蒼空学園

　パラミタ東方マホロバ。
　二千五百年前の噴花の直後、シャンバラの遺臣であった葦原藩の助力を得てマホロバを統一したのが現マホロバ将軍家です。
　その現将軍鬼城　貞継（きじょう　さだつぐ）の元へ、葦原の子孫である葦原　房姫（あしはらの・ふさひめ）は、無事に御輿入れされました。
　しかし、その道中に刺客に襲われるなど、房姫の周囲は絶えず穏やかならぬものがありました。
　そして、鬼鎧（きがい）一千機を持って天下を統一したというマホロバ将軍家の威光も今は陰り、かわりに勢力を伸ばしつつあるのが瑞穂藩です。
「ようこそ、房姫。何の役にも立たぬ金魚のように、鉢の中でただ飼われていなさいな
　瑞穂藩主の娘瑞穂　睦姫（みずほの・ちかひめ）は、将軍の寵愛を得るため、あれこれと策を巡らしまします。
「全ては瑞穂の為に……神様、瑞穂の国をどうかお守りくださいまし！」
　金髪の美姫は、故郷のため身を投げ出す決意の元、隠し銀のロザリオに毎夜祈るのでした。

「貞継様が真に何を望んでおられるか、私はわからないのです……」
　房姫は、大奥入りしたものの将軍と殆ど言葉を交わす機会もなく、不安な日々を送っていました。
　しかし、大奥を取り仕切る大奥取締役　御糸（おおおくとりしましやく・おいと）は、托卵を急がせています。
「肌を合わせていれば、いずれ托卵もなされよう。卵といっても男女が繋がらねば何も始まらぬ……」
　托卵によって生まれた子は、将軍家の世継ぎというだけではありません。
　桜の世界樹扶桑の化身である天子よりマホロバを統治する力を得るのです。
　今もまだなお、多くの美しい娘たちが将軍より托卵賜ろうと、御花実（おはなみ）候補に選ばれています。
　そして、大奥で托卵は絶対的な秘儀として隠されてきました。
　これは、「大奥の儀、見聞きした一切、何事も外様へ申すまじき事」という血判状によって、もたらされているのです。

「もし、大奥で起こったことを外に漏らすようなことがあれば、その者は地の果てまでも鬼に追われ、殺され、遺体をむさぼり喰われることだろう。そうでなくとも、鬼城家の兵が命を狙ってくるだろう……」
　将軍貞継はある夜、自らの腕を刀で傷つけました。
「だがこの血判状が、『天鬼神の血』が、お前たちを守る」
　しかし、胸の大きな女性を“牛鬼”と忌み嫌う将軍は、今、病床にあるといいます。
　大奥では、将軍の平癒を祈り、御祈祷が近々とり行われるとのです。
　多くの寺と坊主が我を我をと大奥に働きかけています。

　一方で、マホロバ全土を覆う不穏な動きもありました。
　マホロバ先住民の末裔が守る鬼の祠ではかつての鬼鎧（きがい）は発見されたものの、瑞穂藩らによって奪われてしまいます。
　瑞穂藩士日数谷　現示（ひかずや・げんじ）は、日々マホロバ城下に作られた瑞穂弘道館分校で藩士を集めます。
「鬼鎧があれば、マホロバは瑞穂の手の中同然。なんとしても、マホロバ中に散らばる鬼凱を先に集めなきゃなんねえ」
　そして、他にも何か企てているのかのように瑞穂藩は、桜の世界樹である扶桑を取り囲むように作られた都への道を閉ざし、人々に扶桑の噴花を知らされないようにしていたのでした。

「ウダ殿は鬼ながら誠の武士でありんす。無駄にしちゃあいけない。わっちらがカタキを取るでありんす……！」
　鬼鎧が奪われたときに殺された鬼の末裔ウダ（うだ）
　サムライ（侍）ハイナ・ウィルソン（はいな・うぃるそん）も立ち上がります。
　鬼鎧は奪われたもの以外にもまだ存在しており、新たな鬼の祠も見つかりました。
　しかしまだ多くの謎が包まれたままです。
　鬼鎧はイコンのようでもあり、また噂では、マホロバ人しか操れないというのです。
　それを解明するのは、多くの人の知恵を勇気が必要だといいます。



「オ、オバケ。ううん、ホラーね！ 角の生えた死体がいっぱいあって……ワァァン」
　大奥で一時行方不明になっていたティファニー・ジーン（てぃふぁにー・じーん）
は、世にも恐ろしいものをマホロバ城の地下で見たといいました。
　噂はたちまち城下に広まります。
　マホロバの城は、人を喰らう鬼の出る城というというのです。
　その真意を確かめるべくお城に向かうものも出てきました。

　こんにちは。
　ゲームマスターの「かの」と申します。
　どうぞよろしくお願いいたします。

　このシナリオは葦原明倫館キャンペーンシナリオです。
　葦原明倫館生徒が有利ですが、他校生も参加できます。
　第一回に参加されなかった方ももちろん可能です。

　NPC一覧や大奥の設定については、下記をご参照いただきアクションの参考にされてください。
　また、サンプルアクションはあくまでも参考程度なので、シナリオから大きく外れない限りは何をしていただいても大丈夫です。

　それでは、皆様のご参加をお待ちしております。


【ＮＰＣ一覧】
鬼城貞継（きじょうさだつぐ）……マホロバ将軍
房姫（ふさひめ）……葦原藩姫
睦姫（ちかひめ）……瑞穂藩姫

ハイナ・ウィルソン……葦原明倫館総奉行（＝校長）。房姫のパートナー
ティファニー・ジーン……葦原明倫館・分校長　大奥入り
楠山……老中
御糸……大奥総取締役
ウダ……マホロバ先住民の末裔。頭に角がある（死亡）

日数谷現示（ひかずやげんじ）……瑞穂藩士
瑞穂弘道館分校……葦原明倫館分校と同じで、マホロバ内作られた瑞穂藩分校

【付録】
●大奥内部構造
マホロバ城……表、中奥、大奥の三つの空間に分かれる。
表は職務など行う公的な場所、中奥は将軍の居住空間、大奥は将軍に仕える女性たちの居住空間
根の口……中奥との通用門
花の実……将軍が大奥で過ごす場所
繭の間……寵愛を望む女官の住まい
広敷……大奥の入口部分で、警備・事務の男性役人の詰所

緑水の間……房姫の部屋
紫光の間……睦姫の部屋

●大奥の身分
大奥取締役（おおおくとりしまりやく）……大奥を取り仕切る女官の最高権力者
御花実（おはなみ）……将軍や姫の世話役。大奥取締役から選ばれた娘たち。将軍はこの中から手をつける。
手付けとなったのもは他の女官から嫉妬や皮肉から御花実様と呼ばれる
御繭（おまゆ）……御膳の用意や献上品の管理、対面所の掃除などを担当する。ここから御花実様になる者もいる
御根口（おねくち）……大奥の出入り口である錠の管理を担当

●大奥の男性
役人……警護や事務で広敷にいるが中には入れない（老中や上級官吏は入れる）
警護……大奥周辺や庭を警護するが中には入れない
医者……奥医師として大奥に入って診察を行う
雑用係……上級女官に雇われた使用人。勝手口までで奥には入れない
その他、上級女官の親類や九歳以下の男児は特別に許される

●表、中奥
御従人……将軍の警護など行う親衛隊

・自分が将軍の子を産む！

・大奥の謎を追う！

・鬼鎧を求めて戦う！