なし

　その人は、身を起こすこともままならず、一つだけの眼で天井を見上げています。
　半身を覆う赤黒い火傷の痕……しかし、それは前世紀についた古傷であり、今、彼の身を蝕んでいるものとは異なります。
　その人は治療を拒否しました。
　ずっと、拒否していたのです。
　ですが隠してきたものがとうとう、その人の命の灯に手をかけました。
　彼は入院しており、床にあります。起きることすら難しい状態です。
　もう長くはないでしょう。癌が、その人の生涯を閉じるまで。
　けれど彼は厳?な眼で、まるでそこに、
　敵か、
　教え子か、
　あるいは、遠い過去に喪った家族でもいるかのように、黙って天井を見上げているのです。

　その人は、教導団の拘置室に座っています。
　独房です。
　日当たりは良く、清潔で、とても静かでした。
　かつて、クランジΥ（ユプシロン）と呼ばれていた人物が、入れられていたのと同型の独房だということです。
　もしかしたら、ユプシロン……彼女の姉妹（シスター）が、入れられていたのと同室かもしれません。
　その人は、白い壁をさすりました。
　落ち着かないのです。
　これから彼女に会いたい人が来るのです。面会がもたれると言います。

　その人は、ある決意を込めて彼の元を訪れようとしていました。
　先日の彼の言葉……それに返答するために。　

　
　あなたはいずれ、『その人』に会います。

　マスターの桂木京介です。よろしくお願いします。

【シナリオ概要】
　ごくごく私的な話にしてしまってすみません……！
　本当に勝手かもしれませんが、最初で最後なのでどうかご容赦下さい。

　桂木京介担当NPC（登録NPCかそうでないかは関係なく）との関係に、一つの区切りを置くためのシナリオです。

　蒼空のフロンティアが結末を迎える前に、告げられなかった言葉、清算しておきたい関係、

　※なお、このシナリオでは、過去シナリオ『思い出のサマー』から招待を出しております。
　シリーズではないので異例ではありますが、『思い出のサマー』、そして『消えゆく花のように』の続編的性格のシナリオと考えていただいて構いません。


【NPCについて】
　桂木京介がこれまで担当したNPCであれば、誰を出しても構いません。
　ですので対象NPCを必ずご指定下さい。ごく簡単で結構ですので、そのキャラとのこれまでの関係について簡単にふれて頂けると助かります。

　公式NPCについても、関連人物であれば登場する可能性があります。

　以上、私的なお話になっており、参加可能キャラクターも少なめですが、皆様のご参加とアクションをを楽しみにお待ち申し上げております。
　次はリアクションでお目にかかりましょう！

　桂木京介でした。


【追記・アクション締切日について】
　本シナリオのアクション締切日は、10月7日となります。

・死の床にある彼を見舞う。

・彼女と会い、胸の内を明かす。