蒼空学園

　ある日の蒼空学園でのこと――。
「あー、暇だなぁ。何か面白いことでもないものか……」
　学園の問題児・夢安京太郎は、自分の好奇心と金銭を潤すものがないことに嘆いていました。
　そんな彼のもとに、ぴょこぴょことやってくるボールのような影。
「あ？　……お前、なにやってんだ？」
「カァ〜？」
　まるでデブ猫のように丸々とした形の生物が、京太郎にのんびりとした鳴き声を返しました。
　生物の名前はカーネ。お金を餌にする珍しい生き物で、ひょんなことから学園の中庭で飼われるようになった生き物です。
　いつもは中庭で日向ぼっこにお昼寝にと精を出すこの生き物が、なにやら口に瓶のようなものを咥えています。
「んー……、なんだそれ？」
　カーネから瓶を受け取った夢安は、側面に貼られているラベルに目をやります。
　そこには――『豆の木促進剤』と書かれた文字と、大きく『危険』の二文字が。
「………………ニヤ」
　このときの夢安の脳裏に浮かんだのは、巨大な豆を買いに来る業者相手に、儲けを数える自分の姿でした。


　ズウウウウウウウゥゥン！
「な、何の音……！」
　校舎の外から聞こえた地鳴りをともなう音に、御神楽　環菜（みかぐら・かんな）は飛び上がるように驚きました。
　一体何の音でしょう？　敵の侵攻？　大地変動？
　いずれにしても、嫌な予感しかしていません。
「か、環菜さん！　あれを見てください！」
　ルミーナ・レバレッジ（るみーな・ればれっじ）の呼ぶ声を聞いて、環菜は彼女と一緒に窓の外を見やりました。
　すると、視界に広がっていたのはででんとした緑一色でした。
「なにこれ……？」
「ど、どうやら植物のようですが……」
「植物？　それにしてはおかしな――」
　怪訝そうな顔で見上げると、環菜の目が点になりました。
　それはそうでしょう。なにせ、緑の巨大な影はまるで雲を突き抜けるように天へと伸びているのですから。
　その天辺はまったく見えないほどです。すると、
「カ、カンナさまああぁぁ……」
　呆然としていた環菜のもとに、校長室へ駆け込んできた女生徒の戸惑った声が聞こえてきました。女生徒は泣きそうな顔で外の巨大な植物を見て、憔悴しきっています。
「一体どうしたっていうの？　これの原因はあなた？」
「い、いえ、それが……」
　環菜に詰め寄られて、女生徒はビクついた様子で話し始めました。
　女生徒が技術部であること。新作の薬品を作っていたこと。中庭のカーネに新薬が奪われたこと。そして――
「――また、あいつの仕業なのね」
　夢安京太郎のことを思い出して、環菜はあきれ果てたようにため息をつきます。
「さて、じゃあ放っておきましょう」
「え？」
「いちいちあんな馬鹿生徒に構ってたらこっちの身がもたないわ。どうせ効果が切れたらすぐに元に戻るでしょう」
「あ、そ、それがー……」
　ひらひらと手を振った環菜に対して、恐る恐る女生徒が口を開きました。
「実はあの薬品、失敗作で、このままだと学園を吸収してしまうぐらいに成長してしまう恐れが……」
「なんですって？」
　環菜は笑顔で振り向きました。
　とはいえ――女生徒の口から説明された事態は彼女の怒りを買うには十分だったようで、凍りつくような笑顔のこめかみはピクピクと歪んでいます。
　ヒィッと恐怖の声をあげた女生徒は、慌てて説明を続けました。
「で、でも、薬品さえ手に入れば、植物を枯らす対処薬が作れるはずです！」
「……つまり、どっちみちあの馬鹿を捕まえないといけないってことね」
　巨大な豆の木を見上げて、環菜はいっそ不気味なぐらいの声で言ったのでした。

　おとぎ話さながらの巨大豆の木が出現しました。
　彼から薬品を取り戻すために、カンナ様はどうやら再び各地に召集をかけたようです。
　果たして夢安＆カーネの運命はいかに？

初めましての方は初めまして。
そうでない方はお世話になっております。
猛暑を過ぎたのか、夜になると少しだけ涼しい今日この頃のＭＳ、夜光ヤナギです。

【内容補足】
今回のシナリオは、コミカルタッチなノリを想定してあるコメディシナリオです。
ＮＰＣは過去に登場したことのある人物ですが、続編というわけではありません。
初参加の方もお気軽にご参加くださいませ。

蒼空学園（カンナ様）要請ということになっていますが、もちろんそれ以外の学校の方も参加ＯＫです。
巻き込まれて、噂を聞いて、蒼学に知り合いがいて、夢安の悪巧みに乗った！　などなど。

●巨大豆の木について
巨大豆の木は、かの有名な「ジャックと豆の木」同様に豆の木が天まで昇るほど巨大化したものです。
そのてっぺんでは豆の木の葉っぱと蔓で出来た広大な広場が広がっています。
豆の木には「主人に従う」といった程度の思考はあるようで、夢安に従って可能な限りは形を変えます。

●夢安京太郎の行動について
夢安京太郎は巨大化した豆の木のてっぺんで、巨大豆を売ったり、蔓と葉の遊園地を作ったりと、お金儲けを画策しています。
そのため、遊園地へと案内する葉っぱのエレベーターがてっぺんまで運んでくれる仕組みを作っています。
もちろん、葉っぱエレベーターを使わなくても、きついの覚悟であれば自力で登ることは可能です（葉っぱを飛び渡っていくなど）
ヘタレで逃げ足の早い彼ですので、薬品を奪おうと追ってくる人がいれば、蔓の大男をけしかけてくるかもしれませんね（その間に逃げる）

●カーネについて
カーネは基本的に夢安と一緒に行動しています。
とはいえ、人懐っこく能天気なペットですので、餌でもあげればすぐに飛びついてくるでしょうね
（お金は蒼空学園からの寄付ということになりますので、変動はしません）

●ＮＰＣについて
・夢安京太郎
蒼空学園の問題児。
私利私欲で行動する人間で、常にお金儲けの方法などについて考えている。
喧嘩は弱いが、逃げ足の早いヘタレ人間。

・カーネ
お金を食料とする珍しい生き物。
デブ猫のような外観とは裏腹に、その毛は上質で高級品とされている。
とある事件から、一匹だけ蒼空学園の中庭で暮らすようになった。

※以上はアクションを考える上での参考情報です。あくまで参考となるものなので、必ずしもＭＣやＬＣ自体がそれを知っている前提でなければならない、ということはありませんのでご安心下さい。（もちろん、周知を前提にされても結構です）

・夢安を追いかけて捕まえる

・豆の木遊園地を楽しむ

・夢安と一緒にお金儲けをする

・巨大豆の木を鑑賞して楽しむ