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闇に潜む影

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シナリオガイド

髪斬りが現れた! コマンド?
シナリオ名:闇に潜む影 / 担当マスター: 泉 楽

 葦原の町は、一部の区域以外に街灯の類はありません。そのため、人々は月の明るい晩を除き、出歩くことはせず家にいます。
 とはいえ、用事のある人はそうもいきません。
 月のない晩でした。一人の侍が武家町を歩いていました。彼は主人の使いで、甲斐家を訪れた帰りでした。周囲は武家屋敷ばかりですが、時刻が時刻だけに全ての門は閉められています。提灯の灯りが、彼の歩みに合わせてゆらゆら揺れていました。
「遅くなってしまったな……」
 事務仕事や人への頼み事はあまり得意ではない彼ですが、必死さが伝わったのか甲斐家の新しい当主は快く引き受けてくれました。
「殿もお喜びだろう」
 微笑む彼の表情が、その時、一変しました。
 空を切る音と共に、提灯が弾き飛ばされました。侍は咄嗟に鯉口を切ります。
「何奴!?」
 落ちた提灯は、地面の上で勢いよく燃え上がっています。暗闇から現れた足元が、その光に照らされました。
どうやら腕に覚えがあると見た……
 小さく、掠れた声でした。
「わしを刈谷 典膳(かりや・てんぜん)と知ってか!!」
 典膳は一喝しましたが、相手は「知らん」と一言答えると、典膳の懐にすうっと入り込みました。


 ドンドンドンドンドン!!
 砕かれんばかりの勢いでドアが叩かれています。
 ところが開いたのは隣の部屋のドア。
「あ、休みの日にすまない。おまえは寝ていてくれ」
 丹羽 匡壱(にわ・きょういち)は隣の住人に頭を下げると、再びドアを叩きました。隣の住人は、「寝られるわけない……」とぶつぶつ言っています。

 ドンドンドンドンドン!!

 ドン!!!

 最後の音は匡壱ではなく、隣の住人のようです。それでようやく、目的のドアが開きました。
 黒髪を三つ編みにした、些か表情に乏しい少女が正座しています。
「ようこそいらっしゃいました」
 彼女の名はベルナデット・オッド。機晶姫です。
「生憎、へーたは留守にしております」
 匡壱は嘆息しました。「子守も大変だな」
 彼は邪魔するぞ、と一言言うと、そのまま上がり、迷うことなく押し入れを開けました。
「わあっ!!」
 膝を抱えてそこにいたのは、北門 平太(ほくもん・へいた)。今年度の新入生です。
「び、びっくりするじゃないですか。そ、それに土足なんて失礼ですよ!」
「緊急事態だ。許せ」
 匡壱は、平太を無理矢理引っ張り出しました。
「話がある。初任務だぞ、新入生」


 ここ三ヶ月ほど、新月の前後や曇りの晩になると、葦原の町に辻斬りが出没していました。
 といっても、死傷者は出ていません。被害者は皆、屈強な侍ばかりですが、当身を食らって気絶した後、必ず髪の毛をばっさり切られていました。お家の恥のため隠してはいますが、そういった話は面白おかしく広まるもので、辻斬りならぬ「髪斬り」として巷では噂でした。
「俺は先月から見回りをしていたんだが、昨夜、後ちょっとのところで逃げられたんだ」
 匡壱は悔しげに言いました。
「俺一人でやるのは、どう考えても無理がある」
「大変ですね」
 他人事のように言う平太に、匡壱は片眉を上げました。
「おまえ、この前のお茶会を欠席したろう?」
 いきなり話が変わり、うぅ、と平太は口ごもります。明倫館の生徒は全員駆り出されたお茶会でしたが、平太は体調を崩して欠席したのです。この学校と体質が合わないのか、入学以来どうにも体がだるく、休日などずっと寝ているほどです。
「ま、それはいい。実は次の満月の晩には、納涼大会が開かれる予定だ」
「納涼?」
「つまり盆踊り」
 話の流れがよく分からないものの、平太は適当に相槌を打ちました。
「が、このまま髪斬りが捕まらないと、中止になるかもしれない」
「でも髪切りは、新月の晩に出るんじゃないんですか?」
「ずっとそうとは限らないだろ? 何しろこの納涼大会は明倫館ではなく、町民主催の行事だし、当日は曇りかもしれない。人出は多いし、場所が町の中じゃあ俺たちが警備するにしたって、限度がある。もし盆踊りの真っ最中に奴が現れてみろ。パニックになって、髪どころか、本当に辻斬りになるかもしれない」
 はあ、と平太はまた相槌を打ちました。
「そこでだ。お茶会に欠席した罰として、おまえ、パートナーと一緒に見回れ」
「ええええ!!?」
 平太は素っ頓狂な声を上げました。「無理無理無理! 絶対無理です!」
 平太はぽっちゃり体型の機工士です。契約者ではありますが、戦闘能力は皆無と言っていいほどです。忍具を作りたい、という理由のみで明倫館に入学してしまい、ちょっと後悔しているところだったりします。
 しかし匡壱は、あっさりきっぱりと言いました。
「この件に関しておまえに拒否権はない」


「私がやりますよ、へーた」
 匡壱が帰って後、大いに落ち込む平太に、ベルナデットは言いました。口の両端を僅かに上げ、「微笑み」の表情を作ります。
「へーたは部屋にいてください。私が代わりに見回ります」
「いいの? ベル」
「ええ」
 ベルナデットは、はっきりと答えました。
「私はへーたの武器であり、盾なのですから」

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

こんにちは。泉 楽です。今回の話は辻斬りならぬ髪斬り退治です。
無闇に歩いて回っても、犯人を見つけることは難しいでしょう。ある程度の推理は立ててください。
MCとLCの別行動は可としますが、場合によっては描写が薄くなることはご了承ください。

また、メインは「髪斬り」探し(退治)ですが、後日談として納涼大会のイベントもあります。日程は、ほぼ半月後と考えてください。それに向けた準備のアクションも可能ですので、楽しんでください。


髪斬りの被害者は分かっているだけで三名です。ただし、探せば他にもいるかもしれません。被害者に聞き込みする場合は、誰か一名を選んでアクションをかけてください。ただ「訊きに行く」だけでは、答えてくれない可能性が大きいので注意してください。

轟 平八郎(とどろき・へいはちろう):最初の被害者です。町道場の道場主なので、髪斬りに敗れたことを否定しています。しかし噂のせいで、生徒は減っています……。
浅川 小八(あさかわ・こはち):二番目の被害者です。浪人ですが、賭場に出入りしています。
刈谷 典膳(かりや・てんぜん):三番目の被害者です。葦原藩士・某の家臣で、家名が大事なのですんなり会ってくれるかは分かりません。しかし、情報としては一番新しいです。


NPC情報
▽北門 平太
忍具を作りたい、という理由だけでうっかり隠密科に入学してしまい、日々、後悔しているところです。気弱な性格故に、大抵のことは何でも真面目にこなしますが、戦闘能力はほぼ皆無です。
今回、見回りを命じられましたが、上記の理由から逃げるつもりでいます。代わりにパートナーのベルナデットが見回りに出ます。

▽ベルナデット・オッド
平太のパートナーの機晶姫です。
外見年齢は17歳。身長は170センチと平太よりかなり大柄です。緑の目と黒髪を持ち、髪型は三つ編み。通常は、平太がネットで購入したセーラー服を着ています。クラスはセイバー(剣士)。
倉庫で眠っていたところを平太により発見、彼と彼の従兄が修理して今に至ります。表情に乏しいですが、感情はあります。平太のことは「へーた」と呼んでいます。
見回りに出る予定ですが、聞き込みに誘えばついてきます。

▽丹羽 匡壱
夜に見回りに出ます。行動を共にすることは可能ですが、聞き込みにはついてきてくれません。今回、昼間は寝ています。


それでは皆様のご参加をお待ちしております。

▼サンプルアクション

・髪斬りの被害者に聞き込みをする

・見回りをする

・NPCと関わる

・納涼大会の準備をする

・納涼大会に参加する

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2012年07月16日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年07月17日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年07月21日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年08月02日


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