遂に、シャンバラ教導団第3師団は敵とまみえることとなった。
シャンバラ住民は概ね地球人に好意的であるが、人が存在する以上、全く異なる考えを持つ者が現れるのは当然である。
ヒラニプラ北方、ラピト族と友好・同盟関係にある教導団三郷キャンパスであるが、これに対し、自力での古王国復活を掲げ、これと敵対しているのが北東方面のワイフェン族である。彼らは地球人の急速なシャンバラ進出に危機感を覚え、地球人のシャンバラ支配の阻止を目的として戦いを挑んできたのである。
これに対し、弱体なラピト族を助け、もってこの地に足場を築くため、教導団三郷キャンパスは第三師団を編成し、ワイフェン族からの防衛を試みる。
師団参謀長の志賀正行は偵察部隊の報告から敵戦力の大まかな動きをつかみ、これに対する布陣を決定した。
敵戦力は向かって左より、騎兵200、歩兵14000、騎兵400にて布陣しており、後方には投石機も50ほど見受けられる。
これに対し、第3師団は左よりバイク騎兵600、歩兵部隊6600、一般騎兵400を並べ、歩兵450を予備兵力とし、その後方に兵600が迫撃砲を100門ほど準備する。
志賀の作戦の基本は歩兵が迫撃砲の支援の元、後退しつつ敵の歩兵を支え、その間に優勢な騎兵が敵騎兵を突破。両翼から回り込み、後方を突く。そののち反撃という物だ。
しかしながら言うまでもなく注意すべき点がある。志賀の説明によれば戦場の左は川、右は急な丘で有り体に言って通行禁止。大規模な迂回作戦はできない。
まず、逆転の要となる騎兵部隊は一刻も早く敵騎兵を突破しなければならないが、敵も銃器を持っているため、いきなり突撃はできない。まずは降りて射撃戦で機を伺いつつ、いかに敵を押さえて突破するかが求められる。
また中央の歩兵は何が何でも倍近い敵の攻撃を後退しつつも支えなければならない。いかに敵が一気に突入してこないよう火力を利用するかであろう。また、志賀の説明によるといささか奇策的使い方をするのが砲兵部隊であり、これがどこをどう射撃するかで敵歩兵を食い止める重要な役割となる。
第3師団の総兵力は9300名、敵の六割ほどである。果たして戦いはどうなるのか?
また、このほかにもやらねばならないことがある。万一に備え、ラピト外縁の丘に防衛陣地を構築しなければならず、ラピト族と共にこの作業にあたる人員が必要である。そして、ラピト非戦闘員の避難も行わねばならない。ラピト族の人数はそれなりに多く全員を避難させるのは困難であるが可能な限り避難できるようにしなければならない。
この戦いはラピト〜ワイフェンのみならず、荒野の部族や北方のモン族そのほか周辺の部族が見つめている。単なる戦いではない、政治的な思惑をも含む勢力間の大きな問題になるといえる。シャンバラの有り様を巡る戦いが正に始まるのである。