なし

　
　葦原島の山中にある温泉旅館風船屋（ふうせんや）。

「……あうぅ、どして、こないなことに」

　風船屋の女将音々（ねね）は、自身の宿を前に心底から呻きました。
　彼女は１０代前半の黒髪の小柄な少女でしたが、その悲哀に満ちた落胆ぶりには、どこまでも深い哀愁がありました。

　雪の降り始めたこの季節――
　風船屋は、アシハラビッグフットが率いる野生のアシハラザルたちに占拠されていました。
　宿の中では、お猿たちが好き勝手に騒いだり、くつろいだり……とてもお客様をお迎えできるような状態ではありません。

「せっかく皆に助けてもうて、買収話を乗り切ったばかりじゃったのに……。
　お母はん……ウチはどうしたら……」

　入っていた予約は全てキャンセル……このままでは、風船屋は潰れてしまいます。
　風船屋は、またも大ピンチを迎えていたのでした。

「女将さん」

　いつもは無口な板前の源さんに声をかけられ、音々は振り返りました。
　見ると、源さんは手にスコップを持って立っていました。
　その後ろにあったのは……。

「かまくら？」
「ええ。宿が使えないならば、かまくらでお客様をお迎えするしか無いでしょう。
　かまくらはしっかりと作れば意外と暖かいものです。
　大きめに何個も作り、床に毛皮を敷いたりして工夫すれば、快適な宿泊を提供することができます」
　
　と、源さんがふらりと身体を揺らして、雪の地面に膝をつきました。

「ど、どうしたのじゃ！？」
「……いえ、なに、ちょっと……熱っぽいだけで、さぁ……」

　音々は源さんの額に触れると、彼はとんでもない高熱を出していました。

「あつっ、大変な熱やんか！」
「女将さん……これを……」

　源さんが震える手で、とある雑誌を差し出します。

「源さん……」

　音々は『パラミタ在住の地球人向け雑誌』を受け取り、源さんの手を強く握りました。

「分かった。
　せやから、源さん、今はゆっくり休んで……！」

　そうして、音々は早速、雑誌に広告を打ったのでした。


　＝　＝　＝

＜アルバイト求人ページより抜粋＞
　週末、風船屋で働いてみませんか？
　三食＋（かまくらで）寝泊まり＋温泉露天風呂付き　コントラクター優遇。
　初心者でも大歓迎！

※宿が野生の猿たちに占拠されてしまったので、お猿確保に自信のある方もお待ちしております。


＜広告ページより抜粋＞
　風船屋においでませ！
　宿が雪で埋もれてしまったので、風船屋は、“かまくら”お宿に大変身中！
　情緒あふれる“かまくら”お宿に泊まりながら、雪景色を臨む温泉露店風呂をぜひご堪能ください！

このシナリオは、学校の所属関係なくご参加いただけます。
また、このシナリオは『温泉旅館においでませ！』の続編となっていますが、
前回参加していない方、前回のリアクションを未読の方でも十分楽しむ事ができます。


野生のお猿たちに旅館を占拠され、かまくらお宿になった風船屋。
猿やビッグフットの対処にあたる方、バイトでせっせと稼ぎたい方、ゆったりまったり温泉旅行を楽しみたい方……、
そんな、風船屋のために一肌脱いでくださる方を今回も大募集です！


■風船屋の状態について
　現在、かまくらが部屋代わりとなっています。

　宿の調理場はお猿に占拠されてしまっているため、
　調理は、宿の近くにある源さんの家の台所を借りることになります。

　その他、接客に必要な備品などは宿の外の倉にあります。


■温泉露天風呂について
　旅館に併設されている露天風呂はお猿たちに占拠されています。
　旅館から少し離れた第二露天風呂には、お猿たちがおらず、のんびりと過ごすことが出ます。
　第二露天風呂には簡易脱衣所があります。


■野生のアシハラザルたち
　いつもは風船屋の温泉に浸かりに来る程度でした。
　が、ある日、急に宿の中まで入り込んで、一気に宿を占拠してしまったのです。
　今は、調理場から客室、宴会場までを占拠して我が物顔でくつろいでいます。
　卓球まで楽しむ暴虐ぶりです。

　お猿たちは非常にすばしっこく、『酩酊状態になる日本酒のようなもの＜ポンシュー＞』を口に含んで霧状に吹きかけてきます。
　また、宿のあちこちにはポンシューを被せるような罠が仕掛けられています。

　ポンシューを吹きかけられたり、被せられるとＰＣは酩酊状態になってしまいます。


■アシハラビッグフット
　白い毛をした大猿のメスです。
　猿たちを扇動して宿を占拠しました。
　今は、調理場から持ち出した食料と共に広間で、ぐうたら過ごしています。
　猿たちを全て捕まえても、このビッグフットが居座ったままでは宿を使うことは出来ません。
　
　このビッグフットは状態異常に耐性があり、体力と力も非常に高く、
　戦闘になると、ほぼ確実に宿が破壊されてしまうため、戦いで追い出す事が出来ません。
　
　本来、アシハラビッグフットはこの時期、オスと共に行動しています。
　しかし、このビッグフットは恋愛より『ぐうたら』を選んだ、いわゆる干物女のビッグフット版なのです。
　
　そのため、
　恋人とイチャつく様を見せつけたり、恋人同士を演じたりなどして、
　彼女の恋愛欲を極限まで高めてあげれば、自ら恋を求めて宿から出て行ってくれるかもしれません。

　ちなみに、このビッグフットは知能が高く言葉が通じます。
　しかし、本人は「ウホウホ」しか喋れません

・お猿をゲッツ！

・バイトしまーす！

・まったり楽しみたい

・ビッグフットの前でいちゃつく！