蒼空学園

　――蒼空学園屋上。

　雲一つない、爽やかな晴天が広がっています。

「久しぶりに那由他の煮物を食べましたが、懐かしい、美味しい味ですわ。更に腕を上げられましたわね」
「アルセーネの煮付けも隠し味が利いていて美味しいわ」

　龍杜　那由他（たつもり・なゆた）は、アルセーネ・竹取（あるせーね・たけとり）と雅羅・サンダース三世（まさら・さんだーすざさーど）にお呼ばれされ、晴天の下、一緒に昼食を採っていました。
　３人はそれぞれ手作りのお弁当を持ち寄っており、お互いつつき合っています。
　那由他とアルセーネは重箱に入ったマホロバ風のおかず、雅羅はバスケットに入ったサンドイッチやサラダ、唐揚げです。

「２人は幼馴染みなのよね」
「はい。私の母は龍杜神社で何度か舞われたことがありまして、その縁で、那由他と幼少の頃から仲良くさせていただいておりますわ」
「舞いに関しては、未だにアルセーネの域に至らないわ」
「そういうの、いいわよね。私、幼馴染みとかいないから……」

　那由他とアルセーネの遣り取りを、雅羅は羨望の眼差しで見つめています。
　災難を呼び寄せる体質故“カラミティ（＝疫病神）”と疎んじられてきた彼女には、幼馴染みと呼べる存在がいないのです。

「しかし……随分物々しいわね」

　箸を置くと、那由他はふとそう洩らしました。
　お弁当を広げている敷布の周りには、折り畳まれて置かれたビーチパラソルの横に機関銃が設置されています。雅羅は愛銃バントラインスペシャル雅羅式を抜き身で傍らに置いていますし、アルセーネは鉄扇を同じく傍らに置いています。

「いつものことですわ。そろそろ来ますかしら？」
「来るって何……カ、カラス！？」

　平然とアルセーネが答えると同時くらいに、突如無数のカラスの群れが那由他達に襲い掛かってきました！
　雅羅はサンドイッチをくわえたままバントラインスペシャル雅羅式をぶっ放し、アルセーネは「お行儀が悪いですわよ」と言いながら、鉄扇を両手に構えて優雅に舞いながらカラスを追い払います。

「いつも悪いわね」
「そんなこと仰らないでくださいな。私はあなたのパートナーですもの」

　――外で食事をすればカラスに襲われ、鳶におかずを盗られ、急な通り雨に降られる。エトセトラエトセトラ……。
　どうやら雅羅の災難体質が呼び寄せているようで、慣れっこの２人はさも当たり前のように追い払ってゆきます。

　しかし、今日はいささか異なりました。

「何！？　追い払ったはずのカラスが１つの塊になって……？」
「ガーゴイルですの！？　雅羅の災難体質が増強されてしまっていますわ！？」

　なんと、散り散りになったと思っていたカラスが一塊りになり、巨大なカラスとなったのです！
　それだけではありません。野良ガーゴイルまで飛来してきたのです！
　この調子なら全長50mを超える超巨大鳥ロック鳥まで呼び寄せられそうな勢いです。

「ああ！？」
「那由他！？　きゃぁぁぁぁぁ！？」
「しまった！？」

　那由他は構えを取って巨大なカラスに連撃を繰り出しますが、気を取られている隙にガーゴイルが背後を取って攻撃し、彼女を石化させてしまいました。
　それだけではありません。今度は巨大なカラスがアルセーネの身体を包み込むように覆い、中に取り込んでしまったのです。
　迂闊に撃つことができず、雅羅はバントラインスペシャル雅羅式を構えたまま見守るしかできません。
　巨大なカラスとガーゴイルは戦利品を得たかのように、那由他とアルセーネを連れて飛び立っていきました。
　その方向には、樹齢3000年を超える巨大な樹があります。どうやらそこへ運ぶようです。

「カラスは光り物を巣に集めると聞くけど、アルセーネもそうなのかしら。何とかして２人を助けないと！」

　雅羅は散乱したランチを手早く片付けると、那由他とアルセーネを助けに行く準備を始めました。
　自分の災難体質が呼び寄せたことだけですが、今日に限っては災難が大きい上に自分ではなく他者に降りかかりました。これは今までになかったことです（厳密に言えば、バスジャックやハイジャックはその場にいる全員を巻き込んでしまいますが）。
　それだけに雅羅はサポートが必要だと思い、携帯電話を取り出しました。

　このシナリオは、雅羅と共に巨大なカラスとガーゴイルに攫われてしまった那由他とアルセーネを助けに行くのが目的です。
　雅羅は現在イラストストーリー『ゴーストハンター雅羅』で真更町へ行っていますが、本シナリオはその前のお話になります。
　雅羅は友人などに連絡を取っているほか、全学校に依頼を出しています。
　ですので、雅羅と知り合いの方は元より、イラストストーリーで雅羅と接点を持たれた方も、気軽に参加して頂けますと幸いです。

　また、巨大なカラスは光り物を身につけていれば人ごと攫ってしまうようで、アルセーネのように攫われたパートナーを助けるといったシチュエーションもＯＫです。


　巨大なカラスの巣は、ツァンダの郊外にある樹齢3000年を超える巨木の中にあります。
　巨木は高さ250ｍで、枝振りがよく、端から見ると青々とした山のようにも見えます。
　巨大なカラスの巣が何処にあるかは分からないため、樹の外と中の二手に分かれて探す必要があります。
　ただ、この木にはカラスといった野良の動物の他、ガーゴイルやファイティングパンダのように、野良化したモンスターが住み着いているため、一筋縄ではいかないでしょう。


　なお、巣の中にある光り物は、雅羅は持ち主に返したいと思っており、回収した後はツァンダ家に持っていく予定です。


　救出した後は蒼空学園の屋上で遅めのランチが再開されます。
　一緒にランチを採りたい方はアクションにその旨を書いて下さい。このシナリオではダブルアクションとは見なしませんので、持ち寄るおかずなどを決められるといいと思います。


　PC同士と雅羅で協力して、囚われのパートナー達と那由他、アルセーネを救出してください！

・雅羅に協力する

・パートナーを救出する

・巨大なカラスに攫われてしまった！