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Buch der Lieder: 歌を忘れた金糸雀

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Buch der Lieder: 歌を忘れた金糸雀

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シナリオガイド

歌の翼で君を運ぼう。月光照らす、沼の底。
シナリオ名:Buch der Lieder: 歌を忘れた金糸雀 / 担当マスター: 東安曇

 ――緑色の閃光が瞬くと、キアラ・アルジェント(きあら・あるじぇんと)は発動した魔法が成功したかどうか確認もせずに、黒いグローブに包まれた手を掴み全力で駆け出します。咄嗟に隠れた物陰でふらつく身体を壁に押しやる様に凭れさせてやると、額の血を拭うようにしながらキアラは彼の顔を持ち上げました。
「隊長! 隊長!」
「…………聞こえてるよ、五月蝿いな」
「何があったんスか? 親子喧嘩にしてはシャレになんないっスよ!?」
 キアラはチラチラと背中の後ろを振り返ります。彼等――、いえアレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ(あれくさんだるちぇとゔるてぃ・みろしぇゔぃっち)を追いかけているのは、血に濡れた二振りの刀を手にするスヴェトラーナ・ミロシェヴィッチ(すゔぇとらーな・みろしぇゔぃっち)でした。
 空京にあるプラヴダの基地の一角で、キアラが彼等を見つけた時には既に事は起こっており、アレクは満身創痍でした。彼の全身に傷を負わせた者こそ、父アレクを敬愛するスヴェトラーナだったのです。
「正直……こっちが教えて欲しいくらいだ……。普通に歩いてたら、突然――」
 頭部に傷を負った所為でめまいを起こしているのか、定まらない視線を地面に向けてアレクは言います。状況に対する理解は追いつきませんが、スヴェトラーナは強い力を有する契約者です。キアラの拘束魔法で押さえ込めるのは、あと僅かな時間でしょう。急いでどうにかしないとなりません。 
「とりあえず私が抑えるんで、隊長がその間にガッと殴るか蹴るかして――」
 言いかけたキアラの腕を掴んで、アレクは首を横に振りました。
「スヴェトラーナは俺の娘だ。『俺は』、子供は殴らない」
 何かを含むようなアレクに、キアラは言いかけの言葉を飲み込みます。そうして数十秒の間唇を噛み締め、息を吐き出しながらもう一度口を開きました。
「何だか全然分かんないけど――」言いながらキアラは、アレクの軍服のポケットへ承諾無く手を突っ込み、彼の端末を取り出します。
 何をしているのかという視線に、キアラは答えました。
「スヴェータちゃんを傷つけたく無いんでしょ!? 理由は知んないけど、事情があるんでしょ!? 自分でどーにも出来ない時は、助けを呼ぶんスよ!!」



 空京に『異変』が起こり始めたのは、数十分前の事でした。
 突然という部分だけは共通するものの人に寄って始まりは様々で、ある者は悲鳴を上げ、ある者はガクガクと震え出し、涙を流し、気を失う者さえいました。
 無事だった人々は何とかしようと試みますが、異変は猛烈なスピードで街へ広がり、対応が追いつきません。それは此処、義勇陸軍『プラヴダ』でも同じ様に……。

 冷静さを欠いた様子でニコライ・ストヤノフ少尉は状況を纏めていました。
 現在空京警察は事件の余波で多発する事故の対応に追われ、解決へ向けては動いていないようです。当然国軍も動き出していましたが、何がきっかけで人が異変に襲われるか分からず、兵士の安全が確保出来ない以上、空京で動く前の段階――部隊の編成に、もう暫くの時間が必要になるでしょう。
 プラヴダは空京に基地を構えており、この事件の中で組織立って行動出来る数少ない機関ですが、半数以下の兵士の中にも異変が起こっており、何時ものように連携が取れない中で基地内に居る筈の大尉アレクへ連絡がつかない事や、ハインリヒ・ディーツゲン(はいんりひ・でぃーつげん)中尉の行方が分からない事は大変な痛手になっていました。
「スヴェンソン中尉が居ない時になんて事件よ」
 彼が抱えるのは小さなトゥリン・ユンサル(とぅりん・ゆんさる)で、彼女のぎゅっと閉じた目尻に涙の粒が溢れています。
「Mammy……Daddy…………Where are you?(*マミィ、ダディ、どこにいるの?)」
 両親を探す声は切ない響きを帯びていましたが、幾らうわ言とは言え幼い彼女を置いて蒸発した無責任な両親をトゥリンが求めるのは、ニコライにとって妙に感じられます。
(――変ね。何時もなら真っ先に大尉殿の名が出てくるのに……)



 同じ頃。
 基地内の建物の屋上に、ミリツァ・ミロシェヴィッチ(みりつぁ・みろしぇゔぃっち)が立っていました。左目を彼女固有の能力『反響』発動の証しである赤紫の色に輝かせ、探している相手はハインリヒです。
 しかしミリツァが探索するのは、プラヴダの中尉としての彼ではなく、事件を起こした原因としての彼でした。
 そんなミリツァの背中を、少し離れた位置で二人の男女が見守っています。
 事件の根本を探り、解決しようとするドミトリー・チュバイス少尉にジゼル・パルテノペー(じぜる・ぱるてのぺー)が質問しました。
「――ハインツの歌、聞こえる?」
「聞こえるような、聞こえないような。
 凄く小さな音だしボクは気にしてなかったんだけどねぇ……あ、もしかして聞こえるとヤバいのかなぁ?」
 ドミトリーの笑みに、ジゼルは何かを思い出しているようです。
「ハインツの歌は繊細で、とても優しい。でも内側に抱えてる何かがあるの。私は彼の歌を聞くと、亡くなった姉様達の事を思い出すわ。
 だからきっとあれは――、あの歌には『誰かに置いていかれた時の悲しい気持ち』があるんじゃないかって思うの」
「ボクは芸術はワカンないけど、『共鳴』みたいなものかしら。
 そういう要素を持ち合わせた連中が、異変に巻き込まれたって事だねぇ?
 それにしても中尉がワールドメーカーの能力を持ってるなんて、ちっとも知らなかったなぁ」
「ハインツは自分の中身を誰かに見せたがらない人だから」
 友人としてハインリヒの内面を正しく知るジゼルは苦い表情をしますが、それを見たドミトリーは正解に行き当たり微笑みを浮かべました。
「だったらオカシイねぇ。心を明かしたく無い奴が、こんなに沢山の他人を巻き込む程、感情を爆発させるなんてさ」
 誘導するような言葉に、ジゼルは静かに頷きます。
「うん、この歌は本当のハインツの歌じゃない。
 誰かがハインツの声を使っているの
 友人を利用し、街の人々を混乱に陥れる誰かへ向けジゼルの声が密かな怒気を帯びた時、ミリツァが後ろを振り返りました。彼女の表情は何処か釈然としないものを抱えています。
「妙だわ……」と、呟いて、ミリツァは理解の追いつかない事実をそのまま吐き出しました。
ハインリヒ・ディーツゲンは、空京に五人居る



 数百メートルを超えるビルの屋上。通常ならば立ち入り禁止のその場所で、ハインリヒは歌い続けています。
 彼の歌は四人の契約者を媒介に、空京の街全体に響いていました
 他人の声を模倣し寸分違わぬ音にして吐き出すなど、人間に出来る事では無く、四人の契約者の声帯や体力は危険な状態に有ります。
 しかしハインリヒはそんな事を知る由も無いのです。
 近頃彼は繰り返す白昼夢の中でジゼルに良く似た少女ミルタに呼び掛けられてきました。

 早く、早くここへきて。
 そして私の沼の底で、一緒に踊りましょう

 
 その歌声を幾ら拒否しようと白昼夢の頻度は増えます。
 目覚めた時には決まって、彼の左腕は幾重にもなった切り傷で血に塗れ、右手には刃物を持っている状態です。しかしそんな恐ろしい事を望んだ覚えは有りません。
 一切気の抜けない日々が一週間過ぎ、二週間過ぎ、神経の疲弊によって彼の精神が限界を迎えたとき、全てが始まったのです。
 ワールドメーカーの力を解放させたハインリヒの歌が導くのは、共鳴した者の精神の崩壊。その先に待つ、『死』でした。

 事件の原因に気付き、動き始めたプラヴダと契約者達。
 彼等は空京を襲う異変を、止める事が出来るのでしょうか。

担当マスターより

▼担当マスター

東安曇

▼マスターコメント

 シナリオガイドをご覧頂き有り難う御座います、東安曇です。
 こちらのシナリオ【Buch der Lieder】は全2回〜4回を予定したシリーズの第一回目です。
 【ジゼルちゃんのお料理教室】ラスト一頁が前振りになっておりますが、該当シナリオに参加なさらなかったお客様もご参加頂けます。
 また、関連する設定がマスターページで公開されておりましたが、こちらも読まずとも一切問題ございません。
 どうぞお気軽にご参加下さい。行動等については下記を参照にアクションを掛けて頂きますよう宜しくお願い致します。
 それでは、皆様のアクションをお待ちしております!

* * * * *

▼行動について
 こちらのシナリオでは主に三つの行動を取る事が出来ます。
 『行動1』と『行動2』両方をアクションに記入しても、片方しかリアクションに反映されません。予めご了承下さい。 

『行動1』
 ドミトリーらの連絡を受けたPCが、事件を解決する為に取る行動です。
 プラヴダの屋上に居るミリツァが『反響』によって、【媒介】の位置を特定します。
 PCの皆さんは、彼女の教える場所に向かう事で【媒介】にエンカウントします。
 【媒介】の歌を止める事、ハインリヒの元へ向かい彼の歌を止める事が目的です。
 アクション欄には、必ず1〜4の数字を記入して下さい。担当個所の媒介を倒すと、ビルへ行く行動が可能になります。

『行動2』
 キアラの連絡を受け助けに行ったPCが取る行動です。
 異変が解決するまでに凌ぎきる、または共鳴を止める事が目的です。


▼異変について
 好きな人に遠ざけられた、大切な人を失ったなど『誰かに置いていかれた時の悲しい気持ち』を持つキャラクターは、ハインリヒの歌に共鳴して過去の記憶を呼び覚まされ、精神の崩壊から死へと導かれます。
 これらは媒介やハインリヒに近付くとより強く共鳴し易くなりますが、キアラやドミトリーのように何の影響も受けないもの、アレクやジゼルのように過去を乗り越えた為深い影響を受けないキャラクターも存在します。
 また『行動1』のアクションをかけるPCは、ジゼルの歌の加護により影響を受けません。(※ジゼルの欄を参照下さい)

 こちらの『異変を受けたPC』というアクションを掛ける事は可能ですが、共鳴した時点で行動不能に陥ってしまいます。
 また、スヴェトラーナのように誰かに敵対する行動は、アクションとして掛けられません。予めご了承下さい。


▼敵対NPC

【媒介】
 ハインリヒの歌を空京全てに響かせる為、媒介となってしまった四人の契約者です。
 彼等はミルタの能力によって、強制的にワールドメーカーにクラスチェンジされている他、ハインリヒの歌を忠実に模倣している為、咽に負荷がかかっており、このままでは発声はおろか、肉体が内部から壊れる危険も有ります。
 歌を止められそうになるとワールドメーカーの能力を行使し、敵対してきますが、その全てがハインリヒの模倣である為、それほど強くはありません。

【ハインリヒ・ディーツゲン】
 ミルタが長時間取憑いていた為、密かに習得していたワールドメーカーの力を解放させています。
 能力の高い契約者ですが、武器を持っていない他、ミルタの影響で体力が通常よりもかなり落ちています。
 また媒介と違いミルタは彼の歌(精神)を利用している為、彼の残った意識を顕現させる事も出来るかもしれません。



【スヴェトラーナミロシェヴィッチ】
 『異変』の影響を受け、彼女が呼び覚ましたのは彼女が何度も繰り返したジゼルと死に別れた記憶でした。
 共鳴すると動けなくなるのが通常のようですが、スヴェトラーナは高い能力と精神で立ち上がり、この世界のジゼルを殺害する前にアレクを殺そうとしています。
 他の世界のアレクとこの世界のアレクを混同する程意識は混濁していますが、紛れも無く彼女でありPCの声が届かないとは限りません。
 武器は太刀と脇差し。力の強さはアレクには及ばず、手数で補っています。
 ラセツの能力を使用する他、身体が柔らかい事が特性です。

▼味方NPC

【ミリツァ・ミロシェヴィッチ】
 プラヴダ屋上でトリグラフの協力のもと、『反響』を行使し媒介とハインリヒの位置を特定します。
 ※彼女の連絡はPCと共に行動するプラヴダ兵士から貰えるので、PCは自動的に目的地へ向かいます。
 
【ジゼル・パルテノペー】
 プラヴダの屋上で、『行動1』に参加するPCを加護する歌を歌っています。加護を受けたPCは、要素の有無にかかわらず媒介やハインリヒに近付いても歌に共鳴しなくなります。
 また歌はスキル[テレパシー]に似た能力でPCに伝わる為、加護を受けているPCは[テレパシー]を使用出来なくなります。
 ※各種端末は使用出来ます。

【その他プラヴダの兵士】
『ドミトリー・チュバイス(変態微笑みデブ)少尉』
 事件の解決の為、契約者に助けを求めました。現在は分隊(*10名程度)を率いてジゼルとミリツァの居る屋上の防衛に当たっています。

『ニコライ・ストヤノフ少尉』
 トゥリンを守っている為、思う様に行動出来ない状態です。

『ヤン・コワルスキ曹長』
 幾つかの小隊を指揮しています。行動目的は要救助者を救出する事です。



【キアラ・アルジェント】
 スヴェトラーナの攻撃に対し防御を行います。
 『光術』の強化版のような目眩まし、一時拘束の魔法を得意とします。

▼その他NPC

【トゥリン・ユンサル】
 『異変』に共鳴し、父と母が蒸発した過去に引き戻されています。
 幼く感受性が強いため、大変危険な状態です。

【アレクサンダル・ミロシェヴィッチ】
 『異変』に共鳴したスヴェトラーナに襲われ、深手を負いました。
 スヴェトラーナよりも遥かに高い能力を持っていますが、ある理由から娘を傷つけたく無いと軽く手を出す事すら拒否しています。

▼サンプルアクション

・媒介【1】へ

・スヴェトラーナを止める

・異変に共鳴する

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年04月03日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年04月04日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年04月08日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年04月22日


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