なし

「顔赤いぞ？　熱でもあるんじゃないか？」
　山葉　涼司（やまは・りょうじ）がホテルの浴衣姿の御神楽　環菜（みかぐら・かんな）の額に手を当てました。
「ないわよ。風呂上りだからちょっと火照ってるだけ」
　環菜は涼司の手を払いのけて、パートナーのルミーナ・レバレッジ（るみーな・ればれっじ）と一緒にホテルの特別室に向かいました。
　涼司は２人の後姿を見送った後、悪友が待つ柱の陰へ走っていきました。
「すげぇ、ホントに自然にタッチしやがった……」
「あの校長のオデコに！」
「ま、幼馴染だからな、一応」
　涼司は得意気に胸を張りました。
　最近、蒼空学園の生徒達の中で流行している罰ゲームがあります。
　その中の１つがこの、蒼空学園の冷徹魔人校長御神楽環菜のオデコにタッチする。というものだったのです！
「でもな、涼司。お前の罰はそんなモンじゃねぇだろ？　それは一回戦敗退者用の罰だ」
「そうそう、昨晩の卓球大会をボイコットしたお前に科せられた罰ゲームは――」
　涼司は唾をごくりと飲みました。昨晩の卓球大会は、パートナーの花音・アームルート（かのん・あーむるーと）にせがまれて一緒にお土産を買いに出ていたため、参加できなかったのです。
「カンナ様のオデコにマジックで『肉』と書くことだっ！」

「……明日の予定は全部キャンセルして、生徒は全員寺で坐禅ね」
　部屋で足を伸ばしながら、環菜はそう言いました。
　部屋に向かう途中、環菜はすれ違った生徒の１人にオデコを触られそうになりました。
　振り払った彼女ですが、その後も同じようにオデコに触れようとする生徒の多いこと、多いこと。
　不審に思い、環菜は小間使い的存在の生徒を使い、犯人達を捕らえて白状させたのです。
　そして、流行の罰ゲーム「カンナ様オデコタッチ☆」の存在を環菜自身も知ったのです。知ってしまったのでした……。
　勿論、先ほど自分のデコに触れた人物のこともしっかり覚えています。
　自分のことを案じてではなく、遊びとしてデコに触ってきたという事実は、おでこの広さに匹敵するプライドの持ち主である環菜としては、許せることではありません。
　すぐさま、その涼司いう名の下僕は館内放送で環菜の部屋へ呼び出されました。
　
「いや、罰ゲームなんかじゃないって。ホントに赤かったから、心配したんだ。坐禅は勘弁してくれ、皆明日の観光も楽しみにしてんだからさ」
　涼司はマジックを袖に隠しながら、環菜を一生懸命宥めようとしました。
「そう……それなら、１つ条件があるわ」
「何？」
「色々な京料理が食べたいの。生徒達に京料理を学んでもらい、夕食は京料理バイキングにしましょう」
「え？」
　涼司が聞き返すと、環菜は冷たい目を向けました。
「聞こえなかったの？　生徒達に京料理を作ってもらうわ。バイキングが成功した場合、明日の観光を許可してもいい」
「ま、気持ちはわからなくないけどな。お前料理ドヘタだから、自分じゃ無理だもんなー」
「……涼司、アンタは坐禅決定。生徒達も不味い料理を作った場合は１日中全員坐禅。……警策は是非デコに打ってもらわないとね、ふふ」
　環菜は黒い笑みを浮かべました。

「あたしは京菓子作ろうと思うのっ！　マナはどうするの？」
　バイキングの話を聞き、マリエル・デカトリース（まりえる・でかとりーす）は目を輝かせました。京都の美味しいお菓子の作り方を学ぶチャンスです。
「私は料理をお弁当箱につめて、あの噴水の前のベンチで運命の人に食べさせてあげたいな……」
　小谷　愛美（こたに・まなみ）は、美しい中庭をうっとりと見つめています。
　バイキング会場となる宴会場は、中庭に続いています。
　中庭にシートを敷いたり、ベンチを利用し、緑の中で食事を楽しむこともできます。
　このホテルへ遊びに来ている他校の生徒でも京料理バイキングに作る側・食べる側両方で参加できます。泊まっている蒼空学園の生徒なら、お部屋でオーダーすることも可能です。

　ホテルに泊まっている蒼空学園の生徒だけではなく、彼らの元へ遊びに来ている他校の生徒も作る側・食べる側両方で参加できます。

　ホテルには京料理専任の料理長がいますので、教えてもらいながら料理を行なうことになります。料理のご提案は１参加につき（ＭＣ＋ＬＣ）１品でお願いします。
　料理作りは強制ではありません。食事を楽しんでいただいても構いません。
　こっそり変な料理を並べることもできそうですが、環菜の口に入ってしまった場合、明日は（参加した他校の生徒を含めて）全員一日中お寺で坐禅になってしまうかもしれません。
　……それはそれで楽しいかもしれませんね？

・美味しい京料理を作る

・給仕を担当する

・友人達と部屋で食事を楽しむ

・恋人と中庭で食事を楽しむ

・『肉』と書く！！