蒼空学園

　百合園女学院の学生寮。高原　瀬蓮（たかはら・せれん）とそのパートナー、アイリス・ブルーエアリアル（あいりす・ぶるーえありある）の部屋もその一角にあります。
「セレン、そろそろ休もうか。いくら素敵な星空でも、明日遅刻しては意味が無いよ」
「あ、うん、そうだね」
　満天の星空に見入っていた瀬蓮は、アイリスの言葉で就寝時間が近づいていることに気づくと、開け放っていた窓に手をかけました。
「あれは……梨穂子？　こんな時間にどこへ……？」
　瀬蓮の視界の隅に同級生の梨穂子の姿が映りました。どこかへ急いでいるようです。
　就寝時間を過ぎた後の、無許可の外出が寮長や先生に見つかると、お説教だけではすみません。
　幸い、就寝時間が近いこともあり、梨穂子の姿に気づいたのは瀬蓮だけでした。
「梨穂子を連れ戻してくるね！」
「君だけでは寮長に見つかったときに言い逃れできないだろう」
　瀬蓮とアイリスは二人して部屋を抜け出し、梨穂子の後を追いました。


「先輩……」
「梨穂子……」
　梨穂子は湖畔に居ました。彼女一人ではなく、その口ぶりから百合園女学院の先輩も一緒のようです。
　二人は啄ばむようなバードキスから始まり、それだけでは物足りなくなったのか、どちらからともなくお互いの身体を抱き締め合うと、深く長い接吻を交わしていました。
　瀬蓮が思わず息を呑むと、アイリスが彼女の視界を塞ぎました。百合園女学院ではよくある光景とはいえ、世間知らずの箱入り娘には少々刺激の強いシーンです。
「セレン、ここにいるのは野暮というものだよ」
「そそそ、そうだね」
　アイリスが冷静に立ち去るよう促すと、瀬蓮もそれに従いました。
『ワシの前で逢引なぞしおって！』
　突然、静かだった水面が二つに割れ、濡れそぼった妙齢の女性が姿を現しました。
　女性が梨穂子達を指差すと、生きているかのように割れた水面が二人へ襲い掛かり、飲み込んでゆきます。
　二人は湖中へと攫われてしまいました。
　慌てて駆け出そうとする瀬蓮の口を塞ぎ、その華奢な身体を抱きしめると、アイリスは気配を殺して様子を伺います。
『まだこの場所で逢引をする者がおるとはな……』
「あれは……海の妖精オケアニデスのようだけど……なぜ、海の妖精がヴァイシャリー湖に？」
『ヴァイシャリーめ、まだワシからあの娘を奪ったことを懲りていないと見える……ワシはこうして待ち続けているというのに……』
　妙齢の女性――海の妖精（ニンフ）オケアニデス――は百合園女学院のある方を睨めつけると、そのまま湖の中へ去っていきました。


「アイリス、どうしよう！？　梨穂子が！？」
「落ち着くんだセレン。一、二日なら寮長や教師を誤魔化せるが、それ以上は難しい。伝手を当たって一緒にリホコ達を助けてくれる人達を探すのが先決だ」
　慌てふためく瀬蓮をアイリスが諭します。
　瀬蓮は携帯電話を取り出すと、片っ端からメールを送り始めました。
「しかし……逢引に嫉妬するオケアニデスか……ヴァイシャリーの名を口にしていたのが気になるね」
　アイリスは湖面を見つめながら、オケアニデスの言葉を思い出していました。
　ヴァイシャリーといえば、この水上都市ヴァイシャリーを統治しているヴァイシャリー家が思い当たります。
　ヴァイシャリー家とオケアニデスの間で何かあったのでしょうか？

このシナリオの参加者は、百合園女学院の生徒であれば瀬蓮やアイリスから連絡を受けた、他校の生徒であれば連絡を受けた人から聞いて駆けつけたことになります。

湖畔自体は百合園女学院の敷地外ですので、男女問わず立ち入ることが出来ます。
ただし、梨穂子や先輩の失踪を教師陣や寮長に知られるのはまずいですので、おおっぴらな調査は避けてください。

梨穂子や先輩の関係については、瀬蓮の同級生や先輩に聞けば、何人かは知っています。
また、百合園女学院の生徒で恋愛対象がその傾向にあれば知っていたり、あるいは本人から相談を受けたり、梨穂子に相談したりしているかもしれません。

オケアニデスは海の妖精で、普段はヴァイシャリー湖の湖底に居ます。
攻撃と魅了の魔法に長け、特に魅了の魔法は男女問わず彼女の虜になってしまうほど強力です。
オケアニデスが住んでいる湖底の水深はそれほど深くありませんが、素潜りで見つけ出すのは大変です。
ただ、瀬蓮やアイリスはコンビニやホームセンターで売っているもの以外、特殊な道具は用意できませんのでご注意ください。
なお、逢引をしていれば誘き寄せられるかもしれませんが……。

・湖底を調べる

・オケアニデスを誘き寄せる

・オケアニデスと戦う

・ヴァイシャリー家を調査する