蒼空学園

――ヒラニプラの山奥にある一地方。ここは、異端の者達の数多く住まう辺境の都であり、黒羊郷と呼ばれています。
　幾つの森と谷を越え、山間に開けた豊かな土地は、かつての戦いから逃れた落ち武者や魔女などの隠れ里ともなっているのでした。
　そして今、この地で、教導団の命運に関わる異変が……――

　黒羊郷を目指す教導団・第四師団遠征軍。最初に滞在した三日月湖において、巻き起こった戦乱。
　姿を現した黒羊旗を掲げる軍勢との対峙から、夕刻に起こった激しい戦いは、土地の貴族、傭兵、食い詰め浪人、一般市民らを巻き込み、未明近くまで続いたといいます。
　所々立ち上る煙、壊れた家々。人々が奪い合った物や硝子の破片、そして死体、死体がちらばるバンダロハム。
　戦の爪痕を残し、静まり返る町。
　まず、我々は三日月湖を巡るこの最初の戦の、まだ語られていない結末までを見届けねばならないでしょう。
　……

　それから、後日のこと。教導団は、三日月湖を更に北上し、黒羊郷へ至る独立勢力の支配する土地へと足を踏み入れることとなります。
　北の森の陣営を引き払った黒羊旗の軍勢は、ならずものの国と言われるグレタナシァに一時入ったようです。
　黒羊側の使者は、彼らの将ボテインと、黒羊側に囚われとなった教導団の機晶姫とドラゴニュート、すなわち、ファルコン・ナイト（ふぁるこん・ないと）とオルキス・アダマース（おるきす・あだまーす）の人質交換を求めてきています。場所は、北の森を抜けたところにある、グレタナシァの国境近くにある旧い円形劇場跡、ということになりました。
　立ち並ぶグレタナシァの物々しい国境砦の塔が見え、付近には廃墟や建物跡が点在しています。



　……騎凛先生、だいじょうぶ？　……旅の温泉で、飲みすぎたのが祟ったのでは？
　騎凛　セイカ（きりん・せいか）先生の頭にかすかに響いてくる、心配そうな生徒らの声。
「ええ、……んんん。こ、ここは……？」
「黒羊郷まで、もうすぐだぜ。歩けるか、セイカ？」
　騎凛を介抱する、親友でもあり旅の初めから一緒の【第四師団メイド隊長】朝霧　垂（あさぎり・しづり）。
　しかし、どうにも立ち上がれないほど、体調を崩してしまった騎凛先生。
　山の影に入って、騎凛先生の回復するまで休んで出発しようということになりました。
　まだ幾らか距離はありますが、ヴァレナセレダ最初の土地・ハルモニアに入る一歩手前にある砦らしき建物が見えています。
　そこには、黒羊旗が揺れて……




　黒羊郷では、いよいよ千年祭。
　ヒラニプラ各地から、大勢の古い民や種族が集まって賑わっています。
　その中に紛れて、幾名かの教導団の生徒ら……彼らは何を目にすることになるのでしょうか。
　メインイベントである新しい神の儀式で、人々の前に姿を現すのは、そして女がその手に持っているのは……

　黒羊郷へ向かう、一隻の船。
　甲板には、ここにも教導団員の……しっかり湖賊になりきった橘　カオル（たちばな・かおる）。教導団からは少し離れた位置から、また、自身の意志で、この出来事を見据える樹月　刀真（きづき・とうま）。
「な、何だ？？　陸地の方……あんなにたくさんの軍勢が、南へ向かっている」
「……どうも、危険なにおいがしますね」
　近付いてくる水上砦。屯する軍船。黒羊旗。

　事態は今、避けられない運命に向け確実に動き始めています。

　「黒羊郷探訪」の第三回です。
　今回、最終回となりますが、また一方で、すでに前回にて示された通り、次回シリーズ十二の星の華編への布石を打つことともなります。
　前回までの結果から、それぞれがとるべき道を決めてください。
　これまでの流れを把握されていれば、新規参加も歓迎です。これまでのシナリオガイド、リアクション、マスターコメントもご参照ください。とくに自分が行動しようとする辺りについては、目を通してくださればと思います。

　今回、色んな状況に置かれている方がいますので、以下の注意事項やヒントによく目を通してください。
　人によっては取れる行動についてはかなり自由で幅の広いものとなると思いますが、これまでの状況から、次に何が起こるだろう、そこで何をするだろう、というふうに考え、アクションを送って頂きたく思います。ある面、難易度は高いかも知れませんが、アクション楽しみにしております。

　では、以下、注意事項やヒントになります。
◇共通◇
　本シナリオでは、バイク、車、自転車、それに飛空艇といった乗り物は使用できません。
　携帯電話について　パートナー以外との通話は、電波が届かない可能性があります。

◇三日月湖編◇
　今回、三日月湖で行動される方は、大きく二つの選択肢に分かれます。
　まず前回、バンダロハムの戦いの趨勢は見て取れましたが、結末や細部については実は描かれていません。
　これまでの全体・それぞれの状況を踏まえて、あなたがどういう動きを取ったか、を記してください。
　こちらは、前回のリアクションの直後もしくは、遡っての細部として描かれることになる場合もあります。
　ここには、今後の物語にとって、かなり重要な部分も含まれていることになります。
　教導団としての動きに必ずしも絡み合ってくる必要はありません。ただ個人としてそのとき何をしようとしたかでもかまいません。

　周辺の地図や地形に関しては、前回のシナリオガイドおよびリアクションもご参照してください。

　二つ目として、シナリオガイドにある人質交換の話。こちらは上記の戦後の後日譚という形になります。三日月湖から更に一つ駒を進めた土地での出来事になります。
　相手が指定してきているのは、日時と場所のみ。その他の情報はわかっていません。

　今までの物語の流れ上、両方に登場することになる場合も生じると思いますし、アクションのかけ方によっても、そうなる可能性もあります。
　ダブルアクションについても緩めになりますが、どこに主眼を置くかが明確な方がより深く切り込んだ行動できる可能性が高い、ということは変わりません。


◇黒羊郷への旅編◇
　＊若干の軌道修正があります。物語の流れ上、黒羊郷到達後については前回範囲に含めなかったため、今回のこととなります。前回記して頂いた方については加味するつもりでいます。もちろん今回到達後に主眼を置いて書かれる場合、新たに書いて頂く、前回の記述を補強や修正しつつ書いて頂くのでかまいません。

　まず、騎凛一行およびそれを追う人、ぶちぬこ隊は、西の山のルートを進んでいます。
　黒羊郷、もしくは裏手のハルモニア（ヴァレナセレダの最初の土地）に入る手前に、黒羊旗を掲げた砦が見えます。付近の森を、兵が巡回している模様です。
　砦を越せば、道は黒羊郷へも、ハルモニア方面へも通じています。
　ぶちぬこ隊は、少々範囲が広くなりますが、盗賊のアジトの付近から上記地点まで（前回騎凛らが抜けたルート）の移動が含まれることになります。
　今回は、最終的には、黒羊郷もしくはハルモニア入りします。

　各キャラの持っている情報に気を付けてください。（持っていない情報を使ったアクションの部分については無効になるか判定が難しくなる場合があります。）
　ハルモニア（ヴァレナセレダ）に関していえば、現在の状況はまったく入ってきていないということを念頭に置いてください。

　巡礼一行とサーカスは、黒羊郷からのスタートとなります。
　千年祭には、ヒラニプラ各地から、大勢の古い民や種族が集ってきています。また、商人や芸人の類もいます。
　新しい神の儀式は、見学することができます。また、正装を纏った信徒であれば、儀式のあとに黒羊教の御偉い方やもしかすれば新しい神に直に会わせて頂ける機会がもたれるかもしれないとのこと（信徒らの噂として）。　
　黒羊郷には地下神殿があり、信徒らの修行区域や生活区域、他にここから秘密の研究機関や、神の間、更には入り組んだ天然の迷路ともつながっている、と言われています（これは黒羊郷に入れば人々の間で聞かれる話としてかまいません）。吊り橋落下組のみは、地下よりスタートになります。
　東の谷に入った方も、少し遅れて黒羊郷入りしたとしてかまいません。
　祭に前後して、ヒラニプラ南部から招集された各勢力の代表らが集う機会がもたれます。湖賊と共にある方は、これに参加する目的で黒羊郷へ向かい、黒羊郷入りする予定ですが、その前後の行動を書いて頂くことができます。（牢に入れられた方も一時的のことですので、今回は自由に行動を書いて頂いてかまいません。）


◇オークスバレーは……？◇
　黒羊郷探訪におけるオークスバレー特別編については、今後はなしということになります。前回旧オークスバレーでアクションを取って頂いた方に関しましては、現在、三日月湖への遠征軍から戦況の報告が入ってきており、ソフソ・ゾルバルゲラ両指揮官は三日月湖へ援軍を送ることを決めています。という状況下で、行動を決めてください。但し、出立前に、準備や、やり残したことについて行動する多少の時間はございます。


＊マスタリングについて若干
　台詞以外に、キャラの心情と読み取れる部分は、リアクションにおいて重要な要素になる場合があるので、採用させて頂く場合がございます。これはまだ皆には秘密にしたいなとか、秘密裏に事を進めたい場合等には、そのことを簡単にでも記して頂けるとと思います。もちろん、判定や、それに基づいて調整等は行います。

　では、皆様のご武運をお祈りしつつ。最終回、楽しみましょう。

・バンダロハムで戦いの続き

・戦後を担う

・人質交換に赴く

・黒羊郷見物

・わたしは何処？