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魔女が目覚める黄昏-ウタカタ-(第1回/全3回)

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シナリオガイド

東カナンの歴史の影に埋もれた謎が、今浮かび上がる
シナリオ名:魔女が目覚める黄昏-ウタカタ-(第1回/全3回) / 担当マスター: 寺岡 志乃



●シャンバラ〜蒼空学園

 ある日、東カナン領主バァル・ハダド(ばぁる・はだど)からの書状が各校掲示板に張り出されました。
 そこには『ドラゴン・ウォッチング・ツアーに参加しませんか?』のタイトルが。
 今、東カナンエリドゥ山脈の1つ、北カフカス山で伝説の竜イルルヤンカシュが目覚めているということでした。
 イルルヤンカシュは数百年に1度数日間のみ山奥から姿を現すといわれるとても特殊な竜で、その姿、鳴き声の美しさから見た者には幸運が訪れる竜、吉兆の竜と昔から呼ばれ、地元の民に崇められている竜です。
 あと4日ほど見られるということなので、ぜひシャンバラの皆さんにも来ていただけたらと思います、という言葉で書状は結ばれていました。
「ご利益のある竜かぁ」
 掲示板を見上げ、蒼空学園生徒松原 タケシ(まつばら・たけし)がつぶやきます。
「最近『龍頭』のこととかあったしね。大きな危険は去ったけど、今もシボラからの難民受け入たり、魔物が出没したりして大変みたいだから、あたしたちが代わりに願かけに行くのもいいかもしれないねっ」
「そうだな!」
 パートナーのリーレン・リーン(りーれん・りーん)の言葉に、さっそくタケシは誘いのメールを出しました。




 同刻、蒼空学園理事長馬場 正子(ばんば・しょうこ)の元を空京大学に留学中の南カナンの姫君エンヘドゥ・ニヌア(えんへどぅ・にぬあ)が訪ねていました。
「ようこそいらっしゃった。して、わしに何用かな?」
「はい。実は学園の方に、こちらの少女の護衛を頼みたいのです」
 身を横にずらしたエンヘドゥの後ろから現れたのは、蒼空学園の制服を着た赤髪の少女でした。
「むう」
 その赤い瞳が内なる意志を発露し、眼光が鋭さを増しているのを見た瞬間に、正子はこれはただ事ではないと理解します。
「あたしは蒼空学園3年ハリール・シュナワ
 少女は簡潔に自己紹介をしただけで、口を閉ざしてしまいました。こぶしを固め、視線をそらし……どうやらここにいること自体に不服を持っている様子です。
 ハリールの頑なな姿にエンヘドゥは苦笑し、かわりに説明をしました。
「彼女の母親は東カナンの生まれで、ある特殊な一族の出です。とある理由から国を追われて彼女はシャンバラにある父親の獣人の一族に匿われ、そこで育ちました。東カナンに戻らない限り、危険はないということでしたが……」
「イルルヤンカシュが目覚めたからには、あたしは一刻も早くあの地へ戻らなくちゃいけない! あたしは対話の巫女として、イルルヤンカシュを鎮めなくちゃ!」
 ハリールは固く、ゆるぎない決意でもって断言しました。それはまるで言葉そのものが燃えているかのような激しさでした。
「本当は、ここでこうしてる時間だって惜しいの!」
「あなたのあせる気持ちは分かります。でも駄目よ、ハリール。あなた1人では決して山のふもとまでもたどり着けません」
 エンヘドゥがたしなめました。そっとここに着いて以来ずっと握り締められたままのこぶしに手をやり、そっとそこにこめられた力を緩ませます。
(エンヘドゥは心配してくれているのに……あたしったら)
 彼女の思いやりのこもったあたたかな眼差しを受けて、ハリールのなかから無理やりここへ引っ張ってこられたという怒りが霧散していきます。
「……ごめんなさい」
 先の自分の行動を恥じるように、少し赤くなった顔でぽつっとつぶやきました。
 なんでもない、あなたの気持ちは分かると、エンヘドゥは首を振って伝えると、正子に向き直ります。
「どうか皆さんのお力で彼女を守護し、北カフカス山のイルルヤンカシュの元まで連れて行っていただけないでしょうか。わたくしからもお願いしますわ」
「先の龍頭戦では東カナンにも大変世話になった。そこに縁のある者からの頼み、断れるわけもない。さっそく手配しよう。わしに任せよ」
 正子は力強くうなずいて、エンヘドゥを安心させました。
 そしてエンヘドゥは同じ内容の要望を、各校長へと出したのでした。


※               ※               ※


●東カナン〜北カフカスのどこか

「……そう。やはりあの子は……戻るというわけね…」
 ろうそくが1本だけ灯るうす闇の中、疲れ切った声がしていました。
 それは寝台に横臥した者から発せられています。
「決して……戻らない……母娘ともども……二度とこの地を踏まないと……約束したのに…。
 あの嘘つきども…!」
 激しい憎悪とともに身を起こし、らんらんと燃える赤い瞳を傍らの男に向けました。
「殺しなさい! 誓いを破り、見逃してやった恩を忘却したあの恩知らずの娘、ハリールを、決してわれらのこの神聖なる地に入れてはなりません! あれはこの世に存在してはいけなかった者。一片の慈悲も不要です! 破ったのはあの娘の方なのだから! あの穢れた者を、今度こそ始末しなさい! 対話の巫女バシャン・アタシュルクの命令です!!」
 セイファ・サイイェルは黙って頭を垂れ、一族の指導者であり巫女であるバシャンの住居を去りました。



 外に出て、セイファはふうと重いため息を吐き出します。すると
「病気のばあさんのおもりも大変だな」
 夜の闇のどこかから、そんな言葉がかかりました。
 まるで闇そのものから切り取られたような黒衣に身を包んだ男が、輪郭線が分かる程度の位置まで歩を進めます。
 その面は上半分がフードにおおわれ、ぼんやりと白い口元とのどが見えるだけでした。
「何年もああなんだろ。もうそろそろくたばりそうか?」
「そんな…っ! か、彼女は……絶対に死んだり、しないよ。彼女はずっと、何百年もぼくたちの偉大な導き手なんだから…」
 視線を合わそうともせず、気弱な声で反ばくする彼を見て、男はフンと鼻を鳴らして不満を伝えました。
「この前会ったときは、あの様子じゃそう長くもちそうにないと思ったがな」
「そ、それより…っ、例の物は……手に入れたの?」
「ああ」男が宙で手を返すと、やはり闇から踏み出したもう1人の人物が手にしていた本のような物を彼に渡しました。「これだろう?」
 脇で焚かれた松明のあかりで、かろうじて表紙に書かれた文字が読み取れます。
「そう。それをこちらに――」
「ばあさんの薬香がしみついた辛気臭い体でおれに近づくな」
 セイファが手を伸ばした先で、本は炎に包まれて燃えてしまいました。
「なっ!?」
「どうした? 処分するつもりだったんだろう。何を驚く必要がある」
「それは…………でもその本は、大切な…」
「ちゃんとばあさんに報告しておけよ。1つめの仕事は果たしたとな」
 ひらひらと足元に落ちていく黒い燃えかすに見入るセイファに、男はチッと舌打ちをするときびすを返しました。
「ど、どこへ行くの?」
「ばあさんのヒステリーは外まで聞こえていた。次は小娘を殺せばいいんだろ」
「………………」
「ふん。意気地のない偽善者め。おれたちを雇っておきながら、殺せのひと言も口にできないのか。
 任せておけ。おれたちが始末をつけてやる。おまえは、そのためにおれたちのようなやつらがいるんだとでも思っていればいいさ」
 2人の殺し屋はそう言い残して闇のなかへ再び去って行きました。
 あとに残されたセイファは、両手に顔をうずめます。
「…………ショーネ……すまない…。きみの娘を守れなくて…」


※               ※               ※


●東カナン〜首都アガデ

 同日。
 真夜中近いというのに領主の居城は煌々としたあかりが灯されていました。
 表の宮、奥の宮、庭に至るまで騒々しく、大勢の人間が走り回っています。
「賊は捕らえましたか?」
 東カナン12騎士騎士長ネイト・タイフォンからの問いに、騎士は恐縮しきった声で答えました。
「いいえ。どこにも姿がなく……」
「もうあれから2時間近い。おそらくこのアガデからも逃亡を果たしているだろう」
 騎士が言いよどんだ先を、12騎士副騎士長のアラム・リヒトが紡ぎました。
「とんだことになったな。よりにもよって、奥宮の図書室に賊が入るとは」
「物が物です。領主には戻っていただくしかありませんね」
「そうだな」
 窓の外、あかりを手に右往左往している兵たちを見下ろしていたアラムは、ため息とともにネイトの前に立つ騎士へと向き直りました。
「領主に早馬を出せ。始祖の書が賊によって盗まれたとご報告申し上げるのだ」

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして。寺岡志乃といいます。
 こちらは東カナンを舞台とした全3回の第1回となります。皆さんと楽しく冒険しつつ、かの地に眠る謎を解き明かしていけたらと思っています。よろしくお願いいたします。

 今回、戦闘と探索で大きく3つに分かれます。

 1.アガデの城で探索――戦闘なし
   領主と12騎士のみが入れる奥宮に賊が入り、始祖の書が盗まれました。ほかにもありますが、これは全部PL情報です。
   城へ行き、話を聞いて、初めてPCたちは事件を知ることになります。
   だれに何をどう訊くかをアクションに記載してください。話しかけることができるNPCは、マスターページに載せておきます。
   注意点としまして、全員が同じ情報を持っているわけではない全員が味方ではないNPCにも思惑があるということがあります。
   全く情報を持っていない、かやの外な人物もいますし、シャンバラ人に好意的でない人もいるということです。
   場合によっては、予想していたものとは反対にまずい相手に情報を与えかねない結果となるかもしれません。
   ただし、なかには話し方ひとつで助力してくれる人もいます。注意が必要です。


 2.ハリールを守る――戦闘あり
   対話の巫女を自称するハリールを守って北カフカス山へ向かいます。道中で戦闘になります。
   相手は殺し屋2人とその配下の忍者たちが約10名ほど。いずれもかなりの手練れたちです。
   そしてもう1組、ドルイドとビーストマスターで構成された、やはり約10名ほどの者たちが殺し屋たちとは別に動いています。
   こちらは以下の強力な魔獣、幻獣を用いて戦います。本人たちは弓を用いますが、戦闘力はたいしてありません。
    ・ミュルメコ………体長10センチそこそこのイモ虫たちです。石を好み、石のなかに集団でひそんでいます。
               体の一部を硬化させ、石のなかから刺突をかけてきます。岩以外に土中でも活動しています。
               主に振動で敵を感知しますが、主人が近くにいた場合、主人の指示によってその位置に向かって攻撃を仕掛けます。
               イモ虫なので硬化していないときの耐久力はそれほどありません。
    ・ハイート…………2メートルを超す巨体で全身毛深いです。この毛は硬く、針金のようでなかなか斬れません。
               顔は人間と猿の中間のようで、身長と同程度の鋭く長い尾を背中の毛のなかに隠し持っています。
               硬く丈夫な肉体と怪力、尾で接近戦を得意とします。頭を落とされても攻撃してきます。
    ・エンディム………双頭の白蛇です。ほのかに燐光を発しています。アンデッドの群れ(約20体)を操ります。
               エンディム自身にはほぼ攻撃力はありません。牙に毒があります。魔法攻撃は一切受けつけません。
               体長約3メートル、鎌首をもたげると1.3メートルほどの高さになります。
    ・バジリスク………トカゲめいた顔つき、ヘビの尾を持つ化鳥です。大きさは人間大のものから中型犬程度のものまでさまざまです。
               剣や槍の届かない上空から視線による石化あるいは猛毒を吐き出してきます。
               そのほか、鉄板も切り裂く鋭い爪を持っています。

   こちらのパートで戦闘を選択された場合、何を相手にするか記載しておいてください。
   なければわたしの方で割り振らせていただきます。


 3.ドラゴン・ウォッチング・ツアーに行く――場合によっては戦闘あり
   ツアーは山中を歩き、イルルヤンカシュを安全な距離から眺めることになります。
   基本的に竜見物です。それだけを目的にすれば、つつがなく終えることができるでしょう。
   コントラクターの案内人は東カナン12騎士の1人オズトゥルク・イスキアです。彼が責任を持って安全に案内してくれます。
   イルルヤンカシュに近付こうとすれば、そのとりまきのモンスターたちと戦闘になります。


以下は主要NPCの説明になります。PL情報としてアクション作成の参考にしてください。

ハリール・シュナワ(150歳(外見年齢17歳)・魔女)
母親が東カナンのとある一族の出です。幼いころ母親とともに東カナンを追われてシャンバラへ逃れてきました。
かなり勝気な性格で、対話の巫女としての使命感に燃えており、必ずイルルヤンカシュを鎮めるのだとかなり思い詰めています。
護身は父方の獣人たちに教わっていて、わりと身軽。戦闘にはナイフを使用します。

バシャン・アタシュルク(280歳(外見年齢50歳)・魔女)
対話の巫女として、また氏族長として、一族を率いています。イルルヤンカシュとの関係から、東カナンではそこそこ力を持つ地方領主です。一族は魔女がほとんどですが、そのほかの種族もいます。
気丈で誇り高き女傑。
現在病気で1日のほとんどを床に伏しています。

セイファ・サイイェル(280歳(外見年齢30歳)・魔女)
バシャンの幼なじみで理解者。彼女の手足、目や耳となり、その言葉を一族の者に伝えたりしています。
一族の者に人殺しをさせるのがいやで殺し屋を雇ったのも彼ですが、ハリールの母親とも幼なじみということからハリール殺害に苦悩しています。
心優しく、だれにでもわけ隔てなく接する博愛主義者。わりと理想主義的な面があります。

ヤグルシ・マイムール(殺し屋・ブレイブ)
セイファが雇った殺し屋の1人。目元だけが開いた黒衣に身を包み、普段も目深にかぶったフードで表情は読めません。
ハリール殺害に仲間を率いて動きます。主にバスタードソードを使用。強敵です。

カイ・イスファハーン(殺し屋・マスターニンジャ)
ヤグルシと同じく黒衣に身を包んでいます。ほとんどしゃべりません。ヤグルシの片腕。彼を守りつつ戦います。
全長1メートルの槍状の刃が柄の上下についたような武器(簡素で巨大な独鈷杵のようなもの)を主に使用しますが、それ以外の武器も隠し持っています。かなりの強敵です。

イルルヤンカシュ(竜)
体長約15メートル。数百年に一度目覚める竜です。七色に輝く真珠色のうろことエメラルドグリーンの翼を持っており、とても優美で曲線的なフォルムをしています。鳴き声は鳥に似ていると言われています。
北カフカス山の山中を歩いていますが、とりまきのモンスターたちが大勢周囲についているため一般人はおいそれと近寄れません。



注意点
 今回同時間軸で3つのパートが同時進行します。
 そのため、第1回、第2回、第3回と、それぞれ別の場所で行動することは可能ですが、距離的なペナルティが発生します。第1回で城を探索した方は、第2回で山を選択した場合、午後しか探索できません。逆もそうです。移動に半日かかる、としてください。

 以上のことから、このシナリオでは第2回以降それぞれのパートでさらに【午前】・【午後】で区切ります。アクション欄に入れておいてください。なければこちらで無難な場所に振り分けます。
 第1回は全員【午後】ですのでこの記入は不要です。ただし、次回移動する場合半日かかるということを踏まえてパートを選択してください。
 パートによっては【午前】で出なかったものが【午後】で出たりと、【午前】と【午後】で出てくる情報が違ったりもします。場合によっては何も見つからない結果になるかもしれません。
 いつ・どこで・だれに(だれと)・何をするか・それはなぜか(5W1H)を明確にアクションに記載してください。

 情報を共有したい場合は、だれに・どのようにして伝えるかを書いておいてください。なければその情報は伝わっていないものとします。受ける側がGAの1人だった場合、黙っておく等記載がなければGA全員に伝わったとみなしてかまいません(GAでなくても同じ場所で行動していた場合は伝わっています)

 また、今回はダブルアクション判定を少し厳しめにさせていただきます。
 基本的にMCとLCは一緒に行動です。MCはNPCと会話でLCは戦闘といった目的の違う行為はダブルアクションとなり、MCの行動を優先しLCの戦闘アクションは没となります。1つのシーンで収まるようにアクションを組んでください。


※現在バァルは遠方の領地の視察からの帰途中にあり、第1回にバァルが登場する予定はありません。バァルに対するアクションは難易度が高く、失敗の可能性がかなり高いです。ご注意ください。


 それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・ハリールを守って戦う

・アガデの城へ行く

・ハリールと話をする

・ドラゴン・ウォッチング・ツアーに参加する

・敵の側につく

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2013年03月11日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年03月12日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年03月16日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年04月10日


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