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【カナン再生記】黒と白の心(第3回/全3回)

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【カナン再生記】黒と白の心(第3回/全3回)

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シナリオガイド

運命の地、ヤンジュス攻防戦! 最後の戦いが始まる……
シナリオ名:【カナン再生記】黒と白の心(第3回/全3回) / 担当マスター: 夜光ヤナギ

 「【カナン再生記】 砂蝕の大地に挑む勇者たち」「【カナン再生記】擾乱のトリーズン」のシナリオに予約参加されているお客様は、本シナリオでの予約参加はご遠慮いただきますようお願いいたします。


 巨大飛空艇エリシュ・エヌマが辿りついたヤンジュスの地は、やはり予想通りとも言うべきか、荒れ果てた地と化していました。
 エリシュ・エヌマがどうしてこの地へとシャムスたちを導いたのか。
 地下で眠っていたときのように再び沈黙を守る飛空艇は語ることはしませんが、おそらくそれはこのヤンジュスの地下遺跡へと残された者を導こうとした役目もあったのではないかと、シャムスは思いました。
「皆さん……元気がないわね」
 古城からヤンジュスを見下ろすシャムスに声をかけたのは、傍らにいた豊穣と戦の女神イナンナでした。その横には、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)の5000年前の祖、ユーフォリア・ロスヴァイセが肩を並べています。
「……状況が状況ですもの。働き続けで疲弊している者もいることでしょう」
「その通り、ですね」
 カナン各地での開拓が進んでいるせいなのか、イナンナの姿はそれまでの少女のものから娘と呼ぶほうが相応しいぐらいの外見に変化していました。快活さも、わずかに落ち着きを見せている風でもあります。
 三人が見下ろすヤンジュスの地は野営テントや建物の修復がなされてきており、それなりに形と呼べるものが完成されつつありました。
 そんなとき、彼女の傍へやってきた老執事が声をかけます。
「ただいま、エリシュ・エヌマの解析を行っております。おおむね順調のようです」
「そうか」
 一足先にこのヤンジュスへと赴いていた老執事――ロベルダたちが見つけたのは、エリシュ・エヌマに関する数多くの資料と書物でした。あいにくと設計図は敵に奪われてしまったようですが、それ以外にもあまりある資料が地下には残されていました。運び込んだそれをもとに、テクノクラートとアーティフェクサーたちが総力をあげて解析を行っているのです。
 逃げ延びてきたのはいいものの……これ以上敵から逃れられることなど出来ぬことでした。
 ならばせめてエリシュ・エヌマを再び動かせるようになれば、ヤンジュスに至るまでに保護することのできたわずかな民だけでも逃がすことが出来るかもしれません。
 しかし――彼女のもとで働く兵士たち、そして民たちには困惑と動揺が広がっていました。ニヌアから逃げ延びてきた民の話では、ニヌア侵攻の際に前線に立っていたのはエンヘドゥだといいます。そして、これまで男だと思って厚い信望と信頼をおいてきた領主が、実は女性だったということが知れ渡りました。
 民と兵士には疑心と不穏が漂い、それに伴って行き場を失った南カナンに絶望を抱き始めていたのです。
 古城からヤンジュスを見下ろしていたシャムスのもとに、“漆黒の翼”の騎士団長アムドがやってきました。
「シャムス様」
 たとえ女性だったとしても、彼はシャムスに懐疑を抱いたりはしません。
 確かに南カナンの領主は代々男性が担ってきたものでしたが、これまでのシャムスの領主としての活躍を、彼は第一線で見てきたのです。たかだか女性だというだけでそんな歳月を無碍にすることは、少なくとも彼には出来ませんでした。
「なんだ、アムド」
「敵――モート軍がこちらへと進行中とのことです」
「…………」
 分かっていたことではありましたが、現実を耳にすると緊張がシャムスの表情を強張らせました。
 ロベルダが、重い口を開きます。
「こちらに辿りつくのも……時間の問題でしょうか」
 圧倒的に不利。
 それは、シャムスたち自身がよく分かっていることでした。
 しかし、逃げるわけにはいきません。民のためにも、南カナンのためにも、もがき続けるしかないのでした。もはやそれしか、道は残されていないのですから。
「軍を編成し、迎撃準備を整えろ。オレも行く」
「はっ……!」
 アムドを引き連れて、シャムスはその場を去ろうとしました。
「シャムス様ッ……」
 そこに、慌てた老執事の声がかけられます。彼はどこか切望を含んだような瞳で、振り返ったシャムスを見つめていました。
エンヘドゥ様は……」
 ――どうするのか?
 きっとその後に言いたかった言葉は、そんな言葉だったのでしょう。シャムスは目を伏せていましたが、やがてロベルダの視線を正面から受け止めた顔で答えました。
「“敵”を迎撃し、民を守る。それが、オレの役目だ」



 かろうじて――ニヌアに残されていたシャンバラの契約者たちによって、民のほとんどはヤンジュスへ向けて逃げ出すことができました。
 しかし、逆に言えばそれは、ニヌアの地が敵に陥落されるということを意味しています。
 逃げ遅れた兵士や民は敵軍に蹂躙され、首都とされた南カナンの要は敵軍の支配に墜ちることとなりました。
 そしていま、モート軍はヤンジュスを目指して進行しているのです。

 上空を飛び交うのは、巨大な比翼をはばたかせるワイバーンやヒポグリフたちでした。一部隊を編成するそのワイバーン部隊とヒポグリフ部隊をはじめとして、モート軍は砦攻防戦とは比べ物にならない数の兵士を率いていました。
 神聖都キシュから赴いた援軍の数々です。
 なぜこれほどまでの援軍があるのか? それは抵抗を続ける南カナンを、これを機に完全なる支配下におさめようとした画策のためでした。
 そもそも南カナンは、他領地に比べれば必要以上の戦力を有していた砦からも分かるように、征服王にとっては危険分子です。
 モートは援軍を要請したものの、これほどまでの部隊を送ってくるとは思っていなかったのか……素直に感嘆の声をあげていました。
「まったく……よくもまあここまで……」
 どこかその声色に悪戯な雰囲気が混じるのは、彼特有たるものなのでしょう。
「ひゃひゃ……いやはや……素晴らしい戦力ですねぇ」
 けたけたと常に笑う彼にとって何が面白いのか、他人は全く理解することができません。
 それは無論、彼の傍にいる指揮官さえも同じことでした。
「いかが、なさったのですか?」
「ひひゃ……まさかこの私がここまで大勢の方々を統率することになるとは……思いもしていなかったのでですね」
「なるほど、ご満足いただけているということですね」
 中間的立場とはいえ、兵の上に立つ者としてその愉悦感は十分に理解できました。
 だからこそ指揮官はモートに親しげな笑みを返したのでしょうが――フードの奥から囁かれたモートの声はまるで違ったものでした。
「いや……かわいそうだなぁとですね」
「は?」
「いえいえ、なんでもありませんよ」
 奥から覗く赤い瞳が一瞬輝きを増したかと思いましたが、それを確認するよりも早くモートは首を振りました。
「あなたは自分の役目をこなしていればそれで良いのです。私も……期待していますよ」
「あ、ありがとうございます。あの……ところで」
 指揮官は釈然としないようでしたが、特にそれ以上突っ込むことはありませんでした。その代わり、彼は部隊の先を指差します。
「エンヘドゥ様は……やはり前線に出されるのですか?」
「もちろんです。そのための駒なのですからねぇ」
「し、しかし……エンヘドゥ様は……かよわき女性です。もし万が一のことがあれば……」
 ネルガルの思想に同意して戦っているとはいえ、元々は一カナンの民です。しかもこの指揮官は、南カナン出身の兵でした。騎士として戦うシャムスには覚悟を決めているとはいえ、エンヘドゥが戦争に出ることにはどこか折り合いがつけられぬ部分もあるのでしょう。
 ですが、モートは言いました。
「分かっていませんねぇ」
「え……」
「あれは“白騎士”さんですよ? エンヘドゥさんなんてものは……もうこの世にはいないのですよ」
 フードの奥の闇の中で、薄く割れたそれから漏れた声。
 その声色は、指揮官に次の句を全く継がせないほど、ぞくりとする不気味さに満ちていました。もはや言葉を発せぬ指揮官ににたりと笑いかけて、モートは呟きました。
「……楽しみですねぇ」

 神聖都の砦戦で敗戦を期した南カナン軍は、東の地ヤンジュスへと追いやられる。しかし、敵軍の侵攻は間を置かずしてヤンジュスに迫ろうとしていた。南カナンの運命は――? 歯車となるのは、あなたです!

担当マスターより

▼担当マスター

夜光ヤナギ

▼マスターコメント

初めましての方は初めまして。
そうでない方はお世話になっております。
公園にいる鳩に触れたことで、妙にテンションが高くなってたりするMS、夜光ヤナギです。

【内容補足】
今回のシナリオは、【カナン再生記】南カナンのメインストーリーとなっております。
少しばかりのコメディは許容範囲内ですが、コメディのみで貫きとおすことは難しいのでご了承ください。

●ヤンジュスについて
外伝にも出てきた南カナンの東に位置する地です。
城が建設されており、第二の領主城としての役割を担っていました。
しかしながらいまは荒れ果てた地となり、城も古城と言うに相応しいものです。
野営テントなどが設置され、付け焼刃程度の修復や開拓はされているものの、満足のいくものではないでしょう。

●南カナン軍について
現在、その兵力の大半が失われてしまっている状態と言えます。
それでもなんとか編成だけは成されており、“漆黒の翼”騎士団を筆頭にモート軍へ備えている。
しかしながら、エンヘドゥが敵軍にいることやシャムスが女性であったという一件によって、兵士たちの間には困惑と動揺が広がっています。
空中部隊への迎撃を統率するはユーフォリア・ロスヴァイセ。
南カナンの民たちを守るための護衛部隊の筆頭に立つはイナンナ。
そして陸から敵軍を迎え撃つ南カナン軍総指揮はシャムスが担っております。
シャムスの指揮下にある“漆黒の翼”騎士団はそれぞれに分散しておりますが、その一部はなんでも先行して敵の足止めに向かうという話……。
ロベルダは民たちとともに待機している様子です。

●モート軍について
新たな部隊、ワイバーン部隊とヒポグリフ部隊を率いた軍勢です。
戦力差は単純差で言えば現在の南カナン軍の何倍にもなるでしょう。
圧倒的なその差に、敵軍の神官兵は楽観的にさえ思っています。
前線に出るのは歩兵部隊ですが、それを統率するのは白騎士――エンヘドゥです。
神官兵は上級兵になるほど鎧の装甲が上がっており、指揮官クラスになると相手のスキル(魔法)も増えていることでしょう。
また、神官兵は弓兵と魔法使いとして兵種が分かれているため、敵も遠距離攻撃も仕掛けてくると思われます。
魔法使いは神官の中でも攻撃魔法に特化した兵種ですが、あまり芸に凝った魔法が使えないようでポピュラーな攻撃魔法(炎術、氷術、サンダーブラストなど)を使用してきます。威力はさほどですが、その代わり敵は部隊編成と詠唱速度が高いです。その点はお気をつけください。
また、モート軍にはモート自身の操るモンスター(魔物)たちがいることも、忘れてはならない点です。

●ワイバーン部隊、ヒポグリフ部隊について
ワイバーン部隊は空中を飛び交う竜騎士とも言える存在です。
本職の竜騎士ほどの技量と力は持ち合わせておりませんが、ワイバーンの吐く炎が強力なことは言うまでもないでしょう。ヒポグリフ部隊はいわば空の軍馬と言えます。使い勝手が良いせいか、敵も素早く小回りのきく動きをしてくるところが特徴的でしょう。
どうやらワイバーン部隊を前陣として、ヒポグリフ部隊には指揮官が乗りこみ部隊を統率しているようです。
敵の要とも言えるかもしれません。

●モンスター部隊について
今回、モートは空中と陸で一種ずつのモンスターを操っています。
空中はいわゆる腕が両翼になっている女性型モンスター、ハルピュイアです。
陸地は人型のモンスターであるグールが猛威を振るっています。
特徴的には、ハルピュイアはやはり素早さが高いですがその代わり一撃一撃は致命傷にはならないことが多いです。
グールは総合的なパーソナリティが強い魔物ですが、代わりに聖なる力に弱いという体質を持っています。
モンスター部隊の数は決して多くはないですが、並みの兵士であれば敵う相手ではない強敵だということは理解しておきましょう。

●モートについて
ネルガルの配下である男の魔女です。
ローブを身に纏っており、常にフードを眼深く被っています。
人の憎悪や嫉妬がうずまくことが大好きであり、小馬鹿にしたような笑いで人の神経を逆なでします。
他者を「駒」と称し、自分の思惑通りにいかないことが大嫌いである。

●NPCについて
【シャムス】
南カナンを統治する若き領主。
漆黒のフルプレートメイルを身に纏っていることから、“黒騎士”の異名で知られている。
正義感が強く男義にあふれているが、融通がなかなか効かない頑固な性格でもある。
常に漆黒の兜をかぶっていることから、その素顔を見た者はほとんどいなかったが、実は女性であるということが発覚した。
領主としての血筋の関係から男として育てられてきたらしい。
【エンヘドゥ】
泉美緒の妹、泉美那を名乗っていた。
しかし、その正体は南カナン領主シャムスの双子の妹、エンヘドゥである。
心優しくわけ隔てなく性格で民に慕われている。
だが、現在はモートの配下“白騎士”として南カナンに敵対している。
【イナンナ】
カナンの豊穣と戦の女神であり国家神。
その力でカナンに平和と豊穣をもたらしていたが、ネルガルによって封印されてしまう。
そのため、現在は彼女を祀る石像を利用して実体化しているだけに過ぎない。
わずかに力を取り戻し、南カナンでは現在15〜18歳程度の姿である。
【ロベルダ】
南カナンの領家に代々仕えてきた老執事。
シャムスとエンヘドゥのことを一番よく知る人物であり、自分の子供のようにも思っている。
語らずとも、誰よりも二人にとって味方である老人。
かつては南カナンの一兵士であったらしい。
【ユーフォリア・ロスヴァイセ】
名声高き一匹狼の女義賊フリューネ・ロスヴァイセの5000年前の祖先。
古王国時代に活躍した、ロスヴァイセ家の英雄であり、フリューネにとって憧れの存在。
ヴァーチャースピアとヴァーチャーシールドを持ち、ペガサスを駆って戦います。


※以上はアクションを考える上での参考情報です。あくまで参考となるものなので、必ずしもMCやLC自体がそれを知っている前提でなければならない、ということはありませんのでご安心下さい。(もちろん、周知を前提にされても結構です)

▼サンプルアクション

・敵の空中部隊を迎撃する

・残された南カナンの民を守る

・先行部隊として敵を足止めする

・歩兵部隊として戦う

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2011年03月31日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年04月01日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年04月05日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年04月21日


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