蒼空学園

　現在、ニルヴァーナ探索隊により、パラミタとは別の浮遊大陸、ニルヴァーナの探索が進められています。
　かつて十二星華の住居であった浮遊要塞アルカンシェルは、パラミタから月への物資を運ぶ役割を担っています。
　ただ、アルカンシェルは先の宇宙戦で甚大な被害を受けており、あらゆる制御を手動で行わざるを得ない状態です。
　乗組員の疲れもピークに達していました。
「今回は物資の積み込みと本格的な修理の為に、数日パラミタに留まる予定だ」
　ヒラニプラにある教導団のミーティングルームに、アルカンシェル乗組員のうち、素性が確かで品行方正な各校の契約者を集めて、ミケーレ・ヴァイシャリーは、政府と軍から得た状況の説明をしました。
「その間に、俺は第七龍騎士団の駐屯施設にいる、ルシンダ・マクニースに会いに行こうと思う。……ここから先の話は、口外禁止だ。思い思いの余暇を楽しむためにも、聞かない方がいいこともあるしね。守れそうもない者や、休暇をとるつもりの者は退出してほしい」
　数人の契約者が席を立って、自らの大切な人の所に帰っていきました。
「――先日、エリュシオンにズィギル・ブラトリズを名乗る者から、龍騎士団を通して、エリュシオンに亡命申請をしたいという申し出があった」
　ミケーレの目配せを受けてそう発言したのは、エリュシオン帝国、第七龍騎士団団長のレスト・フレグアムです。
　ズィギルと名乗る者は、亡命申請が受け入れられた際には、情報提供の約束を。拒否された場合は、シャンバラに亡命し、エリュシオンの国益を損なう情報をシャンバラに提供すると言っているそうです。
「実は、シャンバラ政府……というか、俺にも亡命の打診があった」
　ミケーレが言うには、ズィギルは安全保障として、神楽崎　優子（かぐらざき・ゆうこ）との契約を条件に出してきたらしい。
「彼の性格からして、本当に亡命を希望しているとは考えにくい。計略に嵌るつもりはないんで、互いに受けるつもりはないわけだが」
「事実を知っておきたい者がいるのなら、ルシンダの元に案内しよう。ただ、情報の流出は避けなければならない。面会の際には、相応の措置をとらせてもらうことになる」
「あくまで、シャンバラ政府や軍の公式な訪問じゃなく……そうだね、商船として行こうか」
　ミケーレとレストはそう説明をしました。
　尚、神楽崎優子とアレナ・ミセファヌスはそれぞれ任務に従事しており、この場にはいません。

　ミケーレ達が話を終えた後。
「ちと任せたいことがある」
　宿舎に戻ろうとしたファビオ・ヴィベルディ（ふぁびお・う゛ぃべるでぃ）と、信頼できる契約者数人を、優子のパートナーにしてタシガンの貴族であるゼスタ・レイラン（ぜすた・れいらん）が呼び止めました。
「ズィギル・ブラトリズについて、調べがついた」
　アルカンシェルが起動し、空京に迫った後。調査機関により実行犯であるズィギルの調査が進められていました。
「奴は『人』ではない。人の記憶と人格が記録された機械だ」
　ズィギルは５０００年前に、アレナの目の前で確かに死亡しました。
　しかし、その前に、彼は機晶姫技術を応用し、機晶石に自分の脳のバックアップをとって、残していたのです。
　それは、人の心とはなりえない不完全な記憶の記録にしか過ぎません。
「アルカンシェルに乗り込んでいたあの男は、脳にズィギルの記憶のコピーを埋め込まれ、ズィギルと化した……元は別の人物だ」
　ズィギルの本体といえる機晶石の脳と体は、空京の民間の機晶姫研究施設で、稼動していることが判明しました。
「その、ズィギルの本体を暗殺する」
　声を低めてゼスタはそう言いました。
「俺自身はマークされている可能性もあるんで、表の仕事――神楽崎の仕事を手伝いに向かう。こっち方面は、お前達に任せたい。この仕事はあくまで暗殺だ。研究所は鏖殺寺院とつながりがなく、攻め込むことは出来ない。査察なんかの手段では勘付かれて逃げられる可能性がある。陽動もダメだ。世間に知られることなく、確実に仕留めろ」
　計画を知られてはなりません。
　発見された場合は、次のチャンスは訪れません。
　計画が明るみに出るようなことがあれば、関係者は勿論、国民からの政府や女王への信頼が落ちるでしょう。
　

　シャンバラ教導団に留学中の神楽崎　優子（かぐらざき・ゆうこ）は、軍からの任務で、私服の教導団員と共に大荒野に来ていました。
「……確かに、占拠されているな。というより、これは縄張り争いの真っ最中か？」
　アルカンシェルが飛び立った跡地。格納庫のあった場所に、パラ実生を名乗るグループが集っています。
　そのいくつかのグループは、争いながら格納庫を探索しています。
　格納庫にあったアルカンシェルの修理パーツは、ほとんど持ち出されて売られてしまったようです。
　ただ、格納庫には開かない部屋がいくつかあるようなのです。
「恐らく、アルカンシェルを修理する方法が……設計図等が保管されていると思うんだが」
　占拠しているパラ実生に軍の方法で立ち退きを要求しても、聞き入れるはずはありません。
　そのため、国軍は優子とゼスタに『若葉分校生やパラ実風紀委員、四天王と呼ばれる者に協力を呼び掛けて対処してほしい』と依頼しました。
　力で制圧するのではなく、取引を持ちかけて説得するようにと。
　協力して格納庫を探索し、発見したものや既に売ってしまったものを買い戻して政府に提供することにより、政府は発見者達への対価として若葉分校に携帯電話基地局を設けてくれるそうです。
　基地局が設置されれば、携帯が使える範囲が増えるため、大荒野で活動をする全ての者が利益を受けることができます。
　若葉分校生と、格納庫を占拠しているパラ実生との関係悪化を心配した優子ですが、それならばと、その依頼を受けることにしたのです。
「うああああ」
「なんだ、機晶姫か！？」
　突然、悲鳴があがりました。
　格納庫から放たれた擲弾が、地面に大穴を開けたのです。
　爆風で争っていたパラ実生数人が吹っ飛ばされました。
「一般人に対処できる相手ではないな。ゼスタを待ちたいところだが……行くぞ」
　若葉分校生と協力者を連れてくるはずのゼスタは、まだ到着していません。
　見かねて、優子は共に訪れた仲間達と加勢に向かいました。

「みんな、疲れているのにありがとね！」
「ちゃんと休んで、美味しい物も沢山食べるんだぞ。宇宙食って美味しくないんだろ？」
　代王の高根沢　理子（たかねざわ・りこ）と、セレスティアーナ・アジュア（せれすてぃあーな・あじゅあ）は、アルカンシェルに激励に来ていました。
「アルカンシェルでは、植物の栽培も出来ますし、料理もできますので材料さえちゃんと積んであれば、宇宙でも美味しい料理が食べられます」
「……懐かしいですわね」
　代王の護衛として、アレナ・ミセファヌス（あれな・みせふぁぬす）とティセラ・リーブラ（てぃせら・りーぶら）が付き従っています。
「居住区も上層は吹っ飛んじゃったみたいね。調理室は無事なのかな？」
「食糧庫も見ておかないとな！　食糧がネズミに食われていたら大変だからな」
「食堂の場所は……あ……っ」
　理子とセレスティアーナを食堂に案内しようとしたアレナが、突如立ち止まりました。
「どうしたの？」
「腹でも痛いのか？」
「……」
　顔色を変えていくアレナに、理子とセレスティアーナ、ティセラが心配そうに眼を向けます。
「は、はい……すみません、ちょっと気分がすぐれないので、案内はティセラさん、お願いします……ごめん、なさい」
　悲しげな笑みを見せて、アレナは深く頭を下げると、一人その場を後にしました。
「大丈夫かしら」
「顔色悪かったな……」
「あの子でしたら、大丈夫ですわ。付き添ってくださる方がいるはずです。さ、ちょうどお昼の時間ですし、食事を戴きにまいりましょう」
　ティセラは、理子とセレスティアーナを連れて、食堂に向かいます。……アレナの異変に気づいており、深く心配をしていましたが、彼女のことは、今彼女と親しくしている人に任せて。自らは代王をお守りしながら、共にアルカンシェルを守ってくれた人々へ感謝をして回ることにしました。



　ヴァイシャリーに、最近建てられた塔があります。
　その塔には、オープンしたばかりの女王と十二星華グッズの店が入っています。
　その日は、オープン特典として、射手座のアイテムを購入した客に、個室喫茶室利用券が配られました。
　射手座の十二星華――アレナのファンの子達は、最上階の個室で、お茶と展望を楽しめるはずでした。
「なんだか……眠く」
「私も……ちょっと、寝よ……」
　個室でお茶を楽しんでいた者達が、突然眠気に襲われて、眠りに落ちていきます。
「なんだか変……催眠、ガス。強力、すぎ……」
　契約者の少年が、部屋にガスが流れ込んでいると気づきます。
　しかし、既にガスを沢山吸い込んでしまっており、大きな声を上げることも、動くことも出来ません。
　携帯電話で連絡をしようとしましたが、ヴァイシャリーの街中のはずなのに、圏外です。
　部屋を見回して、少年は防犯カメラに目を向けて。助けを求めながら意識を失いました。
　その直後、マスクをした機晶姫が銃を構えて部屋に入ってきました……。

「ふふ……早くおいで、アレナちゃん。お友達が全員冷たくなってしまう前に、ね」
　その喫茶店のある塔の屋上で、ズィギルは高機能の飛空艇に乗りながら、室内の様子をモニターに映し出し、見ていました。
　誰にも言わずに、一人でこの塔の屋上に来るように、と。
　誰かに知らせたり、つけられた場合、その人数分、君のファンを殺すよと。
　ズィギルは、そうアレナにテレパシーを送っていました。

2012年2月6日：修正
●「ゼスタが呼び止めた信頼できる契約者数人」について　の説明を修正いたしました。


こちらは
【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル（前編）
【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル（後編）
アルカンシェルの発った後（キャラクエ）
【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防！
の、ズィギル、アルカンシェル方面の後日談となります。
取り扱う話題は、ズィギル、アルカンシェル関連に限定されますが、ご了承の上、ご参加をご検討ください！

このシナリオでは、ＰＬ情報とＰＣ情報の違いにご注意ください。
そのＰＣが知りえない情報を知っているとして書かれていた場合、アクションを採用することが出来なくなります。
空中散歩していたら、偶然ズィギルを発見！　などという行動も不可となります。

ガイドとマスターコメントに登場していないＮＰＣはシナリオにも登場いたしません。

ＰＣは以下のいずれかの場所で行動が出来ます。

●エリュシオン港町、第七龍騎士団駐屯施設（登場ＮＰＣ：ミケーレ、レスト、ルシンダ、百合子）
【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防！　に、味方側として参加し、素行に問題のない方は、第七龍騎士団駐屯施設にいるルシンダ・マクニースに話を聞きに行くことが出来ます。ただし、話を聞いた後、記憶を消されます。消えるのは面会場で話した内容のみです。
面会場には一切の武器防具、通信機を持ち込むことは出来ず、メモをとることも不許可です。魔法やテレパシーも使うことが出来ません（つまり機密情報は持ち出せません。ご了承ください）。
記憶は残りませんが、感じた思いは残ります（例えば誰かに対して好意を抱いたら、記憶が消えた後もその想いは消えません）。

ガイドの話を聞ける立場ではない方も、商船に乗って、エリュシオンの港町に買い物に行くことが出来ます。ほのぼのしていただいて構いません。錦織百合子が同行します。
購入したアイテムは手に入りませんが、楽しいアクションを戴いた際には、キャラクエを出すかもです！

●空京の工場地帯にある研究所（登場ＮＰＣ：ファビオ）
少人数でズィギルの本体を暗殺しに向かいます。適任者がいなければ、ファビオ・ヴィベルディが指揮をとります。
小規模マンションくらいの規模の施設です。ズィギルの本体が施設内のどこにいるのかは不明であり、特殊な機器で本体が放っている電波を辿って探し出します。警備は民間の研究所レベルで、厳重ではありますが、特別に厳重ということはありません。
こちらの作戦に加わる方は、協力が必要なため、掲示板での相談必須とさせていただきます。
ガイドの見落とし等で、失敗につながる可能性が高いためです。
掲示板で提案した行動以外の行動をとられた方、ゼスタに呼び止められる立場ではない方（アルカンシェルに絡んだ事がない方、不殺主義者、子供等）は、行動場所としてこちらを選んだとしても、作戦に加われなかった（知ることが出来なかった）という結果になります。また、参加者がファビオのみの場合は、失敗となります。
尚、相談必須は、このシナリオの、及びこの場所に絡む場合限定の特別なルールとなります。

※協力行動が苦手な方には、お勧めいたしません。

●大荒野のアルカンシェル格納庫（登場ＮＰＣ：優子、ゼスタ、ルヴィル）
教導団員の方、教導団員と不仲ではない方は神楽崎優子と共に、先に来ていたとして行動しても構いません。
その他の優子側の方は、ゼスタと共にガイドの状況の数分後に到着となります。
閉ざされた部屋へのキーはブライドオブシリーズですが、優子の持つ星剣でもドアを開くことが出来ます。
ドアを破壊することは出来ません。多く（レベルが高くても５人以上は）の光条兵器のエネルギーを集めれば、もしかしたら開けるかもしれません。
設計図を（優子側が）入手できれば、アルカンシェルの制御室が復活します。
尚、第七龍騎士団副団長ルヴィル・グリーズと従龍騎士も恐竜騎士団への抑止力として訪れます。

※ここに集まっているパラ実生の大半は、パラ実生を名乗っている（学校に通っていない）現地人です。

●ヴァイシャリーの塔（登場ＮＰＣ：ズィギル、アレナ）
塔自体が閉ざされており、中に居る者は外に出られません。
非常に強固な造りの塔です。携帯の電波、物理、魔法（テレパシーを含む）を通しません。
（塔内の友人同士の、テレパシーやＨＣは繋がります）

ＰＣは店に興味を持ち訪れていたという関わり方が出来ます。
塔への武器の持ち込みは禁止なため、武器は受付に預けています。
受付嬢、警備員は雇われ一般人です（個室の機晶姫除く）。入場者の武器は金庫で管理されています。
個室で眠っているという関わり方もＯＫとしますが、救出されるまで一切行動（事前行動も）が出来ません。

※ズィギルに絡む方法は以下が考えられます
・アルカンシェルからアレナを尾行してきた。
↑犠牲者が出る可能性がある。

・塔の対処が終わった後、駆け付ける（連絡を受けた。眠っていたが救出された等。塔の対処もズィギル対応もとした場合は、描写はどちらかだけになります）。
↑対処が遅れた場合や失敗した場合は、間に合わない可能性がある。

●ヒラニプラのアルカンシェル（登場ＮＰＣ：理子、セレスティアーナ、ティセラ）
ヒラニプラの格納庫で修理と物資の積み込みが行われています。
制御室は完全に破壊されており、仕組みが不明なため、復元の見通しは立っていません。
作業を手伝ったり、代王たちと見回ったり、食事をしながら話をしたりできます。
ＰＣ、名ありＮＰＣ以外の作業員は全て軍属です。

●ヒラニプラの軍病院、無名戦士の墓、兵士の慰霊塔（登場ＮＰＣ：ミクル・フレイバディ、その他）
ガイドに登場している全てのシャンバラのＮＰＣは、仕事を終えた後、ヒラニプラの軍病院と墓地に立ち寄ります。

【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防！　に味方側として参加された方は、検査やリハビリの為に入院しているとしていただいても構いません。
ガイドに登場しているＮＰＣとの関係を示す称号を表示していただけましたら、そのＮＰＣがお見舞いに向かいます。お見舞い品のリクエストがありましたらどうぞ！

墓地、慰霊塔では、花を手向けたり、祈りをささげることが出来ます。

◆注意事項
こちらのシナリオでは、ダブルアクションはご遠慮ください。アクションは１つの場所、１つの行動に絞ってください。
「仲間を助けた後、敵を倒す」や「病院でＮＰＣと会話してから、慰霊塔で祈りをささげる」、などは行えない行動となります。
但し、「襲撃されたら、応戦」などと、不測の事態の行動や方針を１文だけ書いておくことは問題ありません。

原則、ＬＣはＭＣと一緒に行動し、同じことを行う場合にのみの追加でお願いします。
以下は例外として、このシナリオでは問題のない追加とさせていただきます。
・塔の個室でＭＣ（ＬＣ）が眠っているとする場合（眠っているＰＣは行動一切不可となります。ＭＣが救出、ＬＣが救出されてからの行動とした場合、ダブルアクション判定となります。但し救出する行動＆救出されてからのＭＣ、ＬＣ間だけの会話はＯＫと考えております）。
・ＬＣのみシナリオに参加したい場合（ＭＣ欄にＬＣのアクションを書いて構いません）。
・経験値目的（描写不要とお書きください）。

それでは皆様のアクションを楽しみにお待ちしております。

■２月５日追記

●「アルカンシェル乗組員」について
ガイド中の表現であるこちらは、ガイドの時点の乗組員です。
月軌道上での攻防！後も、アルカンシェルは物資調達の為に、パラミタと月を往復しています。
そのため、この時点の乗組員には、月軌道上での攻防！参加していない契約者（ファビオ等）もいます。

●「【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防！ に、味方側として参加し、素行に問題のない方」について
マスターコメントにあるこの文章は、「ルシンダに話を聞きに行く」という行動をするための条件となります。

●「素性が確かで品行方正」について
基本的には、マスターはＰＣの設定と、アクションのみでマスタリングを行います。他のマスターのシナリオの参照、引用は原則行いません。
ですので、川岸担当、もしくは関与したシナリオで、問題行動が明るみになっていなければ、この条件に一致するものと考えます。
ただし、『ご本人』が立場を持ち込んできた場合や、関連性が強い等などの理由でシナリオ上どうしても必要と思われる場合は、参照、引用を行わせていただくこともあります。

●「ゼスタが呼び止めた信頼できる契約者数人」について
・アルカンシェル乗組員のうち、素性が確かで品行方正な各校の契約者で、ゼスタに呼び止められてもおかしくない人
となります。

素性が確かで品行方正かは自己判断となります。

・ズィギルと接触する

・アルカンシェルの設計図を探す

・格納庫でパラ実生の興味を引く

・エリュシオンの港町でお買い物