ある日のこと。蒼空学園に構える探検部に一つの調査依頼が舞い込みました。
依頼人は空京の裏通りで雑貨屋を営む店長からで、その内容はこのようなものでした。
『お客様からの要望で、骸骨マスコットと肩を並べるような新トレンドのアクセサリーを頼まれてな。あれこれと調べていたら、ツァンダ南方のほうに“陸の孤島遺跡群”と呼ばれる場所があって、そこにふわふわの毛玉のような生き物が生息しているって話らしい。
だが同時に、そこは恐ろしい蛇の化け物がうようよいる地域らしくてな。俺一人じゃ探すのにも手間取りそうだったんで、こういった調査ならお手の物っていう探検部に依頼を出したってわけだ。
てなわけで、新商品開発のためにも“陸の孤島遺跡群”の調査を依頼する。成功の際の報酬は弾ませてもらうのでそのつもりで』
……それを読み終えた探検部部長・ジョニスは目を輝かせていました。
「陸の孤島遺跡群……! ついに、あの場所を調査できる口実……いやいや、理由ができました!」
とても嬉しそうにしているジョニス。というのも、陸の孤島遺跡群は依頼書にも書かれていた通り、恐ろしい蛇の化け物『ランドサーペント』がいるせいで調査がままならぬ状態でした。顧問の先生からも「よほどの理由がない限りはあそこの調査を禁ずる」とまで言われていたのです。
しかし今回、雑貨屋の店長からの依頼を理由にして、未調査区域である陸の孤島遺跡群を調査できることになりました。
「でもジョニス、ランドサーペントが身体に纏わせてる汗って強酸性って聞いたことあるんだけど。あたしはそんなのと戦うのはごめんよ」
そんなジョニスの歓喜に水を差したのは、探検部が危機を乗り越えたのちにジョニスと契約した地球人・探検部副部長の北上 奈留。ジョニスより戦闘力のある、ハッピートリガーな副部長です。
「君は遠距離からの攻撃担当なんだし、大丈夫だよ。にしても、ふわふわ毛玉の生物かー……どんなのだろう」
すでに気は未調査区域の情報集めに没頭しているのか、奈留の言葉を半分程度にしか聞いていない様子のジョニス。それを見た奈留はジト目でジョニスを見ていました。
「……あたしの心配、少しはしてくれてもいいのに」
「ん? 何か言った?」
「――何も言ってないわよ、この探検バカ!」
――事前調査によれば、陸の孤島遺跡群に生息しているとされるふわふわ毛玉の生物は、強靭な生命力を持ち、暗い所に好んで住み、一定の期間でその生息場所を変えるそうです。しかし、誰一人としてその姿を見たことがないことから、それらの情報の真偽がいまだ議論されているとか。
そんな、いるかどうかもわからない生物の生存調査に加え、ランドサーペントが跋扈してる地域に赴くことになった探検部。さすがに顧問も最初は反対していましたが、数時間に及ぶジョニスの説得(という名の口論)に折れ、協力してくれる契約者を全校から募るという条件の元、陸の孤島遺跡群の調査の許可が下りたのでした……。