蒼空学園

　楽しかったクリスマスも終り、忙しい年末もバタバタと明け、輝かしい新年がやってきました。
　ですが、ここにあまり輝かしい気分ではない少女がいました。名はカメリア。１０〜１２歳くらいの黒髪の少女です。

「……昔は良かった。昔はこの時期になると人々が儂の周りに集まって粛々と新年を迎えたものじゃ。それが今はどうじゃ、地球から来たクリスマスやら、カウントダウンパーティやら、カップル共でチャラチャラとイチャつきおって」
　彼女は一人、おみくじを木の枝に結びました。もう誰も引くことのないおみくじを。

「……憎い。」

　ぼそっと、誰ともなく呟く彼女。それに応える者もいません。呟いても一人。
「クリスマスが憎い！　地球の連中が、街の連中が憎い！」
　小さな肩をわなわなと震わせて、彼女は立ち上がりました。

「汚してやる！　あやつらの楽しくて美しい思い出など儂がおもちゃにしてコケにしてもてあそんで汚してやるー！！」


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　☆


　あなたが目覚めると、夢の中でした。
　そこは夢の街。どうやらベースはツァンダの街のようですが、そこは夢の中、微妙に形を変え続けています。街はバルーンやツリー、イルミネーションで飾られてクリスマス一色ですが、実際のクリスマスは数週間前に終わっています。
　見ると、街の中心地に大きなクリスマスケーキ型の城まで建っています。現実はどうあれ、今ここはクリスマスなのです。
　街中のそこかしこに設置されたＴＶモニターには、悪魔っぽいコスプレをしたカメリアと仲間が映り、声高に宣言しました。

「これを見ろ！　これはお主らがクリスマスに貰ったり贈ったりしたプレゼントじゃ！　丹精込めて作ったケーキやご馳走もあるぞ！　『これ』を使ってお主らの夢の中からちょいと拝借したのじゃ！！」

　『これ』とは袋の付いた掃除機のようなアイテム、夢物質抽出装置『バキュー夢（ばきゅーむ）』です。これは人の夢や記憶を形として取り出せるアイテムなのです。夢の中限定ですが。
　見ると、確かにあなたが貰ったものや、大事な人にあげた筈のプレゼントがそこに映っているではありませんか。
　心を込めて作ったケーキも、食べる前の状態で完全再現です――もちろん、彼女とその仲間に食べさせるために作ったわけではありません。
「そんなのアリかよ！」
　と誰かが文句を言っています。どうやら、あなたの他にも招待客が大勢いるようなのです。ですがカメリアはというと、


「夢の中だから、何でもアリじゃ！！！」
　の一言で一蹴しました。


「さらにこれからお主らのクリスマスの大事な思い出を、完全ノーカット版でＴＶ放映する！　恋人たちとイチャイチャしていた恥ずかしい姿をせいぜい楽しませて貰おうか！！」
　平然と非人道的な企みを明かすカメリア、仲間と共に続けます。

「それが嫌なら儂らを捕まえてみよ！　儂らはこの街の中に隠れ、自由に飛び回って逃げるから、そう簡単には捕まらぬがな！！」
　高笑いするカメリアと仲間達。彼女らはこのイタズラを心から楽しんでいるようです。
　こうして、夢の中で一つの街を使ったかくれんぼが始まったのです。

　さあ、あなたの大事な夢や思い出を守れるでしょうか？

　みなさんこんにちは、まるよしと申します。
　これが三作目のシナリオですので、初めましての方が多いかと思いますが、今後ともよろしくお願いします。

　さて、ものすごく個人的な事情から皆さんを夢の中へと巻き込んだカメリア。どうやら悪意はなさそうですが、このままだと皆さんのプレゼントが奪われ（あくまでも夢の中の話ですが）、思い出や夢は完全ノーカットで放映されてしまいます（見られたくない相手がこの場にいるかも知れませんね）。
　夢の中の街を逃げる彼女らを見つけ出して、捕まえてください。

　・夢の中の街でストーリーは進行します。
　街は基本的にはツァンダの街がベースですが、夢の中なのでかなり不定形です。皆さんはこの街の中におり、街から出る事はできません。また、自発的に夢から覚めることもできません。夢の外の世界に連絡を取ることも不可能です。
　ただし、夢の中であるということは自覚していて下さい。

　・夢の中はご都合主義空間です
　およそ『街の中にありそうなもの』は、ＰＣが探せば出てきます。施設、道具に関わらずアクション内で自由に登場させて構いません。実際のツァンダの街にあるかどうかは関係ありません。全てが採用されるワケではありませんが、面白いものや物語の進行に役立ちそうなものは積極的に取り入れます。お店もありますが、住人はいません。飲食店関係は、望んだ料理や食材が何故か用意されています。
　また、この夢の中でプレゼント類が壊れたりしても、現実のプレゼントが壊れたり汚れたりすることはありません。とても気分が悪いだけです。

　・皆さんの夢や思い出がＴＶで街中に放映されています。
　夢物質抽出装置『バキュー夢』により取り出された皆さんの夢、思い出がＴＶで放映されています。抽出した夢は、皆さんの脳内にある記憶ですので、事実と多少食い違っても構いません。また、全くの事実無根である思い出を捏造しても構いません。アクション内で自由に書きこんで下さい。特にクリスマスから年末の思い出が適しています。
　思い出内に登場するキャラクターはシナリオ参加者ＰＣに限ります。
　ＮＰＣを登場させたい場合、そのＮＰＣのＩＤを明記して下さい。ＩＤがなかった場合、ＮＰＣは登場しません。また、明記していただいた場合でも、ＮＰＣの出番は少ないと思います。
　当然ですが、その夢や思い出に登場した現実のＮＰＣはそのことを知りませんし、何も反映されません。その人格は皆さんの記憶だけを元に構成されていますので、恐らく本当の本人とは全くかけ離れた存在になるでしょう。
　また放映される夢が、現実に起こったことなのか、勝手な捏造なのかを明記して下さい。

　複数のＰＣが一つの夢に登場したい場合は、グループアクションを利用するとスムーズに表現できると思います。

　・敵役は３人です。

　彼女らは『バキュー夢』を一個ずつ持っています。

　　・カメリア　……悪魔っぽいコスプレをした黒髪ツインテールの女の子です。身長は１４０ｃｍ程度で、１０〜１２歳くらいに見えます。基本的に空を飛んで逃げたり、街のどこかに隠れたりしています。基本的に格闘戦が得意なうえに多少の魔法も使えるので、戦闘するとやっかいかもしれません。悪魔の尻尾と羽がありますが、どうも衣装に付いているだけのようです。ＴＶで放映される皆さんの夢や思い出を眺めて楽しみ、腹立たしいコメントをつけたりもします。
「もうちょっと顔のいい恋人はおらんかったのか？」

　　・カガミ　……黒いスーツやドレスに身を包んだ、中性的なすらりとした人物。身長は１７０ｃｍ程度。幻術を多く使うので、戦闘能力はあまり高くありませんが、そもそも攻撃を当てることが難しいタイプです。空を飛んで逃げたり、隠れたりします。お尻から尻尾が出ていますが、どう見てもキツネの尻尾です。みなさんのプレゼントを鑑定し、腹立たしいコメントをつけます。
「あらー安物ですねぇ……セール品ですかぁ？」

　　・フトリ　……黒いだぶだぶの服を着た男。デブ。身長は２ｍですが、腹周りも２ｍくらいあります。空は飛べませんが、不思議と跳躍力があるので、高く跳ねてピョンピョン移動します。攻撃力はありませんが、大抵の攻撃はその腹で跳ね返してしまいます。お尻から尻尾が出ていますが、どう見てもタヌキの尻尾です。みなさんが作った料理やケーキを再現し、それを素手でもっちもっちと汚く食べては、腹立たしいコメントをつけます。語尾はデブ。
「んー。……３０点デブね」

　彼らが隠れているのは街の中ですので、皆さんは『こういう所に隠れているに違いない』という所を自由に探して下さい。その結果見つけたり、見つからなかったり、というアクションをお楽しみ下さい。

　武装・スキルはアクションを送った時の装備がダイレクトに反映されますのでご注意ください。ですが、武装や装備などは今回に限り『その辺に落ちていて』もＯＫです。服装はアクションに表記があれば基本的にはそちらを優先します。
　残念ながら他ＧＭ様のシナリオは参照できませんのでご了承下さい。キャラの関係などをアクション内で『〜ということがあったので』と説明がある場合はその範囲内で表現したいと思います。公序良俗に反するアクションは採用できませんのでご注意下さい。

　それでは、よろしくお願いいたします。

・カメリア達を追いかける

・カメリア達を助ける

・そんなことより、俺の夢を聞け