蒼空学園

　イルミンスール魔法学校校長室。

　贅沢に飾られた広い空間の中央に、可愛らしいこたつが一つ。
　それに付随するのは青い団子と赤い団子。
　青い団子……いえ、青いどてらに身を包むのは校長のエリザベート・ワルプルギス（えりざべーと・わるぷるぎす）。
　赤いどてらを羽織っているのはルーレン・ザンスカール（るーれん・ざんすかーる）です。

「寒い……寒いですぅ。外に出たくないですぅ〜！
　世界樹から出たらあの寒い風にやられてしまいますわぁ。
　そしたら凍って動かなくなって千年の時を止めたままお婆さんになってしまうんですぅ」
「何を言っているんですか、さっさと行く用意をしてください。
　……もう、だいたいあなたの食い意地が悪いせいなんですから、これは自業自得です。
　あ、それわたくしのみかんですわ」

　こたつの上では舌戦が、中では激しい足戦が繰り広げられています。

「いくら今が冬とはいえ、こんな北極熊も裸足で逃げ出す異常気象は想定の範囲外なのですぅ！
　行かなければならないですが寒さに足が震えて一歩も動けないんですぅ。
　具体的に言えば、こたつの中から一歩も動けません」

　エリザベートの泣き言に、ルーレンがやれやれという表情を見せます。

「こんな事もあろうかと、密かに計画を練っておきました！」

　赤いどてらの内側から取り出したのは一枚の紙。

「名付けて、温泉で温まってぬくぬくしてほくほくしようプロジェクトですわ！」
「あの、ルーレン？　最近キャラが崩れてきたように見えるが気にした負けなのですか？
　それよりも温泉なんてどこにあるんですかぁ。
　そんな素敵空間があるならばぁ寒さなんか吹き飛ばして温泉まっしぐらですが、あの村にそんなものは無いですよぅ？」

　秘密道具を出した狸のように勝ち誇ったルーレンへ、じと目のエリザベートが突っ込みを入れました。

「現在、村の方たちはとても困っている状態ですわ。
　とても悠長に対処している場合ではありません。ですから……ごにょごにょ……」
「ふんふん……」

　相談する声は段々と小さくなり、それにつれてエリザベートの口の端に笑みが浮かび上がってきます。


　翌日、校舎の入り口に大きい看板が設置されていました。
　そこには『ジャムで有名（だった）アタミンスール村に温泉を掘って村興しをしよう！』という見出しの張り紙が貼られています。

　アタミンスールとは北の森を山路に沿って進んだ先にある小さな村です。
　特産として知られるアタミンオレンジから作られる高級ジャムは上流階級層にとても人気があり、不作の年には奪い合いも起きるほどとか。ですが、最近になってモンスターが村を襲い、加工前のオレンジをすべて食べられてしまうといったニュースがありました。
　ジャムによって生計を立てていた村にとっては死活問題でしょう。

『存亡の危機であるアタミンスール村に温泉をつくり、観光名所とするための人員を募集しています！』

　道具、作業着は貸与。
　参加者特権として、温泉を掘り終わるまでの間は授業に出なくても良いそうです。
　また、モンスターの襲撃に対する防衛、撃退も同様の待遇、とあります。

　そして一番下にはでかでかと【特に貢献したものたちには素敵なご褒美をあげるですぅ】と手書きの文字がありました。
　……素敵なご褒美？
　具体的に明記されていないのがとても不安……いえ、気になるところですが、そろそろ抜き打ちテストが行われると囁かれているこのごろ、特権の授業免除はとても魅力的です。

　掘ってよし、バトってよし、皆様の気軽な参加をお待ちしております。

　はじめまして。
　新しく蒼空のフロンティアのゲームマスターを務めさせて頂きます、和泉 水晶と申します。
　どうぞよろしくお願い致します！

　このイベントでは、モンスターの襲撃によって危機に瀕した村を救うことが目的となります。
　温泉によって村興しを成功させるのも大事ですが、村の襲撃に味を占めたモンスターから村人や工事中の生徒を守ることも必要となってくるでしょう。
　また、それらのサポートも重要な役割となります。

・温泉の出る場所を探す

・掘削なら任せろ！

・モンスターから村を守る

・森に入ってモンスター退治

・作業している方たちのサポートをします