なし

――この先、罠満載。

　そんな立て札が、そこに立っていました。

　ジャタの森の……別に奥深くはないのですが、崖だとか川だとかの地形に阻まれてあまり人の通わない場所で、ひとつの洞窟が発見されました。
　洞窟自体は自然に出来たもののようですが、入り口には、先の立て札が立っています。どうやら、天然の洞窟に誰かが手を加えたもののようです。
　しかし立て札は既に朽ち果てていて、相当古いものであることが伺えます。入り口の扉も固く閉ざされて錆び付き、長年人が入った様子はありません。

　その扉には、古めかしい字でこう書かれていました。

「立ち入るべからず。中に入りし者には大いなる災厄を」

　しかし、その扉もすでに朽ち、つん、と突けば崩れそう……と言ったら言いすぎですが、それでも鍵など無くても力業で破れそうです。
　魔術で封印がされていた形跡もなく、それほど厳重に閉ざされていた遺跡という訳でもなさそうです。

○●○

「遺跡の調査、ですかぁ……」
　イルミンスール魔法学校の校長室では、エリザベート・ワルプルギス（えりざべーと・わるぷるぎす）が回ってきた依頼書に目を通していました。
「遺跡深部より宝物を持ち帰った者には金一封（先着一組）……内部のものと思われる地図有り、ですかぁ。難しいものじゃなさそうですぅ。」
　生徒の訓練にもってこいですぅ、とにっこり、いや、ニヤリと笑って、エリザベートはその依頼書を、校内に掲示するよう指示を出しました。

　同じように、各地にはこの洞窟の調査依頼が出されています。
　依頼主の欄には、「マルティン・リヒター」の名前が記されていました。

●○●

　一方そのころ。
　縄でぐるぐる巻きにされたニクラス・リヒターが、リヒター家の玄関ホールに転がっていました。
「あなたという人は……！　二度とこの家の敷居は跨がせぬとお父様が仰っていましたわ」
　ニクラスの母親が、目を三角につり上げてニクラスを見下ろしています。
　マルティンの息子であるニクラスは、しかし数年前に色々あって、家の金をくすねて家出していたのでした。しかも、その金で空賊団を立ち上げて親玉気取り。
　……まあ、色々あって空賊団は壊滅、ニクラスもそれなりに改心を見せているのですが……
「ま、まあまあ、ミセス・リヒター？　ご子息もこうして反省されていることですし……」
　ニクラスをこの家まで連行してきた、シェスティン・ユーハンソンが助け船を出します。
　ニクラスの空賊団が潰れたのは、抑もシェスティンの気を引くためにニクラスがちょっかいを掛けてきたからです。
　完全にニクラスの自業自得なのですが、なりゆきでニクラスの身柄を預かることになってしまったシェスティンとしては、迷惑この上ない状況。一刻も早くリヒター家にニクラスを引き取って貰いたいのです。
「お黙りなさいな。取引させて頂いては居りますけれど、商人風情が当家の事に口出しをなさらないで」
　リヒター婦人の一言にちょっとカチンと来たシェスティンですが、貴族と商人という立場上何も言えません。

「ニクラスが帰ってきただと？」

　そこへ、話を聞きつけたニクラスの父……マルティン・リヒターが現れました。
「あなた……」
「親じ……いやっ、ち、父上……」
　リヒター婦人とリヒターがそちらを注目すると、マルティン氏はくいくい、と自慢の髭を撫でながらリヒターを見下ろします。
「啖呵を切って出て行ったのではなかったかな」
「うっ……は、反省してます……」
　殊勝に小さくなり頭を下げるリヒターに、マルティン氏はふぅ、と溜息をついてから、こう告げました。

「そうだな。この洞窟に隠されたリヒター家の宝。それを持って帰って来たならば勘当は解除してやろう」

　しかしその洞窟、既に調査依頼がマルティン氏の名前で出されています。
　果たしてニクラスは、お宝のところまでたどり着けるのでしょうか？

○●○

　その翌日、ヴァイシャリーの街に、もう一枚の依頼書が張り出される事になります。

――ボディーガード募集。

　こんにちは、四本目のシナリオとなりました常葉です。
　今回のシナリオは、前々回シナリオ「白薔薇争奪戦」の続編に当たりますが、前作に参加していない・リアクションを読まれていない方でも問題なくご参加頂けます。
　また、ジャンルは冒険ですが、コメディ色の強いシナリオですので、ネタアクションも大歓迎です。判定は数値よりもアクション内容優先で行います。

　このシナリオは、罠満載の洞窟を探検し、誰よりも早く最深部に安置されているお宝を回収することが目的です。
　ガイドではイルミンスールを登場させましたが、各学校に宛てて依頼は広く打たれていますので、学校による抽選の有利・不利はありません。依頼書を見たとしてご参加下さい。

　また、ニクラスはニクラスで、自分に課せられた課題を解決するために依頼を出しています。こちらは、ニクラスを無事に宝の所まで連れていくことが目的となります。
　因みにニクラスは元空賊の親玉でしたが、契約者では無いため戦闘能力はほぼ皆無です。一応非契約者相手の喧嘩ならそうは負けないでしょうが、契約者相手では手も足も出ません。
　余談ですが、ニクラスの依頼のスポンサーはシェスティンです。ニクラスの依頼に応じ成功すれば、リヒター家からの報酬ほどではありませんが多少の報酬が出るでしょう。

　内部の地図はマルティンによって公開されています。
　構造としては、二人が余裕で並んで歩ける程度の広さの「通路」が何カ所かで枝分かれしていて、通路の途中途中には天然のホール状の「小部屋」がある感じです。所々に、後から取り付けた扉などの人工物が点在します。
　地図があるため、別れ道ではどちらへ行けば良いのか迷うことは、通常ではないです。
　設置されている罠は以下の通りですが、以下の罠については地図に記入があるため、全員が知るところとなっています。

　●落とし穴…あちらこちらにあります。普通の落とし穴ですが深さ３ｍほど。落ちてしまった場合、飛行系スキル・アイテムが無いと脱出できません。およその位置は地図に記入されています。
　●槍の出る壁…足元にスイッチがあり、踏んでしまうと左右の壁から槍が飛び出します。当たっても死にませんが、治療系スキルが無い場合はそこから先に進むことは出来なくなるでしょう。
　●吊り天井…小部屋に設置されています。入り口の扉を開けると天井が降りてきます。急いで通り抜ければ間に合いますが、何らかの事情で逃げ遅れた場合、天井と床に挟まれて身動きが取れなくなるでしょう。潰されて死んだりはしません。
　●火を吹く置物…通路の左右に置かれた置物の前を通ると、置物が火を吹きます。

　また、リヒター家からの報酬を得られるのは先着一組ですので、他のチームの足を引っ張る為に罠を設置することも可能です。
　「トラッパー」のスキルがあれば、巧妙な、気付かれにくい罠を仕掛けられるでしょう。
　無い場合も、ホームセンターなどで誰でも手に入るものを使った、簡単な、目に見える罠（ロープを足元に張っておく、バナナの皮を置く、程度のもの）なら仕掛けることが可能です。ガンガン仕掛けて、後続の足を引っ張ってやりましょう。

　勿論直接妨害することも可能ですが、本シナリオでは罠の仕掛け合いを推奨します。
　また、大規模な魔法などを使うと内部、或いは洞窟自体が崩れる危険があるため推奨しません。

　「白薔薇争奪戦」に参加されている方は、ニクラス（と、シェスティン）と顔見知りという設定となります。（ただしシェスティンがリアクションに登場する予定は導入部以外ほぼありません。）
　ＮＰＣの補足についてはマスターページをご覧下さい。
　なお、リアクションにはニクラス以外のＮＰＣは殆ど登場しない予定です。特に、他マスター管轄のＮＰＣを連れてくることは出来ませんのでご了承下さい。

・お宝を手に入れて報酬ゲット！

・ニクラスを護ってやる

・突撃あるのみ！