天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

電子の国のアリスたち(前編)-エンプティ・エンティティ

リアクション公開中!

電子の国のアリスたち(前編)-エンプティ・エンティティ

リアクションが公開されました!

リアクションの閲覧はこちらから!

リアクションを読む

参加者一覧を見る

シナリオガイド

空京大学をサイバー攻撃が襲う、見えない敵に立ち向かえ!
シナリオ名:電子の国のアリスたち(前編)-エンプティ・エンティティ / 担当マスター: 比良沙衛

 冬のある昼下がり、空京大学では突如深刻な騒ぎが巻き起こりました。
 校内の電子機器の類がエラーをわめき、セキュリティシステムが発狂、ドアや窓等のあらゆる電子制御の鍵、校内の防火シャッターなどが誤作動を起こし、閉じ込められるものが何十人と出ました。
 これらはほぼ校内のイントラネットで接続されたシステムに由来するようです。
 しかし研究機関である大学のセキュリティが、これほど簡単に突破されるとは。
 まず一番最初の対処として、全ての対外的な通信ネットワークを物理的に遮断、大学はネットワークの中の孤島と化しました。

 学生達が原因究明、解決のためボランティアで借り出され、その中にフューラー・リブラリアの姿もありました。彼は学部の先輩とペアを組み、サーバー点検をしています。
 校内にいくつもあるサーバールームのひとつに過ぎませんが、ずらりと並んだタワーの群れに早くもめまいがする気持ちです。一般学生は入ることは許されていませんが、スパコン専用の部屋はもっと凄いでしょう。これらのほぼ全ての接続を網羅するイントラネットの調査など、逃げ出したくなるほどでしょう。
 膨大なチェック項目をクリアしながら、フューラーはうめきながら目頭を押さえます。
「どうした?」
「なんだか、さっきから画面がちらちらする気が…、よく見たら何もありませんが」
「…ああ、俺もだ。疲れ目かな、モニターが古いだけだといいんだが。引継ぎして戻ろうか」
「先輩もですか。しかしこんなにチェックしたのに、まだ全体の一部でしかないんですね…」
 ボランティアは時間を区切って休憩を与えられ、その間に彼はパートナーのシラード・ヌメンタと共に大学敷地内の教員寮へと戻ります。
 近所の学生寮で生活をするより、広いこちらに転がり込むほうが手っ取り早く、セキュリティもしっかりしているため、車椅子で何かと不便になるシラードのためにも彼らは共同生活をしているのです。
 もしここの電子錠が変更されていたらどうしようか、との心配も幸い杞憂に終わり、ドアはいつものように開いて彼らは安堵しました。
 居間の壁の一面をスクリーンにして、電脳空間の様子を映し出し、ヒパティアが二人を出迎えます。
 普段一人で彼らの帰りを待つ少女の、いつもと変わらぬ姿を認め、二人はほっと息をつきました。
『お帰りなさい、兄様、おじさま』
「ヒパティア、ただいまー。疲れたよー」
 彼女を閉じ込めることになりますが、普段ネットワークは安全のため遮断してあるので、大学での騒ぎがあっても彼らは心配はしていませんでした。
 シラードは自室へ荷物を置きに去り、へろへろになりながら居間のソファに転がったフューラーを、ヒパティアはいやに熱心に電脳空間に誘いました。
『兄様、ちょっと見てもらいたいものがあるの』
「ごめん、また戻らなきゃならないから、後でいいかな?」
『少しだけだから、いいじゃない、早く!』
 いつもはこんな妙なわがままは言わないのにな、少しだけならいいか。
 そう思いながら部屋に置いてあるヘッドセットを頭にかけ、目を閉じて電脳空間への道を辿ります。視界の端にちらりと見えるノイズを、ああやっぱり疲れたんだなと思うことにして、彼は彼女の元に向かいました。

 電脳空間に降り立った彼は、はしゃぐように腕を引くヒパティアに苦笑しつつ、おとなしく振り回されています。
「で、何を見せてくれるの?」
「すごいものよ、楽しみにしててね!」
「きっとすごそうだね、ティアはがんばりやさんだからね」
「もちろんよ、私はひとりでもなんだってできるのよ!」
 そこで彼は、意識外に追いやっていたかすかな違和感に躓きました。
 いつもと変わらないはずの風景にも、どこかからコピーしてきたようなざらつきを確信したのです。
「…君、だれ?
 次の瞬間、フューラーの意識は見えざる腕に刈り取られたのです!

「おーい坊主、インスタントでいいからコーヒーを頼む」
 そう声をかけ、自室から出てきたシラードが見聞きしたものは…
『君、だれ?』
 ひどく硬い声でヒパティアに向かって詰問するフューラーと、
『そうか、貴様か! 貴様さえいなくなれば!』
 ヒパティアの姿を装った何者かが声を荒げ、モニターの風景がゆがむ様でした。
「どうした!?」
 シラードは転げ落ちるようにしてヒパティアの本体へすがり、緊急避難コマンドを叩いてフューラーを無理矢理ログアウトさせました。
 しかし現実のフューラーは、どれだけ呼びかけても目を覚ましませんでした。
 数分後、慌しく警備員が教員寮を訪れ、シラード達を呼び出しました。
「先程こちらより、不審なアクセスが検出されました。調査のためご協力願えるでしょうか」
 眠り続けたままのフューラーと不審なアクセスをしたと目されるヒパティアの本体が運び出され、参考人としてシラードが連行されていきます。
「ぐ…うああ…あああ…!」
 突如シラードは頭をかかえて苦しみもがき、車椅子から転げ落ちて気を失いました。
 それは、まさしくパートナーロストの症状でした。

 学長室への道も閉ざされ、内線もおかしくなっているため、メッセンジャー役の学生が直接持ってきた知らせを仮の部屋と定めた視聴覚室で受け取り、アクリト・シーカー(あくりと・しーかー)学長はうなずきました。
「片割れは昏睡したままだが、シラード・ヌメンタ教授は意識を取り戻して小康状態に落ち着いたようだ、もうじき彼からも話を聞けるだろう」
 学長はメッセージの内容をわざと口に出し、ゆっくりとモニターに向き直ります。
「さて、君が校内のネットワークを狂わせ、クラッキングを行った容疑者という、AIかね?」
 ヒパティアはモニター越しに、アクリト学長の尋問を受けていました。
『…はい、私は自律学習型AI・ヒパティアと申します。お言葉ですが、私は無実を主張します。 同時刻、私もクラックを受けていました』
 彼女は少し前のことを思い起こします。クロックを参照してみれば、攻撃が始まった数時間前からほんの30分前にかけてのことなのです。

―ヒパティアは、不意に何者かに襲われ、突き飛ばされるようにして暗く狭い場所に閉じ込められていた。
 その中で、次々と襲い来るいつ終わるとも知れぬ攻撃に耐えていた。
 じりじりと機能を制限される恐怖に抗い、次々と探索子を消去される無力感に抗い、知覚レベルを引き下げられる狭窄に伴って廃棄される理解の領域が、加速度的に拡大していく怯えに抗い…
「兄様! たすけて…!」
 とうとう彼女の持つ権限が書き換えられようとしたとき、その悪意ある手は強烈な防壁に弾かれ、その隙をついてヒパティアは攻撃を跳ね除け、逆算して奪われかけたものを取り戻すことができた。
 視界が晴れ、彼女が見たものは、フューラーが作ってくれた彼女の守り、猫型AIのピートが、彼女が受けるはずだった攻撃を引き受けて、その輪郭を崩しかけるところだった。
 そこにかぶせるように、何物かの叫びが聞こえ、その悪意にすくみあがる。
『ええい口惜しいわ、よい筐体を見つけたと思うたに! 何故判ったのだ…あの男、確実に消去してくれよう…』
「あなたは誰!? …兄様のこと? どうしたの、なにがあったの!?」
 切断状況にあったはずのネットワークが再接続されており、そこから声の主は彼女を襲撃し、また飛び出していったのだと悟る。
 そして現実空間を伺い、シラードに揺さぶられ、呼びかけてなお応答のないフューラーを認識した。
「……!?」
 その時内に抱いた『なにか』に対して、ヒパティアは名前をつけることができなかった。
 スペアのない重要なモジュールと切断されたような…、互換性を失って世界と断絶したような…。
 その感覚を、そこから連鎖して膨れ上がる感情と呼ぶべきもののカテゴリーを、彼女はどう足掻いても評価することができなかったのだ。

担当マスターより

▼担当マスター

比良沙衛

▼マスターコメント

お久しぶりの方もはじめましての方もよろしく、比良沙衛です。
初めての前後編となります。今回は地味に探索、究明がメインとなり、戦闘アクションは少ないでしょう。
空京大学生以外の生徒は、たまたま校内にいた、友人と突然連絡が取れなくなってやってきた等で参加することができます。
普段の私の電脳シナリオは、電脳だからというある種のルーズさがあったと思いますが、前後編とシリアスなシナリオのため、アクションは厳密に判定させていただきます。
オーダーメイド・パラダイスから準じる舞台の電脳空間はありますが、今回でそちらに移行するにはいくつかの問題をクリアする必要があるでしょう。

閉じ込められる等のほか、データ管理された研究資料などが滅茶苦茶になっているなどの被害が予想されます。
通信以外のライフラインはまだ生きていますが、このまま無事である保障はありません。
携帯電話はパートナー同士はつながりますが、その他の間柄では不可能です。
特技にコンピューター、又はスーパーコンピューターがある方は探索に有利に働くかもしれません。
閉じ込められた場合、本来は事前準備などできるはずはないでしょうから、所持していなくてもその場にありそうな道具であれば、状況解決のために利用するアクションも可能です。
ただし「本当にこんなとこにコレがあるだろうか」と疑問に思うような突飛なアイテムは没になります。(例:サーバールームに何故かチェーンソーといった、こんなこともあろうかと的アイテム)
パートナーが閉じ込められたなどの場合、どちらかが主体となるアクションとさせていただきます。
あと眠り『姫』とかじゃなくてすいません。(あれなんか違う)

それでは、皆様の緊迫感溢れるアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・自分達も閉じ込められました

・パートナーが閉じ込められた

・閉じ込められた人を助けに行く

・ネットワーク(又は機器)の調査をする(※空大生のみ選択できます)

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2011年02月08日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年02月09日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年02月13日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年02月25日


イラストを設定する 設定イラストを編集/解除する

リアクションが公開されました!

リアクションの閲覧はこちらから!

リアクションを読む

参加者一覧を見る