蒼空学園

　―――シャンバラ教導団２Ｆ男子トイレ。

「なっ！」
　それを見つけた小暮　秀幸（こぐれ・ひでゆき）の目が大きく見開かれました。
　洗面台の鏡の中、その隅に女子の顔が映っていたからです。
「ななな殿っ！！　なっ、何をしているっ！！」
　シャンバラ教導団の新入生金元　ななな（かねもと・ななな）は入口の扉から顔だけをピョコリと覗かせたままに応えました。
「何って……　眼鏡君（秀幸）が入っていくのが見えたから外で待ってたんだけど。待ちきれなくて……　その……　来ちゃった♪」
「 『 来ちゃった♪ 』 じゃない！！　誤解されるような言い方は止めろ」
　誤解もなにも、顔だけとはいえ男子トイレに入っている時点で言い訳など出来るはずもないのですが……。
「入ってないよ、ななな、男子トイレには入ってないんだよ。Ｍ７６星雲では地に足がついてないのは半端者だから一人と数えないんだよ」
「知らん。…………というかそれは地球でも同じだ」
　一応補足しておきますが、ここでいう『地球と同じ』は『半端者』に関する件について言っているのであって決して『扉端から顔だけを覗かせるのは侵入にはならない』なんて定義について言っているのではありません。『Ｍ７６星雲からやってきた』というなななの超設定がやりとりをややこしくしているだけなのです。
　一貫して欠片も恥じらいを見せないなななの笑顔に、秀幸はため息一つで苛立ちを呑みこんだようです。
「で？　何の用だ」
「あっ、そうそう！　これっ、これだよっ！！」
「ん？　これは……」
　受け取った書類には見覚えのある文言が並んでいました。
「イルミンスールの武装獣か」
「あれ？　知ってるの？」
「あぁ。今朝の定例報告の時にな」
「それなら話は早いわ。行きましょう、調べに」
「調べるって……　この件はまだ情報が少な過ぎる―――」
「だ・か・ら、情報科が調べることになったのっ。そして何と！　参謀科からは眼鏡君が参加する事になったのでした〜」
「なっ……　どうして自分が！」
「団長直々、名指しのご指名だよん♪」
「分かった」
　シャンバラ教導団校長の金　鋭峰（じん・るいふぉん）直々の指名とあっては断るわけにはいきません。
「……………………　なら早速、各校に通達を出そう」
「へ？　どうして？」
「………………　武装獣についての目撃情報を募るためだ。ついでに調査に協力してくれる人がいないかも呼びかける」
「な〜るほど〜、さっすが眼鏡君だねっ」
「…………　不幸が訪れる確率、９８％だな」

　おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。

　今回の舞台はイルミンスールの森になります。
　「武装化したモンスターの目撃情報」を元に、真相を探る事が目的です。

　目撃された『武装獣』は８体。
　森の北東部川沿いで４体の『グリズリー（巨熊）』が１台のトレーラーを取り囲んでいたという事です。
　また同じく北東部の茂みの中を４体の『ハンマーラプトル（小恐竜）』が疾走していく様子が目撃されています。
　どちらもイルミンスールの森では生息確認がされていない種であり、なにより『パワードレッグ』や『パワードアーマー』を装備しているように見えた事からシャンバラ教導団に報告がなされたようです。
　『パワードスーツ系』はシャンバラ教導団の管理ですが、巨熊や小恐竜に装備させるようなタイプのものは製造されていないということです。
　目撃者はイルミンスール魔法学校の生徒数名。ハーブを採取しに森に入ったところ、運悪くモンスターに遭遇したそうです。
　
　（以下、報告内容より抜粋）
・『パワードレッグ』を装備した『グリズリー（巨熊）』
　　　毛色は薄卵色で体長は３ｍ強。鋭い両爪と牙を有している。
　　　振りかぶってからの拳撃は岩をも砕くが、その為には全体重を乗せる必要がある。
　　　視野は人間と同程度と思われる。
　　　目撃者は観察を試みたがすぐに気付かれ襲撃にあう。負傷者一名、背中に傷を負ったが命に別状は無い。
・『パワードアーマー』を装備した『ハンマーラプトル（小恐竜）』
　　　体長は２ｍ弱の肉食獣。前足はバランスをとっているだけの二足歩行。太く長い尻尾を有する。
　　　疾走速度は『スパイクバイク』と同程度と思われる。
　　　額と後頭部が飛び出しており、その皮膚は非常に硬質であると思われる。

　またアクションにおきましては、イルミンスールの生徒であれば上記の『目撃者』になる事ができます。
　上記内容と目撃情報だということを踏まえた上でアクションの作成を行って頂ければと思います。

　生息していないはずのモンスターの目撃情報、そして武装化したその様。
　ルンルンに張り切っているなななと共に是非とも調査を完遂して下さい。

・『グリズリー（巨熊）』を捜す。

・なななと一緒。

・目撃者になる。