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シナリオガイド

名誉か意地か欲望か
シナリオ名:レベル・コンダクト(第3回/全3回) / 担当マスター: 革酎

 ミゲル・スティーブンス准将によるクーデターは、失敗に終わりました。
 しかしながら、准将と行動を共にする冥泉龍騎士団と、旧パニッシュ・コープス兵で構成される私設傭兵団リジッド、そして古代の巨大サイボーグ生物とイレイザーが融合した魔獣イレイザードリオーダーが准将に助力する形で一大勢力を築き上げ、南部ヒラニプラの要衝地オークスバレー・ジュニアに立て籠もり、徹底抗戦を宣言しました。
 これに対して、関羽・雲長(かんう・うんちょう)率いる第八旅団は討伐作戦の実施を検討しているものの、旅団レベルでは戦力不足は否めないとし、第八旅団の上位組織である東部ヒラニプラ方面第六師団を、オークスバレー・ジュニアへの攻撃兵力として運用する旨を領都ヒラニプラに申し立てました。
 シャンバラ教導団団長金 鋭峰(じん・るいふぉん)は第六師団投入を即座に決定し、南部ヒラニプラへと急行させましたが、果たしてオークスバレー・ジュニアに立て籠もる強大な反乱勢力は、一体どのような行動に出てくるのか――。


     * * *


 ヒラニプラ第四の都市エルゼルの駐屯部隊から、ジェニファー・デュベール大尉が憲兵科第一特務内偵班へと転属してきました。
 ジェニファーは教導団内部に潜伏する二体のヘッドマッシャー・プリテンダーの正体を探り出すべく、零式電磁波による極秘内偵任務に就いていました。
 そして目下のところ、容疑者は五人にまで絞り込むことが出来たのですが、この五人の周囲には同レベルの歪曲分子が浮遊している為、プリテンダーの特定に難航している、というのが実情でした。
「どうだね、中尉……いや、先頃昇進したばかりだから、大尉だったか。これは失礼した」
 シャンバラ教導団法務局の局長を務めるマグナス・ヘルムズリー大佐が、憲兵科内のジェニファーの執務室を訪れてきました。
 プリテンダー捜索の為に諸々の法的特例許可をジェニファーに与えるべく、局長という立場でありながら現場担当者のように忙しく走り回っていたのが、このヘルムズリー大佐でした。
 ジェニファーは慌てて執務デスク前から立ち上がり、直立不動の姿勢で敬礼を送ります。
 ヘルムズリー大佐は答礼を返しつつ、楽にするようにと軽く笑いかけました。
「現時点では、この五名が最有力候補です。但し、彼らが就いている任務の性質上、常にチームで動いている為に歪曲分子の発生源が特定し切れません」
 ジェニファー曰く、五人の容疑者は24時間、常に寝食を共にするチーム行動を取っており、プリテンダーが放つ歪曲分子が他の残りのメンバーにまで滲みついてしまっている為、特定が困難だ、というのです。
 ヘルムズリー大佐はうむ、と神妙な顔つきで頷き返し、手渡された五人の写真を覗き込みます。
「しかしだ、プリテンダーがヘッドマッシャーとしての任務をこなそうと思えば、チームから離れる必要がある訳だ……常に五人一組で動いているのなら、ひとりが欠ければその時点で分かるのではないか?」
 この指摘に対し、ジェニファーは端正な面を険しくして喉の奥から唸るような声を搾り出しました。
「おっしゃる通りです。ということは、五人のうち三人はヘッドマッシャーではないものの、その三人もまた、鏖殺寺院のスパイである可能性が否めないということになります」
 ジェニファーはあくまでも、現時点では可能性の問題という認識を示しました。
 というのも、プリテンダーにはまだ幾つか隠された能力が秘められていることが分かっており、つい最近、非コントラクターの記憶を一時的に書き換えることが出来る能力がある事実が判明したばかりなのです。
 つまり、五人の容疑者のうち、残りの三名はプリテンダーによって記憶を書き換えられ、プリテンダーがヘッドマッシャーとして行動している間の不在の記憶は、無かったものとして上書きされている可能性も高いというのです。
 こうなってくると、五人全員を同時に内定するしか方法がありません。
「矢張り、そうするしかないな……実はその点も見越して、この五人をある任務に就かせるよう、連中の上役に掛け合ってきた。事が事だけに詳しくは説明出来なかったが、ひとまず了解は取り付けてきた。後は大尉、君の内偵技術と人脈で何とかして欲しい」
 五人の容疑者が所属しているのは、警務治安局――つまり、外敵や犯罪者を相手に廻す部署です。
 ヘルムズリー大佐は、近々東カナンとの間に開通する運びとなっている通商ルートの、物流予定地域の保安調査の為に警務治安局が部隊を派遣することを知っていました。
 この保安調査任務に、容疑者である五人のチームも参加させるようにと交渉してきたのです。
「大尉、君も法務局からの監査員として保安調査任務に随行出来るよう、手配しておいた。もし必要なら、各校のコントラクターに協力を要請しても良い。しっかり、やってくれ給え」
「ありがとうございます」
 ジェニファーはヘルムズリー大佐の行動力と政治力に最大限の敬意を示し、感謝の敬礼を送りました。
 そしてヘルムズリー大佐は、最後に次のひと言を付け加えました。
「君の監査班には、レオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)中尉も参加させる。あれも、スタークス少佐の仇を討ちたいだろうからな」


     * * *


 領都ヒラニプラを進発後、ヒラニプラ第三の都市バランガン、及び第四の都市エルゼルにそれぞれ分駐する形となっていた第六師団は、オークスバレー・ジュニアに向けての戦術移動を開始しました。
 オークスバレー・ジュニアは東方にオークスバレーを背負う渓谷の出入り口に位置し、左右を峻険な山地に挟まれ、後方は深い谷底へと街道が落ち込む斜面のど真ん中に陣取っています。
 つまり、街を攻める側がまともな軍事行動を取れるなのは分厚い要塞防壁を構える街の前面のみであり、いわば、ある種の天然要害を具える一大要塞街ともいえます。
 スティーブンス准将は随分以前から、この攻めづらく守り易い要衝地を手中に収められるよう、様々な手を使って籠絡策を施していたようです。
 そのスティーブンス准将は前衛要塞城壁の主塔から、遥か数十キロ先に移動展開している第六師団の軍影を特殊望遠スコープで望みながら、口角を僅かに吊り上げました。
「……良い軍勢だ。足並みに乱れは無く、装備も充実している。出迎える側としても、戦い甲斐があるというものだな」
 と、その時、不意に准将の傍らに異なる人影が現れました。
 冥泉龍騎士団のギュイ・シド・ラヴァンセン伯爵です。
「市民の退避は、もう終わったのですかな?」
「全て、滞りなく。現在はオークスバレー近くにて、難民キャンプを張らせています」
 ラヴァンセン伯爵に、准将は幾分、むっつりとした表情で応じました。
 准将の不機嫌さの原因が、ラヴァンセン伯爵は、イレイザードリオーダーにあることを知っていました。知ってはいるのですが、敢えてその点には一切触れることなく、戦略上の話題に切り替えます。
「敵は、イコンを出してくるでしょうか?」
「それは中央が許さないでしょう。このオークスバレー・ジュニア周辺は、機晶鉱脈が点在しています。イコンの火力でこちらを攻撃すれば機晶鉱脈が連鎖爆発を起こし、周辺数十キロ以内の街や集落を巻き込んでの、地殻変動に近しい大爆発を起こします」
 事実、その通りでした。
 第六師団はオークスバレー・ジュニア側にイレイザードリオーダーの存在を認めつつも、イコンによる攻撃は機晶鉱脈の連鎖爆発の可能性が高いとして、イコン出撃要請を出していません。
 つまり第六師団とコントラクター達は、生身に近しい装備だけで、数十メートルにも及ぶ巨大な魔獣達を相手に廻さなければならないのです。
「……とはいえ、イレイザードリオーダー側もこちらに総力を預けてはおりますまい。連中には連中の目的がありますからな。今のところ私が聞いている限りでは、大量のスポーン種を抱えているメガディエーターとフォートスティンガーのみが、第六師団迎撃戦力として参戦するとのことです」
 この情報は、第六師団側もおぼろげながら掴んでいるらしく、准将が放った密偵部隊からも、第六師団の動向が対スポーン種に傾いている報告が届いています。
 イレイザードリオーダー側の協力体制に対し、准将は何か気に入らない点があるのか、あからさまに不機嫌そうな様子で口元を歪めました。
「メガディエーターはともかく、フォートスティンガーは以前に一度、コントラクター達に撃退された前歴があります。正直、頼りになるのか不安が残りますな」
「……まぁ、そうおっしゃいますな。いざとなれば、我らの愛龍も投入しましょう」
 ラヴァンセン伯爵は苦笑を漏らしつつ、遥か西方に展開する巨大な軍影に視線を転じました。

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 本シナリオガイドをお読みくださり、ありがとうございます。
 ヒラニプラ南部を舞台としたキャンペーンの第3回をお送りします。

 今回は最後の戦地となるオークスバレー・ジュニア、及び東カナンとの間に開通する物流予定地域周辺の二箇所が主な舞台となります。
 前回まで主要部隊として編成されていた第八旅団は、その上位組織である第六師団に合流する形で部隊を再編制しています。
 オークスバレー・ジュニア攻撃に参加する方は、第六師団傘下の兵員として登録されることになります。
 逆にオークスバレー・ジュニア側に参加する方は、特に誰の指示があるという訳でもなく、自由に行動することが出来ます。
 一方、物流予定地域の保安調査任務には、ジェニファー・デュベール大尉率いる監査班に加わるか、有志として調査部隊に加わる形となります。


 アクションとしては、以下のような内容が考えられます。

 1.第六師団、もしくはスティーブンス准将側兵力に参加して、要塞攻防戦に参加
  渓谷前の平原、要塞内、或いは渓谷側の狭小な地域での局地戦がメインです。
  今回は、どの敵を相手に廻すのか、担当制にします。
  戦いたい相手をアクションに明記の上、戦術を展開してください。
  対戦相手は指名出来ますが、勝敗は完全にアクション次第です。
  尚、スキルやアイテムをただ羅列しただけの内容では、確実に負けます。

 2.物流予定地域の保安調査任務に赴く
  五人のプリテンダー容疑者の中から、誰がプリテンダーなのかを探り出す行動です。
  以下の警務治安局員五名のいずれに対して内偵を行うのか、具体的な内偵方法を明記の上、
  アクションを記載してください。
   ・カルロス・ヴァレンタイン少尉
   ・ブレンダン・マーシャル少尉
   ・ディーン・レデラー軍曹
   ・クィン・ガルシアーラ上等兵
   ・アンドリュー・ハンディートン・ジュニア上等兵
  尚、内偵方法があまりに抽象的だったり、一般論に終始するような内容であれば、
  間違いなく失敗します。

 3.政治的活動
  管理行政官ヴラデル・アジェン死後、ヒラニプラ家内には強い衝撃が走ると同時に、
  早くも貴族間の駆け引きや暗躍が始まっています。
  もうひとりの管理行政官アレステル・シェスターも、秘かに行動を起こし始めています。
  また、東カナン西部の街ベルゼンの太守ネグーロ・ジーバスも、通商ルート開通に向けて
  諸々の動きを見せています。
  政治アクションはそれなりに難易度が高いのですが、成功すればシャンバラや東カナンに
  於ける情勢に大きく関わることが出来ます。


 以下は、PC情報として、参加頂けるPCの皆さんが事前に知っている内容として頂いて構いません。


■ヘッドマッシャー
 常時発動しているPキャンセラーと強力な近接専用武器のブレードロッド、そして各モデル特有の特殊能力が非常に厄介な強化人間の亜種です。
 一般モデルのスティミュレーター、メルテッディン、アレスターは3メートル近い巨躯と醜悪なマスクが外観的特徴ですが、ディクテーターと呼ばれる完成体は普通の人間と全く同じ外観の持ち主です。
 尚、プリテンダーはヘッドマッシャーとしての正体を露わにした時は他の一般モデルと同じ外観ですが、人間に擬態したまま、その能力を発揮することも出来ます。

■冥泉龍騎士団
 エリュシオン帝国に於ける昨今の穏健且つ平和的な政策や外交に不満を抱いた帝国主義、或いは主戦派と呼ばれる龍騎士達が、一斉に帝国を離反して新たに創り上げた独立龍騎士団。
 スティーブンス准将の兵力には、ギュイ・シド・ラヴァンセン伯爵とマルセラン・ジェルキエール男爵が援軍として参戦しています。

■イレイザードリオーダー
 かつて、フレームリオーダーと呼ばれる巨大サイボーグ生物の一群が存在していました。
 このフレームリオーダーに、ディムパーティクルと呼ばれる精神体型イレイザーが融合することで誕生したのが、イレイザードリオーダーです。
 戦況によって巨獣型戦闘体型と巨人型戦闘体型の二種類を使い分け、瞬時に変形することで自在に戦局をコントロールします。
 現時点ではリーダー格のメギドヴァーン以下、メガディエーター、アイアンワームズ、オクトケラトプス、テラハウンド、フォートスティンガーといった個体が確認されています。

■リジッド
 旧パニッシュ・コープス兵で組織された私設傭兵団。
 全員レイビーズと呼ばれる毒素で戦闘力を格段に向上している一方、その副作用で人格が完全に失われ、統率者の指令に対して一糸乱れぬ作戦行動を展開します。
 兵団長だったモハメド・ザレスマンが死亡した為、現在は御鏡兵衛中佐が指揮を取っています。


 それでは、皆様からのアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・第六師団、或いはオークスバレー・ジュニア側に参加して要塞攻防戦に臨む。

・保安調査任務に加わる。

・特定の政治家に対して行動を起こす。

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2013年06月08日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年06月09日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年06月13日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年07月01日


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