なし

　――蒼空学園校長室。

「はい！　ええ、それはもちろんですよ！　生徒は大喜びします！　オレも食べたいくらいですから！　はい、いえいえ、その点はご安心下さい。蒼空学園側で用意しますから。はい、はい、今回は本当にありがとうございます！　いえ、とんでもないです。それでは明後日からですね、了解しました！　では失礼します」

　校長兼理事長の山葉　涼司（やまは・りょうじ）は先程から電話で興奮気味に話をしていた。

「ふぅ……………うっしゃぁぁぁぁぁ！！」

　受話器を置いた後、喜びを噛み締めるかのように一呼吸置き、興奮が絶頂に達したのか、すっくと立ち上がるとガッツポーズを取った。

「涼司様お疲れ様です。嬉しそうですけど、どなたとお話しされていたのでしょうか？」
「お、花音、サンキュー」

　校長室のドアをノックして、パートナーの花音・アームルート（かのん・あーむるーと）がお盆に湯気の立つ湯飲みを載せて運んできた。
　涼司は立ったまま湯飲みを受け取り、温かいお茶で喉を潤した。

「伝説の焼きそばパンだよ。明後日からうちの購買に伝説の焼きそばパンが並ぶことになったんだ！」
「伝説の焼きそばパン？」
「おや、花音は知らないのか？」
「ええ、初めて聞きました」

　ハイテンションの涼司に花音は首を傾げた。
　伝説の焼きそばパンとは、空京の片隅で駄菓子屋を営む村木お婆ちゃんが作っている焼きそばパンのことです。そもそも、この村木お婆ちゃんの駄菓子屋自体、閑静な住宅街の一角に看板も出さずに道楽でやっているので、知る人ぞ知る隠れ家的お店で、駄菓子の他にリーズナブルなもんじゃ焼きなども商っている。
　焼きそばパンは、一日５０個限定となっており、噂を聞き付けた者達が買いに来るため、いつも開店早々に売り切れてしまうのです。

「オレも一度しか食べたことがないんだけどさ、手作りの昔ながらのコッペパンとソースベースの濃い焼きそば、そして紅生姜がまさに黄金比率で組み合わされたような、これぞ焼きそばパンと言うべきで飽きの来ない、昔ながらの焼きそばパンなんだ」
「そんな焼きそばパンがあったなんて知りませんでした」
「不撓不屈３ヶ月……村木婆ちゃんと交渉してきて、やっと明後日からうちの購買でも置けるようになったんだ」

　伝説の焼きそばパンを語る涼司の瞳は、純真な子供のようにキラキラと輝いていた。

　――伝説の焼きそばパンが蒼空学園の購買に置かれることは、蒼空学園は元より各校の掲示板にお知らせが貼り出された。

「ふぇぇぇぇ！？　あの伝説の焼きそばパン、うちの購買で売るんだぁ。いいなぁ、あたしももう一度食べたいなぁ」
「マリエルはこの伝説の焼きそばパンを知っているの？」
「うん。マナに教えてもらって食べに行こうとしたんだけどね、３回目でようやく食べられたんだぁ」
「なんですか、その三顧の礼的な展開は……」

　蒼空学園の掲示板前は、ちょっとした人集りになっていた。
　その中にマリエル・デカトリース（まりえる・でかとりーす）とレティーシア・クロカス（れてぃーしあ・くろかす）の姿があった。パートナーの趣味の違いでしょうか、マリエルの方がこの手の流行に敏感なようです。

「でもぉ、伝説の焼きそばパンを購買で売るとなるとぉ、生徒が一杯押し掛けてきてぇ、大変なことになるんじゃないかなぁ？」
「そ、そんなに人気のある品なのですの！？」

　マリエルの説明に、レティーシアは「伝説の焼きそばパン、恐ろしい子……」と思わざるを得なかった。


　――マリエルの予想通りというべきか、２日後の昼休み開始と同時に、伝説の焼きそばパンを求めて、購買に生徒が殺到しようとしていた！

　初めまして、このシナリオからゲームマスターを始めます、県田　静と申します。
　よろしくお願いいたします。

　購買といえば昼休みのパンの攻防戦が欠かせない場所だと思うのですが、今回は「伝説の焼きそばパン」を巡る攻防戦をシナリオとして扱ってみました。
　蒼空学園の購買を舞台としていますで、蒼空学園の生徒が参加しやすいですが、涼司は他校にもお知らせを流しているので、他校の生徒も「掲示板の告知を読んで来た」「蒼空学園の友達に会いに来た」といった理由で気軽に参加できます。

　伝説の焼きそばパンですが、昼休み開始と同時に販売されますので、フライングゲットは出来ない、とします。
　もちろん、徹夜も禁止です（やらないと思いますが念のため）。
　考えられる購入方法は

１．昼休みの前の授業をサボって購買の近くで待機
２．昼休みと同時に購買へダッシュ
３．誰かに頼んで買ってきてもらう
４．強引に奪い取る
５．買った人から譲り受ける
６．蒼空学園に来たのが丁度昼休みだった

　などがあると思います。
　ただし、１と４は風紀委員に見つかると教室に帰らされたり、伝説の焼きそばパンを没収されたりしますので注意が必要です。
　２は伝説の焼きそばパン争奪戦のただ中に斬り込む形になります。「武器やアイテム（従者を含む）の使用は基本的に禁止」とさせていただきます。また、スキルは「スキル１にセットされている、攻撃系以外のスキルであれば使用できる」とします。
　３はアイテムの従者には買いに行ってもらえませんので、ＬＣや他のキャラクターに買いに行ってもらいます。ただし、お一人様２個までですので、ご注意下さい。
　５はいくらか上乗せするなり泣き落としするなりして、買えた人から譲ってもらう形です。購入した人にタイミング良く会うことができれば、交渉できるかもしれません。
　６は他校生用と言えます。

　なお、シナリオ掲示板の「あいさつ」スレッドに挨拶し、ダイスの合計値が「奇数」、もしくは「ゾロ目」だった場合、涼司から上記した１や４、怪我人が出ないかなどの風紀委員の手伝いをして欲しい、と打診があったことにします。
　この場合、風紀委員側として取り締まる方に回ってください。もちろん断ることも出来ます。
　ただ、取り締まる側も武器やアイテム、攻撃系スキルは使用できませんのでご注意下さい。

　それでは伝説の焼きそばパン争奪戦をお楽しみ下さい！

・伝説の焼きそばパンゲットだぜ！

・お前ちょっと寄越せや、ヒャッハー！

・風紀委員の手伝いをして取り締まる