なし

　桜が咲き出して、神社の境内は薄桃色の花化粧。
　花冷えの風は冷たくても、陽射しは浮き立つような春の明るさ。

　空京神社に挨拶がてらに顔を出した後、白鞘　琴子（しらさや・ことこ）は福神社へも足をのばすことにしました。
　貧乏神から福の神になった後も、かびの生えた鏡餅に追いかけ回されたり……という布紅が元気にやっているのかどうか、見て行こうと思ったのです。
　福神社の付近には、もう以前のような瘴気は跡形もありません。清浄な空気に満たされた……けれど、社の中からは何やら啜りあげる声が聞こえてきます。
「布紅さま……？」
　琴子が呼びかけると、布紅は顔をあげ、ごしごしと涙をこすりました。
「すみません……縁起物を作るのに涙は禁物なのに……」
　縁起物、と布紅が指した処には、紙や布が寄せ集められていました。
「これは……？」
「花換まつりの小枝を作ってるんです……けれど」
　どう見ても花の小枝には見えないボロボロの枝を、布紅は情け無さそうにくるりと回しました。
　
　
　――花換まつり――
　
　その昔、若い男女が互いに「花換えましょう」と声を掛け合って、想いを伝えたのがこの祭りの始まりです。
　今は、お参りをして授かった桜の小枝に願いをこめて、それを福娘と交換。その後は誰かと交換すればするほど、福が宿るとされています。
　満開の桜の下で花を愛でつつ交換をした小枝が、こめた願いのお守りに。
　そんな春らしい神事……それが花換まつりなのです。
　
　
　福の神だから、とその神事が福神社に回ってきて張り切っていた布紅なのですが、何の手違いか、社に届けられたのは桜の小枝ではなく、その材料でした。枝を折ってしまっては桜が傷む為、造花の桜に小さなお守り袋と絵馬、短冊をつけた小枝を使うのですが……届いたものは紙と布と針金等々……。
　祭りに間に合うようにと、布紅は小枝を作ろうとしたのですけれど……元々不器用な布紅には巧くできません。祭りとなれば本数も必要だというのに、まったく小枝作りは進んでいないのです。
「神社の方に手伝っていただきましょうか」
「でもみなさん忙しそうで……」
　頼める雰囲気ではなかった、と布紅はうつむきました。けれど、祭りの期日は迫っています。自分で作っていては間に合うはずもありません。
「こ、こ、このままじゃ……ふぇ、っ……」
「泣かないでくださいまし。わたくしも手伝いますわ。学園でも誰か手伝ってくれる人がいないか、尋ねてみましょう」
　琴子は布紅を励ますと、蒼空学園に戻り、張り紙を張り出しました。
　
　
　　――福神社のお手伝いをして下さる方募集――

　空京神社の福神社で催される花換まつりの、桜の小枝作りを手伝ってくれる人を募集していますの。紙と針金で桜の小枝を作って、それに小さなお守り袋と絵馬をぶらさげる、というお仕事ですので、細かい作業が得意な方がいましたら是非お手伝い下さいませ。

　それとは別に、当日、訪れる参拝客の整理やもてなしをして下さる巫女をして下さる方、福娘として桜の小枝を参拝客と交換して下さる方、も募集いたします。こちらは、女性に見える方限定、とさせていただきます。
　巫女をされる方は巫女装束。福娘をされる方はその上に千早を着て金の烏帽子を被っていただきますので、こちらもあわせてご了承くださいましね。

　お手伝いには参加できないという方も、当日は是非花換まつりにお越し下さいませ。
　賑やかなお祭りになるように、皆様のお力をお貸し下さると嬉しいですわ。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――蒼空学園　　白鞘　琴子（しらさや・ことこ）

　こんにちは〜、桜月うさぎ（さくらづき・−）です〜。

　「花換えましょう〜」のかけ声も耳に心地良い、花換まつり。
　お祭りの準備や当日の福娘を手伝って下さる方を募集〜、と共に、花換まつりに参加して下さる方もぜひどうぞ。

　琴子が蒼空の先生の為、張り紙は蒼空学園にしましたけれど、蒼空学園に行った時に張り紙を見た、あるいは蒼空学園の誰かから話を聞いた、布紅から直接話を聞いた、等々、他の学園の方も変わりなくご参加いただけます。
　初心者さんも玄人さんも、どんどんご参加下さいませ〜。

　布紅についてお知りになりたい方は、私のシナリオ『どこに参ろか初詣』、九道雷マスターの『冬休みの過ごし方』、日曜　快晴マスターの『鏡開き狂想曲』（公開順）をご覧下さいませ。
　琴子は、ミルムの番外編と『曲水とひいなの宴』に出ています。

　では。
　皆様のご参加を空京神社にてお待ちしております。

・布紅を手伝って桜の小枝作り

・当日、福娘となって皆に桜の小枝を渡す

・みんなと桜の小枝を交換する

・ただ１人の人と桜の小枝を交換する

・その他のことをする