なし

「さあ、君達。遠慮しないでじゃんじゃん食べて飲んでくれたまえ」

　タシガン空峡のツァンダ側沿岸にある、港町カシウナ。
　復興中のこの町のレストランは、あなた達各学校の生徒で賑わっています。
　なんだか知りませんけど、町で出会った紳士がごちそうしてくれると言うので、皆さんほいほい着いてきてしまったようです。
　紳士は黒髪にチョビヒゲをたくわえた素敵なおじ様で、名前を【パパゲーノ・ロスヴァイセ】と言うそうです。

「地球から来た君達の活躍でこの町は救われた。この町を愛する一人として礼を言うよ。それから君達の中には、フリューネがお世話になった人もいるようだね。こちらにはパパとして礼を言わせてくれ、娘の力になってくれてありがとう」

　そう、何を隠そう彼はフリューネ・ロスヴァイセ（ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ）の実の父なのです。
　今までまーったく姿を見せなかったパパは、空峡沿岸都市では有名なフリューネグッズブランドの社長をしています。
　ですが、騎士の家系の伝統に反し、お金儲けに精を出し過ぎたのが、フリューネの祖母の逆鱗に触れてしまいました。
　何年か前に勘当され、それからというもの、陰ながら娘を見守ってきたそうです。

「酷い話だよ。家族を守るために必死で働いたというのに、伝統をないがしろにする馬鹿息子とか、あのババー……。君達だってわかるだろう、いつまでもね、騎士だの伝統だので食べていけないんだよ。だから、パパは頑張って働いて会社を大きくしたんだ」

　生徒はごちそうを口に運びながら適当に相づちを打っています。

「なのに、勘当なんてあんまりじゃないか。早くに母を亡くした娘に不自由をさせないよう、パパはいっぱいの愛をフリューネに注ぎ込んできたのに、あの子ときたらバーさん側に付いちゃって、パパの事冷たい目で見るんだ、酷くない、ねぇ？」

　熱弁を振るうパパに、生徒は顔を見合わせ困った顔をしています。

「まあ、なんつーか、どこの家庭も大変なんですね……」
「ボクたちは何も出来ませんけど、まあその……、陰ながら応援していますよ、パパゲーノさん」
「えーっと、そういうのは時間が解決してくれるんじゃないかな」

　完全に他人事なので当たり障りのない返事をしていると、パパはニッコリ微笑んで言いました。

「……そこで君達の出番と言うわけだね。パパとフリューネが仲直りするのを手伝ってくれたまえ」

　生徒たちは口を閉ざし、一斉にパパの顔を見ました。
　それから、奇麗に平らげられた皿を見回し、自分たちが完全にハメられた事を悟りました。

「パパのお金で飲み食いした料理は美味しかったかい？」

今回は空賊シリーズ（フリューネサイド）の外伝となります。
フリューネとパパ、ひいてはロスヴァイセ家とパパを和解させるのが、本シナリオの目的です。
ただまあ、パパの事などどうでもいいという人は好きに動いてくださって構いません。
これまでの空賊シリーズでやり残したことのある人は、この機会にしたい事をしてみたら如何でしょうか。

今回、フリューネはカシウナのロスヴァイセ邸跡で余暇を過ごしています。
屋敷は燃えてしまったので、古代戦艦ルミナスヴァルキリーを住居として暮らしているようです。
フリューネの先祖ユーフォリア、祖母のヒルデガルド、親戚のカークウッドとスケルツァーノも一緒にいます。
ちなみにセイニィもカシウナに来ているそうです。
本人は乗り気ではないようですが、クィーンヴァンガードのカシウナ復興支援に協力させられてるとの事。
念のため断っておきますが、カシウナが舞台のシナリオですので、カチコチになってるザクロに絡むのはご遠慮ください。
カシウナから逸脱しないアクションであれば、わりとゆるーく採用するつもりです。
※ロスヴァイセ邸の件やフリューネの家族に関しては『空賊よ、星と踊れ（１／３）』を参照してください。

また、パパのために頑張る心優しいプレイヤーさんのためにヒントをすこし。
いちばんの問題は、パパがフリューネから尊敬されていないという事です。
誇りある騎士の伝統を捨て、お金儲けに精を出している人と、彼女の目には映っているのかもしれません。
とは言え、フリューネももう少しパパの事を理解してあげられたら良いとは思うのですが……。
余談ですが、パパの愛はマリアナ海溝より深いので、基本フリューネの事を監視……、いえ、見守っています。
フリューネにちょっかいを出す人は、パパに殺されないように注意してください。
彼女に近付くウジ虫野郎を抹殺するのが、パパの人生の命題の一つなのです。


とまあ、前置きが長くなりましたが、平和なカシウナの町での楽しいひと時をお過ごしください。

・フリューネと過ごす

・フリューネとパパを仲直りさせる

・新しいフリューネグッズを開発する