蒼空学園

　何時もの午後。
　義勇軍『プラヴダ』の駐屯地を鼻歌混じりに歩いていたジゼル・パルテノペー（じぜる・ぱるてのぺー）の腕が突然後ろから掴まれました。
「えっ、な、んぐっ！？」
　口を抑えられ碌な抵抗も出来ないまま連れ込まれたのは駐車スペース。薄暗い中でやっと顔が確認出来た犯人はスヴェトラーナ・ミロシェヴィッチ（すゔぇとらーな・みろしぇゔぃっち）でした。
「スヴェトラーナ？
　……びっくりしたわ。いきなりこんなところに……、一体どうしたの？」
「薄暗い中で抵抗出来ないシチュエーション、中々そそりますね」
「どうしたの？」
　念を押す様に言えば、スヴェトラーナはハッと我に返ってジゼルをひょいと持ち上げ、自分のバイクの後部座席に座らせます。
「説明は走りながらです！」
　直後にバイクを走らせながら、スヴェトラーナがテレパシーで送ってきた内容はこんなものでした。


　この日、プラヴダの基地にアレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ（あれくさんだるちぇとゔるてぃ・みろしぇゔぃっち）が不可思議な生き物――Ｋ．Ｏ．Ｈ．を連れてやってきました。
　３０センチに満たないサイズのその生物は、丸い耳と丸い尾を持っていますが、獣というよりも人を２、３頭身にデフォルメ化した可愛らしいアニメ系のフィギアのようでした。
　スヴェトラーナは言います、［あれ、どう見てもパーパですよ］。
　つまりアレク自身に似たその生き物の正体は、某基地で研究が進められていた超生物兵計画の一個体なのだと、アレクは説明しました。軍の中でも優秀な兵士の遺伝子や血液をサンプルに作られた超生物達。しかし黒い毛並みに鋭い金の目から察するにアレクの系譜を感じるこのＫ．Ｏ．Ｈ．は完成して早々ケージを抜け出し、基地内で暴れ回りました。当然殺処分になる予定が、様々な事情を経てアレクの手元に送られてきたそうなのです。
［で、パーパは所用があるらしく、昼過ぎに私達にその公……じゃなかったＫ．Ｏ．Ｈ．を預けていったんです］
　アレクが「遊んでやってて」とトゥリン・ユンサル（とぅりん・ゆんさる）とスヴェトラーナにＫ．Ｏ．Ｈ，を託して暫く。用事の出来た二人はキアラ・アルジェント（きあら・あるじぇんと）に、そしてやはり用事の出来たキアラはハインリヒ・シュヴァルツェンベルクにとＫ．Ｏ．Ｈ．をリレーしていきました。
［最終的にハインツおじさまが電話中に、逃げ出してしまったんです］
　話の途中から予想していた通りの落ちに、ジゼルは溜め息をついて問います。
［でもそれなら、基地の中を探した方がいいんじゃないの？］
［ところがそれが問題なんです］とスヴェトラーナは続けました。Ｋ．Ｏ．Ｈ．を預かっていた際携帯ゲーム機に夢中になっていたトゥリンとスヴェトラーナは、好みならアレクと似たようなものだろうと適当に少年漫画を与えて放置していました。
［少年が人喰い巨人と戦うストーリーです］
　それからキアラはＫ．Ｏ．Ｈ．とハインリヒのパートナーのトリグラフ達相手に、近頃パートナーのトーヴァ・スヴェンソン（とーゔぁ・すゔぇんそん）に彼氏が出来た事への愚痴を零していました。
『男爆発しろ』
　最後にハインリヒ。本業が多忙な時期に大学のレポート提出期限に追われた彼の口からついて出た愚痴はこんなものでした。
『明日空大キャンパス爆散しろ』

　いよいよ此処からが問題です。
［さっき四人で基地内を探しまわっていたら、空大生の兵士が、
『キャンパスで中尉のパートナーと大尉そっくの生き物が、モルモットとかウサギとか可愛いのを率いて走ってるのをみましたよ。あれなんだったんですか？』って……。
　その上武器庫で保管していたトゥリンさんの冬休みの自由研究『爆弾三種セット』が消えてるんです。そしてその付近に……空大のパンフレットが落ちていたんです。３号館の図書館とその二階の食堂、５号館の研究所にバツ印がつけられてました……。
　もしＫ．Ｏ．Ｈ．が私達の話しを真に受けていたら、『空大のキャンパスを爆破』しかねません。
　トゥリンさん達は既に空大に向かってます。他にも助けは呼んだんですけど……パーパにバレるまえに何とかしないと！］
　問題なのは『アレクにバレたら』じゃないとジゼルが冷静に思う中、バイクは空京大学に向かって全速力で走り続けます。
　到着した頃にキャンパスがそこに存在すればいいと、ジゼルは祈るような気持ちで天を仰ぎました。

　皆さんこんにちは。東安曇です。恐らくコメディシナリオお届けします。
　今回ＰＣの皆さんは空京大学に居る時に事件に巻き込まれました。また、スヴェトラーナ達と親交のあるＰＣさんは彼等に助けを求められたかもしれません。
　Ｋ．Ｏ．Ｈ．とトリグラフは仲間（小動物）を引き連れバツ印を付けた場所で爆弾を爆発させるつもりです。
　このままでは（スヴェトラーナ達が）大変な事になってしまいます！（アレクにバレる前に）小動物達の進撃を止める事が、シナリオの目的です。

※逆凪まことマスターのマスターＮＰＣアルケリウス・ディオン関係の判定は、逆凪マスターの監修が入ります。予めご了承下さい。

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＊敵ＮＰＣ及びその武器＊
※説得アクションをかける方へ。

『Ｋ．Ｏ．Ｈ．』
　アレクが連れてきた超生物兵２１３番。アレク命名『あにたろう』。
　ハンカチを風呂敷のようにし、背中に爆弾三種セットを背負っている模様。
　謎のカリスマ性があり、小生物はこの生き物の命令についつい従ってしまう。が、所詮は公なので人間などは従わない模様。
　刃渡り２０センチ程度の軍用ナイフ（バヨネット）を持っており、自在に扱い『敵対してくるもの』を攻撃する。見た目はマスコットだが、小回りが利く他スピードと筋力は契約者並みに異常なので注意が必要。
※知能は幼児〜子供程度。会話が出来るかは不明。

『トリグラフ』
　ハインリヒのパートナーのギフト５匹。
　憧れのキアラちゃんの「男爆発しろ」という願いを叶えるため、そしてパートナーのハインリヒの「空大爆散しろ」というボヤきを叶えるためＫ．Ｏ．Ｈ．についていってしまった。
　スピードと火力は異常で、（外見）男性を狙って攻撃してくる。トーヴァの彼氏アルケリウスに似た特徴を持つ（茶髪長身など）男性は更に優先的に狙われる。また武器化するとかなりの重量になるので、捕獲して利用するのは難しいと思われる。
※知能は幼児〜子供程度。種族ギフト、ハインリヒ、ジゼルのみ会話が可能。他ＰＣは基本一方通行で、文字による会話は殆ど期待出来ない。

『小動物』
　大学内に居た兎やモルモット、野生のリスや小鳥など。至って普通の動物。
　Ｋ．Ｏ．Ｈ．とトリグラフを守りながら契約者の邪魔をしてくる。攻撃されると地味に痛い上、取りつかれると動けなくなる。あと可愛い。どうしよう。

『爆弾三種セット』
　トゥリン・ユンサルが冬休みの自由研究で作った爆弾。
　かつて米空軍で研究されていた非殺傷型化学兵器の多角的な可能性についての文書を元にしたトンデモ兵器。ただし実際に効果があったらしく、その危険性からプラヴダの武器庫に保管されていた。
・びーえる爆弾……中に催淫剤が仕込まれた爆弾。爆発すると、同性愛的行動を取り始め混乱に陥る。トゥリンによる兵士を犠牲にした実験で「ッアー」な効果がある事は分かっているが、「キマシタワー」まで効果があるかは不明。図書館で爆発させる予定と思われる。
・フェロモン爆弾……小動物のフェロモンが仕込まれた爆弾。爆発すると周囲一体にフェロモンが噴射される。浴びた物は鼠などに（色んな意味で）襲われる。食堂で爆発させる予定と思われる。
・シャンバラ破壊爆弾……名前から察するに明らかに非殺傷型じゃないリアル爆弾。範囲は不明。研究所で爆発させると思われる（が名前的に何処で爆発させても効果があれなのではないかと思われる）
　なお、この爆弾のみ『ご都合主義爆弾』で爆発後の効果解除は出来ない。


＊ＮＰＣ＊

『トゥリン・ユンサル』
　自宅に保管していた爆弾の効果を解除する『ご都合主義爆弾』を持って空京大学へ急ぐ。彼女が間に合わないと本当に大変な事になるかもしれない。

『キアラ・アルジェント』
　誤解を解こうと図書館内でパートナー達を探しまわっているものの、今日もお姉様がデート中なのにイラッときているので「やっぱ爆発しちゃえ」とも思っていたりする。
　なお、アルケリウスとの面識は無い模様。

『ハインリヒ・シュヴァルツェンベルク』
　ギフトの主人。誤解を解こうと食堂内でパートナー達を探しまわっているものの、一方でこのままだと絶対提出期限に間に合わないことが確定な為「やっぱ爆発しねぇかな」とも思っていたりする。
　ギフト不在の為ハンドガンなどを所持。

『スヴェトラーナ・ミロシェヴィッチ』
『ジゼル・パルテノペー』
　一緒に行動中。アレクと似たような生き物ならジゼルの言う事を聞くのではというスヴェトラーナの考えで、研究所内でＫ．Ｏ．Ｈ．を探しまわっている。



※以下のＮＰＣも一緒に行動する事が可能です。友好関係称号をお持ちのＰＣは呼び出せる確率が上がりますが、上記のＮＰＣと関わる通常アクションを掛けながらのアクションは掛ける事が出来ません。

『トーヴァ・スヴェンソン』
『アルケリウス・ディオン』
　ディミトリアスとアニューリスが空京大学に向かった為、便乗して大学の庭で散歩中。
　！ディミトリアスとアニューリスにアクションを掛ける事は出来ません！

『ミリツァ・ミロシェヴィッチ』
　アレクの自宅に（近所）居ます。

『アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ』
　Ｋ．Ｏ．Ｈ．へのとあるお土産を持って基地へ帰っています。皆の姿が見えない事から状況を察しています。　

・爆発阻止！

・間に合わせる！

・犠牲になったのだ