なし

「――殺せ！　――殺せ！！　――殺せ！！！　人間どもを殺せ！！！」


　物騒な怒号が空京の街に響きました。
　声の主は女性、そのいでたちはパラミタでは珍しい日本の着物姿で――いわゆる十二単を着ています。何重にも重ねた着物と長い垂らし髪、真っ白に化粧した顔。その姿はまるで古い雛人形の姫人形そのものです。


　それもそのはず、今まさに空京を恐怖のどん底に落としいれようとしている彼女は、本当に雛人形そのものなのですから――


　場所は空京。３月も中旬から下旬にさしかかったその日、百合園女学院主催の雛祭りイベントが開催されていました。
「わらわは雛人形として長年、人間どもの災厄を背負わされてきた。じゃが、このパラミタの地に満ちた力でわらわは解放されたのじゃ！」
　それは一揃いの古い雛人形でした。この４月に百合園女学院に入学する娘の記念にと、文化的にも価値のあるというその雛人形が日本の旧家から百合園女学院に寄贈されたのです。
　せっかく寄贈されたのだからと、この機会に日本の旧暦に合わせて３月中の雛祭りイベントを開催したのですが、まさかこんな事態になるのは想定外でした。雛人形たちは突然人間くらいのサイズに変化し、イベントに参加していた生徒達や観客の一般人を襲い始めたのです。

「こ……これは、どうなってるの！？」
　イベントの一環として美しい十二単を着た、百合園女学院の校長桜井　静香（さくらい・しずか）は困惑を隠せませんが、取り急いで自分に近い生徒や生徒会「白百合会」のメンバーに一般人の避難を命じます。

　一方、そのイベントに招待されていた薔薇の学舎の校長ジェイダス・観世院（じぇいだす・かんぜいん）は男雛の衣装、いわゆる束帯に身を包んだ姿で周囲の薔薇の学舎の生徒に指示を飛ばします。
「一般人の警護と敵の撃退にあたれ！　特に一般人には一人の怪我人も出すな！！」

　指示を受けた数十人の生徒達は街中に散らばった１５体の雛人形たちを追いかけます。
　雛人形の姫は、それを嘲笑うように校長たちの前で名乗りを上げました。
「人間どもから背負わされた刹那の苦しみ、それが幾百も幾百も積み重なってわらわは生まれた――これからは『百々の刹苦（もものせっく）』として人間どもを地獄に叩き落としてくれようぞ！！」

　イベントを見ていた、ツァンダ付近の冬を担当していた冬の精霊と、その友達のツァンダ付近の春の精霊もこの事態に動き出します。
「これは大変なことになったでスノー！」
「わずかながら協力するでピョン！」
　冬の精霊は雪ん子のような少女の姿、春の精霊はウサギ耳を生やしたふわふわした服装の少女の姿です。春の精霊が両手を振りかざすと何人かの生徒達の手元に一枚の桃の花びらが落ちます。
「それは神聖な力を秘めた『破邪の花びら』だピョン！　一回しか使えないけど上手く使って奴らを止めて欲しいでピョン！！」


　さあ、街中に散らばった刹苦人形たちを倒して町の平和を取り戻すことができるでしょうか？

　みなさんこんにちは、まるよしと申します。
　これで六作目のシナリオということになります、どうかよろしくお願いします。

　今回は空京を舞台とするバトルシナリオになります。百合園女学院と薔薇の学舎が参加しやすいですが、雛祭り自体はオープンなイベントでしたので、参加自体はどの学校の方でも自由です。


　・刹苦人形を倒して下さい。
　姫人形である『百々』をリーダーとする刹苦人形軍団１５体が敵です。彼女らは無差別に参加者や一般人を襲い、容赦なく殺害しようとします。
　被害が最小限で済むように彼女らの暴走を喰い止め、人形を撃退して浄化するのがシナリオの目的になります。
　刹苦人形の強さは、契約者でなければ勝負にならない程度の強さです。レベルの高いＰＣであっても１対１であれば少々の苦戦を強いられるかもしれません。レベルの低いＰＣであるならば何らかの作戦を立てるか、多人数で１体の人形の相手をする必要があります。
　とはいえ戦闘判定は比較的ゆるいですので、ＰＣがやりたい方向のアクションを遠慮なく出していただければ、と思います。


　・掲示板で挨拶をお願いします。
　この雛祭りイベントにはツァンダ近辺の春を担当する光輝の精霊（通称、春の精霊）が見物に来ていました。彼女がＰＣにばらまく『破邪の花びら』を使うと一度だけ自分の武具、装備、スキルのうちの一つを神聖属性で強化することができます。穢れや災厄が力の源である刹苦人形にはとても有効です。
　シナリオのあいさつ掲示板であいさつをした際のサイコロが『ゾロ目』だったＰＣはこの『破邪の花びら』を入手できます。入手できる花びらは一回分で、入手したＭＣは自分で使うか、自分のＬＣにだけ使わせることができます。ＬＣであいさつをして入手した場合も同様です。もしＭＣとＬＣで複数回あいさつをしても最初にあいさつをしたＰＣの一回目以外のサイコロの目は無効とします。
　『破邪の花びら』は神聖の力を秘めていますので、もし武具やスキルに力を与えるだけではない特殊な使い方をしたい場合は、アクション内でチャレンジしてみて下さい。世界観と著しく矛盾しない限り大丈夫な方針です。


　・その他。
　今回はバトルシナリオということもあり、戦闘描写がメインになりますが、あくまでも皆さんのアクションが元になってストーリーは進行しますので、直接戦闘以外の解決方法もあるのかもしれません。ただし百々の精神状態は常に暴走状態にありますので、言葉による説得は絶対に効きません。仮に彼女に言葉が届くとしたら、一度倒した後でしょう。しかし１５体の中には会話できるものもいますので、その辺りを狙うのも手だと思います。
　また、百合園女学院と薔薇の学舎の校長がイベントに参加していますので、二人の護衛を引き受ける人間が必要になるかもしれません。一般人の避難などにも人数を割く必要があるかもしれませんが、肝心の人形の撃退ができなくては仕方ありませんので、グループアクションを活用するか掲示板のアクション相談などを活用するとスムーズに進行すると思います。
　雛人形の来歴などについては百合園女学院側が管理していますので、イベント会場で調べれば知ることができるでしょう。


　・ダブルアクションについて。
　二つ以上の目的を作るとダブルアクションになりますのでご注意下さい。
　仮に『校長の安全を確保して一般人の誘導をしながら刹苦人形軍団を倒す』というようなアクションを出されますと、どこか１シーンにしか登場しないか、全部のシーンに登場する空気、という程度の扱いになってしまいます。一つの目的について心情や手段を書き連ねてあったほうが活躍しやすい傾向です。
　ＭＣとＬＣの目的を分散するのはアリですが、それぞれの描写量は減ってしまいますので、大きく活躍したい場合はやはり一つの目的に集中すべきかと思います。


　・刹苦人形について。
　敵となる刹苦人形は全部で１５体です。以下で簡単に紹介しておきます。
　・姫（百々）……刹苦人形軍団のリーダーで、十二単を着込んだ女性です。鋭く硬化した爪で斬る、突くなどの直接攻撃がメインですが、手にした桧扇から多少の闇属性魔法を使えるようです。基本的にはフェルブレイドに近い能力を持っていると考えて下さい。
　・殿……雛人形ではいつもいまいち影が薄い男雛です。腰に刀を差していますが一般人相手に抜くことはなく、そこらの人間を脅して追い払っているだけのようです。百々に比べて人間に対する憎しみが薄いようです。ＰＣから攻撃しない限り襲ってくることはありません。
　・三人官女……百々のお付の３人の女官です。百々につき従い、嬉々として人間を襲います。百々と同じように爪や魔法による攻撃がメインです。能力的にはメイドの能力を持っています。
　・五人囃……太鼓や笛を持つ５人の少年楽士です。百々について楽器の演奏で人々を襲います。能力的にはミンストレルに近いですが、実は正体を隠しているようで注意が必要です。
　・随身……若者と老人が一人ずつの男性衛士です。積極的に人間を襲うことはありませんが常に百々の護衛につき、百々に危害を加える相手に容赦なく攻撃します。刀と弓矢で武装していて、能力的にはナイトに近いです。
　・仕丁……３人の男性従者で、それぞれ怒り、泣き、笑いの表情を常に作っています。棒術で戦うことができるようですが殿に従い、人間を襲おうとはしません。能力的にはバトラーに近いです。


・ＮＰＣについて。
　今回登場するＮＰＣは桜井　静香とジェイダス・観世院、そして雪の精霊（通称、冬の精霊『ウィンター・ウィンター』）と光輝の精霊（通称、春の精霊）の４人のみです。
　両校長は立場上率先して動くことはできずに、生徒達への指示と避難誘導に留まります。
　二人の精霊はＰＣが絡んでアクションをかけることはできますが、彼女達自身に戦闘能力はほとんどありません。また冬の精霊の『雪だるマー』は当然使えません。


　武装・スキルはアクションを投稿時の装備がダイレクトに反映されますので、アクション内で装備やスキルを使う場合はご注意ください。雛祭りイベントに参加していた、というＰＣは雛人形の衣装を着ていても構いません。十二単を着ながら戦うのはもの凄く苦労すると思いますので、まともに戦闘をしたい場合は着ないほうがいいでしょう。
　イコンは使えません。
　残念ながら他ＧＭ様のシナリオは参照できませんのでご了承下さい。キャラの関係などをアクション内で『〜ということがあったので』と説明がある場合はその範囲内で表現したいと思います。
　公序良俗に反するアクションは採用できませんのでご注意下さい。

　それでは、よろしくお願いいたします。

・刹苦人形を退治するために戦う

・一般人を助けるために戦う

・校長のボディガードをするために戦う

・その他