シナリオガイド
正義か悪か。ウサギ小僧を捕まえろ!
シナリオ名:謹賀新年。黄金の雨の降り注ぐ。 / 担当マスター:
天宮 あると
元旦。
葦原城下はすっかりお正月気分に包まれています。
裏路地では、凧揚げに、羽子板に、コマ回しをする子供たち。
表通りでは、初詣に向かう華やかな人達。そして、初売りでにぎわう、店、店、店。あちこちに露店も立ち、まるで縁日のようです。
その、華やかな通りを、日下部竜胆は、柳生十兵衛(やぎゅう・じゅうべい)、ハヤテとともに歩いていました。目的は葦原神社の参拝です。竜胆は薄紫の振り袖を美しく着こなしています。
「まったく、どっからどう見ても奇麗な女にしか見えねえよな」
ハヤテが言いました。
「俺、いまだに、信じられねえもん。竜胆様が男だなんて」
「まったくだな、いっそ、ずっとその姿でいてはどうだ?」
十兵衛がからかうようにいいました。竜胆はバツが悪そうに答えます。
「私としては、このような格好は卒業したいのですが、兄上がぜひ着ろというのだからしかたありません」
この振り袖は、兄、藤麻からの贈り物なのです。
「藤麻様って、結構あれだよな」
つぶやくハヤテ。しかし、それには答えず、
「そんなことより、二人とも、あれを……」
そう言うと、竜胆は華やかな往来を指差しました。
生まれてからずっと故郷の里見村から出た事の無い竜胆には、目に映るもの何もかもが新鮮でたまりません。あちこちの店を覗いては、しきりに感心します。
「あそこに売っている福袋とは、何ですか?」
「十兵衛、この綿のようなものが本当に食べられるのですか?」
「ハヤテ。見て! あのように凧がたくさん飛んで……」
葦原城下の正月を堪能しつくしているようです。
その時です。
信じられないような事が起こりました。
なんと、頭上からいきなりゴルダが降ってきたのです!
チャリーン! チャリーン! チャリーン!
ゴルダは金色の雨のように降り注ぎました。
「ゴルダだ! ゴルダだ!」
人々は口々に叫びました。慌てて空を仰ぐもの。地べたに這いずりゴルダを拾う者等々……その場は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなります。
そんな人々を見下ろすように一人の男が屋根の上に立ちはだかりました。奇妙な事に、男は顔にウサギの面を着けていました。そして、人々に向かって叫びました。
「謹賀新年! めでたく年が明けて何よりだぜ!」
皆、動きを止めて一斉に男に注目しました。そして、一瞬の沈黙の後、その場は興奮のるつぼと化しました。
「ウサギ小僧様じゃ」
「ウサギ小僧様が来て下さったぞ!」
「おお、あれが、ウザギ小僧様?」
「年始早々、ありがたや、ありがたや」
中には拝みだす者まで出る始末。
衆人の歓声を浴びながら男は叫びました。
「年始早々、このウサギ小僧様がてめえらにお年玉をくれてやるぜ! 持ってけドロボー!」
そして、脇に抱えた千ゴルダ箱から、次々にゴルダを掴んでは、ばらまいていきました。
金色の雨の中で竜胆は十兵衛に尋ねました。
「あの人は、一体なんですか?」
「ウサギ小僧とよばれる義賊だ」
十兵衛が答えます。
「義賊とは、なんですか?」
「つまり、正義のドロボーさ」
十兵衛の代わりにハヤテが答えました。
「あいつは、悪徳商人とか強欲な代官からしか金を盗まないんだ。しかも、盗んだ金を独り占めしないで、貧乏人にも分け与えて回ってるから、貧乏人には大人気なんだ」
「へえ……」
竜胆は感心したように屋根の上の男を見つめました。
「さすが、葦原には色々な人がいるのですね」
と、その時……
「ダメだーー! ダメだ、ダメだ、ダメだ!」
威勢のいい声とともに一人の少女が叫びながら走ってきました。長い髪を後ろで三つ編みにまとめあげ、額にはねじり鉢巻を巻いています。
「その金を持ってっちゃいけない! それは、大事な金なんだ!」
「大事なお金?」
竜胆は首を傾げました。
「どういうことです?」
すると少女は答えました。
「それは、『からくり人形』の材料を仕入れるための大事な金なんだよ!」
「からくり人形? お主は人形職人なのか?」
十兵衛が尋ねます。
「ああ、そうだ。アタシは天女って名前の人形職人だ。」
「ああ。人形師の天女なら知っているぞ。確か、菊屋の者だろう? 魂のこもったよい人形を創ると評判だ」
十兵衛の言葉に天女はうなずきます。
「そのとおり。あたしは菊屋の天女だ。あの千ゴルダは、とある偉い方から預かった大事な材料費なんだ。店の蔵にしまっといたんだが、夕べあの野郎に盗まれちまってさ」
「嘘付けよ。たかが、からくり人形一つ創るのに、なんで千ゴルダもいるんだよ」
周りにいた人達が野次を飛ばします。すると、天女はムキになって叫びました。
「アタシが創るのは、そんじょそこらのからくり人形じゃねえんだ。今まで、誰も見た事のないような、どでかくて、とんでもないモノなんだよ! 返してくれよ、それがねえと、店の連中みんな縛り首になっちまうよ」
すると、さらなる罵声が飛びました。
「へっ! ウサギ小僧様に盗みに入られるような店だ。大方裏で悪いことでもしてたんだろ?」
「してねえよ! うちの旦那様は質素で、真面目で、正直な偉い方だよ」
「どうだか! 分かったもんじゃねえぞ」
野次馬はそういうと笑いながら散っていきました。その後には、ウサギ小僧の姿もなければ、ビタ一文たりとも残っていません。
「ああ。どうしよう」
天女は青ざめた顔で言いました。
「こうなったのも、全部アタシの不注意のせいだ。夕べ、うっかり蔵の鍵を閉め忘れて寝たりしたから……」
見かねた竜胆が声をかけます。
「娘さん。大丈夫ですか?」
すると、ハヤテが言いました。
「ほっとけよ。ウサギ小僧の入るような店だ。本当に裏で悪いことしてるんだと思うぜ」
「してねえよ!」
天女が言い返します。
「本当だよ。信じてくれよ。アタシは旦那様の事は小さい頃から知ってるんだ。孤児のアタシを、立派に育て上げてくれたうえ、人形職人の技まで教えて下さった、本当に素晴らしい方なんだ」
そして、天女はまっすぐに竜胆達を見つめました。澄んだ瞳です。嘘を言っているようには思えません。
「十兵衛、ハヤテ、この方を助けて差し上げませんか?」
竜胆が言いました。
「いいでしょう」
十兵衛はうなずきました。
「しかし、助けると言ってもどうやって? 金はばらまいちまったんだぜ」
ハヤテの言葉に十兵衛が答えます。
「知らぬのか? ウサギ小僧を捕まえたら賞金千ゴルダ出るんだぞ」
「……知らなかった。けど、義賊を捕まえるなんて……」
「もちろん、菊屋がまともな店だというのが前提だ。そのため調査はさせてもらう。万が一、菊屋が影で悪事を働いていた場合の覚悟はあるか?」
「……もちろん。あるさ」
天女はうなずきます。
それから十兵衛は有志を募り、菊屋の調査及び、ウサギ小僧の探索を始めたのです。
担当マスターより
▼担当マスター
天宮 あると
▼マスターコメント
お久しぶりです。天宮です。早いもので気付いたら年末ですね。
さて、今回、皆様には、葦原城下のお正月を堪能しつつ、ウサギ小僧に遭遇していただきたいと思います。
葦原城下では様々なイベントがあります。主に以下のようなものです。
●片島屋、伊勢屋、梅坂屋での正月大安売りと、福袋の販売。福袋は女性用の着物、小間物、お菓子に、下着と色々あります。福袋を購入される方は挨拶掲示板で挨拶をして下さい。掲示板のダイス目の合計で何が買えるかを決めたいと思います。中身は、以下の通りです。
2:お正月のお菓子セット(小手鞠飴、こんぺいとう、小さなきな粉とあんこ餅、貝入り水ようかん、色とりどりの砂糖菓子等々)
3・4・5:小間物(櫛やかんざし、秘湯の入浴剤セット、お財布、巾着など)
6・7・8:下着(男性はふんどし)
9・10・11:着物(男性は羽織と袴のセット)
12:葦原城下町で使用できる商品券
ゾロ目(2、12を除く):セクシーランジェリーセット(男性は柄物ふんどし12枚セット)
※以上の商品は、アイテムとしては付与できませんのでご了承下さい。
福袋をご購入いただいた方は、福袋の中身を見た時のリアクションをアクションとして書いて下さい。
●書き初め大会を街の広場でやっております。誰でも自由に参加できます。ふるってご参加下さい。なんでも自分の好きな言葉を書いて下さい。
●街外れの葦原神社は初詣客でにぎわっています。ここには、有名な縁結びの鈴があり、男女が手をつなぎ、目を閉じて無事に鈴までたどり着いて降る事ができたなら、その恋は成就するという言い伝えがあります。(鈴までの距離は5メートル程度です)また、恋みくじや、恋愛成就によく効くと評判のお守りが売っています。
●街中にはウサギの頭にちょんまげの生えた『ピョンまげ』と呼ばれるゆる族が出没します。写真撮影は自由です。
ウサギ小僧は、いたずら好きのお祭り好きなので、正月ムードにあふれた葦原城下に必ず潜んでいます。そして、上記のイベントで楽しんでいる皆様の前に突然現れます。凧に乗って現れたり、変装したり、水の中から現れたりと登場の仕方は様々です。
正月気分を堪能したい皆様は、葦原城下の中であればどんな行動を取ってもOKです。ただし、必ずウサギ小僧に遭遇して下さい。どんな状況で出会ったかは皆様が自由に考えて下さい。その情報を元に、捜索隊がウサギ小僧の居所を突き止めます。
もちろん、遭遇するだけでなく捕まえて下さる方も募集しております。その場合は以下の点に注意して下さい。
●ウサギ小僧はとてもすばしこい上に、変装の名人です。
●いつもウサギの面をかぶっていて、その素顔は誰も知りません。
●逃げるためには手段を選びません。凧に乗って空を飛ぶ事もできるようです。
●その身のこなしから、元は忍びの者のように思われます。また、魔法も熟知しているように見受けられます。
●しかし、義賊であり平和主義者でもある彼は、よほどの事がない限り武器を使って戦う事はありません。
●ただ、防御はしっかり固めています。特に魔法攻撃への対策はバッチリ固めています。
●彼の本職はドロボーですので、油断していると貴重なモノ(主に武器)を盗まれてしまいますのでご用心下さい。真っ当な庶民からお金を盗む事はありませんが、金持ちのお大尽からは財布を失敬する事もあるようです。
尚、捜索に参加される方(特に情報収集する方)は、必ずしもウサギ小僧に遭遇する必要はありません。
それでは、多くの方々のご参加をお待ちしています。
菊屋の善悪をを確かめ、事件の真相を突き止めるのは皆様方です。
■補足説明
柳生十兵衛三厳……全身黒づくめの隻眼の剣士。常に愛用の剣『三池典太』を携えている。柳生新陰流の使い手。ナラカからパラミタに上がって来てからしばらくは、自らのうちに眠る邪悪な心を制御できずに強い敵を求めてパラミタ大地で暴れ回っていたが、日下部家の先祖である珠姫の破邪の力で正気に戻る。それ以来、珠姫の血を受け継ぐ日下部家を護る事を己の信条としています。
日下部竜胆……日下部家の3男。生まれてすぐに捨てられ、里見村で女性として育てられる。外見は青みがかったストレートのロングヘアのどう見ても美少女。横笛と舞踊の名手。お気に入りの横笛と、小さな守り刀を肌身離さず持っている。養父より、護身用の忍術を仕込まれているが実戦経験はない。武器は横笛による破邪の音色。
疾風のハヤテ……十兵衛子飼の忍び。15才で血気盛んな野生児。猪突猛進。
▼サンプルアクション
・十兵衛達とともに、菊屋が本当に真っ当な店かどうかの調査をする。
・竜胆達とともにウサギ小僧を捕まえる。
・書き初めをしていたらウサギ小僧に遭遇してしまった
・ピョンまげだと思って写真を撮ったらウサギ小僧だった。
・好きな人と一緒に縁結びの鈴を振りに行ったつもりだったが、どうやら相手はウサギ小僧だったようだ。
▼予約受付締切日
(予約枠が残っている為延長されています)
2011年12月27日10:30まで
▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)
2011年12月28日10:30まで
▼アクション締切日(既に締切を迎えました)
2012年01月01日10:30まで
▼リアクション公開予定日(現在公開中です)
2012年01月18日