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シナリオガイド

掘り出し物の古魔道書があるかも……ってか禁書処刑人って何!?
シナリオ名:ブラックブック・マーケット / 担当マスター: YAM

 シャンバラとコンロンのあわいにある暗い森は、「迷いの森」と呼ばれています。
 森の向こうに大きな、古びた洋館があるのが見えるのですが、そこに行こうとすると必ず道に迷って、いつの間にか森の外に出てしまっているからです。
 館を侵入者から守るため、森に呪いがかけられているからだと言われています。

 この館に住んでいるのは、「一つ目の星耳(ほしみみ)男爵」と呼ばれる人物です。

 種族も年齢も出自も不明。この森に非常に長い年月住んでおり、分かっているのは古書(主に古い魔道書の類)に無尽の興味を持つ趣味人だということだけです。

 品のよさそうな顔をしていますがその通り名の通り、左目に眼帯をしています。眼帯の下に在るはずの目は、かつてとある禁断の秘儀に捧げられ、結果彼はその失った目であらゆる書物の在り処を探り出すことができるようになったと言われています。

 この森の「迷いの呪い」が、百数十年ほどに一回、解除される日があります。
 星耳男爵の主催する「ブラックブック・マーケット」が開かれる日です。
 館のホールと中庭が解放され、パラミタの各地から古い文献や魔術書を扱う怪しげな商人たちが集まり、由来の明らかでない古い古い書物から禁書と呼ばれこの世から抹消された危険な書のレプリカなる作者も知れぬ本まで、さまざまな書物を商います。売り手も商品も怪しげなら、それを買いに来る客も怪しげで、不世出の魔法使いや魔導師くずれの隠者など、とにかく怪しげ尽くしの古書市なのです。
 また、あらゆる書物の在り処を見いだせるという男爵の眼の力を当てにして、捜す特定の書物の在り処を彼に尋ねたい魔法使いや稀覯本マニアも訪れます。
 怪しげ尽くしとはいえ、今までは特に大きな問題を起こすこともなく、百数十年周期で不定期に開催されてきたこのブラックブック・マーケット。なのですが……


 マーケット開催の日が近づいた頃、1羽の小鳥が、男爵の寝室の窓辺に止まりました。
 これは、迷いの森を抜ける呪(しゅ)を授けた鳥で、男爵が大昔から取引しているごく信用の厚い古書商人とだけ、マーケット開催期間以外に連絡を取りたい時に使うよう許可した使者です。鳥の足には2枚の手紙が括りつけられていました。
 1枚は男爵がよく知る商人からで、最近「男爵と懇意になりたいという悪魔」が彼の店に現れ、もう1枚の手紙を渡してほしいと頼まれた旨が書かれています。
 もう1枚には以下のような内容が書かれていました。


*******

 拝啓 迷いの森の星耳男爵様

 男爵様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
 このたび、貴殿の催される大古書市のお話を伺い、……

 (中略)

 ……我々が探している『万象の諱(ばんしょうのいみな)』、稀覯書に造詣の深い貴殿にはもはや説明の必要はあるまいと存じます。
 万が一、貴殿のマーケットにおいてこの書の出品がありましたら、他のお客に売られる前に手元に留め置き、我々にお売りくださるようお願い申し上げます。
 もちろん代金は如何ほどでもお支払いいたしますし、便宜を図ってくだされば男爵様にも相応の対価を支払わせて頂きます。
 出品がなかった場合、我らの同士が貴殿に直接伺いに参りますゆえに、何卒この書の今の在り処をご教授頂きたく存じ上げます。

 ――失礼ながら、男爵様にはお体の悩みがおありかと存じます。
 (もちろん、男爵様の慧眼なる左の御眼のこととは別でございます)
 我等には貴殿のお悩みを解消させていただくべく、無償で貴殿のお体を勁健なる「魔族の躰」へと作り替える「黒白の灰」という秘薬を使わせていただく用意がございます。(後略)

*******


 何やら穏当ではない匂いのする文章に、星耳男爵は眉を顰めました。


*******






禁書処刑人!?」



「――って、何者なんですか??」
 イルミンスール。
 校内の特殊施設内に住む魔道書、パレット、リピカ(リピカ著『アカシャ録』)、ヴァニ(画集『ヴァニタスの世界』)の3人は、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の説明に目を丸くしました。
「大ババ様曰く、禁書処分に妄執する異端弾圧時代の亡霊のような男ですぅ。
 世界のすべての危険な書物を抹消することを自分の使命と盲目的に信じ、その妄執のあまり自家発電式の呪いで人間性を喪い観念のお化け的ター●ネーターに成り下がったキモ野郎ですぅ」
「うわぁ」
「それはキモいねぇ」
 エリザベートのあまりに端的な言葉に、パレットとヴァニは声を上げます。
「そのキモ野郎に、うちの生徒が何人か、校外で出会ったらしいですぅ。
 彼らの話では、キモ野郎……処刑人は『万象の諱』という魔道書を捜しているらしいですぅ」
 魔道書達の表情が、微かに翳りました。

「処刑人は、狙った魔道書を消すまでは絶対に諦めないし倒れないし、狙いは正確だという話ですぅ。
 ……しかしこの『万象の諱』、歴史上ではすでに焚書で焼失されたはずですぅ。
 地球とパラミタが繋がって、このパラミタに上がって来たんでしょうがぁ……何故今更この書を狙っているのか、全く分からないですぅ」

「……本当に、その書は焼失したのですか?」
 リピカが尋ねると、エリザベートはむーっと唇を曲げて考えるような表情で答えます。

「大ババ様から聞いた話によると……
 この書はカバラ秘術から派生した、闇魔術に先鋭化した一派のテムラー的秘術の秘儀書だとかなんとかでぇ……
 内容はといえば、ページ一面ひたすら訳の分からない言葉の羅列なんですがぁ……」


「――秘術の達人はその本を読み解き、言葉の羅列の組み合わせの法則で『万象の諱』、つまり森羅万象の究極の本質を表す『秘密の本名』を知ることができる。
 秘密の本名、それは、世界のすべての事象の、その心臓も同然。
 戦わずして世界のすべてを屈服させることができる。秘密の本名であらゆるものを意のままにすることができるから――
 だから、禁断の秘術の書、危険な本として焚書にされた」


「…おぉ、よく知ってますねぇ、パレット。さすが同時代の魔道書ですぅ。
 けれど、それを読み解く法則を知るのは秘術の達人だけで、未熟者が見たら単なるわけわかめな言葉だらけの本ですねぇ。
 つまり、分かってない人にテキトーな贋物を見せても、真贋を見抜けないわけですぅ。
 だから、とてもたくさん贋物が出回った魔道書だと聞いていますぅ。いつの時代も卑怯くさい稼ぎをする下衆野郎がいるってことですねぇ。
 多分、処刑人もそういう贋物の一つに引っかかったのだろうと、大ババ様は言ってますぅ」


 ――訳の分からない言葉がびっしり羅列された本、という特徴は、実は、表紙や奥付を焼失して素性の分からない魔道書・パレットと一致するものでした。
 エリザベートもそれは知っていますが、わざと素知らぬ顔をしています。
 おそらく、今となっては本人が記憶を取り戻さない限り素性を知ることはできませんが、パレットもそんな贋書の一冊だったのだろうと考えていました。



「しかし、これは頭の痛いことですよぉ。――この、『ブラックブック・マーケット』」
 星耳男爵の古書市の話は、イルミンスールまで届いていました。
「このままでいけば、十中八九、キモ野郎はこのマーケットに現れるですぅ。
 なんでも、古書を商いたい者、贖いたい者すべてに、この市はオープンにされているということですがぁ……
 地球とパラミタが繋がってから初めての開催のはずですし、何か厄介なことが起きそうな気がしますぅ」


*******


 一部の人間の不安、不穏な空気、姿の見えない思惑をよそに、森の館で『ブラックブック・マーケット』はついに開催の日を迎えました。
 詰めかけた客の中には、エリザベートの話を聞いて偵察に赴いたパレット、リピカ、ヴァニ3人の姿、それとは別に……
 イルミンスールのはぐれ魔道書連中とは何かと縁のある杠 鷹勢(ゆずりは・たかせ)の姿もありました。

担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

 こんにちは、YAMです。
 15作目のシナリオです。よろしくお願いいたします。

 今回のシナリオは例によってうちの魔道書NPCがちょろちょろしたり、【逢魔ヶ丘】シリーズの要素が入っていたりもしますが、ちょっと怪しげな古(魔道)書市を楽しんでみる、くらいの感覚でいらしていただいて、もちろんOKです。ふるってご参加ください。


【マーケット会場】
 迷いの森と呼ばれる、深い森の奥にある古びた大きな館で開催されます。
 売り場として開放されているのは館に入ってすぐのロビーと、そこを抜けて出られる中庭です。
 中庭は四角形で四辺はアーケードのついた回廊になっており、そこに各商人が店を出しています。
 真ん中にはベンチなどがあって休憩できるようになっています。
 館内の食堂でも休憩は出来るようです。特に飲食の用意などはありませんが。


【一つ目の星耳男爵】
 迷いの森の館の住人で、素性は不明です。
 「男爵」は本当に爵位を持っているわけではなく、単なる通り名のようです。
 古書に対して深い造詣と愛着を持っています。マーケットの間は、自らも出店を見て回っているようです。
 彼に、捜している古書の在り処を尋ねたい客も多いはずです。
 大らかな性格で、大きな催しの主催者らしく社交的な人物ではありますが、本好きゆえに魔道書には特に好意的に接するようです。
 不思議なことに、彼は館には一人きりで住んでいるようです。召使などの姿もありません。
 あと、「星耳」とは何のことなのかは誰も知りません。見た限りではごく普通の耳をしています。


【禁書処刑人】
 本文通りの存在です。見た目は単に、ちょっと大柄な中年男性、という感じです。しかしよく見ると目がいっちゃってる……かも(汗)。
 元は人であったかもしれませんが、もはや禁書処分という概念に取り憑かれ、人間性を喪った人外の存在と化しています。
 長命なのは、魔女が不死であるのと似たような類の呪いに、妄執のあまり自らかかってしまったものと思われます。
 契約者でもないのにパラミタに拒絶されていないところから見ても、もはや人外でしょう。
 ここ数日シャンバラ内を彷徨っているらしく、目撃した生徒、『万象の諱』について質問された生徒もかなりいます。
(但し、『万象の諱』のこと以外の会話は成り立たなかったようです)
 炎系の魔法を操り、どれだけ強い打撃で倒されても立ち上がる様はまさにター●ネーター。
 書の中身を確かめるためでしょう、魔道書が人型を取っていても強制的に書物等の元の姿に戻す力を持っています。
 基本的には、「危険な書(今回の場合は『万象の諱』)を処分する」という目的以外は見向きもしません。
 また、魔道書ならどれでも無差別に攻撃する、という風でもありません。真に危険な書とそうでもない書の、見極めの基準が彼にはあるようです。
 但し人間性がなくなっているので、説得にはまず応じません。会話も成立しそうにありません。
 あと重要なこと。一人とは限りません。


【パレットと鷹勢と『万象の諱』】
 『万象の諱』とパレットの共通点は本文の通りですが、イルミンスールのはぐれ魔道書達はかつて、一応内容をアーデルハイトにチェックされていて、いずれも大きな脅威に直結する内容ではないという結論が出されているので、エリザベートらはパレットの正体について「『万象の諱』の贋物の一つ」と見当を付けたようです。
 パレット自身はといえば、焚書に遭いかけて表紙を焼失した時に自分の素性は分からなくなったと言っています。あくまで彼の言葉では、ですが。
 鷹勢は以前、はぐれ魔道書達の中に『万象の諱』があるという不確かな情報を聞いていて、この書に興味を持っていますが、その興味は危険に繋がるとパレットに忠告されています。
(詳細はこちら
 彼がマーケットに来る目的は謎です。元々本好きの少年ですが。いつもの如く山犬の白颯を連れています。
 パレットたち一行と鷹勢は、お互いマーケットで出会うまでは、互いがここにきていることを知りません。
 NPCに関して、詳しいことはマスターページもご参照ください。


【手紙の主】
 手紙の内容から、【逢魔ヶ丘】シリーズに関係するものを感知されたPL様もいらっしゃるかと思いますが、今回この手紙の主に関しては空京警察はノーマークの模様で、マーケットに警察は出向いていません。
 なので、この人物の来場に関しては事前にPCが情報を仕入れるすべはないものとなります。
 知るとすれば、星耳男爵に近付くこと以外に、商人たちの話を聞くことが早道になりそうです。
 (※PL情報:男爵に近付くために、男爵とは古い付き合いの商人何人かを嗅ぎ回っており、そのことが商人たちの間で噂になっているようです)
 もちろん、今回【逢魔ヶ丘】の魔鎧関連NPCは登場しません。


【マーケットを楽しむ】
 NPCの事情には関知せず、それぞれでマーケットを楽しむことももちろんできます。
 マーケットで魔道書LCを見つける、捜している本の在り処を男爵に尋ねる、など自由に「魔道書や古書との邂逅のドラマ」をお楽しみください。
 マーケットへの参加は、「普通にマーケット開催の知らせを聞いた」「エリザベートから話を聞いた」「禁書処刑人に『万象の諱』について質問されて気になった」などでできます。
 なお、エリザベートはイルミンで報告待ち状態なので、基本的にマーケットには現れません。ご了承ください。

▼サンプルアクション

・禁書処刑人を探し出す

・星耳男爵と近付きになる

・『万象の諱』の真実を探る

・手紙の主を探り出す

・古(魔道)書ショッピングを楽しむ

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年11月28日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年11月29日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年12月03日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年12月13日


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