なし

　――ヴァイシャリー湖湖畔。

「〜♪」
「素敵な歌声ですわね」

　日課のトレーニングを終え、百合園女学院の寮への帰路に付いていた百合園女学院の新入生イングリット・ネルソン（いんぐりっと・ねるそん）は、ヴァイシャリー湖のさざ波と一緒に聞こえてくる歌声の方へ向かいました。
　そこには１人の吟遊詩人が倒木に腰掛けて、ハープを爪弾いていました。
　鈴を鳴らしたような声、とはまさにこのことでしょう。身も心も蕩けてしまうような、甘美で甘露な何時まで聞いても聞き飽きない美声です。

『いい歌声ね。それがニンゲンの間で流行っている歌なのね』
「「！？」」

　吟遊詩人の歌がひと段落すると、空から小鳥が囀るような声が聞こえました。
　イングリットが駆け出すと同時に、吟遊詩人は目にも止まらぬ速さで腰に佩いていたロングソードを抜き放っていました。
　その切っ先にいたのは、美しい黄金色の髪を湛える少女ながら、その身体は海鳥の姿をしたローレライでした。
　別名セイレーンとも言われています。

『ま、待って！　私はあなたと戦うつもりはないわ』
「そのようですね」

　ローレライは両翼を両手のように高く掲げて降参のポーズを取りました。
　ローレライの武器は聞く者を惹きつけてやまない魔性の歌声ですが、それ以外の戦闘力は決して高くありません。
　歌を唄わない、且つ奇襲ではなく声を掛けてから姿を現したところをみると、本当に戦う意思はないようです。
　吟遊詩人はロングソードを腰の鞘に収めました。

「先程の抜刀、只者ではございませんわね！　一手御教授願いますでしょうか？」

　そこへフィンガーレスグローブを嵌めたイングリットが現れました。
　彼女はかの名探偵も身に付けていた伝説の格闘術バリツの使い手で、強い者を見ると挑戦したくなる性質なのです。

「ちょっと待って。その前に、ローレライ、何故あなたは私の前に姿を現したのですか？」
『あなたが歌唄いだからよ……私、音痴なの』
「ローレライが、音痴？」

　吟遊詩人はイングリットを手で制すると、ローレライに自分の前に現れた理由を聞きました。
　ローレライを始め、ハルピュイアなど、歌を武器とするモンスターがいますが、それらのモンスターの魔性の歌声は天性のものといわれています。
　それだけに音痴のローレライという理由は、にわかには信じられませんでした。

『〜♯　〜♭』
「あ、頭が割れそうですわ」
「た、確かにこれは効きますわ」

　ローレライが唄うと、ガラスを釘で引っ掻いたような雑音が響き渡りました。
　なまじ魔性の歌声だけに、その破壊力は音響兵器並みです。

「分かりました、音痴を治してみましょう。ただし、音痴が治っても魔性の歌を人に使って害を与えない、これが条件です」
『元よりそのつもりだし、あの娘を止めるためには音痴では無い歌声が必要なの』

　ローレライは吟遊詩人の提示した条件を呑みました。
　彼女にも何やら事情があるようです。

「そして可愛い格闘家さん、私は見ての通り吟遊詩人、あなたと戦うつもりはありません。ただ、このローレライは人間の歌を聞きたがっているようだから、コントラクターに武勇伝を語ってもらって、それを歌にして贈りたいと思います。そうすればあなたも強い人の話を聞けるでしょう？　戦うばかりが一手御教授ではありませんよ？」
「分かりましたわ。それでしたらわたくしが各学校に依頼いたしますわ」

　吟遊詩人ラナ・リゼット（らな・りぜっと）の言葉に、イングリットは頷きました。


　数時間後、イングリットの名前で、各学校に音痴の矯正と武勇伝を語る依頼が貼り出されました。

　このシナリオでは、ラナ・リゼットと一緒に音痴のローレライを矯正したり、イングリット・ネルソンに武勇伝を語ったりします。
　百合園女学院の生徒が受かりやすいですが、各校に依頼を出していますので他校生も気軽に参加して下さい。
　また、イングリットは新入生ですので、新入生の方が参加されましたらよろしくお願いします。先輩方が参加されましたら、新入生をサポートして頂ければと思います。

・音痴を矯正する
　割り箸療法やバケツ療法などがあります。
　音痴を矯正できると思われる療法をご提案ください。
　ただし、相手はローレライですので、カラオケなどには連れて行けません。屋外で出来る療法・レッスンに限ります。

・武勇伝を語る
　今までの冒険などを武勇伝として語ってください。ラナ・リゼットがそれをまとめてローレライのための歌を作るつもりでいます。
　ある程度の誇張は構いませんが、「俺がアスコルドを倒した！」など明らかに真実ではないことは語らないようご注意ください。
　新入生などは武勇伝が無い場合がありますので、「パラミタに来る前にこんなことをしていた」など、過去の設定を掘り下げて頂ければと思います。
　また、語る内容はアクションにまとめてください。「リアクションの○○ページ目」というように指定されても確認出来ませんのでご注意ください。

・一緒に歌の練習をしたい
　ローレライと一緒に歌の練習に参加したい人は、その内容でアクションにまとめてください。
　それと同時に何らかの療法を提案しても構いません。
　ただしこのアクションを選択した人は、シナリオ掲示板の「あいさつ」スレッドに挨拶してください。
　そこでダイスの合計値が「ゾロ目」の場合は大きく上達、「ゾロ目以外の偶数の場合」は少し上達したこととします。　
　「奇数」や挨拶の無かった場合は変化がなく終わってしまうこととします。

・ローレライの音痴を矯正する

・武勇伝を語る

・一緒に歌の練習をする