なし

　夏休みを終え、秋の気配が近づく蒼空学園には例年とは違う光景がありました。


「くっくっく、そんな工作で俺のグレートアルミンはビクともせんよ？」

「バ、バカな、僕の埴輪丸が・・・」

　後ずさる生徒とその前の紙粘土製の埴輪に、アルミ缶で組み上げられた腰の高さ程の人型のロボが迫ります。

「グレートアルミン！　プルタブパンチだ！！」

　ロボがプルタブで出来た手をグーにして思いっきり埴輪に振りかぶります。


ドガァァーーンッ！！



　衝撃音と共に、埴輪が木っ端微塵になります。

「ああ、僕の埴輪丸がぁっ！？」



　
　……と、このように校内のあちこちで、生徒達が連れた生活用品や廃材でできた物体同士の激烈な戦いが繰り広げられています。




　そんな様子を蒼空学園の校長室から見ているのは、御神楽　環菜（みかぐら・かんな）です。

「最近の工作は人工知能を積むのが流行なのかしら？」
　
　と、首を傾げる環菜にソファーで優雅にお茶を飲むエリザベート・ワルプルギス（えりざべーと・わるぷるぎす）がほくそ笑みます。
「フッフッフ……甘いですねぇ、環菜ぁ。今や戦いの主役は人ではなくぅ、機械なのですぅ！　そしてそれを人が使いこなせてこその勝利なのですよぉ？」

「わかってるわよ……あなた、自分でミスした癖に随分偉そうね？」

「うぅっ……」

　環菜にジト目で見つめられ、エリザベートは少し言葉を詰まらせます。
　



　話は数日前、イルミンスール魔法学園の一室にてエリザベートが新しい魔法の研究をしていた際に飛びます。

「うーん、おかしいですねぇ。これで成功のハズですがぁ？」

　エリザベートが手に持った小さな紫の小瓶を見つめます。

　その時、ドアがノックされ、

「学園長、お客様がお見えです」

「……まぁ、失敗は成功の母と言いますしぃ……」

　ブツブツと呟きながらエリザベートが部屋を後にします。


　しかし、その小瓶こそが今回の騒動の原因でした。


　エリザベートが作ったその小瓶の液体を一振りされた物は、持ち主の愛着度が高ければ、意思を持ち自分で動き出す事が出来るのです。

　しかも生徒達の技や魔法は一切通じず、工作を倒せるのは工作だけなのです。
　いくつかの工作は回収されましたが、誰かが持ち出した小瓶が生徒達の間に流れ、皆は面白半分で自分の工作に、文字通り魂を吹き込んでいったのです。






「先日、とある生徒が夏休みの全てをかけて作った巨大な虎のオブジェが動き出した時、どれだけこちらが損害を被ったかわかる？」

「ガタガタ言い争っている暇はありませぇぇんっ！　一刻も早くあの小瓶を取り戻すのですぅ！」

「……人の話聞いてる？」




　現在、蒼空学園では夏休みの宿題であった図画工作が大量に学校に展示されています。

　蒼空学園で例年は和やかに行われる図画工作展は、今や弱肉強食の図画工作バトルとなっていました。
　皮肉なことに、図画工作展の大賞商品の東西シャンバラ一周旅行ペアチケットも、生徒達の闘争本能に火をつけた模様です。



　事態を重く見たエリザベートは、しぶしぶ環菜に事の真相を打ち明け、『毒を持って毒を制す』ため、工作を持つ生徒達の有志に小瓶の残りを与えて学園内で起こる工作バトルの鎮圧と、犯人探しを依頼したのでした。

　生徒達の一部は『図画工作武道会』というトーナメントを企画し、犯人をおびき出そうと計画しました。



　そう言えば、白熱する生徒達の工作バトルには、蒼空学園内のとある教室にブローカーと呼ばれる賭博の主催者がおり、その生徒が小瓶を持っているという噂があります。



　環菜とエリザベートが見下ろす蒼空の校庭の一角には、特設リングと、看板や実況席が設けられ、まるでお祭りのように食べ物の屋台も出張って来ています。



「ところであなた、本来は何を作るつもりだったの？」

「……そ、それは……」


　口ごもるエリザベートを尻目に『図画工作武道会』はいよいよ開催されます。




　『図画工作武道会』のルールは以下になります。


・工作にはエントリー名が必要

・対決は１対１のみ

・工作は工作でしか倒せない

・工作は持ち主の装備しているスキルの中から「1つ」だけ技や魔法を覚える事が可能

・工作は喋られないが、何故か決め台詞だけは発声可能

・工作は廃材や生活用品で構成された物に限る

・持ち主は工作を１つだけしか所持出来ない

・敗者復活戦は無し




　トーナメントで戦うのもよし、犯人を追うもよし、武道会の運営に関わったり、屋台で商売するのも勿論オーケーです！


　皆さまのアクションを、心よりお待ちしています！！

　こんにちわ！　もしくは初めまして！　深池　豪（みいけ　ごう）です。

　夏休み明けと言えば……私は夏休みの宿題を提出した後の、凄まじい虚脱感と達成感が未だに忘れられません。

　そんな中でもいつも苦戦したのが図画工作です。最近はお店でキットなんかを買う子もいるそうです……時代ですかね？



　さて、今回のシナリオはそんな夏休みの明けた蒼空学園で開催されます『図画工作武道会』についてのお話になります。
（残念ながら絵画はエントリー出来ません。彫刻はＯＫです）


　

　そもそも図画工作に課題はありませんので、色んな工作が登場すると思われますが、なるたけ『元々は何に使う工作なのか？』というテーマを持った作品の方が戦闘の進め方やキャラの味が出て良いと思います。


　尚、『図画工作武道会』には敗者であっても、『技能賞』や『環菜賞』や『エリザベート賞』のように素敵な景品付きの賞があります。

　勿論、他校の生徒も力作を持って参戦して下さって構いません。

　
皆さんの魂を込めた工作、お待ちしています！！

・トーナメントを戦う。

・屋台で食料品等を販売する。

・小瓶を盗んだ犯人を追う。