なし

　

　目が覚めたトオルは、周囲を見渡しました。
「……何処だ、此処。俺、死んだんじゃなかったのか？」

　そこは、見覚えの無い荒野でした。
　白く色あせた、どこか無機的な印象を受ける光景です。
　化石のように生気の無い、巨大な樹が聳え立っていました。

『死んでると思うわよ。
　ろうそくが消えた後、芯から煙が立ち昇ってるような感じの状態じゃないの』
「誰だ？」
『私はただの、残留思念』
　振り返って訊ねたトオルに、そう言って笑ったのは、ジュデッカでした。
『此処は、そうね、「狭間の世界」ってところじゃない？
　夢の中の世界みたいなものね。
　少し前までは、もっとぼんやりてたわよ。あんたが来てから、一気にはっきりし始めたわね』
　つまり、それはイスラフィールが覚醒してからか、と、トオルは思いました。
「消えたろうそくの名残の煙ってことは、その煙が消えれば、完全に死ぬってことか……」


　ふと、大樹の根元に人影を見つけて、トオルははっとしました。
　ゆらめくように立ち上がるその人物を見て、ジュデッカが、あら、と呟きました。
『あいつ、ずっと死んだみたいに動かなかったけど、やっぱり生きてたのね』
「あいつは……！」
　イデアは、トオル達を見つけると、薄く笑いました。
「時が近づいたようだ。
　世界が復活する日も、俺がひとつに戻れる日も近い」
「させるかよっ……」
　身構えるトオルに、ジュデッカが囁きました。
『あんた一人じゃ無理じゃない？　助っ人を呼んであげましょうか。
『書』の近くで“同調”する人になら、声が届きそうな感じだったのよね』
「だめだ。絶対にやるなよ！」
　トオルは叫びました。
「あいつを倒す為に死ねとか、だめに決まってるだろ！」




　ふたつの大陸から成るその世界の名を、モクシャと言いました。

　イデアの目的は、モクシャの民を前世に目覚めさせ、その記憶によって作られた世界を、オリハルコンによって具現化させること。
　そして、復活させたその大陸を、パラミタ大陸とすげ替えて巨神アトラスの肩に乗せること。
　アトラスと対を成す天空神ウラノスを、パラミタの替わりにモクシャの守護神とする為に、モクシャの記憶を書き込むことでした。

　かつてのモクシャの民が思い出した、それぞれの記憶は、イスラフィールによってまとめられ、ひとつの世界に形作られています。
　イスラフィールの能力とは、アンテナのようなものでした。


　イデアはルーナサズの“龍王の卵”を割り、中に眠る龍を孵そうとしています。
　その龍に、召喚したウラノスドラゴンを憑依させようというのです。
　しかし、龍王は、世界を滅ぼす存在と言われており、選帝神イルダーナは、それを阻止したい考えです。
　また、実際にパラミタとモクシャが入れ替わることになれば、パラミタは砕けてナラカの海に沈むか、別の次元に飛ばされて、「存在しない世界」となってしまうでしょう。

　一方、大陸を創造する力を持つ、オリハルコンを格納する白鯨も、ルーナサズの上空に到達しようとしていました。

　
　扉絵は、７５さんに描いていただきました！

★このシナリオは、全４回を予定しています。今回が最終回です。

★今回は、基本的にＬＣ追加の必要はありません。ＭＣのみでご参加いただけます。
　ただし、前世キャラがＬＣの場合は、ＬＣ追加の上でご参加ください。
☆また、経験値目的、またはＬＣ本人のアクションとして、追加をしても構いません。

★今回は、前世アクションはありません。
　現世展開のみとなります。現世でのアクションのみおかけください。

★『覚醒』する選択をした場合、キャラが前世キャラと現世キャラに分かれます。
☆前世キャラと現世キャラの両方でアクションをかける場合は、ＬＣを追加し、
　ＬＣのアクション欄で前世キャラのアクションをかけてくださいますようお願いします。

★『覚醒』をすると、前世キャラが現世に、現世キャラが「狭間の世界」に存在することになります。

★前世のキャラは基本的に、現世についても転生した自分についても知りません。
　周囲の現世ＰＣ達とも面識はありません。

★「狭間の世界」では、キャラは精神体のようなものですので、武器は持ち込めません。スキルのみ使用できます
（つまりトオルは完全に役立たずです）
（ジュデッカは意識と幻像のみの存在です。口だけが達者です）

★現世に覚醒した前世キャラの能力は、現世のＰＣのステータスに準じます。

☆前世キャラの武装で現世に具現化した（という設定の）、アーリエさんの剣と、フェスティードさんの波動は、
　もしも覚醒した場合は、どちらのキャラでも持てる（どちらか片方です）こととさせていただきます。

★トオルとジュデッカの会話はＰＬ情報となりますので、ＰＣの皆さんは「狭間の世界」を知りませんが、
　覚醒を選択される方は、恐らく他に色々理由を持っているかと思いますので、うまく偶然を装ってください。

★イデアは、ルーナサズの“龍王の卵”を割り、同時にウラノスドラゴンを召喚する為に動きます。

　イスラフィールは現在、ルーナサズ近郊で混乱中。イデアの指示により、デナワが迎えに向かっています。
　その後、オリハルコンによる大陸の具現化の為に、白鯨に移動するつもりです。

　イルダーナとリンネはルーナサズにて敵の迎撃準備。イルヴリーヒはその補佐です。
　トゥレンは白鯨で、ルーナサズに向かっています。
　トオル、ジュデッカは死亡して狭間の世界にいます。シキも意識がありません。

　ＮＰＣの立ち位置は大体こんなところですが、基本的に、味方側ＮＰＣが、ＰＣの前に立って行動することはありません。
　行動内容は皆さんのアクションによります。






　このシナリオは、進行と共にＰＣの『前世の人間関係』も構築されていく為、未来だけではなく過去すらもどうなるか分からないものとなっています。

　このシナリオでは思わぬ展開を楽しむことも目的の一つとなっています。
　次々と明らかになる“自分すら知らなかった”前世ＰＣの過去や、それらによって産み出されていく過去のストーリーなども楽しんでいただければ幸いです。

　また、このシナリオは、その性質上、様々なＰＣと前世の絆が結ばれることになります。
　中には今まで関わったことのないＰＣ、交流したことのないＰＣも居るかもしれません。
　そういった、ある意味で「他人だったＰＣ」との思いがけない展開や思い出の共有も楽しんでいただければと思います。



※スタート地点はイルミンスールでしたが、学校制限はなくどなたでも参加可能です。
　九道のＮＰＣが登場しておりますが、特に過去のシナリオを確認しなくともご参加いただけます。

　一応のざっくり説明

□トオル（左上）／イルミンスール学生。単純。馬鹿。いい奴。死亡。
□シキ／トオルのパートナー。パートナーロストにより意識不明。
□イルダーナ（右上）／ミュケナイの選帝神。目つきと口が悪い。
□イルヴリーヒ／イルダーナの弟。よく出来た人物。
□トゥレン（左下）／元第七龍騎士。現傭兵のフリをしたフーテン。
□フェイ／白鯨の背中にある街に住んでいた一族の末裔。普通の少女です。救出されました。
□“長”／フリッカ、という名の、５０００歳を越える魔女。白鯨の背に住む唯一の人間。
　外見年齢は１１歳くらいです。救出されました。

□ルーナサズ／ミュケナイ地方首都。
　直径１ｋｍほどの巨大な卵型の岩があり、そこから産出される「龍鉱石」は高値で取引されています。
　シーギリヤロックの巨大版、をイメージしていただければ近いかもです。
　崖の中程に巨大な卵が嵌っており、崖の上に宮殿があります。町は崖の下にあります。
　現在は、卵から上の断崖は破砕され、剥き出しの卵岩が断崖の上に乗っている状態です。

□白鯨／全長５０キロメートルほどの、鯨の形をした、生き物と思われる何か。
　背中に街があり、体内にオリハルコンを保管しています。
　居場所を一定させず、パラミタ大陸の周りの何処かを回遊しています。
　オリハルコンは、強力な力を有している為、近づくことすらできないことが確認されています。
　更に、ガーディアンゴーレムに護られています。




　前世を思い出すこと、前世の関係や立場などで、他シナリオで有利になるようなことや他シナリオへの影響などはありません。

　それでは、よろしくお付き合いお願いいたします。

・『覚醒』する

・イデアを倒す

・前世で関わった相手と会う