なし

　
「遺跡病？ それが瑛菜さんのかかってる病気の名前なんですか？」
　ニルミナスに新しくできた宿。倒れた熾月　瑛菜（しづき・えいな）を看病しながら村長のミナホは父親である前村長にそう聞き返します。
「うむ。正式な名前などはあったんじゃろうがな。今は伝わっておらぬ。それほど昔に猛威を振るった病気で仮でそう呼んでおる」
「そんな昔の病気になぜ瑛菜さんが……」
「理由はいろいろ考えられるが……そっちの方は私が調べておこう。それよりも今は瑛菜さんをどうするかじゃ」
「そうです。どうすれば瑛菜さんは治るんですか？」
　身を乗り出してミナホは父親に聞きます。
「薬を飲めば治る……はずじゃ」
「はず？……それでその薬はどこに？」
　はっきりとしない言葉にミナホは引っかかりを覚えながらも聞きます。
「今はない。作るしかないのじゃが……」
「もしかして材料がないとかですか？」
「材料はこの村でも育てている薬草と陽光を浴びていない水晶じゃ」
「良かった……それならすぐに用意出来ます」
　どちらもこの村や近くにある鍾乳洞から採取できるものでした。
「でも……水晶ですか？　もしかして……」
「うむ。作るのには錬金術のような調合術を使う」
「調合術の心得がある人を探さないといけないですね……」
　今泊まっている契約者の中にそういう人はいないだろうかとミナホは思う。
「それも問題じゃが、一番の問題は触媒にユニコーンの角が必要ということじゃ」
　それだけは手に入れるのが難しいと前村長は言います。
「ユニコーン……それなら確か何故か街道にいるという報告が入ってます」
　街道を整備を行なってくれた契約者からそういった報告を受けているとミナホは言います。
「なら、やることは決まったね。アテナがユニコーン捕まえて水晶も取ってくるよ」
　ここまでずっと瑛菜の手を握り、話を聞いていたアテナ・リネア（あてな・りねあ）がそう言います。
「ふむ……ユニコーンを捕まえるのは片手間では大変でしょう。少し調べたいこともありますし、水晶の方は私が担当しましょう」
　アテナの提案に前村長はそう返します。
「私は……」
「ミナホちゃんは瑛菜おねーちゃんの看病と調合が出来る人を手配してて」
「そう……ですね」
　何も力のない自分にはそれしか出来ないとミナホは思う。

「錬金術師を探してるようだね」
　その場にはなかったはずの声に振り向くと、部屋にはいつの間にか一人の女性の姿がありました。
「あなたは確か……」
　宿に泊まっていた契約者の人だとミナホは思う。
「ノックをしても返事がなかったから勝手に入らせてもらったよ。ボクはアゾート・ワルプルギス。錬金術には少し覚えがあるんだ。話を聞かせてもらえないかな」
　パラケルススの名を受け継ぐ錬金術師アゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）はそうして事情を聞いていった。

「なるほど。それならボクがこの村に来た目的とも被るね。任せてもらっていいかな」
　話をひと通り聞いたアゾートはそう言います。
「この村に来た目的ですか？……そういえばこんな時間にどうしてこの部屋に？」
　時刻は深夜。どちらかと言えば朝のほうが近い時間帯だ。
「紅茶でも飲もうと一階に行ったら村の人に言伝を頼まれたんだよ」
「言伝……ですか？」
　こんな時になんだろうとミナホは思う。
「事情はよくわからないけど、『野盗が逃げた』だそうだよ」

（ふむ……遺跡病に野盗の逃亡。同じタイミングなのはただの偶然ですかね）
　調べることが増えたと前村長は思う。
（アテナさんもミナホも冷静ではないようだし手配は私の方でしておきますか）

　こうして野盗という不安要素がある中、瑛菜を救うための行動が始まろうとしていた。

初めての方ははじめまして、前回参加してくれた方はお久しぶりです。河上誤停です。
今回は前回のラストで倒れた瑛菜を助けるというシナリオになると思います。前回参加してもらった方はもちろん、初めての方でも気軽に参加してもらって大丈夫です。


■瑛菜の病気について
現在瑛菜は意識を失っているか、目を覚ましても朦朧としている状態です。
また、瑛菜の病気（遺跡病）は人から人へは伝染りません。
村長であるミナホと一緒に看病をする人がいると心強いです。


■ユニコーンについて
とある理由で森の街道に住み着いたユニコーン。なれない環境に苦しんでいます。
今回の薬作りでユニコーンの角が必要ですが、触媒としての利用のため別に角だけを持ってくる必要はありません。
ただし、野生のユニコーンを捕獲・保護するのは大変です。今回のシナリオで一番難易度の高い部分になります。
捕獲等については神話などを参考にするといいかもしれません。

■野盗について
祭の際に事件を起こした野盗たちですが、紆余曲折を経てニルミナスの村で武器を取り上げられ無償労働を行わされていました（畑を耕したりなど）。
今回無償労働を行なっていた野盗達の半数程度（ボス含む）が逃げ出したようです。何故か取り上げられていたはずの武器も持っています。
野盗たちは逃げ出して鍾乳洞、今回の採取目標である水晶があるところに逃げ込んでいます。

■薬の調合について
アゾートが基本的に担当します。
ウィザード系のクラス（メイガス、魔法少女など、ウィザードのスキルが使用できるクラス）についているPCは、調合術の心得があるとしますので、補助等で手伝うことができます。
その際、錬金術や薬学の特技を持っていると成功率が高くなります。

・ユニコーンの保護

・水晶の採取

・瑛菜の看病を手伝う