「『料理の激人』?」
高円寺 海(こうえんじ・かい)はクラブサンドを手に首をかしげました。
「最近流行りの料理対決番組よ、知らないの?」
ラーメンを啜りながら雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)が言います。
「食材を調達する方々と料理を作る方々でチームを組み、番組側のチームに挑戦するという内容なの」
二人はツァンダの商店街の定食屋で昼食を取っているところでした。
定食屋『ハラマタ』。
創業80年の老舗料理店だというのに、リクエストさえあれば地球系の料理なども出してくれるため、
蒼空学園に通う者やツァンダを訪れる契約者たちに人気のお店の一つです。
先代の主人が亡くなり、今は息子のトニー・ビーが店を継いでいます。
海はトニーの方へ振り返り。
「その料理対決番組に出演を依頼されたってことか?
すごいな」
「いやぁ、まあ……」
トニーが、いつもの愛想の良い笑顔を曇らせながら口ごもります。
と――その時、店の扉がバタンッと大きく開かれました。
そして、入ってきた男がトニーを見やり、フッと嘲笑を浮かべたかと思うと。
「相変わらず、間抜け面で安い料理をお手軽に作っているね、兄さん!!」
「あ、ユートピア・ジョニーよ」
雅羅の呟いた声に、「ユートピア?」と海は問い返しました。なんとなく小声で。
雅羅がなんとなく小声で返します。
「料理の激人に出てくるメイン料理人の一人よ。
甘いマスクと華麗な包丁さばきが人気なの」
「甘いマスクねぇ……」
言われてみれば顔立ちが整っているような気がしないでもありません。
そんなことより海が気になったのは。
「今、兄さんって言ったな」
「来たか、弟よ……。
5年前、父さんが亡くなった時に出ていった弟のジョニーよ。本名、ジョニー・ビーよ」
海の独り言に応えるように、トニーがジョニーを見すえて言いました。
このお店が人気の理由の一つは、そのサービス精神です。
ジョニーがフッと笑って目を細め。
「あの話の答えを貰いに来たよ」
「……いいだろう。
それで、お前の気が済むというのなら」
「では約束通り、番組の料理対決で僕が勝ったら、この店は僕ら『激人会』が貰うよ」
「激人会……
腕の良い料理人を集め、料理の世界からパラミタを席巻しようとしているという噂の闇組織か。
だが、ジョニー。
俺が勝ったら約束通り、この店で一緒に働いてもらうからな」
「フッ、いいよ。兄さん。
だけど、勝負は僕が勝つ。
僕が、こんな小汚い店で働くなんてことは万に一つも無いのさ……万に一つもね」
ジョニーが不敵に笑み……スッとその表情を冷たくしました。
「ましてや、一度は僕を追い出した店だ。
僕は、ずっとこの店に復讐することだけを考えてきたんだよ、兄さん」
「ジョニー、親父はお前に――」
「話は終わった!
せいぜい風邪や怪我に気をつけることだね。
何があっても勝負を延期するなんてことは許されないんだから!」
言って、ジョニーは風のように店を去っていったのでした。
「マスター、今の話は……」
「つまり、そういう事なのです。
今度の料理対決……私が負ければ、店を乗っ取られます」
「そんな……困るわ」
「大丈夫。負ける気はありませんよ。
俺の料理人としての全てを賭けて、弟に勝ちます!!」
と息巻いたトニーは、力強く調理台を叩きました。
同時に響いた、めきっ、という鈍い音。
■ ■
「――というわけで。
まな板に激しく突き指をしたトニーさんが出場不能となったので、
代わりに『ハラマタ チーム』として料理対決に出演してくれる助っ人を探している」
「お願い。どうかトニーさんの力になってくれないかしら!」
海と雅羅は、
あなたの元を訪れて言いました。
目の前には『料理対決の流れ』と書かれた紙が差し出されています。
§ § 料理対決の流れ § §
▼勝負地
ツァンダ特設スタジオ
▼食材探し
食材を探せる範囲:『ツァンダの街』『ツァンダの森』
▼調理
今回のテーマ:『秋を感じさせる一品』『可愛いデザート』『肉料理』の3つ。
▼今回の審査員
パーパス斎藤
§ § § §
あなたはハラマタの助っ人として、この騒動に参加しても良いですし、まったく別の方法で関わっても良いでしょう。
果たして、この騒動の結末や如何に……?