盛夏のフラワーショー リアクション公開中! |
シナリオガイドそれは全ての花が美しく咲く、特別な一日
シナリオ名:盛夏のフラワーショー / 担当マスター:
有沢楓花
パラミタ内海の中央部には、“原色の海”(プライマリー・シー)と呼ばれる海域があります。 * 「いちもんめ、って何ですの?」 「匁は質量ですけど、お金の単位でもありますよ」 「でしたら……『はないちもんめ』……これって花妖精が日本でも売買されている、ってことですの?」 「違いますよ。昔から遊びで歌われている童謡です。パラミタの出身の種族は、昔の日本各地で頻繁に目にするものじゃないですよね?」 そうなんですの、と納得した風に頷いて──百合園女学院の生徒会長、アナスタシア・ヤグディン(あなすたしあ・やぐでぃん)は、パラパラとめくっていた本を閉じ、籐でできたベッドから身を起こしました。休憩時間にしてはくつろぎすぎです。 ですが樹上の枝が交差した場所に、木で組まれたテラスは風通しがよく、彼女のプラチナブロンドの髪をさらさらと揺らして通り過ぎて行くので、リゾート気分だったのでしょう。 生徒会会計の村上 琴理(むらかみ・ことり)は、手元の資料から顔を上げ、その表紙にちらりと目をやって、 「花の逸話……ですか?」 「そうですの、知らない場所や文化では、事前の学習というものが大事だと学んだのですわ。 私、実家では花は庭師が育てて、メイドが飾ってくれるものでしたから、花の名前が分かるくらいで、詳しくありませんのよ」 二人がいる場所から周囲を眺めれば、大海原に突き出た樹木たち──ここはドリュス族の治める、海の樹上都市です。 普段の景色は緑と茶、そして海の青の三色に満ちた都市ですが、今日は赤、青、黄色、ピンク、オレンジ、紫……まるで絵具箱の中身をぶちまけたように、カラフルです。 街は、行き交う小舟、桟橋、樹上へ上がるための木々に取り付けられた螺旋階段、樹木同士を繋ぐ吊り橋や、デッキの手すりに木製の家の屋根の天辺が花で飾られています。 だけでなく、行き交う花妖精や守護天使たちも色とりどりの衣装と花々で自身を飾っています。 あっちを見てもこっちを見ても花が咲いている様子は大変見る者の目を喜ばせますが、それだけではありません。 どの季節の花も、花だけでなく花のない植物も、これ以上ないほど美しく輝くようなのです。 「あと4時間ですが、フラワーショーの準備はできましたですか?」 午前10時、そんな休憩中の二人の元にやって来たのは、菫の花妖精ヴィオレッタでした。ふわふわとした亜麻色の髪のてっぺんから、今日は何時もよりみずみずしい菫の花が咲いています。 彼女はヴァイシャリー艦隊の提督の一人、フランセット・ドゥラクロワ(ふらんせっと・どぅらくろわ)付のメイドでした。 「ええ、参加させていただけて光栄ですわ。それも軍の皆さまが運んでくださったおかげですわ」 「なら良かったのです。百合園の皆さんの出番はゲストですので最後なのです、じっくり楽しんで行ってくださいなのですよ。 そうそう、祭りの由来はご存知ですか?」 メイドはにっこりと笑いました。聞くところによれば彼女はこの都市の出身だそうです。この日のことを話したのも彼女です。 久々の故郷に帰れて嬉しいのでしょうか、言葉も弾むようでした。 「せっかくですから、お聞きしますわ」 椅子を勧めると、彼女はメイドらしくそれを辞して、 「この海上の森は、むかーしむかし、荒れ果てていたそうなのですよ。 それをティル・ナ・ノーグからこちらの海の方へ移住してきた花妖精たちが見つけて、かわいそうに思って住みつき、手入れをしたのです。 それには長い長い年月がかかったのです。その上花妖精だけでは故郷から、土から遠く離れたこの海の上では慣れないことも多かったそうなのです。 近くの島に住んでいた守護天使たちは、か弱い彼女たちの力仕事や高所の仕事を手伝ったり、海の怪物から守る為、彼女たちを“守るべき対象”と決めたのだそうです。 二つの種族は力を併せて森を蘇らせました。すると──」 メイドは指差しました。都市の中心に聳える、ひときわ巨大な樹木を。 「当時の花妖精の中心となっていたとある方に、あの樹の声が聞こえたのです。世界樹ではもちろんありませんけれど、それは感謝の言葉だったそうなのです。 その時、周囲の植物が季節を問わず一斉に咲き乱れたそうなのです。それから一年に一回、代々の族長は、同じことを樹の力を借りて起こすのですよ。 族長は声を聴いた花妖精から選ばれ、この樹と意思疎通をしながら、この森の保全に身を捧げるのですよ」 現族長のドリュアス・ハマドリュアデスもそうして選ばれたと言われています。 「この特別な一日だけは、どんな季節の植物も、美しい姿として花を咲かせ実を付けさせることもできるのです」 現在では、この日にフラワーショーが行われています。 花妖精たちは着飾って自身の(特に頭の天辺の花の)美しさを競い、そうでない守護天使や他の種族は、大事に育ててきた植物を披露します。 そしてこのコンテストで優勝した人は、樹上都市のみならず原色の海で尊敬を受け、一目置かれるのです。 ──ところで、とメイドは聞きました。 「百合園の皆さんのお花たちを拝見しましたけど、あの中にあった薄いピンク色に甘い香りのする百合は、何という名前ですか? 見たことがないのです」 「乙女百合、別名姫小百合ともいう、日本のとある地方にしか存在しない希少な花なのですわ。皆さんに御覧に入れるに相応しい花かと」 彼女はまるで育てているのが自分のことのように偉そうに胸を張りましたが──その時、この場に一人の女生徒が駆け込んできました。確か園芸部の生徒だったはずです。 「──た、大変です会長っ! オトメユリの鉢が盗まれてしまいました!」 息を切らせて彼女が告げたのは、小さな事件、でした。 アナスタシアは一瞬だけ息を呑むと、真顔で琴理に聞きました。 「日本では『花盗人は罪にならない』というのは本当ですの?」 「違いますよ。誰かが育てた花を盗むのは、窃盗です。ただ……犯罪という意識が低めではありますけど」 「そうですの、安心しましたわ」 一人納得するアナスタシアを余所に、琴理が女生徒に尋ねます。 「それで誰が盗んだのか、見当は付いているんですか?」 「盗まれた瞬間は見ていないのですが、この都市に住む、小学生くらいの男の子なんです。見学したいって言うので、控室に入れてあげたんですが……。 頭に花は咲いていませんでしたから、花妖精ではないと思うんですけど」 「そういえば最近、綺麗に育てられた花が一日一日、盗まれていくという話を聞いたことがあるのですよ」 彼女たちが簡単に状況を説明すると、アナスタシアは腰に手を当てて言いました。 「──たとえ子供であっても我が校の生徒が慈しみ育てた花を勝手に盗むなんて……許せませんわ。村上さん、当然、助手として付き合って下さるわよね?」 自身に満ち溢れた顔で言い放つアナスタシアでしたが、 「残念ですけど、ご存じの通り、これからフラワーショーの会場内で、オープンカフェのお手伝いがありますので」 そこでは、花妖精たちによって、ハーブティーやハーブを使ったお茶菓子が振る舞われるのです。現地の住民に溶け込むための大事な仕事というわけでした。 「個人的にハーブティーは興味がありますし、それに、フランセット提督やヴァイシャリー艦隊の船に乗って来た方々も、フラワーショーのお手伝いをするそうですよ」 琴理のパートナー・フェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)は、ヴァイシャリーと親しくなったイルカ獣人の族長ハーララとその娘たちと共に、ショーを見て回るそうです。 「そ、そうですの。探偵には助手が付き物だそうですのに。 仕方ありませんわ、私自ら調査いたしましょう! この前図書館で借りた『神楽坂少女探偵団』シリーズで、調査の基本はバッチリ学びましたのよ! 開幕まで、残り時間4時間……皆さんへの披露を考えると最大でも5時間ほど、ですわね」 アナスタシアはくるりと周りを見回すと、遠くにいる──ヴォルロスや地下牢だったでしょうか、以前どこかで見知ったような気がする顔の、名も知れぬ守護天使の青年に目を付けました。 なんだか頼りなさそうな感じですが、道案内くらいにはなるでしょう。 「この私が、必ず解決してみせますわ!」 びしっと指を虚空に突き付けて、アナスタシアは言い放ちました。 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
こんにちは、有沢です。 ▼サンプルアクション ・ミスコンに参加する ・花を見ながらのんびりお茶する ・花盗人を捕まえる ▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています) 2012年08月13日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2012年08月14日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2012年08月18日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2012年08月31日 |
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