蒼空学園

　ある郊外の森に、そこそこ清潔なお屋敷がありました。
　屋敷の主、ヴラド・クローフィ（ぶらど・くろーふぃ）は、薔薇の学舎への入学を目指す吸血鬼です。彼はパートナーのシェディ・グラナート（しぇでぃ・ぐらなーと）と共に、日々幸せに暮らしていました。
　しかし美しさを追い求めては沢山の人々に迷惑を掛けてきたヴラドが、また何か傍迷惑なことを思い付いたようです。

「桜が足りません」
「……は？」
「雅やかな桜が、私の屋敷には足りないのです！」
「……はあ」

　呆れ顔のシェディへ向けて、ヴラドは拳を握り力説します。
　ですが、深い森の中とはいえ、周囲に桜の木は見当たりません。シェディがそれを指摘しようと口を開くものの、一足早く告げられたヴラドの言葉に呑み込まれてしまいました。

「ですから、お花見をしましょう！」

「……ヴラド。頼むから、少し落ち着いてくれ」
「私は常に落ち着き払っていますよ」

　頭痛の増す心地に深く溜息を吐き出すシェディとは反対に、ヴラドは想像の翼を広げているのか、ますます楽しそうに瞳を輝かせます。

「桜蝶を使いましょう」
「なんだ、それは？」

　聞き慣れない単語に、シェディは怪訝と問い返します。
　それもそのはず。桜蝶とは、ヴラドが最近森で見付けたばかりの蝶に付けた名称でした。
　桜色の羽を持つ、美しい蝶。それはどうやら、楽しい、甘い、そんな雰囲気に惹き寄せられて集まってくる性質を持つようでした。
　一通りの説明を受けたシェディは、納得したように一つ頷きます。

「つまりは花見の雰囲気を餌に蝶を釣ろうと、そういうこと……か」
「ええ。花が無ければ、咲かせてしまえばいいのいです！」

　自信ありげに言い放ったヴラドは、早速とばかりに、広い庭の中央にハリボテの樹を一本作りました。
　風情も何も無いそれを眺めたシェディは、躊躇いがちに切り出します。

「……それで。誰が花見をするんだろうか？」
「それは勿論」

　ヴラドは、満面の笑みを浮かべて言い放ちました。

「いつも通り、ビラをまいてポスターを貼って呼び込みましょう！」

　こうして薔薇の学舎の門の脇に、以下のようなポスターが貼られることになりました。


『花見をしましょう！』
　お花見の季節が迫ってきていますね。
　皆さんも一足早く、満開の桜の木の下で、お花見を楽しみませんか？

　場所と日時は以下のように。ぜひ、皆さんお誘い合わせの上お越し下さいませ。
　ちなみに当日は屋敷も解放いたします。厨房のご利用なども、ご自由にどうぞ。


　さて、ヴラドは無事に満開の桜を拝むことができるのでしょうか……？

お久し振りです、ハルトです。
この度の震災では、皆様ご無事でおられましたでしょうか。私は計画停電や余震こそあるものの、然程被害を受けることなく済みました。被災地におられる方々を始めとした皆様のご無事と、一刻も早く穏やかな生活が戻ることを、心よりお祈り申し上げます。


参加は薔薇の学舎の生徒さんに限りません。たまたま森へ迷い込んだ、空を飛んでいたら森の中に人だかりを見付けた、友人に誘われた、など、お好きな理由でお越し下さい。
屋敷に着くと、まずヴラドから桜の花が無いことと桜蝶の説明を受けることになります。

桜蝶は、参加者の皆さんが楽しむごとにどこからか集まり、悲しむごとにどこかへと去っていきます。
なので始めは、ハリボテの樹の下でお花見を始めることになります。たまにヴラドが紙吹雪を撒くこともあります。
時間が昼から夜へ向かうにつれて、(恐らく)桜の木は桜蝶を集め、美しく咲いていくと思われます。なので登場したい時間帯や桜の咲き具合に希望がある場合は、それをアクションにご記入下さい。記入が無い場合は、こちらで判断いたします。

屋敷は広く、エントランスと厨房が解放されています。簡単なお菓子や飲み物も用意されています。
庭の中央に桜(予定)の樹が植えられ、その周囲を囲うように一段高くなったステージがあります。
少し離れた場所には幾つかのベンチがありますが、こちらは夜が深くなると、吸血コウモリが現れる恐れもあります。
何も無ければ、ヴラドとシェディはステージと桜の樹を眺めています。


それでは皆様、少し早いお花見をお楽しみ下さい。

・庭で花見をする

・ステージに上って歌う

・屋台をやりたい