【ザナドゥ魔戦記】芸術に灯る魂(第2回/全2回) リアクション公開中! |
シナリオガイド芸術大会開催! アムトーシスに魂は灯る
シナリオ名:【ザナドゥ魔戦記】芸術に灯る魂(第2回/全2回) / 担当マスター:
夜光ヤナギ
◆ 「これがボクの最高傑作だよ」 アムトーシスの大広場――運河の水をくみ上げて噴水を作っているこの場所の中央で、アムドゥスキアスは仰々しく手を広げました。 それを合図として彼の部下たちが運び込むのは一体のブロンズ像。 同じく広場でアムドゥスキアスの様子を見守っていたシャムスの眉が、ピクリと上がりました。精鋭の近江騎士団『漆黒の翼』の騎士団長アムドや地球の契約者たちも、彼女とともにブロンズ像を見つめています。 ブロンズ像は彼女の双子の妹――エンヘドゥです。 はかなくも美しい姿で彫像と化している彼女は、今は身動きどころか口を開くことすら叶いませんでした。 噴水の前に飾られたブロンズ像。それを前にして声を張り上げたアムドゥスキアスに、街の魔族たちがざわめき立ちます。 「きたる芸術大会はもうすぐだ! 地上の者か、あるいはボクたち魔族か! 勝者だけがこの最高の芸術品を手にすることが出来る!」 アムドゥスキアスがそう言って示すのは、エンヘドゥ。 『芸術品』。 その言葉に、シャムスの拳がぎゅっと握られます。 芸術大会は円舞、彫刻、絵画、曲芸……美術品から見世物まで、『芸術』であれば何でもよし。それらを街で披露してもらうという手法でした。 決着の判断はアムドゥスキアス自身が行います。 シャムスの脳裏に、先日のアムドゥスキアスとの対話が思い起こされました。 「それで? 決着の判定方法はどうなるのだ?」 「エンヘドゥさんが賭けの対象でしょ? そして彼女はいまボクの手の中にある。シャムスさん……ボクはね。彼女を手放したくないんだ」 エンヘドゥの部屋は塔の上の階にあります。 アムドゥスキアスはそんな彼女の部屋を眺めるように天井を仰ぎ、そしてシャムスと向き直りました。 「だけど、あなたたちはそんなエンヘドゥさんを取り戻したい」 「その通りだ」 「なら……ボクが彼女を手放してもいいと思えるぐらいの価値のある芸術をいただく必要がある。そうは思わない?」 半ば、シャムスの瞳に殺気が宿りました。 エンヘドゥの美しさと存在に芸術的価値を見出し、彼女の魂を捕えているのは他ならぬアムドゥスキアスです。そしてそれは決して合意の上に成り立ったことではありません。ぬけぬけと何を言い出すと、シャムスは激昂寸前まで怒りがこみ上げました。 彼女は思わずアムドゥスキアスを睨みつけます。 「つまり……対決の判断はあなた自身が行うと?」 「その通り。飲み込みが早くて助かるよー」 「それをオレに信用しろと言うのか? 魔神であり、一介の魔族を統べるあなたのことを?」 「それが対決への第一歩だと、ボクは思ってるよ」 毅然としたシャムスの視線にまったく動じず、彼は飄々とそう言いました。 しばらく、シャムスは黙ったまま彼を見つめます。やがて――その口がゆっくりと開きました。 「……いいだろう」 「ほんと? よかったー、断られたらどうしようかと思ってたんだー」 「必ず……取り戻させてもらう」 「うん。お互いに頑張ろうね」 アムドゥスキアスはまるで来たる旅行の日を楽しみにする子供のように、無邪気な笑顔を浮かべました。 「芸術大会かー……楽しみだなっ」 「へへっ、地上の連中の芸が見れるってのも面白い」 「当日はどんな衣装で出ようかしら?」 「あれが地上のお姫様かぁ……こりゃ、確かに至高の一品だぜ」 アムドゥスキアスの演説が終わると、街の魔族たちはきたる『芸術大会』への期待を膨らませながら、広場を後にしました。 「それじゃあ、君たちも芸術大会に向けて準備をするといいよー。ボクも大会運営の準備を進めるからさ。ふふっ、たのしみだね」 アムドゥスキアスもまた去ってゆきます。 しかし――ブロンズ像は広場の噴水前に残されたままでした。 アムトーシスの兵隊長であるサイクスをはじめとしたアムドゥスキアスの部下たちが、ブロンズ像を守っています。芸術大会参加者たちの意欲をかき立てるためでしょう。大会期間中、彼女は噴水前に飾られるようです。 しばらく、シャムスたちはエンヘドゥを見つめています。 やがて、その瞳に宿った決意の色が色あせないうちに、彼女たちはその場を後にしました。 ◆ エンヘドゥは夜になれば自由な身体を取り戻すことができます。 そのため――彼女は夕闇が近づくとアムドゥスキアスの塔に運び込まれるのでした。そしてその役割を担うのは、アムドゥスキアスから何名かの部下を配属された魔神 ナベリウス(まじん・なべりうす)です。 「エンヘちゃんのお部屋着いた~」 「ついたついた~」 「とうちゃーく」 三人娘はエンヘドゥを部屋まで連れてきました。 彼女たちの無邪気すぎる姿に、半ば戸惑った顔をしているエンヘドゥ。しかし彼女は、親戚の子供たちでも遊びに来たかのように、その瞳に少しだけ微笑ましい色を浮かべていました。 「それじゃあ、ナナがエンヘちゃんのお部屋を調べるの~」 「モモは~?」 「サクラは~?」 「二人はアムちゃんのところでごほうこく~!」 「「らじゃー」」 三人娘の中でも一番髪の長いナベリウス――『ナナ』が、お姉さんぶるようにサクラとモモを別行動にさせました。エンヘドゥを部屋に案内して、彼女はごそごそと彼女の部屋を調べ始めます。 エンヘドゥはこれでも一応は人質です。なにか不審なものがないか、随時調べるように言い聞かされていたのでした。 しかし―― 「はい、出来ましたよ」 「にゃ~! ナナの似顔絵、似顔絵だ~!」 紙に描かれた自分の似顔絵を見て、ナナはとび跳ねて喜びました。 彼女は、エンヘドゥから様々な『遊び』を教えてもらっていたのです。初めは地球で言われる『あやとり』という糸遊びに興じていたエンヘドゥを見ていただけなのですが……やがて自分でもやってみたいと思ったのでしょう。 エンヘドゥはかつて姉とやっていた玉弾きに糸遊び、そして今日は似顔絵を描いてあげたのでした。 「エンヘちゃん、次! 次は糸遊びだよ~!」 「ええ、良いですよ」 そして夜は更けていきます。 彼女は朝になれば再びブロンズ像になり、アムトーシスの街に飾られるのでした。 ◆ アムトーシスの兵隊長――サイクスは見回りがてらに街を散策していました。 「おーい、これそっちに持っていってくれー!」 「ばっかやろう! ちげぇーよ! それはもうちょっと右上だって! だー、わかんない奴だなもう」 「当日はどんな衣装で出ようかしら? 楽しみね」 街の至る所から聞こえてくる、『芸術大会』へ向けた声の数々。久しぶりの大規模な催しものとあって、街の者たちは気合を入れてアムトーシスを装飾し、自らの見世物を準備しています。 それが魂をかけた戦いであっても――いや、あるいはだからこそ、彼らは真剣に芸術に取り組もうとしているのです。 それは契約者たちも同じであって、彼らもまたアムトーシスの劇場を利用したり、自らステージを作ったり、己の芸術の表現に趣向を凝らしていました。 サイクスはそんなアムトーシスの街を歩きながら、ある三人の人影が街の路地裏にいることに気づきました。 「ナベリウス様?」 彼女たちに近づこうとしたサイクスは、ふとその足を止めました。 (あれは……) 彼女たちが話していたのは、誰ともわからぬ者でした。 身につけているのは魔道士のようなローブで、目深く被ったフードによって顔がまるで見えません。足元に見えるのは竜のごとき尾です。魔族であることは間違いなさそうですが、なぜこう人目につかないような場所でナベリウスと話しているのか。 やがてローブの魔族と話し終えて、ナベリウスは路地裏から出てきました。 とっさに身を隠したサイクスは、彼女たちがその場から離れたのを確認して路地裏を覗き込みます。すでにローブの魔族は姿を消していました。 (ナベリウス様は…………たしかパイモン様とバルバトス様から送られてきたんだったな) 嫌な予感はぬぐえません。 サイクスは身を翻すと、アムドゥスキアスの塔へと戻っていきました。 ザナドゥは芸術の街アムトーシスで『芸術大会』が開催されます! エンヘドゥをかけた大会の行方はいかに? 運命の歯車となるのは、あなたたちなのです! 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。 ▼サンプルアクション ・芸術大会で芸を披露する ・芸術大会を鑑賞してゆく ・大会の運営を手伝う ・警備係として街を見て回る ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2011年08月27日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2011年08月28日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2011年09月01日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2011年09月26日 |
||