なし

　葦原島、妖怪の山。

　揃いの葦原明倫館の制服に左右それぞに見分けの腕輪を装着した悪戯好きの双子、兄のヒスミ・ロズフェル（ひすみ・ろずふぇる）と弟のキスミ・ロズフェル（きすみ・ろずふぇる）が釣り道具などを抱えながら仲良く山道を歩いていました。

「魔法を取るか妖怪の山を取るかで迷ったけど、こっちにして良かったぜ」
「まぁな。でも迷った末にイルミンスールにしたのに、まさか葦原にしようってヒスミが言うとは思わなかったけどな。オレはどっちでも良かったけどさ」
　双子は進路を決定した時の事を思い出していました。双子の悪戯に手を焼いていた両親は普通に勉強だけをさせる学校を望んでいたのですが、双子はそれを嫌い兄弟間でこっそり魔法のイルミンスールか妖怪の山がある葦原のどちらにしようかと相談をし、イルミンスールに決めたのですが、ヒスミが突然妖怪がいる葦原が良いと言い出し、葦原に進路を変えて反対する両親を双子なりの説得で納得させ無事葦原明倫館に入学したのです。

「どちらにしろ、勉強だけっていうのは無しだよな」
「当然だろ」
　双子は顔を見合わせ、悪戯っ子の笑みを浮かべました。
　そして、
「キスミ、今日こそは沼の妖怪魚を捕まえるぞ！」
「おう、５０戦５０敗。この記録を今日で終わらせてやる」
　本日の目的である妖怪魚釣りを思い出しました。
「特製の釣り道具も準備完了」
「長丁場を考えて食料も準備完了」
　双子は互いの荷物を確認した後、山奥にある池へと向かいました。

■■■

　イルミンスール、町。

「ヒスミ、ヒスミ、目を開けろよ。一体何があったんだよ！」
　キスミは魔法素材が入った紙袋を落としたのも気付かず地面に倒れているヒスミを抱きかかえ、大声で名前を呼びながらヒスミの体を揺すりますが、安らかな寝顔はそのままで目覚める様子は全くありません。
「……何なんだよ。何が起きたんだよ。校長達に頼まれたお使いをしただけなのに」
　キスミはヒスミから周囲の光景に目を向けました。辺りにはヒスミと同じ状況に陥っている者達が大勢おり、戸惑いの声があちこちから上がっていました。何が起きたのか分からない状態です。
「……が、学校に連絡を、ヒスミを早く助けねぇと体がどんどん冷たくなって」
　キスミは急いで学校に連絡を入れました。

　イルミンスール魔法学校、校長室。

「……キスミからですねぇ」
　エリザベート・ワルプルギス（えりざべーと・わるぷるぎす）は急いでキスミからの連絡を受け取りました。悪戯の罰としてのお使いが終わったという報告の連絡だろうと信じて。

　しかし、内容はもっと悪い事でした。
「……ヒスミや外にいた人が倒れてるですか。そうですか。分かったですぅ。何とかするから落ち着くですよ〜」
　エリザベートはキスミから全ての事情を聞いてから連絡を終わらせました。
「……大変な事が起きてるですよ〜。あの魔術師ならこれで四度目。魔法学校の名折れですぅ」
　エリザベートはイルミンスールで悪行を行う正体不明の魔術師の名を口にしながら隣にいるアーデルハイト・ワルプルギス（あーでるはいと・わるぷるぎす）に少々不機嫌そうに連絡内容を話しました。今回の事件は正体不明の魔術師に対しての対策を考えていた矢先に起きた事だったのです。
「……あの者だと決まった訳ではなかろうが用心に越した事は無かろう」
　アーデルハイトは犯人については半信半疑だが、用心は忘れていません。
「何とかするですぅ。調査と救済方法を調べるですよ〜」
　エリザベートは救援者を得るべく動き始めました。

　シナリオ担当の夜月天音です。
　今回の舞台はイルミンスールとなり異常事態が発生しており、迷惑をばらまくロズフェル兄弟も被害に遭い、悪戯どころではない状況です。
　選び取った現在とは違う選び取らなかった別の世界に囚われて楽しだり、被害者の無事を願いつつ救済に尽力したり事件や犯人について必死の情報収集に勤しんで下さい。

【異常事態について】
・発生場所はイルミンスールの町となり対象は屋外にいた人、原因はどこからともなく聞こえ、内に響く奇妙な誘い声となります。声を聞き次第、眠
　気に似た感覚に襲われ、倒れ意識を失います。

・被害者は人生の中で下した重大な選択の時に戻り、選ばなかった選択を選び取り、その先に続く世界で現実世界の記憶を一切持たず、何事も
　無かったように過ごしています。選び取らなかった選択によっては現在、知り合っている人に知り合わなかったり不幸になったり悪行などをするよ
　うになっていても構いません。

・見た目は普通に眠っているように見えますが、少しずつ体が冷たくなり最後は永遠に目覚めなくなり、被害者の意識はもう一つの世界にずっと留
　まる事となります。

【解決策について】
・声をかけたり、手を握ったり、目覚めそうな匂いを嗅がせたりと何かしら外部から刺激を与える必要があります。与えた刺激は被害者の世界や被
　害者自身にゆっくりですが影響を与え、現実へと引き戻す事が出来ます。

【情報収集について】
・被害者は被害を受ける前に妙な誘い言葉を聞いたと証言出来ますが、誘い文句の内容や声はもしかしたら覚えていないかもしれません。そし
　て、体験した事については現実のようだった、夢や幻には思えなかった類の証言となります。

・スキルの利用や書物、屋内から外の様子を見ていた目撃者からの聞き込みで事件や犯人について明らかにして下さい。

・目撃者の多くは突然倒れたように見えたと証言する事が多いでしょうが、被害者の様子を詳しく見ている者がいるかもしれません。

【犯人について】
・エリザベートはイルミンスールで三度も悪行をした正体不明の魔術師と考えており、その方針での情報収集をするように指示します。もしかしたら
　犯人は別人かもしれませんが。

・正体不明の魔術師についてはマスターページを参照下さい。

【エリザベート達・双子の動向について】
・エリザベート達は必要であれば出向します。

・キスミはヒスミを救うために必死に行動します。手伝いに声をかけられたら即一緒に動きます。今回はヒスミを救う事が重要事項なので悪戯はし
　ないと思います。

・ヒスミは進学先をイルミンスール魔法学校ではなく葦原明倫館にした世界にいます。ちなみにヒスミは買い物を終えて待ち合わせ場所にいたため
　被害を受け、キスミは店内で買い物の最中だったため被害を免れました。

・別世界に囚われる

・救済に尽力

・情報収集