石像（魔道兵器）＞一般の契約者百合園生ＮＰＣ（武器＆戦う意思有）＞光条兵器使い＞ヴァイシャリー軍人

例えば、キメラと白百合団員ＮＰＣの場合、実力伯仲となり戦った場合、互いにただでは済まされません。白百合団班長ＮＰＣとキメラでは班長ＮＰＣの方が強いですが、班長ＮＰＣVSキメラ２体ならキメラの方が圧倒的に有利です。

地上から離宮に向われる場合は、物語の中盤以降に離宮に着くことになります。
離宮にいる方で、戦闘中、拘束中ではない方は指揮官に連絡を入れたとした上で、離宮内の別の移動可能な場所からスタートしていただいても構いません。

こちらのシナリオではＰＬ情報とＰＣ情報の違いにご注意下さい。ガイドやリアクションに載っていても、知る手段のない情報は知っているとして行動することができません。
情報を交換できる状態のＰＣ間で情報の受け渡しをする際には、双方のアクション欄にその旨お書きください。

その他は、前回までのガイドとリアクションのマスターコメント通りです。
それでは、アクション楽しみにお待ちしております。

・東の塔を護る

・拠点放棄を提案

・調査する

・船着場に駆けつける

・全力で巻き込まれる（追加募集参加者用）