なし

　――イルミンスール魔法学校、大図書室

　シャンバラ各地の様々な魔術書や古文書、石板などを収めたここは、イルミンスール生はもちろん、他校の生徒も申請すれば気軽に利用できます。
　そのためイルミンスールの制服に交じって、他校の制服を着た生徒の姿も見受けられます。
　その中に、キロス・コンモドゥス（きろす・こんもどぅす）の姿もありました。
　彼の机の周りには、古文書や石板が置かれています。普段粗野なキロスが机に向かって一心不乱に調べ物をしている光景はなかなかシュールですが、目的のためなら努力を惜しまない彼の意外な一面が垣間見えているともいえます。

「なるほどな……“琥珀の眠り姫（アンバー・コフィン）”はヴァルトラウテ家のお嬢様の可能性か……」

　彼は先日、タシガン空峡にある気流コントロールセンター跡で、空賊やドラゴンライダーの間で噂になっている伝説の１つ“琥珀の眠り姫（アンバー・コフィン）”を手に入れたといわれています。
　それはシャンバラ古王国時代、崩壊するシャンバラ王国より脱出しようとした令嬢を乗せた飛空艇がタシガン空峡で座礁し、令嬢は眠りに就いたまま未だに漂っているというものです。
　令嬢の親は、彼女がシャンバラ古王国の崩壊を見ないよう琥珀の中で眠らせた、という噂から、いつしか琥珀の眠り姫と呼ばれるようになりました。
　キロスは彼女を蘇らせようとしているようです。
　素性が分かれば、そこに琥珀の封印を解く鍵があるかもしれないからです。
　ヴァルトラウテ家と聞いて、キロスの中に一人の人物が思い当りました。

「フリューネ、いや彼女の先祖のユーフォリアに聞けば何か知ってそうだな。後は……ヴァルトラウテ家の邸宅や別邸の場所を調べて、そこを現地調査するしかないか……」

　キロスは古文書の必要な箇所をメモすると、古文書と石板を一度返却し、新たな文献を持ってきました。
　彼がイルミンスールの校舎を出たのは、どっぷり日が暮れてからでした。

「別邸がパラミタ内海の沿岸にあったようだな。あそこは潮の満ち引きが激しいから、干潮時にしか調査できない……ん？」

　メモを見ていたキロスはそれをしまうと、代わりに剣を抜きました。
　次の瞬間、銃声が轟くと、彼目掛けて発射された弾丸を刀身で防ぎ、あるいは斬り落としました。

「どちらさんで？」

　剣を肩に担ぐと、キロスはニヤりと笑いながら銃声のした方向を見ました。
　すると、銃を構えた複数の人物がキロスを半包囲するように現れました。
　その後ろには彼らのリーダーと思しき空賊ルックの女性の姿もあります。

「おとなしく琥珀の眠り姫を渡してもらおうか」
「なるほど、ね。分かりやすいが空賊って訳か。ご覧の通り今は持っていないし、持っていたとしてもお前らに渡すつもりはねぇぜ。それに俺は女にも容赦ないからな！」

　言うと同時にキロスは飛ぶと、空賊達と一気に距離を詰め、剣をひと薙ぎ。まとめて数人倒します。
　彼らが銃で応戦するときには、キロスの姿は上空へと消えていました。

「空賊達も俺が琥珀の眠り姫を手に入れたことに気付き始めているか。別邸の調査は急いだ方がいいな」

　木の上を枝から枝へ跳躍しながら、彼はイルミンスールの森を後にしました。

　このシナリオは、『【じゃじゃ馬代王】飛空艇の墓場掃除！？』から派生したシナリオです。
　こちらのシナリオガイドをお読みいただければ参加できますが、『【じゃじゃ馬代王】飛空艇の墓場掃除！？』のリアクションを読まれるとより分かりやすいかと思います。

　シナリオの目的は、パラミタ内海の沿岸にあるという、ヴァルトラウテ家の別邸跡の遺跡を調査し、琥珀の眠り姫の封印を解く鍵の一つを手に入れる、といったものです。
　キロスは全学校に調査依頼を掲示していますので、どなたでも気軽に参加できます。

■ヴァルトラウテ家の別邸跡の遺跡
　パラミタ内海の沿岸にあるようです。半ば埋もれてしまっており、入口が岸壁にあります。
　その入口は干潮時の数時間しか現れず、満潮になると完全に水没してしまうのと、遺跡がある辺りは海流が複雑なため、満潮時には調査ができません。
　加えて、キロスが琥珀の眠り姫を手に入れたことを他の空賊達も知り始めているため、調査に時間を掛けると封印を解く鍵を横取りされる危険性もあります。
　そのため、調査できるのは今回一回限りとなります。

　ヴァルトラウテ家は武術に秀でた家系のようで、別邸は鍛錬のための、今でいうアスレチックジム的な機能を持たせていたようです。
　吊り天井や吊り鉄球など、鍛錬用の設備が整っており、それらはトラップとして機能するようです。
　また、模擬戦用のゴーレムやガーゴイルも存在しており、PC達を感知すると襲い掛かってきます。

　なお、調査に必要な道具は、余程高価なものでなければキロスが用意してくれます（ホームセンターで売っている程度のもの）。

■琥珀の封印を解く鍵について
　杯の形をしているようです。
　別邸の最深部、領主の私室辺りに置かれているかもしれません。
　こちらには、対侵入者用の機晶姫が配置されています。

■空賊について
　キロスが琥珀の眠り姫を手に入れたことを知った一団は、彼から奪おうと後を付けたりしています。
　既に複数の空賊団がキロスの動きを察知し、琥珀の眠り姫を奪おうと動き始めています。
　空賊団の団員一人一人はさして強くありませんが、数で掛かられると厄介です。
　足止めや情報のかく乱など、絡め手も必要になってくるかと思います。

■琥珀の眠り姫（アンバー・コフィン）について
　空賊やドラゴンライダーの間で噂になっている伝説の１つです。
　シャンバラ古王国時代、崩壊するシャンバラ古王国より脱出しようとした令嬢を乗せた飛空艇がタシガン空峡で座礁し、令嬢は眠りに就いたまま未だに漂っていると言われています。
　キロスが気流コントロールセンター跡近くで見つけたとされていますが、真相は定かではありません。

　キロスのその後の調査で、ヴァルトラウテ家の令嬢ではないかと素性が付き始めています。
　ヴァルトラウテ家はロスヴァイセ家と同じく、シャンバラ女王に使えていた武術に秀でた家とのことです。

　なお、この噂を知っているのは、空賊かドラゴンライダーのクラスに就いているPCのみとします。

・別邸跡を調査する

・他の空賊の足止めをする