今年も、夏合宿の季節がやってきました。
「というわけで、今年もびしびし鍛える」
きっぱりと、ジェイス・銀霞がガイドさんを代表して言いました。
「ハーイ、質問でーす」
一人の女生徒が挙手しました。
「発言を許可する」
ピッと、ライトニングウイップの先を向けてジェイス・銀霞が言いました。
「今年も、夏合宿は臨海学校だと聞いていたんですけどー。なんであたしたち、山奥にいるんですかあ?」
「うむ、いい質問だ」
得たりと、ジェイス・銀霞がほくそ笑みました。
現在、学生たちがいるのは、イルミンスールの森の北、コンロンとの境にある山地の西側です。
「そうだよな。せっかく水着持ってきたのによお」
「まあ、川もあるし木もあるし、食料調達にはそれほど困りそうにもありませんが……」
「それよりもだ、なんでこんなにたくさん段ボールとか空のペットボトルとかがあるんだ? まさか、これでテントとか小屋とか作れって言うんじゃないだろうな」
ちょっと、例年と勝手が違うので、生徒たちはぶーぶー文句を言っています。
「私も鬼ではない。そんな東屋でお前たちに雨露を凌げとは言わん。ちゃんと、今夜の寝泊まりとしては豪華なバンガローと、豪華な食事を用意してある」
ジェイス・銀霞の言葉に、おおーっと生徒たちから歓声があがりました。
「それで、その豪華なキャンプセットは、どこにあるんですぅ?」
みんな、周囲を見回していますが、どこにも、そんな物はありません。
「目の前を流れている川の下流、パラミタ内海の海岸に用意してある。では、そういうことだ。生きて辿り着け」
「ちょっと待ったあ、どういうことやん」
そんな何キロも先の場所に準備をしてあっても、どうやってそこまで行けと言うのでしょう。なんだか、嫌な予感がします。
「そこにある段ボールとか、適当な物を使って船を作り、川を下ってこいということだ」
「ええー!!」
予感があたりました。
「一応釘を刺しておくが、乗り物を使ったり、動力を使ったり、空を飛んだりした場合は即刻川に沈めるので、そのつもりでいろ。川の全領域にスナイパーを待機させてあるからな。それでは、今夜のディナーでまた会おう」
そう言うと、ガイドさんたちは飛空艇で先に海岸へと向かいました。