なし

　境内の木々の緑に、初夏の太陽が反射して。
　この時季の空京神社は、きらきらと生命の輝きに溢れています。

　けれど。
「布紅さま？　どうかされたんですの？」
　空京神社に挨拶がてらに顔を出した後、いつものように福神社の様子を見ようと足をのばした白鞘　琴子（しらさや・ことこ）は、社の中にうずくまっている布紅に声を掛けました。
「あ、こんにちは……」
　琴子の声に顔を上げた布紅は、コンコンと咳をしました。
「お加減でも悪いんですの？」
　神様でも風邪を引くのだろうかと思いながら琴子が尋ねると、布紅はだるそうに肯きました。
「何だかとても寒いです……社の中に、濁った冷気がどんどん入ってきて……ふにゃ……」
「布紅さま！」
　ぺちゃっと床に崩れた布紅の頭を膝に載せて、琴子は手を当ててみました。熱があるのかと思ったのですけれど、額は反対に冷え切っています。
　布紅はしきりと寒がり、社が冷気に満たされていると言うのですが、琴子にはその寒さは感じられませんでした。
　コンコンと咳き込む布紅に、琴子はそこら辺にある布をかけました。けれど布紅は寒がり続けています。
「布紅さま、一体何が起きているんですの？」
「分からないです……。ただ、福を願う想いが……歪んで……たくさんこの社に……けほけほ……寒い……」
「布紅さま、しっかりして下さいまし」
　詮無く布紅を励ましながら琴子は考えます。布紅を貧乏神から福の神へと戻したのは学生たちの力。ならばその力を借りればまた方策も浮かぶのかも知れない、と。
　
　
　　　――　急募　――　

　空京神社の福の神、布紅さまの看病をして下さる方を急ぎ募っております。

　ただ……どうして差し上げれば良いものか、わたくしにも分かっておりません。
　
　もし、お手を貸して下さる、または相談に乗って下さる方がいらっしゃいましたら、直接、空京神社の摂末社、福神社へとお越し下さいませ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――蒼空学園　　白鞘　琴子（しらさや・ことこ）

　
　
　
　―――福神社でそんなことが起きていた頃。

　蒼空学園近くの路上では、こんなことが起きていました。
「あの、困ります……」
「何言ってんだよ。こりゃ霊験あらたかな福の神様のお守りだぜ。特別に譲ってやろうって言ってんだ。感謝してもらっても良いくらいだ」
　剣呑な目つきで睨まれて、仕方なく少女はお守り袋を購入しました。粗雑な作りなのに、法外な値段のお守り袋の表には、『福神社』と書かれていました。
「へへ、毎度あり」
　もらった代金を突っ込むと、男はさっさと歩き去って行きました。
　残された少女は、無理矢理のように買わされたお守り袋に目をやります。願いが叶うようには思えないけれど、高い金額で買ったお守り袋です。
　どうせあてにはならないだろうけれど、少しは御利益がないとやってられない、とばかりに少女は福神社のお守りを鞄につけて、
（どうか福が来ますように）
　と祈るのでした。
　
　
　福を福神社に祈る想いは届きます。
　けれどお守り袋の作り手の邪な気持ちが、それを歪めてしまいます。
　そしてまた新たな祈りが、濁った冷気となって社にわだかまってゆくのでした……。

　こんにちは〜、桜月うさぎ（さくらづき・−）です〜。

　またまた受難の福の神布紅。
　ニセモノのお守りが巻き起こした布紅の不調。
　布紅を看病したり、悪徳販売人をつかまえたり、あるいは偽物のお守りをつかませられてみたり……等々、お好きに動いてみて下さいませ。

　琴子が蒼空の先生の為、貼り紙は蒼空学園にありますけれど、蒼空学園に行った時に貼り紙を見た、あるいは蒼空学園の誰かから話を聞いた、たまたま福神社にお参りに来て知った、等々、他の学園の方も変わりなくご参加いただけます。
　初心者さんも玄人さんも、どんどんご参加下さいませ〜。

　布紅についてお知りになりたい方は、『どこに参ろか初詣』、九道雷マスターの『冬休みの過ごし方』、日曜　快晴マスターの『鏡開き狂想曲』、『空京神社の花換まつり』（公開順）をご覧下さいませ。ただ、福の神から貧乏神になってそれがまた福の神に戻った、ちょっと不幸属性入ってるかも知れない神様、とだけ分かっていれば、特に前のリアクションを読まなくても大丈夫かと思います〜。
　
　
　ではでは。
　皆様のご参加を空京神社にてお待ちしております。

・布紅の看病をする

・悪徳販売人を捕まえる

・偽物のお守り袋を回収する

・偽物のお守り袋を買わされた……

・その他のことをする