蒼空学園

　そこは

　巨大な木々で多い尽くされた、それでいてまったく生命を感じられない矛盾した地。
　青々とした葉など見受けられない、死を感じさせる黒々とした景色の地。
　しかし朽ちることなく聳え立つ巨木。死臭漂う獣や虫たちが生活する、不気味な地。

　ソレらがたどり着いたのは、そんな過酷な場所でした。

（私が外に出たら、すぐにやられてしまいますね）

　ソレは自分以外に動くものがいない空間の中、ふよふよと頼りなく宙を浮いていました。
　つぶらな瞳からは、今にも零れそうなほどに水――涙、なのでしょうか――が溜まっています。球体から飛び出た小さな手足をばたつかせ、ちょうど中心アタリにある輪っかが音を立てて回転しています。
　ソレは己を情けないと思いながらも、必死に祈り続けていました。

『お願いです。誰か――』

　ソレの目の前には、卵のような形をした装置が１０個……いえ、９個。他にもふたが開いている装置がいくつもありました。壊れているものもたくさんあるようです。
　開いている装置の中から、ふいに声が聞こえました。ソレは慌てて傍に近寄ります。

『どうかされましたか？』
「スーよ。傍におるのか？」
『はい。私はココにいます』

　そこにいたのは、１人の老人。額にはクリスタルが輝いています。
　しかし老人の口から漏れるのはこひゅっという苦しげな呼吸音。開いているのにソレの位置を確認できずに宙をさまよう眼（まなこ）。伸ばされた手は彼の意思とは関係なく震えていました。もう長くないのは、誰の目にも明らかでした。
　涙をこらえたソレが手に触れると、老人は安心したように長めの息を吐きます。おそらく、声もほとんど聞こえていないのでしょう。

「そうか。他の皆は、元気かの？」
『はい。みなさん、元気に眠っておられます』

　小さな手でぎゅっと握り返せば、老人はその意味を悟って、また安堵の息を吐き出します。ですがすぐに、その表情は悲しげなものになりました。

「ああ……できれば最後は、かの地で眠りたいものじゃな……例え、そこがシャクティ（インテグラル）によって破壊し尽くされた絶望の荒野だとしても……」
『大丈夫です。最後なんていわないでください。もうすぐ、きっと助けが――』

　来てくれるはずですから。

　その声が聞こえたのかそうでなかったのか。
　老人は再び眠りに着きました。
　まだその胸が上下していることにソレは安堵し、また宙へと浮かび上がって、輪の回転を早めたのでした。


＊　＊　＊


「コールドスリープ？」
『そや。最後の手段なんやけどな。一応、ここにもついとる』
　土星くん　壱号（どせいくん・いちごう）がハーリー・マハーリーと話をしていました。今日は遺跡や移動式住居（弐号）についての報告日なのです。

『インテグラルに追われ、一部のニルヴァーナ人が大陸を脱出したのが約１万年前。
　パラミタ大陸に亡命した連中はポータラカ人となったが、空へ逃げたもんがどうなったかは不明やった。
　……もしも何事もなく普通に生活できているとしたら、技術力を生かして栄えとるやろ？　ひっそり暮らしとったとしても、今まで見つかっとらんっちゅうのがおかしいんや。自力での脱出もできるやろうし』
「まあ、それはたしかにな」
『だからもうおらへんのやと諦めとった。けども、レーダーに反応があった。
　わしら……移動式住居と繋がる機晶生命体“スークシュマ”は、住居に誰も住民がおらへん状態やと自動的に活動停止するからな。反応があったということは』

　土星くんはスークシュマ・レーダーをちらと見ました。そこにははっきりと反応があります。反応があると言うことはニルヴァーナ人は生きているということ。しかしスークシュマがほとんどそこから動かないのを見ると、ニルヴァーナ人たちは動けない状態なのでしょう。

『おそらくやが、生きとるやつらはコールドスリープの装置で眠っとる。やけどコールドスリープも万全やのうて……んんっ？』
「どうした？」

　説明途中で土星くんの目が鋭くなります。睨んでいる先は、レーダー。今まで白色に点滅していた点が、赤くなっていました。それは、緊急時に土星くんたちスークシュマが出す信号でした。
　自身の命すら削る、最後の最後に出す信号です。

『何かあったんや！　急がなあかん』

　まだ改造途中であった移動式住居（通称：土星くん・弐号）の出発が決まったのでした。

　おはようございます、こんにちは、こんばんみ（？）。そして始めましての方は始めまして、舞傘　真紅染（まいかさ　まあかぜ）と申します。へんな名前ですが、傘に踊らされている奴、と覚えてください（逆に覚えにくい）。

　今回のシナリオですが、土星くんがメインとなります。
　出来ることは大きく分けて２つ。

・土星くんとともにニルヴァーナ人を助けに行く
・アガルタで行動する


　です。どちらかしか選べません（ＭＣ・ＬＣが分かれていた場合は、ＭＣに同行という形になりますのでご了承ください）。
　以下、詳細です。街やスークシュマの説明は一番下です。

【土星くんと一緒に弐号へ乗り込む！】
　こちらは弐号（移動式住居）に乗り込んでからの描写となります。弐号内での行動を書いていただいてかまいません（弐号の運行・整備を手伝う、売店で働く、掃除をするなど）。操縦は制御を司る土星くんが行います。
　また道中や着陸後、弐号が異界（宇宙）を漂う怪物に襲われる可能性もあるため、土星くんは緊急にイコンでの護衛者も募集しました。弐号にも武器がついていますので、そちらを使いたい方はそのようにお書きください。道中の空間は異界扱いになりますが、弐号が周辺に張っているフィールド内でしたら問題なく活動できます。
　捜索に向かわれる方は、森の中での活動になるためイコン不可です（パワードスーツのみ可）。徒歩、もしくは個人の乗り物での行動になります。

※ＰＣ情報！
　レーダーの反応から、ニルヴァーナ人たちがいると思われる場所は瘴気に満ちた森と判明しています。獰猛な動植物（ゾンビのような）が生息している場所で、磁場も発生していて方向感覚を狂わせます。電波も届きにくいようです。面積も広いですので、相応の準備や協力が必要でしょう。
　土星くんに戦闘力はほとんどないため、森に着陸した後は中でそわそわしながら待機しています。飛び出したいのを必死に我慢しているようです。
　また、移動式住居はニルヴァーナ人たちが発見されるまでその場を動きません。
※ＰＬ情報！
　レーダーの反応は、森にたどり着く前になくなります。詳細な位置は歩いて探すしかありません。
　移動式住居は襲われた衝撃でくだけ、森のあちこちに一部が落ちています。ですが長い年月がたっているため、完全に森に飲み込まれ、上空で見ただけでは発見は難しい状況です。
　目覚めてしまっている老人は寿命で、発見が遅くなると手遅れになる可能性があります。また他の生存者（９名）は全員致命傷を帯びているため、起こしてすぐに手当てしなければ危険です。
→生存者内訳：技術者２名、軍人１名、医者１名、一般人６名（老人含）
　ニルヴァーナ人だけでなく、スークシュマも最後の力を振り絞って緊急信号を出したため、身動きが取れません。が、まだ生きてます。こちらも手遅れになる可能性あり。

　以下、アガルタ関連行動

　上記に関係なくアガルタでの行動も募集しています。
　にぎやかなニルヴァーナの姿を見れば、きっと彼らも喜ぶはずです。

【出店する！　店を運営する！】
　出店希望はまだまだ募集中です。
　もう出店されている方は、そちらでアクションかけていただいてもかけなくてもＯＫです。増築することも可能。他のお店の方と提携するのも面白いかもしれません。

※出店について
　常に店にいる必要はありません。雇った名もなきＮＰＣに任せてもいいですし、気が向いたときだけ開く、と言う形でもかまいません。店を休んで観光してみたり、他のお店と協力してイベントを企画してみたり……お気の向くままにどうぞ。
　掲示板で店にいるかどうか書き込むと、他の方が行きやすいかもしれません。
　出店地区や説明はこちらで考えていますが、どうしてもこの場所がいい。どうしてもこの説明は書いてほしい、などがありましたらアクション内にご記入ください。
（アクションの書き方はサンプル４を参考にしてください）

【普通に観光！】
　ジヴォートたち関係なく、アガルタを楽しんでいってください。いろんなお店がありますので、ぜひいろんな場所へ行ってみてください。ＰＣ様が出されている店はもちろん。Ａ地区（アガルトピア中央区）に巨大ショッピングモールもできました。そちらで買い物を楽しむことも出来ます。サウナやプール、電波塔、噴水広場、夜景など、見所はあちこちにあります。

※ＰＣ様出店の店について
　掲示板にお店について書き込みされていることもありますので、覗いてみると幸せかもしれません。

【そのほか！】
　もちろん上記以外にも街中でしたいことがありましたらどうぞ。

【スークシュマについて】
　ようやく出てきた土星くんたち、機晶生命体の正式名称です。スー型、と略されることが多いんだとか。……細かく言うと、スー型３０００、２８００などいろいろあるようです。
　ちなみに、土星くんはスー型３０００−Ｒという最新型だそうです。
　だからどうした、という話ですが。ちょっとした豆知識？

【アガルタの街について】
　地下に発見された巨大空間を利用してやり手商人ハーリー・マハーリー（３０・男）が作った巨大地下街。元々は土星くんや移動式住居の製造工場と判明。
　街の詳細や出展者一覧はコチラから。
　指令部（役所）やサウナ、展望台は各地区に存在（中でも展望台はいくつもある）。


【舞傘より】
　一言だけでも台詞があると、性格や口調が掴みやすいので助かります。
　では、ご参加＆アクション、お待ちしております。どうか、彼らを救ってあげてください。

・イコンで弐号を護衛！

・弐号の乗組員になる！

・ニルヴァーナ人を捜索する！

・アガルタに出店する！