なし

「協力の要請ってやつだ。ああ、もちろん俺たちは空京の警備隊じゃない。俺たちが動くのは、あくまでこの件が――十二星華に関係した事件の可能性があるから、だ」

　緊急の呼びかけに集まった生徒達を前に、皇彼方（はなぶさ・かなた）は真剣な顔で告げました。

「頼みたいことはひとつ。カンバス・ウォーカーの確保……いや、もうそんな段階じゃないのか……とにかく、今現在空京にいる三人の『カンバス・ウォーカー』たちを止めてくれ」
　彼方は言葉の裏に実力行使の響きを潜ませます。

「彼方……」
　彼方も辛そうなのを察したのか、側に立つテティス・レジャ（ててぃす・れじゃ）のその声も、遠慮がちにか細く消えました。

「パラミタの状況は……今のところお世辞にも安定してるとは言い難い。誰が絡んでるのかは知らないけど、横から女王の座を狙う奴らにとって、混乱がチャンスなのは間違いない。実際、ティセラは以前、空京でカンバス・ウォーカーを見てるし、どういう存在かも知ってる。踏み込んで考えれば『カンバス・ウォーカー』という『現象』が利用されたってことだ。もちろん俺たちも動くけど――手を貸してもらえないか」
　そこまで言って、彼方はさらに険しい視線を空京の街に向けました。
「にしても……美術品相手の怪盗じゃなかったのかよ。テロリストに鞍替えだなんて、冗談じゃすまないぞ」

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空京駅。

「あははははー！　ねえ、何するの！？　何して遊んでくれるの？」

　ホームのベンチに腰掛けているのは十歳になるかならないかといった年格好の少女。
　明らかにダブダブなサイズのマントですっぽりとその身を覆い、八重歯が印象的な笑顔を浮かべています。

「すっごい早い乗り物が行ったり来たりしてるし、人もいっぱいいるからここ、面白かったんだけど……そろそろ飽きてきちゃった。ねえ、何して遊ぶ？　わたし、つまんないのは嫌い。つまんないものは、壊しちゃうんだ。知ってる？　知ってる？　芸術って、爆発するんだよ？」
　無邪気に笑ったカンバス・ウォーカーは、そう言って傍らに積んだ爆薬の箱を叩きました。
　
空京市街のストリート。
　
「あら。女ひとりに寄ってたかってだなんて……ちょっとがっつきすぎなんじゃないかしら」
　ほとんど全壊したオープンカフェの、唯一残ったイスに悠然と腰掛けて、妖艶な美女が微笑みを浮かべました。
　黒という色こそ空京駅のカンバス・ウォーカーと共通してはいますが、ピタッと身体に密着させたその衣装は露出するスペースも多く、均整の取れた肢体のラインをことさらに強調しています。
「面倒なのは嫌いだわ。わたしはこの一帯をメチャクチャにする。言ってみれば、失敗した絵画を白紙に戻すってことよね。シンプルにいきましょう。それが嫌なら、止めてみなさいよ」

空京大学の制御室前。

「どうして『信じられない』なんて顔をしているの？　美術品に込められた想いが引き起こす現象が『カンバス・ウォーカー』。強くさえあれば、それがどんな想いだろう関係ないんでしょう？　例えば――世界を否定するような想いだって」
　十代中頃と言うところでしょうか。
　ブラウスからスカートから履いている靴まで、キッチリと黒一色を着こなした少女は教授のひとりを捕まえ、その首筋にナイフを突きつけました。
「『想い』が前向きな物だなんて……誰が決めたのかしら？　勝手な話。わたしは騒々しいのは嫌い。制御室を開けて。この大学を黙らせれば、少しは騒々しくなくなるんでしょ」

　さて、慌ただしい日々の続くパラミタ大陸で、一騒動です。
　美術品に込められた「想い」の形、カンバス・ウォーカー、一転今度はテロ活動です。おまけに人数まで増えている始末。
　今回参加していただく皆さんには、三人のカンバス・ウォーカーによるこの騒ぎに関わってもらえればと思います。
　得意分野を活かしての事件解決も、コミュニケーションをとってみたいカンバス・ウォーカーの元へ向かうのも、バラエティに富んだアクションをお待ちしています！
　そう言えば、「カンバス・ウォーカー」は「美術品に込められた『想い』が引き起こす『現象』」。ということは、彼女達が現れるきっかけとなった美術品がどこかにあるはずなのですが……。

・ストリートのカンバス・ウォーカーを止める

・空京駅でコミュニケーションに挑戦する

・美術品を探しに行く