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江戸迷宮は畳の下で☆

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シナリオガイド

魔法少女と軍人お兄ちゃん再び!
シナリオ名:江戸迷宮は畳の下で☆ / 担当マスター: 菊池五郎

 
 さらさらと水の流れる音が足下から聞こえ、時折添水(そうず)のカン、と心地よい音が響きます。
 季節はすっかり夏本番、浴びるだけで焼け焦げてしまいそうな日差しを緑の傘で避けながら、川床のカフェでティータイムを過ごす人々が居ました。
 その中に、少々変わったカップルが一組。

「やっぱり畳はいいですねぇ、落ち着きますー。
 どうですか? 矢張り外国の方には素足で床に座るというのは落ち着きませんか?」
「否、そうだな……慣れると良いものだと思う。草を編んだだけでこんなものを作るなんて日本人は本当に器用だ」
 飛鳥 豊美(あすかの・とよみ)と、アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ(あれくさんだるちぇとゔるてぃ・みろしぇゔぃっち)
 空京で起きた怪事件で協力した二人は、その後数度顔を合わせるうちに、どういう訳か仲の良い茶飲み友達になっていました。
「「はぁ……すずしい……」
 そんな訳で今日もまた二人は、凛とした魔法少女の姿も厳しい軍人の姿も捨て、呆けた顔で午後を過ごしていたのです。

「お兄ちゃんも豊美ちゃんも、おじーちゃんとおばーちゃんみたい」
「(ジゼル、それは禁句だ!)」
 慌てて口を抑えてきた飛鳥 馬宿ジゼル・パルテノペー(じぜる・ぱるてのぺー)は不思議そうな顔をしています。
「あはは、そう見えちゃいますよねー。つい気を抜き過ぎてしまいましたー」
 しかし、馬宿の意に反して、豊美ちゃんはてへ、と舌を出して笑っただけで、怒りもしませんでした。
「……叔母う――!!」
 馬宿が試しに『叔母上』と豊美ちゃんを呼ぼうとすると、どこからともなくタライが落ちてきて馬宿の頭を直撃します。
「ジゼルさんの声には悪意がないと感じたからです」
「……ですがおば……豊美ちゃん、讃良様にその、言われた時は泣きそうになってましたよね?」
「あ、わたし覚えてる! おおおばあさまー」
「ふ、二人ともひどいですー! そういうの気にするのアレクさんに知られたら恥ずかしいから我慢してたのにー!」
 ぷんぷん、と腹を立てる豊美ちゃんを宥める様に首を横に振って、アレクが言います。
「俺は豊美ちゃんのそういう所も好きだ」
「そう言っていただけると助かりますー」
 再び腰を下ろした豊美ちゃんへ、馬宿が「私達は向こうの席に座っています」と声をかけ、ジゼルと鵜野 讃良、それに街で偶然会ったタチヤーナ・アレクサンドロヴナ・ミロワと移動します。
「まだかなーまだかなー私と讃良さんの抹茶パフェ大豆のロールケーキきな粉餅クリーム白玉あんみつイチゴ大福三色団子寒天ゼリー豆乳プリン練乳ミルクかき氷、はーやくこっないっかなー♪」
「はーやくこっないっかなー♪」
 移動してすぐに、ターニャと讃良ちゃんは畳の上をころころ、と転がり始めます。出会ったのはつい先程ですが、どうやら二人の精神年齢は近いものがあるようで、すぐに打ち解けたようでした。
「バカのターネチカ。俺の隊士がすまない。困ったものだな……」
「私は可愛らしくて、いいと思いますよ」
 溜め息混じりに見るアレクに豊美ちゃんが微笑んで、そしてふと、思います。
(いい、時間ですねー)
 
 そんな時です。

 『がくん』

 と畳が揺れたかと思うと目の前が歪み、畳の下から突風が吹き出したのです。
 奈落の底に落ちてゆく様な、空高く飛ばされてゆくような不思議な感覚。
「アレクさん!!」
「豊美ちゃん、手を――!!」
 息をするのも苦しい風の中、馬宿の手を取った豊美ちゃんと、ジゼルを片腕に抱いたアレクは反射的に互いの手を繋いでいました。

 そして――。

 * * *

「ジゼル、ジゼル!!」「ジゼルさん、怪我はありませんか?」
「う……うん……」
 ジゼルがゆるゆると重い瞼を開くと、心配そうに覗き込んでいるアレクと豊美ちゃん、それに馬宿の顔が映ります。目をはっきりと開くと、彼らの後ろの背景が川床カフェで無い事に気付きました。
「おにいちゃん……、何があったの? ここは、何処?」
「俺も分からない。目が覚めたら四人とも此処に……」
「四人? ……え? ターニャと、讃良は――?」
 質問に首を振って返されて、ジゼルは息を呑みます。
「一見すると日本――それも江戸時代に見えるが……どうもおかしいな。違う気がする」
「江戸時代というよりこれじゃまるでコスチュームプレイ(時代劇)だ。俺達の服もな」
 呆れを含んだアレクの発言で、ジゼルは初めて自分が昔の貴婦人のドレスのようなものを纏っている事に気がつきました。三人もまた同じ様に姫君のような着物に、袴に、洋装にとまるで時代劇のキャラクターのような服装です。
「これは一体どういう事なのでしょう――」
 豊美ちゃんがそう言った直後、急に争う様な声が飛び込んできました。

「姉ちゃんを返せ!!」
 ジゼルがそちらへ視線を向けると、10歳くらいの少年が腰に刀を差した武士に食って掛かっています。
「貴様、俺がどのお方に仕える武士だと心得る!?」
「分かってるから言ってるんだ!
 あの汚い野郎が――悪襲(あしゅう)が姉ちゃんを無理矢理城へ連れてったんだ!
 姉ちゃんを……菖蒲(あやめ)姉ちゃんを返せ!!」
「悪襲様を愚弄するなど……餓鬼だとて容赦はせぬぞ!!」
 武士が少年を切り伏せようと柄へ手をかけようとしたのを見て、ジゼルは恐怖に目を瞑ります。しかし耳に入ってきたのは少年の絶叫ではありませんでした。
 目を開くと、豊美ちゃんが少年を護る様に杖を構え、その横で抜き身の太刀を持ったアレクが武士を見下ろしていました。
「うわあああぁぁぁ!!」
「てっ、てめえら――」
 切られた武士は血飛沫を上げる右腕『の有った場所』を抑えながら呻いています。その仲間は血走った目で二人を睨みつけますが、二人は動じる事なくそれぞれ言葉を発します。
「事情は分かりません。ですが、子供に刀を抜くのが良い事だとは思えません」
「次は首を落とす。それが厭なら帰れ」
「くっ……あ、悪襲様に楯突いたが最後、てめえらの命はないと思え!
 ……しかし何だあいつら、妙な武器使いやがって……まてよ、さっきも確か変な格好の奴らを見た気がするな……
 首に刃を突きつけられて、武士達は捨て台詞を吐きながら城下町の往来を城へ向かって逃げ帰って行きました。

* * *

 助けた少年の名は虎太郎(こたろう)。彼から話を聞くうちに、豊美ちゃん達はこの畳の下の世界――和の国の状況を知る事になりました。

「――えーと今のお話をまとめると……悪襲という悪い人がいて、その人が王様で」「領主な」
「それで村の皆が困るくらいに沢山お金をよこせー! って言ってて」「年貢ですねー」
「一週間前にはお金を取りにきた武士の人たちに」「取り立ての事か」
「お祭りを開く為のお金まで取られちゃいそうになって、それを村長さんが止めようとしたからケンカになっちゃって、その罰だって、アヤメが連れて行かれてしまったのね?」
 周りからのフォローを受けながらジゼルが自分なりに纏めてみた経緯を話すと、虎太郎はうん、と頷きます。
「悪襲は前から菖蒲姉ちゃんに目をつけてたんだ。今日の夕刻、祭りが始まるのと同時に祝言をあげるってお触れが出てた」
 苦々しげに吐く虎太郎に、ジゼルはウンウン唸りながら頷き、そして俄に立ち上がりました。
「じゃあ助けに行こうよ!!」
 呆気に取られている四人に、ジゼルは何がおかしいのかしらと首を捻ります。
「だってそのアシューって悪い人を倒して、アヤメを連れて帰れば皆でお祭りが出来るもの。その方が虎太郎も村の人も幸せでしょう?」
「ジゼル、俺達はこの世界からパラミタへ帰る方法を探さねばならないのだが」
「それは分かってるけど……」
 馬宿の言葉にしゅんとするジゼルでしたが、豊美ちゃんは微笑んで彼女の両手を取るのでした。
「ウマヤド、私はジゼルさんの意見に賛成です」
「何故――」
「私は魔法少女ですから」
 胸を張って答える豊美ちゃんに、馬宿は口を噤み頭を垂れます。
「それに、武士の最後の言葉、聞こえましたか?」
「……ええ。どうも彼らは、他にも私達のような姿の者を見ていた様子。察するに、契約者がこの『和の国』に導かれているようです」
 馬宿が耳にした話を聞いて、アレクと豊美ちゃんは目を合わせ、頷き合います。
 ――これは先の事件と似ている。だとすれば、自ずとやるべき事は決まってくる。
「ジゼル」
 豊美ちゃんの横からジゼルの顎を掴んで視線を攫うと、アレクは彼女にも分かり易い説明をしてやります。
「――これは仮定の話だが。
 この世界を正しい方向に導く為に、何らかの力が作用して契約者たる俺達が此処へ導かれたのだとしたら、
 事件を解決する事でパラミタへ帰る扉が開かれる可能性もある。……かもな」
 ぱっと目を輝かせたジゼルの額を、人差し指が床へ押し返します。
「ただしお前は留守番だ」
「あぅ。……分かりました。
 えっと――豊美ちゃん、お兄ちゃんをお願いしますっ!」
「はい、お願いされましたー。
 ウマヤド、ジゼルさんと虎太郎さん、村をお願いします。祭りが始まるまでには菖蒲さんを連れて帰ります。勿論、讃良ちゃんとターニャさんも見つけるつもりです」
「分かりました。では、祭りの準備をしながら待つことに致しましょう。
 二人とも、お気をつけて」
「いってらっしゃーい、お兄ちゃんも豊美ちゃんも転んで怪我しないでね!」
 真剣な見送りの言葉に、豊美ちゃんとアレクは早速転びそうになりながら虎太郎の長屋を後にします。
 太陽は丁度真上に輝いています。祭りが始まるのは夕刻。
 それまでに無理矢理祝言をあげようとしている悪襲を倒さなくてはなりません。
「さて、豊美ちゃん。もう一度手を組もうか」
 差し出された手を、豊美ちゃんは小さな細い手でしっかり握り返します。
「パラミタに帰る為に」
「和の国を平和にする為に」

「「悪襲を倒す!!」」

 * * *

 その頃、悪襲城の大奥と呼ばれるハーレムでは……。
「おい、何故そんなに離れる! 俺様が命令してるんだぞ! もっと近くへこい!」
「誰がお前の様な者等と!!」
 悪襲に横柄に手招きされてもツンと顔を反らす菖蒲に、悪襲は激昂し大声を上げようとしますが、間延びした声に遮られてしまいました。
「あららー。随分と嫌われてますねぇ」
「きらわれちゃってますねー」
 恐怖で固まっている女達の間で、緊張感無く畳の上をころころ、と転がる二人。それはターニャと讃良ちゃんでした。
 二人も周りの女達と同じようにここに連れて来られたのですが、恐れる様子は全くありません。それどころかどこかこの状況を楽しんでいるようでした。
 ターニャは讃良ちゃんに耳打ちします。
「どーもあいつは悪い人みたいですね」
「そうですねー。わるいかおで、いやがるおねえさんをつかまえてますねー」
「うん。折をみてちゃちゃっと逃げちゃいましょう」
「はい、です!」



 祝言を止めるため、悪襲城へ向かう者達。村を護り、祭りの準備を手伝う者達。
 そして悪襲に捕らえられながらも反旗を翻さんとする者達。
 それぞれの想いが交錯する中、果たして彼らは無事に望みを遂げる事が――そして無事にパラミタへ帰る事が出来るのでしょうか――。

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

 皆さんこんにちは。猫宮 烈と東 安曇です。今回のシナリオはこちらのコンビで執筆します。
 祭りパートは猫宮が、バトルパートは東が主に執筆予定ですが、通常の合同シナリオとは違い細かくパート分担をしておりません。予めご了承の上ご参加下さい。

* * *

 今回、豊美ちゃんとアレク達は、どことなく昔の日本を思わせる国『和の国』に迷い込んだようです。
 契約者の皆さんも同様に、食事を取っていた時、あるいは勉強していた時などに、フッ、と落ちるような感覚を覚え、この世界に迷い込みました。

 人々を苦しめ、我が物顔で振る舞う悪襲の企みを阻止し、捕らわれた菖蒲や村の人達と共にお祭りを楽しみましょう。
 その二つ(悪襲を倒すことと、お祭りを開催すること)がどうやら、この世界からパラミタへ戻る鍵になっているようです。


・必ずどのパートに登場するかアクション欄にご記入下さい。
 MCとLCが分かれて、【Aパート】と【Bパート】に参加する事は出来ません。
・また、【Cパート】のみ【Aパート】か【Bパート】にMC(またはLC)が参加しているパートナーキャラクターが、ダブルアクションとして判定されずに登場する事が可能になっております。
・登場PCは和服や洋装等に強制コスプレ状態になっておりますが、武器やアイテムは通常通りに使用出来ます。

【Aパート】
 登場NPC:アレク、豊美
 バトルパート。悪襲の居る城に突入し、武士と忍者を倒し、城の最上階に居る悪襲を『懲らしめて』菖蒲を村へ連れ帰るのが目的です。
 *お兄ちゃんより「意気込みとしては「城を攻め落としてやる」位でいきたいところだが、あれは元々村人たちのものなので、建物破壊は止めるように」

【Bパート】
 登場NPC:ジゼル、馬宿
 祭りパート。悪襲の武士達の襲撃で遅れてしまった祭りの準備を手伝い盛り上げる。また、村を襲撃し因縁を付けて来る武士達を追い払うのが目的です。
 *馬宿より「武士の襲撃があれば俺が知らせる、その時は対応に当たってほしい。後は祭りの準備をお願いしたい。騒がせた詫びというわけではないが、このくらいの華はあってもいいだろう」

【Cパート】
 登場NPC:ターニャ、讃良
 脱出パート。大奥や地下牢に捕らえられてしまった為、脱出が目的です。ターニャと讃良は大奥から地下牢へ進み派手に脱出する予定です。
 こちらのパートは、サブパートになり描写量は少ないです。

* * *

【NPC】

『悪襲(あしゅう)』
 前領主に取って代わった人物。
 村人には奇怪な火術を操るペテン師と言われています。
 見た目はイルミンスール魔法学校のアッシュ・グロックに似ていますが、性格は正義感のアッシュとは正反対であり、欲しい者は手に入れないと気が済まない横暴で子供染みたところがあります。
 また、悪襲の見た目が外国人な為、日本の江戸時代に良く似た和の国の人々も外国人に親和性が高いです。
 登場:城最上階

『武士・忍者』
 悪襲に引き込まれた武士達。
 悪襲と違って不思議な技を使う事は出来ませんが、その身体能力は契約者に匹敵する程高いです。
 登場:城、村 

『菖蒲(あやめ)』
 17歳の乙女。市井のものですが気高い性格をしており、その美しさの所為で悪襲に狙われる事となってしまいました。悪襲の大奥に捕らえられており、夕刻には強引に祝言(結婚)をあげさせられる予定です。
 登場:城最上階

『虎太郎(こたろう)』
 菖蒲の弟。正義感の強い、少々生意気な少年です。
 登場:村

『村人』
 平和を愛する穏やかな村人達で、菖蒲らを心配しながらも夕刻から始まる予定の祭りを楽しみに、準備に勤しんでいます。
 また悪襲に楯突いた者達は、数名地下牢に捕らえられています。
 登場:村・地下牢



『飛鳥 豊美(あすかの とよみ)』
 街に平和と安心をお届けする(いくつになっても)魔法少女。
 今回は着物に着替えてみました。『ヒノ』もおめかし(豊美ちゃんの袖の柄と同じもので彩られた布がリボンのように付けられている)しています。

『アレクサンダル・チェトゥヴルティ・ミロシェヴィッチ(アレク)』
 中隊規模の私設軍隊を率いる闘争狂のシスコン。
 貴族的な服装になっていますが、相変わらず大太刀を背負っており、武器だらけです。

『飛鳥 馬宿(あすかの うまやど)』
 『豊浦宮』の実質の責任者であり、何かと苦労人。今も昔も立場は変わらず。
 こちらは袴姿ですが、馬宿が色合いに無頓着なのか、村人に混ざっても違和感無くなってしまっています。

『ジゼル・パルテノペー』
 生物音響兵器セイレーンにして天然ボケの貧乏性。
 貴族的なドレスを着ていますが、私服と変わらないじゃないかという話しも……。

『鵜野 讃良(うのの さらら』
 魔法少女見習いとして頑張る、豊美ちゃんの『娘』。姫子ちゃん(高天原 姫子)も一緒です。
 ロリっ娘衣装です。かわいいです。

『タチヤーナ・アレクサンドロヴナ・ミロワ(ターニャ)』
 アレクの部隊の二等兵。食いしん坊のおバカさん。詳しくは東のマスターページをご覧下さい。
 大奥の着物に着せ替えられた際にポーチに入れていたレーション(食べ物)を失って絶望中。

▼サンプルアクション

・悪襲を倒しに、悪襲城へ向かう!

・村のお祭りの準備をする

・悪襲城からの脱出を試みる

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年07月16日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年07月17日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年07月21日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年08月02日


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