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「というわけで、これがその依頼書です」

　朝、百合園女学院の校長室にて、校長の桜井　静香（さくらい・しずか）、そのパートナーのラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）、そして静香に取り憑いた幽霊である吉村　弓子（よしむら・ゆみこ）の３人は、百合園女学院生徒会「白百合会」から斡旋された依頼書に目を通していました。
　依頼書は２枚。いずれも先日、ロザリンド・セリナ（ろざりんど・せりな）がまとめていたもので、彼女は静香に頼まれてその依頼書を持ってきたところでした。

「桜井校長と弓子さんも受けられるからあまり厳しくないものを、とのことで、こうしてお持ちいたしました。とはいえ両方とも重要案件ではありますね」
「うん、ありがとうね、ロザリンドさん」

　言いながら静香たちは依頼書を確認します。

　依頼者氏名：アントニオ・ロダト
　依頼内容：個人所有の宝物の護衛、及び泥棒の捕獲
　私が所有するオレンジ色のダイヤモンド「夕日の涙」を泥棒が狙っております。
　「夕日の涙」は先祖代々受け継がれてきた、我がロダト家の家宝。泥棒などにくれてやるつもりはありません。
　犯人はわかっております。どうか私の「夕日の涙」を守ってください。そしてできるならば犯人を捕らえてください。

「ああ、あのお方……。恰幅のいいおじ様といった感じの方で、人柄はまあいいのですけれど、ちょっとセクハラが多いのが玉に瑕ですわね。教導団やヴァイシャリー家ではなく、百合園に依頼を出したという時点で、魂胆は見え見えですけれど――」
　ラズィーヤはため息をつきますが、依頼書と共に見せられた薄い鉄板を見て、厳しい目をします。そこには「○月×日の明朝０時（つまり今日の夜中）、あなたがお持ちの『夕日の涙』を頂きに参ります。怪盗３姉妹・狐の目」と書かれてありました。
「狐の目。ここ最近ヴァイシャリーでこれの被害にあった方がいると聞いたことがありますわ。この鉄板カードの予告状は本物。アントニオさんもそれなりに困ってらっしゃるようですわね」
「やっぱり、相手は美人３姉妹なんでしょうか、校長先生？」
「さあ、さすがにそこまではなんとも……」

　依頼者氏名：ジルダ・ファイローニ
　依頼内容：ペットの捕獲
　私の屋敷にて、知り合いの貴族を呼んで食事会を開こうと思っていますの。
　でも私のペットの猫ちゃんたちが屋敷内を歩き回っていては、さすがにお客様の迷惑になってしまいますわ。
　ですからどうか、屋敷内外をうろついている猫ちゃんたちの捕獲に協力してくださらない？
　食事会が開かれる１時間前までに猫ちゃんたちを捕まえて、部屋に入れてくだされば問題ありませんわ。

「ああ、あの細面で甲高い声の猫好きのご婦人……。確か１０匹単位で大量に猫を飼ってらっしゃいましたわね。お掃除も大変でしょうけども、向こうの掃除人はプロですから、そこはお任せしても問題ありませんわね」
「依頼書に書いてある日付だと、食事会は明日だね。だったら、明日の朝から行けばいいんじゃないかな？」
「ではわたくしの方から、ファイローニ家に連絡させていただきますわ」
　そう言うとラズィーヤは「明日の朝、生徒を向かわせる」とファイローニ家に伝えました。

「今日と明日、それが終わったら――」
「……私は成仏します。それまではご厄介になりますね」
　そう、この２日分の依頼が終われば、弓子は成仏し、ナラカへ行きます。それはつまり、静香とラズィーヤが今までと同じ生活に戻る、ということを意味していました。
「後２日と言わずに、さっさと成仏してしまえばよろしいのに」
「たかが２日じゃないか。それくらいも我慢できないなんて、カルシウム取ったらどうだ？」
「……最後までこの２人はケンカするのかな」
　ラズィーヤが幽霊相手にケンカするのも、間にいる静香が慌てるのも、もう終わりが近づいていました。

　　　　　　　　　　◆

　先日、弓子に言われたことをずっと考えていた真口　悠希（まぐち・ゆき）は、午前中に貼り出された２枚の依頼書を前にして悩んでいました。
（これ、静香さまと弓子さまも参加するんだ。どうしようかな……）
　そんな悠希を挟んだ左右で、自分の「平穏」を勝ち取りたい桐生　円（きりゅう・まどか）、「弓子の化けの皮を剥ぐ」と息巻いている葛葉　杏（くずのは・あん）の２人も、同じく依頼書を前に考えていました。
（あのフラワシがボクの『平穏』を脅かすものじゃなければ、それはそれでいいんだけど……）
（これは使えるかもしれないわね。でも他にいい手があったら……？）
　考えた末、３人の取った行動は……。

　　　　　　　　　　◆

　様々な思惑が重なる中、百合園女学院の新しい１日が始まろうとしていました。

　どうも皆様こんにちは。
　バレンタインが過ぎて、血の涙を流したいほどに非リア充な「名も無き詩人」が、空気を読まずにちょっとした幽霊騒動のシナリオ第２弾をお届けいたします。

　今回の舞台はヴァイシャリーにある貴族の館です。依頼が持ち込まれたのが百合園女学院であるため、抽選では百合園生が優先となります。ですが、もちろん他校生の方の参加は歓迎いたします。「百合園の知り合いに誘われた」「事件があると聞いて」等の理由でご参加ください。
　舞台が百合園女学院の外であるため、今回は「外見性別・男性」の方も気軽にご参加いただけます。ただし後述するラズィーヤ・ヴァイシャリーに絡む場合は、百合園女学院に入る必要がありますので、そこはお気をつけください。

　百合園女学院に「財産を泥棒から守ってほしい」「敷地内を逃げ回るペットを捕まえてほしい」という２件の依頼が持ち込まれました。校長の桜井静香と、静香に取り憑いた幽霊の吉村弓子と共に、それぞれ１日を使って解決に動くのが今回の目的です。前編から数えて、２日目は「宝石護衛」、３日目は「ペット捕獲」となります。
　アクションの原則は「１人１シーン」です。プレイヤーの皆様には原則「どちらか１日」に参加をお願いいたします。できましたら、どちらに参加するのか掲示板にて表明していただき、人数調整を行ってください。

　絡めるＮＰＣは以下の通りです。

・静香――幽霊の弓子に依頼を体験させるという名目で、両方の事件に参加します。一応自衛はできますが、期待薄です。

・ラズィーヤ――またしても百合園女学院にて待機です。今度こそ出番がほとんど無いためかなり目立ちません。

・弓子――静香に取り憑いた状態で両方の依頼に参加します。詳しい人物像に関しては前回のガイドとリアクションをお読みいただければと思います。
　通常はセーラー服姿ですが、今回はその上から百合園女学院の制服を着込んでいます。「ヨーヨーがあればちょっと強い」のですが、あくまでも「非契約者の一般人の中では」という程度であり、契約者との戦いでは圧倒的に戦力になりません。
　３日目の依頼を終了させた時点で彼女は成仏に向かいます。これは規定路線であり、結末は変わりません。

・アントニオ・ロダト――２日目のゲストのシャンバラ人です。恰幅のいいちょっとセクハラなおじ様です。
　「夕日の涙」とは、３６０カラット（約７２グラム）のオレンジ色をしたダイヤモンドです。
　「夕日の涙」は２階建ての屋敷、２階中央の部屋にある金庫に保管されていますが、金庫自体はあまり頑丈ではなく、部屋も狭いため中に１０人もいると身動きが取れません。屋敷の内外を、うまく警備してください。ちなみにアントニオは金庫の部屋にいます。

・怪盗３姉妹「狐の目」――地球人の「レミ」、狐の獣人の「ナタリー」「ジェニー」の３人で構成されているローグの集団です。「姉妹」と名乗っていますが、実際は血の繋がりはありません。全員それなりに美人ではあります。
　３人とも薄い鉄製のカードを武器にしますが、これはあくまでも牽制用です。接近戦になればレミはトンファー、ナタリーは素手、ジェニーは長い棒で攻撃してきます。彼女たちにとって盗みとは趣味です。別段、深い理由などありません。全力で叩きのめしてやってください（最終的には逮捕となる予定です）。

・ジルダ・ファイローニ――３日目のゲストのシャンバラ人です。無類の猫好きで、甲高い声をした細面の中年女性です。
　猫の数は参加したＭＣ・ＬＣ数によって変動します。探せるのは、
　１階はロビー、食堂、厨房の３箇所（空き部屋が別であり、ここに猫が放り込まれます）
　２階は廊下、使用人の私室（数部屋）
　外の庭（池付近、広場、小さな林の３箇所）
　となっております。探す場所と猫を捕まえる方法をアクションにお書きください。


　それでは、皆様のアクション、お待ちしております。

・宝石護衛の依頼に参加し、宝石を守る

・ペット捕獲の依頼に参加し、猫を捕まえる