なし

――夏も終わり、季節は秋へと突入。
　プールのシーズンも終わり、暇になったからどうだ、とヒラニプラのとあるスパ施設を経営するボニーの誘いを受けて私、金元　ななな（かねもと・ななな）は色々な人を誘って遊びに来ていたんだ。
　みんなが楽しんでいたんだけど、それは悲鳴で終わりを迎える事になったんだ……
　プールの真ん中で、小暮　秀幸（こぐれ・ひでゆき）君が逆立ち状態で浮いているのが発見されたんだ。まるでミステリー『猫神家の一族』の騒馬さんみたいに……
　一体誰がこんなひどい事を……今、施設にいるのはなななの他に、高円寺　海（こうえんじ・かい）、雅羅・サンダース三世（まさら・さんだーすざさーど）、アッシュ・グロック（あっしゅ・ぐろっく）、アゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）、更に他のお客さんたち。
　犠牲になった小暮君の為にも、真犯人を見つけてやる！　じっちゃんの名に懸けて真実が一つとは限らない！

「あの、突っ込みどころ満載なんだけど、誰に語ってるの？」
　一人で語るなななに、アゾートが突っ込む。
「あらすじって必要だよね？」
「だから誰に？　それに大体『名に懸けて』って、おじいさん探偵だったりしたの？」
「え？　そんな設定一切ないよ？」
「ああ、そう……」とアゾートが呆れた様に言った。まともに相手にしたら負け、と悟ったのだろう。
「それにしても不可解な事件だよね」
　なななが顎に手を当てて唸る。

　事件を簡単に纏めると、こうだ。
　皆がプールで遊んで居る最中、突然スライダーのある方から大きな音がしたため駆け付けると、スライダーの着地点となるプールの中央に小暮が逆立ち状態で浮いていた。
　プールは結構な深さで人を担いでいくのは難しい。スムーズに行うには少なくとも、浮き袋かボートの様な物が必要だ。
　しかし駆け付けた時にはそのような物はあるはずも無かった。普通なら不可能犯罪――そう、普通なら。
　だがここに集まっているのは皆コントラクター。やろうと思えば誰だって可能だ。

「けど探せば真相は見つかる。きっと真犯人を見つけるよ！」
「随分とやる気だね」
「そりゃそうだよ！　どうやらこのシナリオ、ノーマル一本じゃ収まり切りそうにないね！」
「ごめん一体何の話？」
「このまま前後編、いや前中後編まで――」
「取り込み中の所申し訳ないんですが……」
「あれ、ボニーどうしたの？」
　やる気に燃えるなななを見て、申し訳なさそうな表情でボニーが口を開いた。
「あの……真相がわかりましたよ」
「「え゛」」

　ボニーが語った真実とは、次の様であった。
　まず、小暮がウォータースライダーを利用しようと頂上まで登る。しかしそこの出入り口は老朽化の為、立てつけが悪くなっていた。
　小暮は諦める事はせず、無理矢理開けようと力いっぱい扉を押すと、先に蝶番の方が壊れてしまった。バランスを崩しつつ、外に出て柵に捕まったが、こちらも老朽化の為壊れてしまい――勢い余って転落。つまりは事故だったのである。

「えっと、それは誰の証言？」
「小暮さん本人からです」
「ああ、成程」
　ボニーの言葉にアゾートが納得したように頷く。別に小暮は浮かんでいた状態で発見されただけであり、そもそも死んではいないのだ。　
「まぁとりあえず、事故だってわかったし一件落着――」

「果たして本当にそうなのかな？」

　ななながアゾートの言葉を遮った。
「だって自分がやったって証言が……」
「その本人の証言、鵜呑みにしていいのかな？」
「いや本人の証言は鵜呑みにしていこうよ！　一体どうしたの？」
「解らないの？　ここ、まだシナリオガイドなんだよ？　こんなに早く終わらせていいの？　このままだとリアクションにならずに終わっちゃうんだよ！？」
「いや一体さっきから何の話をしているのかボクにはよく解らないんだけど」
「あの、私もわからないんですが」
　戸惑うアゾートとボニーを尻目に、なななはキメ顔を作り言い放った。

「このままガイドまで出したというのにそれで終わらせるわけにはいかない……この既に解決した事件、シナリオ一本分もたせてやる！」

　普通にやったら精々数行で終わってしまう事件と呼んでいいのか疑わしい程簡単な事件を何とかシナリオ一本もたせる努力をする迷探偵、その名も宇宙刑事金元ななな！
　次々繰り出される推理にガンガン増える一方の容疑者！
　その果てに真犯人は見つかるのか見つからないのか――※ヒント：もう解決しています

　――ここまでシナリオガイドです。

　初めましての方は初めまして。そうでない方はまたお遭いしましたね。高久高久です。
　今回もよろしくお願いいたします。

　さて今回はガイド内で解決してしまった事件を何とか引っ張ってシナリオにする、というメタ要素全開な内容となっております。

●事件について簡単におさらい
　ウォータースライダーのてっぺんからなんやかんやあって小暮君がプールに落下、という不幸な事故だったのさ。以上。
　事件についての真相はこの通りです。『他に真相があるんじゃないの？』とお思いの方もいるでしょうが、ありません。完全に事故です。
　今回はこの事件が既にガイドで解決してしまった為、このままでは終わってしまう話を何とか引っ張るのが目的となっております。
　ここで注意してもらいたいのは『事件は既に解決している』という事です。なので『実は真犯人は別にいた！』といったことは一切ありません。
　アクションで『実は私が犯人だったんだよ！（ナ、ナンダッテェー）』というのは可能ですが、実際には真犯人もへったくれもないので戯言、というオチがつくのでご注意ください。

　アクション例は以下の通りです。

●推理する
　既に解決したこの事件について推理を行います。
　内容は自由です。動機面についてでもいいですし、被害者の小暮をどうやったらあんなところに配置できたのかというトリック面でも構いません。
　メタな内容、妄想レベルの勝手な動機付け、強引な力技など『それ推理とはいえない』というものどんと来いです。ノックスの十戒など忘れてしまいましょう。
　ただし気を付けてほしいのは、このシナリオの内容がコメディであるという事と、既に事件は解決しているという事です。
　真面目に本気の推理をしても「いや、それは違うから」とスルーされてしまうでしょう。

●捜査する
　事件に関して捜査してください。スパ施設を家探しすれば何かは見つかります。何かは。
　また自称情報屋として、ななな達に情報を与える役に回っても構いません。事件に関する情報でなくても構いません。
　※見つかった物や教えてくれる情報をアクションでお願いします

●スパ施設で過ごす
　もう事件は解決していますし施設で遊んでいても構いません。
　ただしまがいなりにもミステリー空間は続いております。つまり死亡フラグがある、ということです。

　※死亡フラグ例：単独行動、リア充、『生きて帰ったら故郷の幼馴染にプロポーズするんだ……』『せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ！』といったセリフ等々

　死亡フラグを立てた場合、各所で有名な全身黒タイツさんが貴方をＳＡＴＵＧＡＩしに来るでしょう。
　しかしＳＡＴＵＧＡＩされても今回の内容とは全く関係ないので、ななな達は一切推理してくれません。ただデッドリスト入りするだけですのでご注意ください。
　※デッドリスト入りしても他シナリオに影響は全くありません。コメディなので。

●ＮＰＣについて
　今回スパ施設に来ているＮＰＣは以下の通りです。

　金元ななな：捜査を行っています。今回電波のせいかやたらとメタいです。
　アゾート・ワルプルギス：ツッコミ役です。
　ボニー：ツッコミ役その２です。
　小暮　秀幸：へんじがない、ただのしかばねのようだ※生きてます

　以下の３名はスパ施設内でなんやかんやしています。
　高円寺　海
　雅羅・サンダース三世
　アッシュ・グロック

　ＮＰＣを犯人として推理をしても嫌われることは無いのでご安心ください。

　それでは皆様の強引なアクション、お待ちしております

・動機面で推理する

・トリックについて推理する

・トリックについて推理する２