なし

　おみくと虎吉は、葦原城下で有名なラブラブカップルです。
　今日も二人仲良く、夕涼みをしています。
「見てごらんよ、虎吉さん。なんて奇麗な満月だろうねえ」
「ふ……いくら月が奇麗でも、お前の100万ボルトの瞳の輝きにはかなわねえさ」
「いやん……あんたったら」
　端で聞いていて、寒恥ずかしいぐらいです。

　ところが、
「さあ。家に入らねえか？　そろそろ、夜のお楽しみの時間だぜ」
と、虎吉がおみくの肩を抱き寄せた時……
「ふっふっふっふっ……笑止！」
　突然、おみくの口調が変わりました。その瞳は禍々しく赤く輝いています。
「ど……どうした？　おみく？」
　キョトンとする虎吉に向かって、おみくは叫びました。
「その、汚れた手で私に触るなど、一万年早いわあ！　このくされ●●●の××××野郎があ」
　おみくは、放送禁止にあたる言葉を連呼すると、手近にあった包丁で、いきなり虎吉に遅いかかりました。
「お……お前、俺の事そんな風に思ってたのかあ……そっちに傷ついたああああああああああ」
　虎吉の悲しげな声が夜空に響き渡ります。

　実は、今、こういう事件が葦原城下で多発しています。親しい相手の人格がいきなり豹変し、凶器を手に襲いかかってくるのです。人格の豹変した者は普段からは考えられないような力を発揮するといいます。奉行所の調べでは、どうやら、何者かが悪霊を人に取り憑かせて凶行を犯しているということです。

「このような事件が、以前にも起きた事がある」
　日下部家の屋敷の縁側で、柳生十兵衛が言いました。
「20年ほど前の事で、首謀者は邪鬼ヤーヴェだった」
「ヤーヴェ？　あの刹那様に取り憑いてるっていう？」
　木の上で、手裏剣を研ぎながら疾風のハヤテが尋ねます。彼は、十兵衛の子飼の忍者です。
「そうだ」
　十兵衛は頷きました。
「刹那は、珠姫に対抗するために『聖なる力を持つ者を一振りで滅ぼす事ができる』という魔剣を探していた。しかし、その魔剣のありかにたどり着き、それを得る事ができるのは奈落人だけなのだ。それで、奴は奈落人に依り代を提供する代わりに魔剣を探させようと考えたのだ」
「もしかすると、今回もヤーヴェが犯人なのかもしれませんね」
　竜胆が言いました。
「数日前、国元より刹那殿が行方をくらましたという知らせが入って来ております」
「間違いない。奴は、珠姫と同じ力を持つ竜胆を恐れているのかもしれぬ」
「てことは、ヤーヴェに取り憑かれた刹那が、この城下にやって来ているって事かよ？　けど、この城下のどこにいるんだ？」
「おそらく、六角道元の屋敷に潜んでおるのであろう」
「よし、じゃあ、とっとと乗り込もうぜ！」
「駄目だ。あの屋敷には多くの罠が仕掛けられておる。やみくもに襲撃すれば、命を失うのは目に見えている」
「大丈夫だよ。俺を誰だと思ってるんだ？　無敵のハヤテさまだぜ」

　十兵衛とハヤテが言い合っていると、どこからか文が舞い込んできて竜胆の足元に落ちました。
　竜胆は文を拾い上げて顔色を変えました。なぜなら、差出人の名前が行方不明の竜胆の双子の兄、日下部藤麻となっていたからです。十兵衛が確認したところ、確かに藤麻の筆跡のようです。
　さっそく文を開ける竜胆。そこには『自分は無事である事』『しかし、今はまだ屋敷には戻れないので、皆にはこの文の事は言わないで欲しいという事』『風の便りに聞いた弟の竜胆に一目会いたいという事』などが、待ち合わせ場所と日時とともに記されていました。

　指定されたその日。竜胆は日下部家の跡取りとバレないために女の姿に戻り、十兵衛だけを伴って待ち合わせ場所へと向かいました。
　ところが、城下に出て半町も行かないうちに、妙な女が近寄って来て竜胆を指差して叫びました。
「お役人様、あの娘です！」
　女の声を合図に、役人と岡っ引きが現れて、竜胆を捕らえようとします。
「何をするのです？」
　叫ぶ竜胆にむかって、役人は一振りの小太刀を見せて言いました。
「これは、お主の物だろう？」
　それを見て竜胆は顔色を変えました。なぜなら、それが葦原に来る旅の途中で無くしたあの『珠姫の小太刀』だったからです。
「そうです。でも、どこでそれを？」
「三日前に殺された、薬売りの与吉の胸に刺さっていた」
「ええ？」
「与吉は女房に刺されたのだ。あの女がその女房だ」
　そういうと、役人は今しがた叫んだ女を指差しました。
「目撃者の話では、あの女は与吉を殺す前に明らかに人格が変わっていたという。つまり、最近、葦原城下をにぎわしている悪霊の憑依事件ということだ」
「しかし、それと、わたくしが、どう関係あるのですか？」
「大ありだよ！　お前が、その小太刀をあたしに渡して、悪霊を憑依させたんじゃないか。あたしはね。あんたに小太刀を渡されたとたんに、誰かが体に入ってくるような妙な気分になって、その後の記憶が抜けちまってるんだ」
「そして、その間に与吉殺しは起こった。つまり、お前が悪霊を操って、人々を恐怖におとしいれている張本人だということだ」
「バカバカしい……。何かの間違いです！　行きましょう十兵衛様」
　竜胆は、十兵衛とともに逃げようとしました。しかし、そこにロープが飛んで来て、竜胆の体を縛り上げます。
「ヘイ!　ガール！　ワルい子はこのゼニガタ・ケイジが逃がさないネ！」
　金髪碧眼の岡っ引きが叫びます。
「お待ち下され！　これは何かの間違いでござる！」
　十兵衛は必死で竜胆をかばおうとしました。しかし、役人達は十兵衛の声など聞こうともしません。ついに怒った十兵衛が刀に手をかけた時……。
「おやめ下さい、十兵衛殿！　このようなところで、争ってはなりません！」
　竜胆が叫びました。
「しかし」
「私は大丈夫です。濡れ衣ですから、すぐに疑いは晴れるでしょう。それより、あなたは兄の元へ行って『会いに行けなくて済まない』とお伝え下さい」
「は……」
　やむなく、１人待ち合わせ場所に向かう十兵衛。しかし、そこに藤麻は現れませんでした。どうやら、あの文は、竜胆をおびき出すための罠だったようです。
　しかも、竜胆は、まともなお調べもないままに打ち首を申し付けられてしまいました。しかも、処刑の日は三日後という異例な速さです。

「ふざけんなよ」
　ハヤテが怒ります。
「ぜってえ、なんか裏があるって」
「うん」
　十兵衛もうなずきました。
「このままでは、竜胆が殺されてしまう。そうならぬうちに、六角の屋敷に乗り込み、真犯人と思われる刹那を捕まえ、奉行所に連れて行かねば……しかし、刹那を捕らえるには、珠姫の力を受け継ぐ竜胆ぎみの力が必要になるであろう」
「だったら、俺が竜胆を牢から逃がしてやるぜ！」
「何？　牢破りは重罪だぞ！」
「大丈夫！　大丈夫！　俺にまかしとけって！」
　笑いながら飛び出していくハヤテ。
　その後ろ姿を見て、十兵衛はため息をつきました。
「大丈夫か？　あのひよっ子。無茶をせねばよいが……」
　
　こうして、十兵衛とハヤテは各々、各学校に助けを求めました。二人の要求を要約するとこうなります。

　どうか、皆様の力で、竜胆を牢から救い出し、六角の屋敷に乗り込んで刹那を捕まえて下さい！

　こんにちは。天宮です。
　『とりかえばや男の娘』の第２話です。学校の指定はありませんので、前回参加された方はもちろんの事、参加されてない方もどしどし参加下さい。

　さて、今回は皆様は３つの行動が取れます。
　一つ目は、
　奈落人に取り憑かれる事です。
　上にも書いた通り、刹那は聖なる者を滅ぼす魔剣を手に入れるために、奈落人に依り代を提供しているのです。魔剣を手に入れるためには『愛する者を手にかけた罪人の魂』を必要とするそうです。そのために取り憑かれた人々は愛する者に襲いかかるのです。
　憑依する奈落人は、いずれも生前さまざまな悲恋を抱えて亡くなった者ばかりです。
　例として『最愛の人と心中するはずが自分だけ死んでしまった』『八百屋お七のように、愛する人に会いたいがために火つけをし、火あぶりにされた』『婚約者が自分を裏切り、財産目当てで地位のある娘と結婚したので殺してしまった』等です。彼（女）らは、生前の記憶は失っていますが、魂にはその痛みが刻み込まれており、ナラカで苦しみ続けています。そして、その苦しみから逃れるためには、地上でもう一度肉体を取り戻し、欲しかったものを手に入れなければならないと信じ込んでいます。刹那は、彼らのそういう思いにつけ込み、『魔剣を手に入れた奈落人に限り、自分の呪術を用い生前の姿で地上に蘇らせる』という約束をしています。
　という事を頭において、奈落人に取り憑かれてみてください。
　取り憑かれたキャラは、取り憑かれたままパートナーに襲いかかって下さい。ただし、種族が、魔道書や魔鎧の方は取り憑かれる事ができません。、取り憑かれるのは刹那に協力している奈落人のみとさせていただきます。また、奈落人に取り憑かれても、その奈落人と契約することはできません。


　二つ目は
　ハヤテとともに、竜胆を牢屋から助け出す事です。
　以下は、牢屋に忍び入るにあたっての注意です。
　牢屋には、牢番がいて侵入者を見張っています。彼を倒さない限り牢屋には近づけません。
　牢屋の中には牢名主３人囚がいます。彼女達は減刑を条件に、奉行から竜胆の見張りを頼まれています。彼女達を倒して竜胆を連れ出して下さい。
　竜胆を連れ出す事ができたら、六角の屋敷にいる十兵衛達と合流させて下さい。

　★牢番
　ゼニガタ・ケイジ……金髪、碧眼の岡っ引き。得意技は縄投げと銭投げ。命中率は100％。牢の鍵を持っています。

　★牢名主３人囚
　関取のお富士……もと女横綱。相撲賭博がバレて捕まっている。でかくて強い。得意技は突っ張りと左四つからの寄りと投げとふんどし外し。口癖「どすこい」
　アマゾネスのミリア……異国のアマゾネス。言葉が通じないのにいらだち、町中で大暴れ。店一軒を潰して捕まる。キレると、両手の銃をめくらめっぽう撃ちます。口癖「What?」「shit!!!!!!!」「サノバビッチ！」
　スリのお蝶……スリの現行犯で捕まった。正体は竜胆を見張る為に送り込まれたくのいち。美形で忍びとしての腕はたしかだが、気が弱くて謝りながら攻撃する変な忍者。蝶を飛ばして相手を幻惑させ、その間に武器で攻撃してくる。口癖「こんな争いをしなくてはいけないのも、私がくのいちなんかしているせいなのよ……」

　★その他、奉行所内では岡っ引きや役人に遭遇する事がありますのでご注意下さい。遭遇したときは普通にチャンバラになります。

　
　三つ目は
　十兵衛とともに六角道元の忍者屋敷に乗り込む事です。
　六角屋敷の中には刹那がいます。刹那はヤーヴェの闇結界の力を借りて奈落人が存在できる空間を作っています。刹那に取り憑いている邪鬼ヤーヴェを倒してこの結界を破らないと、憑依事件は終わりません。
　忍者屋敷には６つの部屋があり、以下のトラップが仕掛けられています。

　１つめの部屋　つり天井。
　２つめの部屋　矢の降ってくる部屋。
　３つめの部屋　壁から刃が襲ってくる部屋。
　４つめの部屋　四方から毒蛇が襲ってくる部屋。
　５つめの部屋　落とし穴（中には竹槍）
　６つめの部屋　六角道元とその配下達のいる部屋。

　屋敷は、その名の通り、六角形になっています。上の６つの部屋は図形の外周部分に当たる部屋であり、中心部にもうひとつ、七つ目の部屋があります。刹那は、その七つ目の部屋に隠れています。真ん中の部屋にたどり着くには外周の６つの部屋を攻略しなくてはなりません。部屋はふすまで仕切られていて、１から番号順に数が大きいほど奥の部屋となります。順番に一部屋ずつ攻略していき、６つめの部屋にいる道元達を倒すことができれば、真ん中の部屋に入る事ができます。
　なお、これらの罠は刹那の呪術によって強化されているので、アドベンチャラーの『トラップ解除』は基本的に効かないとします。また、狭い町並みですので、破壊工作などで屋敷を破壊するなどの手段はNGとします。ウィザードやサイオニックのスキルは効きますので、どんどん使って下さい。

それでは、皆様のご参加をおまちしております。





■補足説明
柳生十兵衛三厳……全身黒づくめの隻眼の剣士。常に愛用の剣『三池典太』を携えている。柳生新陰流の使い手。ナラカからパラミタに上がって来てからしばらくは、自らのうちに眠る邪悪な心を制御できずに強い敵を求めてパラミタ大地で暴れ回っていたが、日下部家の先祖である珠姫の破邪の力で正気に戻る。それ以来、珠姫の血を受け継ぐ日下部家を護る事を己の信条としています。

日下部竜胆……日下部家の３男。生まれてすぐに捨てられ、里見村で女性として育てられる。外見は青みがかったストレートのロングヘアのどう見ても美少女で、横笛と舞踊の名手。お気に入りの横笛と、小さな守り刀を肌身離さず持っている。養父より、護身用の忍術を仕込まれているが実戦経験はない。武器は横笛による破邪の音色。

疾風のハヤテ……十兵衛子飼の忍び。15才で血気盛んな野生児。猪突猛進。

ヤーヴェ……邪鬼。元々はマホロバ人。生来邪な性分で、歪んだ性根のまま鬼の力を覚醒させ邪鬼になる。今は、自分を封じ込めた重宗に恨みを抱き、日下部家にたたっている。

六角道元……腹黒大膳配下の甲賀流忍法の首領。

六角配下の忍び達……奇襲・待ち伏せを行います。武器は手裏剣や苦無（くない）や鎖鎌です。武器には毒が塗られていて、少しでも斬られると、全身に毒が回ってしまいます。また、呪術で敵に幻術（火炎の術、雷神の術、分身の術、陰形の術、変身の術、等）を見せて混乱させます。

・奈落人に取り憑かれる

・ハヤテとともに、牢に閉じ込められた竜胆を助ける。

・十兵衛とともに六角の忍者屋敷に忍び込む

・十兵衛とともに六角屋敷の忍び達と戦う