【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第3話/全3話) リアクション公開中! |
シナリオガイド【イコン参加可】大蛇復活。迫り来るは百鬼夜行。血よりも朱い空の下……決戦の刻は至れり!
シナリオ名:【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第3話/全3話) / 担当マスター:
桂木京介
冴え冴えと冷たい床の感覚が、素足から体に伝わっていきました。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 黄土色と緑、それに黒が混じったような、実に気味の悪い色味の空です。 空ばかりではありません。地も……それどころか地面と思っている足場も、すべて同様の色に覆われていました。 しかもその色が刻一刻と、止むことなく変化を続けています。明るいオレンジが混じったかと思えば、氷のような青が進入してきます。 これは一体なんなのでしょう。 時間の流れも感じられず、生命の息吹もまるでない、悪夢さながらの世界です。 いえ、実際に悪夢なのかもしれません。 高熱を発した夜に見る夢のように、重苦しい気持ちでアルセーネ・竹取(あるせーね・たけとり)は目を開けました。 アルセーネはアルセーネとしての意識を保ったままで、自分が今、カスパールと対面して話しているのを感じました。 「『不信心』などとよく言う。余に抵抗できる堅牢な意思を持つ者どもであろうが」 「仰せの通りです……ですが」 ――これは、八岐大蛇の意識……? 「気がついた? どうやら、あまり楽しい状況じゃなさそうよ」 龍杜 那由他(たつもり・なゆた)が呼びかけてくるのが聞こえました。すると忽然とアルセーネの眼前に、他ならぬ那由他の姿が現れたのです。 「私たちは今……」 「そう、大蛇の精神世界に囚われているみたい。ここはいわば、大蛇の心の片隅ね。私たちがこうやって自意識を保っていることは、大蛇にとって決して快適な状況じゃなさそうよ。自分を見失って同化されてしまってはダメ、大蛇に抵抗しなくっちゃ」 「つまり、自分の意思を保っていれば大蛇を弱体化できるということですね」 「そういうこと! 他の六人にも呼びかけて目を醒ましてもらわなきゃ」 と笑みを浮かべた那由他ですが、たちまちその笑顔は驚愕にとって代わられました。 二人の周囲に、鋼鉄の檻が飛び出したのです。降りてきたというよりは、急に出現したというのが近いでしょう。 「あーらら、そのまま眠りつづけて心が溶かされてくれればよかったのに〜」 歌うような声がします。 正円の眼鏡をかけた少女が、檻の外側から近づいて来ました。髪はポニーテール、蒼空学園の制服を着ています。 「私、加古川みどりって言うの。那由他ちゃんはご存じよね、私をさらった人だもの」 少女は不気味な笑みを浮かべて言いました。 「まんまとさらったつもりだったろうけど、実はね、それって計画通りだったの。だって私、グランツ教の信徒だから!」 ひゃひゃ、と甲高い声でみどりが笑うのと、檻の鉄格子が赤く染まるのは同時でした。ただ赤くなったのではありません。それは熱と、光をともなうものでした。真っ赤に燃えているのです……檻が。 「精神世界は想像力の世界! 心が強い者が勝つ……! 二人の精神にはここで死んでもらうね。でも安心して。文字通りの意味で『死ぬ』わけじゃないから。ただ、偉大なる八岐大蛇様の心に抵抗できなくし、同化してもらうだけなんだから」 「せっかくのご提案ですがお断りします」 「同感ね、負けてられない!」 アルセーネと那由他は、檻の炎が消えるよう念じました。 すると火は勢いを弱めましたがそれもつかの間、次の瞬間にはよりいっそう強く燃え上がったのです。 「あら弱っちいのね。そんな想像力じゃ勝てないよ! 抵抗勢力は大人しく消え去りなさーい!」 嘲るみどりの舌そのもののように、二人を包む火は激しく踊りはじめました。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 大蛇の顔に赤みが差しました。 心なしか、髪に艶が戻ってきたようです。乾いた肌にも血が通ってきたように見えます。 「効いてきた。余の精神より、抗うものが消えつつあるわ」 力強い歩みで、八岐大蛇は扉に向かいました。 「さすれば抵抗の眼を根絶やしにせん。うぬらの言葉にいう『契約者』を喪わせれば、その『パートナー』たる娘どもは簡単に支配できよう」 陥落(お)とすぞ、と、大股に歩ながら大蛇は言うのでした。 「きゃつらの拠点を」 それは、蒼空学園。 大蛇が片手を上げると、その背後からずるずると尾を曳きながら、黄金の光に包まれた異形の存在が次々と現れ、一体、また一体と主の背を追うのでした。彼らを呼ぶ正しい名称はありませんが、強いて言うならば『龍の眷属』というものが近いでしょう。 「ご武運を」 薄く眼を細めて、カスパールは大蛇の背に一礼しました。 「この時代の人々は、私を邪教の徒と思っていることでしょう。世を混沌に導いた者と罵ることでしょう」 彼女の唇より、呟きに似たものがこぼれました。 「……わかってもらうつもりはありません。けれど私のこの行動は、マホロバの地と、なにより母上……あなたを救うことになるのです」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 蒼空学園に向けて進む、百鬼夜行のような集団が目撃されたのはそれから間もなくのことです。 恐るべき集団でした。いずれも爬虫類を想像させるところもありますが、ただの爬虫類ではなくそれに甲虫を混ぜたようなものばかり、聞いて想像するよりずっと不気味で、ずっと悪趣味な姿形をしていると言います。 その数というのも半端ではない。天を覆い尽くすほどに有翼の存在が舞い、山と見紛うばかりに巨大な蠕虫(ワーム)が、建物をやすやすと薙ぎ倒して進んでくるのでした。 百鬼夜行の中心に、墨染めの衣を着た男性の姿が目撃されています。はっきりと口に出す者はありませんでしたが、その男性が八岐大蛇であることは自明でした。 空は妖しくかき曇り、まだ午前中だというのに夜のように暗くなりました。しかもその空の色は、赤黒い色彩を帯び始めたのです。 「……来るべき時が来たか。むしろ、予想より遅かったと言うべきか」 蒼空学園校長馬場 正子(ばんば・しょうこ)は、すっくと立ち上がって号令をかけました。 「迎撃する! わしも出るぞ!」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ツァンダの街に非常警報が流れます。 耳を聾するサイレンの中、緊急避難する市民とはまるで逆方向に、歩む姿がありました。 飄然とした彼を、ナンパ男と認識した人はきっと、美人と言って通る女性に違いありません。 そう、彼こそは仁科 耀助(にしな・ようすけ)。 「こんなこともあろうかと! ……なーんてな。けっこう必死でかけずり回ったんだよな〜、これでも」 勝算あり、といった表情を彼は浮かべていました。 耀助は、生身のまま大蛇の精神世界に入る方法を見出していたのです。 実地で試したことはもちろんありません。出たとこ勝負の一発本番。 「けど、そーいうのってさ、オレに似合ってると思わないか? もちろん、この酔狂に付き合うみんなにとっても、な」 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
お読みいただきありがとうございます。ツァンダを舞台としたキャンペーンシナリオ、最終第3話となります。 ▼サンプルアクション ・龍の舞で大蛇とその眷属の力を弱める(第2話で舞いを習得したキャラクター限定) ・舞うメンバーを護衛する ・龍の眷属の蒼空学園侵攻ををイコンで食い止める ・大蛇の力を内部で抑える ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2013年03月07日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2013年03月08日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2013年03月12日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2013年04月01日 |
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